6.2 古レールの刻印を解読する(米合衆国製)6.2.1 古レールの刻印を解読する(米国諸社製) |
1st wrote at 1999.10.09 / Last update at 2006.09.07 |
古レールのメーカーごとの解説です。アメリカ(合衆国)のレールメーカーは、当初(1900年頃まで)は小さいメーカーが多数あったものの、1920年頃までにUSスチール
(United States Steel)とベスレヘムスチール(Bethlehem Steel)の 2 大系統に合流・合併したようです。ここでは、多数の小メーカーと
2 大系統の傘下となった会社の合流前のものを集めてみました (USスチールとベスレヘムスチールはこちら)
。
メーカー名(および系列名)の読みとその製造地名については、『レールの趣味的研究序説』,『レールの旅路』や各製鉄会社のウェブサイトを参考にしました。
以下の順番は、製造元名のABC順としています。 | A.& R. I.& S. | CAMBRIA | CARNEGIE ( 〜1901 ) | COLORADO | |
オールバニー&レンスラー製鉄会社(Albany & Rensselaer Iron & Steel Co.)
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オールバニー&レンスラー鉄鋼会社トロイ製鉄所製。TROY
STEEL とは別の会社であったようです。
A&R社の略沿革は、Don Ritter 氏の "Heritage on the Hudson" というウェブサイトを参考にしました。合併もとの "Rensselaer Iron (Works) Company" は、米国で最も早い時期にベッセマー転炉を設置した製鉄会社でした。製鉄業の中心地が五大湖沿岸に移るまでは、"Rensselaer Iron" 社を含めて Troy 近郊が米国随一の製鉄地帯となっていたようです。 |
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名鉄名古屋本線 知立駅(135度回転) |
カンブリア製鋼会社(CAMBRIA STEEL Co.)
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アメリカのカンブリア社製。カンブリアというのは郡名だそうです。
所沢のものは、『レールの趣味的研究序説〔補遺〕』にあるロシヤの「東支鉄道のTYPE
IIIA といわれる背の高い 67.5 ポンドレール」のようです。
略沿革は、"Johnstown Redevelopment Authority" のウェブサイトにある "Lower Cambria Works" のページや、いくつかのページの断片的な情報を参考としました。 |
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北陸本線田村駅(90度回転) |
カーネギー製鋼会社 (CARNEGIE STEEL Co.) その1 (〜1901)
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CARNEGIE STEEL は何ヶ所かに製鋼工場があったようです。しかし、大半のレールに「エドガー・トムソン工場」製を示す「ET」の略号が入っていることから(1896年製のものの一部には省略)、レールの製造はエドガー・トムソン工場のみで行なわれていたと推測します。 この時期の CARNEGIE には、発注者名が入っているケースの多く、発注者名としては、年代の新しいもの(上)から、北海道官設鉄道
(HGR),官鉄(IRJ,工),南海鉄道(NANKAI),東武鉄道
(TOBU),長谷 (奈良) 鉄道 (HASE),阪鶴鉄道(HANKAKU),山陽鉄道(STK)などが見られます。
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北陸本線富山駅(35度回転) |
コロラド石油・鉄鋼会社 (COLORADO Fuel & Iron Co.)
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米国の製鉄会社としては珍しく、"United States Steel" にも "Bethlehem Steel" にも吸収されないで操業を続けていましたが、"Oregon Steel Mills"(そのウェブサイト)に買収されています。CF&I 社に関する資料は、"Bessemer Historical Society"(そのウェブサイト)が買い取って所有しているようです。 刻印の文字が丸みを帯びた大型のものであることが特徴的です。「SEC 753」の部分は、字体の関係で「SEC /53」と見えることが多いようです。製造月と思われる部分にしばしば見られる「IXI」が謎です。「II」に×をしたのか、10-1+1=10なのか、よくわかりません。何かを意味する記号かもしれません。・/td> | ||||||||
山陽本線 新山口駅(90度回転) |
エドガー・トムソン製鋼社(EDGAR THOMSON STEEL)
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鉄鋼王アンドリューカーネギーが設立した製鉄会社。エドガー・トムソンはペンシルバニア鉄道の当時の社長の名前で、同鉄道に高品質のレールを供給しようとしたのが設立理由だったようです。
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名鉄名古屋本線 豊橋駅(130度回転) |
イリノイ製鋼会社(ILLINOIS STEEL Co.)
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『レールの趣味的研究序説〔中〕』には、「シカゴ北工場と南工場.のちにゲーリー工場があった.工場名はたんねんに記入されている」とあります。私の見たレールでは"SOUTH
WKS" こと南工場が主で、北工場と入っているものは未確認です。
富山2や下赤塚で確認したレールの中には、「I
S」としか入っていないものもありますが、後ろの記述の類似性から、「ILLINOIS
STEEL」の略と判定しました。
なお、US スチールがレールの断面規格を表わすのに使用している(ふつう)4桁のコードナンバーは、この ILLINOIS STEEL のものが継承されたようです。このうち、6009 は60ポンド第2種,6015は60ポンド第9種(=60ポンド第5種)の断面規格のようです。6001は60ポンド第2種に近似した断面でした。6007は未計測のため不明です。 略沿革は、James R. Alexander 博士の "zanderpage" というウェブサイトにあるページやルーズベルト大学(Roosevelt University)のウェブサイトのページを参考に整理しました。 |
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↑山陰本線福知山駅(90度回転),南工場製 |
↑琴電琴平線 琴電琴平駅(170度回転),JOLIET工場製 |
ジョリエット製鉄社(JOLIET Iron and Steel)
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『レールの趣味的研究序説〔中〕』では、ジョリエット在の鉄鋼所が、US スチール の工場となっていることから、その前身の可能性を指摘していましたが、"Illinois Steel Co," 形成時に買収されたことが略歴の通り判明しています。 その略歴は、"Canal Corridder Association" のウェブサイトのページやルーズベルト大学(Roosevelt University)のウェブサイトのページを参考に整理しました。 |
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名鉄名古屋本線 知立駅(90度回転) |
ラッカワンナ鉄鋼会社(LACKAWANNA Iron & Steel Co.)
