双頭レール使用のホーム上屋

1st wrote in 2001.06.03 / last update at 2003.09.05

 日本の鉄道黎明期に使用されていたと思われる双頭レールを利用したホーム上屋が、東海道本線摂津富田駅,山陽本線金光駅笠岡駅に現存しています。これらの「造り」を眺めてみたいと思います。
 せっかくですので、双頭レールの確認箇所を整理してみました。ホーム上屋では、米子駅の0・1番のりばにも現存しているようです。しかし、山陰本線綾部駅のものは駅橋上化に伴い撤去されてしまったようです。東京秋葉原の交通博物館の屋外展示の東京地下鉄道モハ1001の上屋も撤去されています。
 
(取材:2001.5.4,2001.12.19)

摂津富田駅(東海道本線)

 摂津富田駅の大阪方には、上下線の2ホームともに双頭レール利用のホーム上屋があります。
 摂津富田駅のホーム上屋については、『レールの趣味的研究序説〔下〕』,『鉄道風景懐古 (I)』,JTBキャンブックス『鉄道考古学を歩く』にその存在が紹介されています。
写真:摂津富田駅:ホーム上屋のようす  双頭レール利用部分のホームの様子です。
 写真では、鉄道黎明期のレールとVVVFインバータ制御のステンレス製通勤電車の奇妙な(?)取り合せです。
 ホーム上屋の支柱(双頭レール利用)の拡大です。
 一般の平底レールを支柱にする場合は、2本のレールを踏面か平底部かを抱き合せにして使用することが多いですが、双頭レールの場合は、側面で2本のレールを合わせているようです。
 地面からは、2本で立ち上げ、途中で、1本を折り曲げて分岐させ、ひさしを支持しています。
写真:ホーム上屋の支柱 写真:ホーム上屋支柱の先端付近
右上:梁も双頭レールです
右下:なんとなく、   
   DARLINGTON と読め
ます       
写真:ホーム上屋支柱の基部
写真:刻印:[遮蔽] LINGTON IRO[穴]Co 70 IGJR
 使用されている双頭レールの中は、どれも塗装が厚く、刻印の読み取りは困難でしたが、日本最初の鉄道営業区間である、新橋−横浜で使用されたものと思われる1870年製を示す刻印のレールを見つけました(写真は合成)。

笠岡駅(山陽本線)

 笠岡駅の下りホーム(2,3番のりば)には、ホーム中ほどに双頭レール利用のホーム上屋があります。
 笠岡駅では、かつての井笠鉄道との共用ホームであった1番のりばのホーム上屋の一部にも古レールが使われていた(情報源:@nifty 鉄道フォーラム専門館鉄道歴史談話室)そうですが、現在は撤去されてしまっています。
写真:笠岡駅:ホーム上屋のようす  双頭レールの利用方法(造り)は摂津富田駅と同様です。
 使用されている双頭レールには、1870年製や1873年製が見られました。これも摂津富田駅と同様です。

 この時は出張の帰りに立ち寄ったもので、カメラはレンズ付きフィルムでした。上屋の写真もこれが限界、レールの刻印の写真もうまく撮れませんでした。再訪したいところです。


金光駅(山陽本線)

 金光駅の下りホーム(2,3番のりば)には、ホーム中ほどに双頭レール利用のホーム上屋があります。
 金光駅と笠岡駅のホーム上屋については、JTBキャンブックス『鉄道考古学を歩く』でも紹介されています。
段形レール  双頭レールの利用方法(造り)は摂津富田駅に似ていますが、内側に補助材(やはり双頭レール)が見られます。
 摂津富田駅の双頭レールと同様に、側面で2本のレールを合わせて使っています。
 摂津富田駅では、2本のレールの間に隙間がありましたが、金光駅では板を挟み込んでいるようです。塗装が剥げていて確認できました。
 なお、これらの双頭レールのメーカーについてですが、塗装が厚く、刻印が読めるものが1本も無かったため、不明です。
複雑に組み合わされた段形レール
写真:鉄道院銘の跨線橋  余談ですが、金光駅にはこんなものもありました。「鉄道院」の銘入りの跨線橋です(JTBキャンブックス『鉄道考古学を歩く』に関連記事あり)。

