5.3 古レールの刻印の調査(展示品ほか)1st wrote at 2000.05.25 / Last update at 2004.11.03
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駅・路線ごとの古レール確認リストのうち、博物館等で展示されているものや保存車両の乗っているレール、あるいは鉄道から離れた箇所にある古レールについてまとめました。
順番は、県別(県番号順)に駅・路線を並べ、以下に製造元名のABC順としています。 展示地点(50音順)
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(pref.11) 埼玉県内展示品埼玉県内で見た展示レールや保存車両等の乗っているレールです。大宮工場(現:大宮車両センター)には、入り口右側に D51187 とアプト式電気機関車の ED4010 が展示されています。その車両が載っているレールの刻印です。なお、ED4010 は、アプト式の歯車部分は残っていませんが、数10cm程度のアプト式歯車レールと車両側の歯車をイメージした板が取り付けられています。 |
【凡例: (O) 大宮工場】 |
写真:大宮車両センター保存のED4010
レールに注目
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(pref.13) 交通博物館東京の交通博物館(最寄駅:JR秋葉原)にある古レールです。玄関前には新幹線0系車両の運転台が展示されていますが、その下にあるレールは、ちゃんと新幹線用の60kgレールとなっていました。室内展示室の蒸気機関車のうち、1号機関車の下のレールもちゃんと双頭レールとなっています(刻印はなんとなく読めそうなところがあった程度)。しかしながら、C57135の下のレールはNレールでした。時代的に両者の共存時期はあった(C57は1937年初製造,Nレールは1961年制定)ものの、50kg PSレールを使って欲しかったところです。 なお、以前は東京地下鉄1001号車両が屋外に展示されており、その屋根の部材に双頭レールが使われていたようです(詳細は『レールの趣味的研究序説〔再補・上〕』)が、現在は撤去されてしまったようです。 |
【凡例: (O) 屋外展示,(S) 室内展示,(T) 車輪の展示室,(R) 線路の展示室】 |
交通博物館には、線路をテーマとした展示室があります(上の「線路の展示室」は同一)。こちらでは、日本の鉄道黎明紀から現在までに使用された様々な断面形状のレール(鉄道院達第623号『軌条及付属品呼称ノ件』の分類に従い展示)がコレクションされており、一見の価値のあるものとなっています。刻印が読める向きで展示されている訳ではないので刻印の読み取りは困難が多いのですが、覗き込んでなんとか読んでみました。
下の表の「60-1」というのは、『レールの趣味的研究序説〔補遺〕』に従った表現方法で、「60ポンド第1種」という意味です(実際の展示は kg/m 表示)。 この展示室には、鉄まくら木も展示されていますが、そこには「THYSSEN 1927」という刻印が入っています。 |
レールの種類 | 読めた刻印 | 想定される製造業者 |
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75 | OH ?ENNE?SE? | TENNESSEE |
60-1 | SEC 131.I. R. ? | CAMMELL |
60-1 | CAMM | CAMMELL |
60-1 | ED STEE? 1887 P. I R J | CAMMELL |
60-3 | (丸Sマーク) NO 30 A 1909 XI | 官営八幡製鉄所 |
60-5 | RNEGIE 19【以下不明瞭】 | CARNEGIE |
50-3 | 【穴】RRO【穴】【切断】 | BARROW |
50-7 | BARROW STEEL | BARROW |
50 | TE?L W? 5. 188? | CAMMELL |
50-9 | CAMMELLS S | CAMMELL |
45-2 | R?AN?1890HTT | KRUPP |
45-3 | LD 1899 HGR | BV & CO |
(pref.13) 京成高砂駅京成高砂駅には、同駅の施設改善まで使用されていたホーム上屋の支柱が橋上駅舎の改札内に保存展示されています。傍らの解説文には、京成初代のカーネギー製レールで1911年製とありますが、発注者名に I R J(官鉄)とあるのが謎です。 |
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写真:京成高砂駅の改札内に展示されている
ホーム上屋として使われていたレール |
