「蔵前の札差叶屋惣兵ヱ。その財力に任せて、時の権力者に縦横にコネを巡らせ、金相場米相場などを私物化して暴利を貪り、『町奉行はもとより勘定奉行や若年寄の首の一つや二つは、いつでも挿げ替えてみせる』と豪語していたこの大商人が殺害されたのは、年の瀬も押し迫った夜であった。
生前の叶屋の諸行からして、これはこの世では晴らせぬ恨みを晴らす仕業人・商売人の仕事だと噂がたち、以後厳しい取締りのもとに、これら闇の仕事師たちは江戸から消息を絶った。
江戸から十里、この八王子から、『治安警備のベテランを一人、指導のために派遣願いたい』と江戸町奉行に要請があったのは半年前のことである。人手不足で猫の手も借りたいほどの町奉行所にとっては大迷惑な話ではあったが、やむを得ず、たとえ居なくても日常の業務にはまったく差し支えのない人物を、家族共々八王子に差し向けていた…。」
(Ａパートナレーションより)

江戸から消息を絶った闇の仕事師であり、八王子へ左遷された奉行所の役人でもある主水に、突然江戸への帰還命令が下された。勘定奉行稲葉が南町奉行に是非主水と会いたいと言って来たためらしい。

そんな主水は勘定奉行所の役人戸ヶ崎重内の弟重次郎が近江屋の奉公人を次々と痛めつける場面に出くわし、その場で初対面の鹿蔵から戸ヶ崎兄弟殺しを持ちかけられる。
兄の重内が勘定奉行所で拾って来たネタで、弟の重次郎が強請りを働き大金をせしめていたのだ。現時点での戸ヶ崎兄弟のターゲットは近江屋で、その女将お栄には飾り職人秀という年下の愛人がいた。

戸ヶ崎兄弟の脅しから逃れるためお栄は江戸から秀と共に脱出しようとするが、その誘いを秀に断われる。その後お栄は首を吊って自殺してしまった。

その秀が住む長屋で隣に住む浪人畷左門は、主水を自分の命を狙う権藤という男と勘違いして、主水に襲いかかる。勘違いが判明し和解する主水と左門。

左門からの情報をてがかりに、鹿蔵が自分を裏稼業に引き戻そうとしていると知った主水は、鹿蔵の元へ直接交渉をしに乗り込んで行く。自分が江戸へ戻って来れたのも、勘定奉行稲葉に手を回した鹿蔵による差し金だと知って驚く主水。やがて鹿蔵の生き方に共鳴した左門と組んで主水は戸ヶ崎兄弟殺しを引き受ける。そしてお栄に死なれた恨みを胸に、かつて闇の仕事師だった秀も動きだした。

まるで浮気のように妻の居ぬ間に内緒で始めた裏稼業。果たして、主水の浮気は成功するか？

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