その3 ロールキャストのツボ |
●ロールキャストはとても便利 管理釣り場に限らず、バックキャストのスペースが十分にあるフィールドはなかなかありません。 また、フライフィッシングをはじめて間もない頃は、一日中ロッドを振ると本当に腕や手が疲れてしまいます。 後ろが狭い釣り場や腕が疲れた時は「ロールキャスト」が非常に有効かつ便利です。 小さな釣り場であれば、ロールキャストのみでも釣りができます。 一度、コツがわかってしまえば、ラインが空中にない分だけカンタンなテクニックと言えるかも知れません。 ●準備 ロールキャストは水面のある場所でないと練習ができませんので、まず、練習場所を見つけましょう。 できれば止水。川の中流にある砂防堰(堰堤)などはプールになっているのでちょうどいい練習場所です。 フライラインはフローティングを用意して下さい。最初は長くラインを出しませんので、DT、WFどちらでも構いません。 リーダーとティペット、できればダミーのフライも付けましょう。 ラインはラインコーティング剤をしっかり塗布して浮力を高めておき、練習開始の前にラインの巻きぐせも取り除きましょう。 ●どうすれば、ロールキャストができるのか? その1、その2のkingfisher的解説から言えば、バックキャストで後ろに伸びたラインを、ロッドが後ろから前に直線的に引っ張るから、 ラインが前に伸びるというフォワードキャストが成り立つことになります。 しかし、ロールキャストの準備状態(キャスト直前)では、ラインは一部が自分の背後にあるだけで、 残りは前方の水面上にあります。この状態から、ロールキャストでラインを前方に折り返すにはどうすればいいのでしょう? まず、ロールキャストのスタンバイ状態(キャスト直前)は、下の図の状態です。 ①背後にラインが垂れるまで、ロッドを充分に引き付けておくこと。 10mのラインであれば、自分の足元から後ろの背後に4m、自分の前の水面に6m程度。 前面のラインはなるべく直線になっていることが望ましい状態です。 ②キャストスタート時はロッドは後ろにやや倒しぎみ(リストは開きぎみ)でよいこと。 kingfisher的ロールキャストの解説としては、やはり「後ろから前への直線移動」がポイントです。 つまり、上記スタンバイ条件に当てはめると、 ①背後にあるラインの重量が、前方に直線的に送り出されることでロールキャストのエネルギーになる。 ②ロッドが後ろに倒れているので、ロッドティップは通常のバックキャストのポーズ位置よりもかなり後方にあり、 これが前方への直線移動の距離を補うことになる。 さらに、ロールキャスト用のステップ(踏み込み)をお勧めします。下の図を見て下さい。 このように、重心を移動するだけで、30cm以上の直線移動を生み出すことができると思います。 ●ストローク さて、いよいよロッドの振り方ですが、下の図がストロークのスタートからフィニッシュまでの軌跡を示した「悪い」例です。 (図は説明の都合上、90度の範囲で示しました) このように、肘を回転中心にして、単純にグリップを振り下ろしてしまうと、ロッドティップは円弧状に移動してしまいます。 そこで、ストロークの「良い」例が下の図です。 肘の回転で前方への移動を生み出しながら、手首の回転により、ロッドを垂直を保ちます。 ストロークの前半では、ラインを前に直線移動することに専念します。 そして、ストロークの最後で手首を一気に前に倒して、ロールアウトさせます。 「スタートとフィニッシュは同じ、悪い例と良い例のどこが違うのか?」というと、例えばストロークの中央(腕を45度倒した時点)で、 9ftロッドのロッドティップ(先端)がどこにあるかを考えてみて下さい。(ロッドの曲がりは無視した場合で。特に高さ。) ロールキャストで最も重要な点(ツボ)は、ラインの直進性が確保された後の「ストローク後半で力を入れる」ということです。 スタート時やストローク前半でラインに強い負荷をかけてはいけません。 SAGEのロッドに添付されているパンフレットの中の英文にも "Supply the power later in cast"(キャストの後半に力を入れなさい) とあります。腕を前方に押し出してぎりぎりまで手首を立てておき、最後の倒しで力を入れて下さい。 このようにして、背後にあるラインを直線運動軌道に乗せ、その決定された方向に対して力を与えることで、 バックキャストなしで、ラインを前方に送り出すことができます。 ●おまけ "Supply the power later in cast"の1文のことですが、フライに限らず、なんということのない小さなことが、 決定的なヒントになることがあります。それが文章の場合、その文を読む時期にもよりますが、最初は気にも止めずに読み過ぎてしまっても、 後で読み返した時に「ああ、そうか」と理解できることがありますよネ。 市販のキャスティング解説本もそういう文がたくさんあります。(太字にするとかマーカーが入っていれば助かるのですが、 ほとんどは長文の中に埋もれています。) |