(pref.13) 東京メトロ東京メトロ銀座線上野駅の改札に展示されている(平成5年10月設置とある)古レールで、銀座線で集電用の弟3軌条として使われていたものだそうです。銀色のペンキが塗られておりピカピカです。"." までくっきり読め、保存状態良好です。地下鉄博物館は、丸の内線129号の集電レールの刻印です。車体が乗っているのは新品と思しきレールでした。また、銀座線1001号の方は、足周りが暗く、確認できませんでした。 |
【凡例:(U) 銀座線上野駅,(M) 地下鉄博物館】 |
写真:銀座線上野駅の改札に展示されている
集電用レール |
(pref.13) 浅間神社(東京都江東区亀戸9丁目)旧城東電軌を引き継いだ都電25系統の浅間神社電停跡付近には近年までレールが残されていたようですが、このレールが近くの浅間神社の境内で展示されています。1本は37kg-ASCEレールですが、もう1本は溝付きレールです。これらのレールは見影石の「まくらぎ」の上に実際のものによく似た金具で固定されています。刻印部分はスペルが間違っているようにも感じますが、刻印が錆びて不明瞭な上に白ペンキでなぞってあるため、真の文字が判然としなくなっています。以下のリストはなぞってあるものそのままです。 なお、説明板には、「大正時代に作られたイギリス製のレール」とありました。1本はBVの様ですからイギリス製は間違いないですが、1930とあるので昭和のレールです。もう1本も八幡製鉄の1962年製ですので説明は間違っていることになります。
近くの亀戸中学校には、大同電気製鋼所の溝レールのクロッシングが保存・展示されています(許可を得て、調査)。クロッシングが保存されている例は珍しいと言えるでしょう。 |
【凡例:(K) 亀戸中学校敷地内 (S) 浅間神社】 |
写真:浅間神社での
展示状況
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(pref.13) 東京都区内展示品東京都内で見た展示レールや保存車両等の乗っているレールです。復元された新橋駅では、当時のプラットホームが復元されており、レールも1対10m程度が敷設されています。刻印を読み取ることが出来ました。これは日本石油加工柏崎工場(参考:『新潟県内でも敷設されていた双頭レール』)で使用されていたレールのようです。 宮の下のものは、東急世田谷線の宮の下駅(?停留所)のそばに保存されている江ノ島鎌倉観光(現:江ノ島電鉄)601号(元玉電104号電車)の乗っているレールです。 |
【凡例:(S) 新橋ステーション(復元) (M) 東急宮の下】 |
写真:旧新橋駅に復元された開業時の線路と
0マイル標識(双頭レール使用)
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(pref.22) 静岡県内展示品静岡県内で見た保存車両等の乗っているレールです。伊豆急下田駅のものは、ホーム端に展示されている電車の車輪の乗っているレール。同駅の3番線の現役レールにも、同年同月のレールが確認できました。伊豆急行の開業は、1961年10月(『私鉄史ハンドブック』)のことであることから、これらは開業時のレールと見て良さそうです。 熱海駅前のものは、駅前に展示されている熱海鉄道(元の豆相人車鉄道)の7号蒸気機関車の乗っているレールです。豆相人車鉄道の開業が1895年(『私鉄史ハンドブック』)であることを考えると、同鉄道ゆかりのレールである可能性もあり、興味深いです。 |
【凡例: (S) 伊豆急下田,(A) 熱海駅前】 |
(pref.25) 旧長浜駅舎鉄道記念物である「旧長浜駅」(指定番号 4)駅舎の前庭には、やはり鉄道記念物の「旧長浜駅29号分岐器ポイント部」(指定番号 17)が保管、展示されています。解説板の説明によれば、イギリスのカンメル社の1880年製と書かれていましたが、実際レールの刻印が読めまして、その内容に偽りはないようです。同銘のものは、近隣だと北陸本線木ノ本駅のホーム上屋に見られます。刻印はレールの通路側にはなく、裏手(トンネルの扁額のある側)に回らないと読めません。なお、この分岐器は普通レールに手を加えて作ったものの様です。 分岐器には、短冊形の継ぎ目板が残っており、これにより隣のレールと繋がっていたことがわかりますが、正しい位置に留められていないのが残念です(錆びていて、もう無理だろう)。 分岐器をレールに固定しているタイプレートには「I.G.R MAKER」,「KOBE 1881」という陽印があります。このことから、分岐器自体が組み立てられたのは1881年と推測します。 この「旧長浜駅29号分岐器ポイント部」ですが、野外展示となっており、鉄道記念物という肩書きの割には、存在な扱いを受けているように思います。実際サビ等も見られ、状態が良いとは言い難いです。雨の当らない室内での展示に切り替えるべきでしょう。もしそれが叶うなら、見学者側から刻印が見える方向での展示にしてもらえれば、言うことなしです。 |
