その23

★セルに関係なく、左から右方向に読んで下さい。(ちょっと読み難いかも知れません)

毛鉤仙人 セイジ(道場の留守番)
わしじゃ。今日はスチールの話じゃ。

おぉ、きたきた。いきなりスチールヘッドですか、大物釣りですね。
ちゃうちゃう、金属のスチールじゃ。

え、スチールヘッドじゃないんですか、なんだ、鉄のスチールか。
ちゃうちゃう、鉄は「Iron」、「Steel」は鋼(はがね)じゃ。

だって、「鉄鋼」って言うから、同じようなもんでしよ。
ちゃうちゃう、鉄は元素の鉄、Fe フェライトとか呼んだりしちゃうけどね。
鋼は、鉄に炭素が入っとる化合物なわけ。
他にも珪素とか、マンガン、リン、イオウとかも少し入っとるがの。
 
  はあ、炭素ねぇ。炭素が入ってると、なんかいいことあるんですか?
あるある、グーンと強くなるのよね。
ところで、「はがね(刃金)」といえば、日本刀はなんで、よく切れるか知っとるか?


いきなり日本刀ですか
まあ、道場ってとこは剣の道とちょこっと関係あるしな。  
  日本刀はなぜよく切れるか なんて知りませんよ。
それはね、焼き入れの方法だね。
もっとカッチョよく言うと、「刃紋があるから、よく切れるのよ」
西洋の剣、サーベルには刃紋はないからね。
刃っちゅうのは、ただ、薄くて、尖がってれば切れるっちゅうもんでもないのよ。

はもん?
  焼き入れって、熱くした金属を水の中にジュワッと突っ込むんでしょ。
ちょっとちゃうなあ、日本刀は焼き入れの時、土を塗ってあるのよ。
刃になる方に薄く、峯の方に厚く土が塗ってあるわけ。
そうすると、峯の方は、急冷されないので、焼き入れされず粘りが残る。
粘りがあるから、折れ難い。
刃の方は急冷、つまり焼き入れされて硬くなるってわけじゃ。
 
  は〜。
「刃〜」ってそれ、ダジャレか。つまらんダジャレ言うなよん。

それでな、焼き入れした部分にも、硬いところと柔らかいところがある。
その刃を研ぐと、硬い部分は残り、柔らかい部分は削り取られて、へこむ。
つまり凹凸ができて、接触面積が少なくなるから、摩擦が少なくなって、
よく切れるって寸法よ。
硬い部分は金属の専門用語ではマルテンサイトというんじゃ。
マルテンサイトっつっても、目が点になるようなホームページのことじゃないぞ。

あのね。ダジャレのことであんたから・






んなこと、わかってます!
あ、そう。
つまり、焼き入れして硬くするだけではなく、研いで柔らかい部分を削り、
接触面積を小さくするってことじゃ。その残った硬い部分の模様が刃紋なのよ。
だから、「刃紋があるから、よく切れる」
 
  はいはい、わかりました。
どうでもいいですけど、なんで、こんな話するんですか?
いや、ちょっと昨日、金属の勉強してな。

なんだよ、一夜漬けの付け焼き刃かい。
かっかっか。
わしゃ、切れ味が鋭いから、同じ一夜漬けでも、
その辺のなまくらとは、出来が違うんじゃ。
 
  あの〜、管理釣り場の釣りの話になってないんですけど。
おっ、そうじゃったな。いかんいかん。
この話はな、ニジマスとスチールヘッドの違いって、鉄と鋼の違いと似て・


ないだろ!
あ、やっぱ、そう。
そうか、わしも焼きが回ってしもうたなあ、かっかっか。
 
  焼入れたろか!
なぬ、なんじゃと、師匠に向かって「焼入れたろか!」とはなんじゃ!
そんなこと言う奴は、・・・ハモン(破門)じゃ    な〜んちゃって。
今日は、ここまでじゃ〜。






やっぱり、最後はダジャレかい。
でも、破門されないってことは、切っても切れない関係ってこと?
もう、イヤ〜。

 

kingfisher注記:

今回の話は、私が苦手だった金属工学の中で、唯一、好きな話として「刃紋」の話を思い出したので書いてみました。
釣りの話でなくて、すみません。

①付け焼き刃=急場しのぎに、先にだけ刃を付けても、すぐに取れてしまうので使いものにならないこと。
②なまくら=焼入れによる脆さを補うために、焼き戻しという作業をするが、これをしない刃を鈍(なまくら)と呼ぶ。脆いこと。
③焼きが回る=焼き入れをし過ぎて、かえって切れない刃になってしまうこと。
     
④焼きを入れる=懲らしめること。

ちなみに、肉屋さんが仕事の前に丸い鉄棒で肉切り包丁の刃をゴシゴシ擦るのも、
刃の表面に凸凹をつけ接触面積を減らすためみたいです。

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