双頭レールの確認箇所

 実地確認や参考文献(特に『新潟県内でも敷設されていた双頭レール』を参照), @nifty 鉄道フォーラム専門館鉄道歴史談話室での情報,ネットサーフィン中に見つけた双頭レールの残存状況を整理してみました。
 双頭レールは、近畿〜中国エリアで散見される(た)ようですが、新潟エリアからも見つかるようです。その他数 10cm〜1m 程度の長さのものは、意外にも全国にあるようで、あちらこちらに展示されているものがあるようです(大半は鉄道施設内で非公開。内部情報により幾つか知っているが、公開は自粛)。

 建設部材に使用されていたものは、建物,橋脚などの撤去時に見つかるもので、これも各地から見つかり、ときどきスライスされて文鎮として売り出されたりします(水戸線の橋脚から出たものが売られているのを見たことがある)。
 『レールの趣味的研究序説〔下〕』に「関西地方には全部双頭レールで出来ている跨線橋(複数)があるが,下部構造なので危険防止のため場所は伏せさせていただく」と記されているものについては、奈良線藤森〜桃山間にあったもの(御香橋)が撤去されたことを『鉄道考古学を歩く』で読んだ以外には、過去に存在したものも含めて、所在未確認です。
 

表 双頭レールの確認箇所
利用箇所 所 在 地 状況 備  考
ホーム上屋 東海道本線 摂津富田駅 ○ 残存 荷物上屋は撤去
ホーム上屋 山陽本線 金光駅 ○ 残存  
ホーム上屋 山陽本線 笠岡駅 ○ 残存 井笠鉄道共用ホームは撤去
ホーム上屋 山陰本線 綾部駅 × 撤去 ポッポランドにて1本展示
ホーム上屋 山陰本線 鳥取駅 △ 保存 駅近くの鉄道公園に一部保存
ホーム上屋 山陰本線 米子駅 ○ 残存  
上屋 交通博物館(東京神田) × 撤去 東京地下鉄1001号の上屋
上屋 山陽本線 下関駅 × 撤去 関門連絡船船着き場
建物部材等 信越本線 直江津機関庫 × 撤去 解体時に発見
建設部材 山陽本線 広島駅 × 撤去 解体時に発見
建設部材 旧 赤坂離宮(東京都) × 撤去 解体時に発見
建設部材 その他 × 撤去 ときどき見つかる
建設部材 新潟県 日本石油加工柏崎工場 ○ 残存 プラントの架台に転用
チェアも残存
跨線橋 奈良線 桃山駅近傍 × 撤去 「御香橋」,架け替えられた
跨線橋 その他、関西各地 未確認 情報が無い事から撤去か?
敷設 交通博物館(東京神田) ○ 残存 1号機関車が乗っている線路
敷設  博物館明治村(愛知県) ○ 残存 保存車両が乗っている線路
境界柵 東海道本線 京都駅近傍 ○ 残存 東山トンネル京都側の切り通
し区間北側
記念碑 東海道本線 汐留駅跡地 ○ 残存 0哩標識(鉄道記念物)
記念碑 根岸線 桜木町駅前 ○ 残存 鉄道開通記念碑
(今もある?−未確認)
展示品 東京都 港区立港郷土資料館 未確認 汐留駅からの発掘品
展示品 交通博物館(東京神田) ○ 残存 線路の展示コーナー
ポットスリーパーで固定
展示品 福知山鉄道館ポッポランド
(京都府)
○ 残存 綾部駅1番線ホーム上屋のもの
刻印部分を展示
展示品 その他 ○ 残存 原則非公開なため紹介は自粛
文鎮 鉄道職員に配られたが、
戦時中に命令により回収
○ 残存 鐵道五十年祝典記念,鐵道省
文鎮 その他 ○ 残存 ときどき売りに出る

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