【凡例: (P) 旧長浜駅29号分岐器ポイント部 (E) ED701が載っているレール】 |
写真:旧長浜駅第29号分岐器(鉄道記念物17) |
なお、旧長浜駅と併設されている北陸線電化記念館には
D51793 が展示されており、そのレールは、
→ (JISマーク) 30 A 2048 GODO 1995という刻印の30kgレールです。蒸気機関車にはやっぱりこの細さの方が似合います(50Nでは、何か気持ち悪い)。それにしてもこのレール、軽レールメーカーの合同製鉄のものではないかと思うのですが、もはや30kgレールは軽レールメーカーが作っているのですね。 ED701 のレールは上で紹介したもので、登場時に主力であったであろう37kgレールに載せているようです。 |
(pref.26) 鴨川竹田橋(京都市伏見区)展示品ではありませんが、鉄道から離れたところにある施設の古レールですので、こちらに整理しました。近鉄京都線の上鳥羽駅〜竹田近くの鴨川にかかる「たけだはし」の橋脚には、溝付きレールが用いられています。そのレールが下記のもので、1種類のみのようです。また、発注者名の "KSD" については、場所がら、「京都市電」の略と思われます。 |
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写真:竹田橋全景(京都市伏見区,鴨川) |
(pref.26) 福知山鉄道館ポッポランド福知山市(京都府)の商店街の中にある「福知山鉄道館ポッポランド」に展示されている双頭レールです。綾部駅のホーム上屋に使われていたものだそうで、1870年製ですので、新橋−横浜間で開業時に使われていたレールでしょう。このレールは、刻印部分を切り出した上に、文字の浮き出しを軽く研磨してあり、読み易くしているようです。しかし、明瞭とは言い難いのも残念です。ここには、鐵道五十年祝典記念の双頭レール文鎮の展示もありました。 |
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(pref.31) 鳥取鉄道公園鳥取駅の北口側正面にある「鳥取鉄道公園」には、高架化工事により撤去された、元の鳥取駅の駅ホームがダイヤの掲示板やゆかりの品などといっしょに保存されています。このホーム上屋の支柱は、双頭レールでできており、DARLINGTON IRON と思われる刻印が、双頭レールの説明の看板が付いている支柱で確認できました。 |
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写真:鳥取鉄道公園に保存されている旧鳥取駅
ホーム上屋 |
(pref.40) 門司機関区毎年鉄道記念日の前後に東京の日比谷公園で開催される「鉄道フェスティバル」の際に、JR貨物のブースで古レールが展示されています。BARROW と UNION が2000年の時のもの、CAMMELL が2001年のものです。 いずれも門司機関区において車両洗浄線の足場に使われていたものだそうで、木製の台座の上に鎮座させて展示されていました。BARROW
と CAMMELL は末尾が切断されてしまっているのが非常に残念ですが、いずれも60ポンド第1種のレールのようです(したがって、CAMMELL
は、SEC.131 IRJなどと続くはず)。
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写真:門司機関区にあったとされるレール |
(pref.40) 東田高炉記念公園福岡県北九州市八幡東区の東田高炉記念公園に保存されている東田第一高炉の傾斜塔に見られた古レール。傾斜塔とは、高炉に原材料(鉄鋼石,コークス,石灰など)を投入するための施設だそうです。原材料はインクラインあるいは斜交エレベータ(かなり高角度)のようなもので運ばれ、その支持工(支持レール)として鉄道用レールが使われてたようです。さすがに操業開始時のものではないですが、それなりの年代のものでした。当然、自社製品です。 東田第一高炉は、官営八幡製鉄所により1901年に操業開始した日本最初の商業用製鉄高炉です。古レールとして現存する多数の八幡製鉄所製レールがここから出銑された銑鉄を使って作られたことは言うまでもありませんが、現在保存されているものは、1962年に改修された高炉だそうです。
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【凡例: (*) 傾斜塔】 |
写真:静体保存されている東田第一高炉
左端の斜めのものが傾斜塔 |
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