その21
★セルに関係なく、左から右方向に読んで下さい。(ちょっと読み難いかも知れません)
毛鉤仙人 | セイジ(道場の留守番) |
わしじゃ、今帰ったぞ。 | 仙人、久しぶりですね。どこ行ってたんですか? |
ちょっと、旅に出ておったんじゃ。実はな・・ いや、その前に、どうでもいいけど、なんで2列になっとるんじゃ? |
なかなかいいアイデアでしょ。ほら、ほぼ同時にしゃべれるようにしたんですよ。 スピードアップです。別の言い方すれば「ツッコミの常時接続」、ははは。 |
なんじゃそれ?お前時々、わし以上にわからんこと言う奴じゃな。 まあ、いいじゃろ。 |
いや、仙人ほどじゃ。 はい、それで旅って、どこへ行ったんですか? |
わしがな、山道を歩いておったらな。道に迷ってしまってのう。 | 山道って…いきなり、なんですか。 |
山の中の道じゃな、上り坂とか下り坂とかあってな。 おぉ、なんかこの2列会話もスピード感あるな。 え〜と、こんな山の中で困ったな・・と思っていたら、 なんと、山の中に管理釣り場があったんじゃ。 |
いや、そうゆうことじゃなくて! でしょ。だから、それで。 ほぅ、どうしました? |
「もう、わしって、超ラッキ〜!また爆釣〜?」と思ったな。 | いいから、話、続けて! |
とりあえず、山小屋風の家の中に入ったんじゃ。 そこには若い娘が1人いた。 |
それって、ログハウスって言うんですよ。 若い娘!ふむ! |
「もしや、あなたは、毛鉤仙人ですか?」 「ほう、わしを知っとるとは、わしも有名になったもんじゃな。」 「いや、帽子にそんなに大きく名前が書いて・・」 「あ、これか。旅行に行く時には、持ち物全部に名前を書いておかんとな。 それから、おこづかいとお菓子は500円まで。バナナはお菓子に含みません。」 |
ガクッ。 あんた、小学生かい! そうゆう、こまかいギャグはいいから! |
「どうぞ、ごゆっくりなさっていって下さい。お食事のご用意もできますので。」 「ほぅ、そりゃ、ありがたい」 焼肉のメニューがあったから、注文したんじゃ。 |
はぁ、焼肉ねぇ。 |
「うまい!、このコリコリした肉は?」 「はい、牛の胃の肉でございます。」 「胃の肉、なるほどねぇ。なかなか、うまいもんじゃのう」 |
狂牛病の話じゃないでしょうね?釣りは? |
もちろん、釣りもしたかったんじゃが、あいにく毛鉤の釣り道具を持って行かなかったからのう。 じゃが、見るとルアーのロッドがあってな。久しぶりにルアーで釣ってみることにしたんじゃ。 「この竿を借りてもよろしいかの?」 「はい、私は釣りのことはよくわかりませんが、これでよろしかったら、どうぞお使い下さい。」 |
え?、フライじゃないんですかぁ? |
釣り場に出ようとしたら、急に雨が降り出してな。しかたないんで、 「娘さん、すまんが、雨カッパみたいなもんはあるかの?」 「・・・申し訳ありません、ございません。」 「そうか。まあ、強い降りではないし大丈夫じゃ。このまま、なんとか釣ってみるから。」 と池で釣り始めた。 流れ込みの土管があってな。そこに魚影の動きを見つけた。 どうも鱒は小魚を夢中で追っているようじゃった。 しかし、ロッドにはスプーンが付いているだけ、イマイチ反応しなくての。 そこでな、娘さんに頼もうと思ったが、専門用語じゃわからんじゃろ、 「娘さん、え〜と、この匙(さじ)みたいなやつじゃなくて、 こんなくらいの大きさの、魚の格好したやつはないかのう?」 「・・・・・・」 そしたらな、娘は、しばらく考えていたんじゃが、・・・ |
山や釣りに行くなら、レインウェアくらい持っていきなさいよ。 なるほど、女性には仙人もやさしいですね。 (このスケベじじい!) どうしました? |
庭に咲いていた黄色い花の小枝を折って、それを黙って、わしに差し出した。 ・・・・ お前、どう思う? |
黄色い花の小枝? えっ、どう思うって、なんのことですか? |
喝〜っ! これは、”歌”じゃ。 |
歌? ミニモニとか歌いながら釣りするってこと? |
・・・ 昔、武術に長けた武将が鷹狩りに出た際、帰り道で俄雨(にわかあめ)に遭った。 一軒の農家を見つけ、蓑(雨具)を借りようとしたが、 家から出てきた若く美しい娘は、静かに垣根に歩み寄り、 そこに咲いている黄色い山吹の一枝を折り、何も言わずに差し出した。 馬上の武将は、「はて、どういうことか?」と訝しがったが、そのまま城に戻った。 村娘のことを家臣に話すと、 「殿、山吹は実がならないと言われており、 『七重八重 花は咲けども山吹の 実のひとつだに無きぞ悲しき』 という古歌がございます。 娘は、「実の」と「蓑」をかけて、雨具をお貸したいですが家が貧しく蓑一つもありません。 という悲しさを、山吹に託して殿にお伝えしたかったのでしょう。」 と教えられた。 武将は、歌を知らず娘の心を察することが出来なかった、己の無学を恥じて、 以後、歌道や学問に励み、文武両道の名将になったという話じゃ。 |
ああ、その話、どっかで聞いたことありますよ。 |
よいか、釣りも同じじゃ。技術だけではないぞ。いろいろな知識も必要なんじゃ。 | でも、知識って言っても、そうゆう知識は、 釣れる・釣れないと、関係ないんじゃないですか? |
・・・ まあ、釣れる・釣れないとは、関係ないかも知れんな。 せっかく、いい釣り場教えてやろうと思ったのに〜。 |
あっ、スミマセン。 ボクもその釣り場、行ってみたいです〜。 若い娘がいるんでしょ。 なんていう管理釣り場ですか?場所は? |
うっしっし。場所はヒ・ミ・ツ。今日はここまでじゃ〜。 |
それって、ズルイんでないの! |
kingfisher注記①: 古い雨具は、「蓑(みの)」(防水透湿のスグレもの)。 牛の胃の肉は、焼肉ではお馴染み、「ミノ」。(牛には4つの胃がありますが、ミノは第一の胃) 小魚の格好のルアーは、「ミノー」(minnow=小魚)。 (・・・って、話の順番が違うんじゃないの!これじゃ、「ミノーひとつだに無きぞ悲しき」になっちゃうじゃん!) もちろん、武将の名は太田道灌(どうかん)。江戸城を築いたことで知られる室町時代の武将。 →こまかな前振り=流れ込みの土管。(そりゃ、「どかん」でしょ!) |
kingfisher注記②: ある可愛らしい女性フライフィッシャーから、「道場の続編はまだですか〜?」と、リクエストをいただきました。 そこで、早速スケベじじい、いや毛鉤仙人登場! 今回はリクエストに応えるべく、「若い娘」の登場する話にしました。でへへ(^_^;) 2列会話方式は試験的に採用してみました。読み難いというご意見が多い場合は、前のタイプに戻します。 |