その11

わしじゃ、”毛鉤じじい2000”じゃ。
なんで、”2000”なの!
だって、みんな”2000”になってるから、わしも。
だから、なんで!?
まあ、そう年寄りをいじめるな。弱い者には、優しくせにゃいかん。
あんたの場合、とてもそんな気になれない。
優しくするといえば、魚を扱う時は気をつけなければいかんぞ。
お前、いつも、どんな風にしとるんじゃ?
もちろん、管理釣り場でも優しくリリースしてますよ。
なるべく魚を水から上げずに、魚に手を触れずに、
フライフックだけをつまんで外してます。
手で魚を持つと、魚がやけどするらしいし、
タオルなんかは使ってはいけないと聞きました。
ほう、なるほど。
しかし、フックを外す時、魚があばれるじゃろ。
ええ、だから、ゆっくり寄せてからフライを外します。
なぜ、ゆっくり寄せるんじゃ?
だから、魚を少し弱らせてからでないと、あばれますからね。
魚を弱らせるんか。つまり、優しく、弱らせるんじゃな。
なんか、いやな言い方だなあ。
だって、それが良い取りこみ方でしょ。まあ、少しは魚の引きも楽しみたいですけど。
いや、別にイヤミを言っとるわけではない。わしもそれで良いと思う。
しかし、「なるべく早く寄せて、なるべく早くリリースするのがいい」という人もおるぞ。
考えが足りないってことですか?
例えば、細いティペットで、大物がかかった時はどうじゃ?
どうって、だから、ゆっくりやりとりして寄せるか、
ティペットが切れるかのどちらかになるでしょ。
ティペットが切れるというのは、自分から見て、
ティペットの先とフライがなくなるという意味じゃな。
魚から見ると、フライが口に刺さったままになるということじゃな。
また、いやな言い方だなあ。だから、切れないようにランディングネットを使って・・
お前、さっきはネットのことなんか言わなかったじゃろ。
言い忘れただけですよ。
そうじゃろ、忘れただけじゃな。
大物がかかってから、ネットを忘れたことに気がついたら、どうするんじゃ?
なんか、ムカツクなあ。
簡単じゃ。ネットを誰かから借りればいいんじゃ。
しかしな、自分でかけた魚は、自分で最後まで釣りあげなければいかん。
リリースするということは、魚を持って帰るのが目的ではなく、
釣ることを楽しむのが目的だということじゃろ。
誰かにネットを借りたり、ネットですくってもらったりしたのでは、
自分で釣ったことにはならん。開高の「フィッシュ・オン」を読め。
男なら・・
なにも、そこまでこだわらなくても、いいじゃないですか。たかが、管理釣り場で。
・・・
キャ〜、ツレチャタワ〜! ワタシ、オサカナ、サワレナイノ〜!
ダレカ、ハリハズシテ〜! オネガ〜イ!
なに、それ?
レディとお年よりには、優しくせにゃいかんということじゃ。今日はここまで。
イヤミなじじいだなあ!
kingfisher注記: 魚の扱いやランディング、リリースについては、
いろいろな考え方があると思います。
ちなみに、私は今回の毛鉤じじいとは
異なる意見を持っています。
なお、最後のカタカナの一節は、
女性アングラーを蔑視する意味では
ありませんので、念のため。

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