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アメリカのラッカワンナ製。ここでは、Bethlehem Steel 合流前の単独会社時代のものを扱います。
略沿革は、"Buffalo Architecture and History" というウェブサイトと "Anthracite Heritage Museum & Iron Furnaces" のウェブサイトのページの記述が参考になりました。それによると、1902年に本拠地が Buffalo に移動したようです。その関係でしょうか、1910年頃まで Scranton と Buffalo の工場の別が刻印に入っています。 前者の例は、近鉄の伊賀上野 で確認した刻印が該当すると考えられます。この SCRANTON 工場は、同じ町にあった SCRANTON STEEL とは別の会社であったようで、刻印にも上記の様に区別がなされていたようです(『レールの趣味的研究序説〔中〕』より)。SCRANTON という地名はペンシルバニア州東部に見られます。 後者の例は、関ヶ原 で確認した刻印が該当すると考えられます。ラッカワンナ郡に続く鉱工業地帯の地名のようです(『レールの趣味的研究序説〔中〕』より)。『レールの趣味的研究序説〔中〕』などでは、この刻印の先頭を "BS Co" と読んで Bethlehem Steel としていますが、合流する年代(1922年)と矛盾が見られることから(1908年製)、 Lackawanna Steel の略とした方が妥当なようです。 |
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↑ 京王電鉄調布駅(180度回転) | 東海道本線 関ヶ原駅(90度回転)↓ |
ローレン製鋼社(LORAIN STEEL Co.)
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United Steel の小会社となった後は、日本での路面電車用溝付きレールの生産・輸入元となっている Lorain Steel ですが、単独会社時代には普通レールの圧延も行っていたようです。 筆者が確認したのは不明瞭な刻印のレールのみですが、『レールの趣味的研究序説〔中〕』によると、中央線沿線に多いこのレールには、以下に示す内容が刻印されているようです。 279 LORAIN STEEL CO. LORAIN O 1900 IIIIII KTK略沿革は、"Lorain Public Library System" のウェブサイトのページや U.S. Steel のウェブサイトの "Lorain Tubular Division" のページ,James R. Alexander 博士の "zanderpage" というウェブサイトのページを参考としました。 |
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中央東線 塩山駅(90度回転) |
メリーランド製鋼社(MARYLAND Steel)
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MARYLAND 製。ここでは Bethlehem Steel 合流前の単独会社時代のものを扱います。 京浜東北線の浦和や東十条で見られるものは、製造者名の前に「6」あるいは「G」と読める文字が付いています。どちらかは判然としないのですが、これらは60ポンド第2種レールであり、それを示す「6」ではないかと思います。 略沿革は、船舶に関する "Maritime Business Strategies" というウェブサイトに Maryland Steel に関するまとまった記述がありました。 |
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東北本線(京浜東北線)東十条駅 |
スクラントン・スチール(SCRANTON STEEL Co.)
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LACKAWANNA にも Scranton の地名が入ったものがありますが、この SCRANTON STEEL とは別の会社だそうです。実際、年代の近い1986年(Lackawanna Scranton)と1888年(Scranton)のレールで刻印の内容が異なっており、この考え方は妥当と考えます。Scranton というのは、米国の鉄道の街だという話を聞いたことがあるような気がします。 『レールの趣味的研究序説〔中〕』によれば「名鉄本揖斐に所在」 (現在廃止済みだが、建物は残存らしい) とあり、正にそのレールのようですが、刻印の最後の部分は「1888」と記述されています。私には「12v88」と読めます。 インターネットで調べた限りでは、Scranton に製鉄所があった事実は多数確認できるものの、"Lackawanna Steel Scranton" と "Scranton Steel" の区別がはっきりしないサイトが多く(別の会社だったらしいサイトも見つかったが)、有力な情報は得られていません。 |
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名鉄揖斐線 本揖斐駅(90度回転) |
トロイ・スチール(TROY STEEL)
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TROY は、古くは製鉄都市であったようです。同じ町にあったと思われるオールバニー&レンスラー鉄鋼会社トロイ製鉄所のレールにも
TROY STEEL と入っていますが、別の会社と見るようです。
『レールの趣味的研究序説〔中〕』では、TROY STEEL 社のレールとして、以下の刻印が紹介されています。上に挙げたものと並びが異なっているので紹介しておきます。 TROY STEEL 1875 CPBCインターネットで調べたオールバニー&レンスラー鉄鋼会社の略沿革からすると、同社が "Troy Iron & Steel Co." を名乗るのは1885年以降ですから、上記レールをオールバニー&レンスラー鉄鋼会社に関連ありとするのは無理があるようです。また、インターネットで調べた限りでは、こちらの TROY STEEL に関する有力な情報は得られていません。 |
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ユニオン製鋼社(Union Steel Company)
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ドイツのドルトムント・ウニオン(UNION D)とは、全く別の会社です。1880年代の UNION D 製のレールで "D" の文字を入れているのは、この会社と区別したためかもしれません。現在も含め、Union Steel を名乗る企業が歴史上に多数存在しているようで、紛らわしいです。 略歴は、James R. Alexander 博士の "zanderpage" というウェブサイトにあるページやルーズベルト大学(Roosevelt University)のウェブサイトのページを参考に整理しました。 |
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近鉄伊賀線 伊賀上野駅(90度回転) |
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