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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第2シリーズ 24話 「卒業式前の暴力(2)」

荒谷二中では加藤優(直江喜一)ら不良たちが教師陣に謝罪を要求。尻馬に乗って暴れる生徒も現れ、校内は大混乱に陥っていた。駆けつけた金八(武田鉄矢)は二中側が既に警察に通報したことを知り、「担任に説得もさせないうちに無茶苦茶な!」と憤る。事態は切迫していた。

ほどなく警察が到着。その姿を確認した加藤らは、話し合いを続行するために校長や体罰教師・清水を連れて放送室に立てこもる。会話の様子は校内放送で流され、加藤の正論による訴えは全校中の人間の知るところに。知らせを受けた加藤の母親や松浦の父親、3Bのクラスメイトたちが二中へ駆けつけ、TVのニュースで事件を知った魑魅怒呂のメンバーも続々と集結する。

これ以上は待てないと実力行使に出ようとする警察、騒ぎを大きくしないでと懇願する君塚(赤木春恵)。…そのとき、スピーカから「謝ります」という校長の声が。加藤たちはついに謝罪を勝ち取ったのだ。しかし、全校生徒の喝采の中を引き上げる加藤らの前に、無情にも警察が待ち構える。加藤や松浦悟(沖田浩之)は取り押さえられ手錠をはめられ、金八やクラスメイトたちの前で護送車に乗せられてゆくのだった。

警察署で大人たちは話し合いを持つ。金八は、未熟な子供に繰り返し教えることが教育なのだ、裏切られても生徒を信じるのが教師なのだ、と力説するが、警察側はあくまで官僚主義的な対応で譲ろうとしない。すると君塚が口を開く。「滝田君、先生の見逃しが最大の教訓だったと言っていたじゃないですか」。刑事の一人は君塚の教え子で、君塚の温情がなければ今の自分はなかったのだ。これで警察もようやく折れた。

やがて釈放された加藤と松浦に、金八は愛の鞭を見舞う。「貴様たちは、俺の生徒だ。忘れんなよ」。その言葉に、二人はとめどなく涙が溢れるのだった。

81年3月20日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 生野慈朗

視聴率: 31.5%

DVD: 第9巻

参考文献・挿入歌

みどころ談義

● ついにきました、中島みゆきの「世情」が流れる中スローモーションで加藤たちが警察に連行されていく、有名すぎるあの回です。
○ 曲と映像のマッチングは完璧だろうと思うね。完成度、高いよなぁ…。演者さんたちもみんな演技が熱いよ。泣けて泣けて仕方なかった。
● ひとしきり泣いた後で、つとめて冷静に語ろうとしているという状況ですよね、今。
○ やっぱり傑作として名高いだけあって、話の流れが劇的。「教師と直談判→警察来る→立てこもり→謝罪勝ち取る→やんやの喝采→世情→連行→金八涙の訴え→愛の鞭」。この流れだもん。そりゃ引き込まれるよ。
● 加藤の存在感、半端じゃないんですもんね。
○ 暴力を振るおうとする仲間に「手は出すんじゃねぇ!」と一喝する加藤…。
● 竹刀教師に「俺たちは教育の権利者だ」と筋立てて訴える加藤…。
○ 自分らに対してだけでなく、「お袋をバカにしたことを謝れ」とも迫る加藤…。
● 校長に謝らせてもにこりともしない加藤…。
○ 一人だけまったく無抵抗で、淡々と連行されていく加藤…。
● 二中へ行くと決心した時点でその後の展開が全て分かっていたかのような、そんな覚悟、ある種の達観が感じられた、毅然とした加藤でした…。
○ ただ、連行される途中で、金八先生にだけはちょっと目線をやるんだよね。あれはグッとくるよなぁ。加藤は目の演技もすごく良くてね。この他にも、校庭に到着したクラスメイトに一瞥くれるシーンなんかでもゾクゾクするほど神懸かってたよね。
● 全くです…うぅ。
○ まぁ加藤の素晴らしさについては至るところで言い尽くされてるんで、ここの解説は他に譲ろう。このサイトらしいのはやっぱりちょっと変わったマニアック視点。そっちの見どころを挙げてみようか。
● そうですね。
○ この回が完成度が高いと言われる由縁は、もちろん加藤のスゴさは言うまでもないんだけど、周りの人々や状況についてもホントに細かく描かれている、そのところにもあると思うんだよね。それぞれの心の内や、バックグラウンドまで見えるような丁寧さで。
● あぁ〜。二中の大山先生なんてそうでしたね。仏頂面の刑事とか鈴木宗男似の腰ぎんちゃくみたいな教師とか、とことん憎たらしい人物がいる一方で、二中側にも大山先生のような良心がちゃんといて、しかも今年定年だけど信頼を失墜させたままでは退任できないんだというところまで設定があったり。
○ そうそう。他にも、加藤が乗せられた護送車から加藤を中心に映しながらも3B、金八、そして加藤の母親の悲壮な姿が見えるところなんてホント象徴的で見事な描き方だったし、その後、君塚校長と昔なにか大きな出来事があったと思われる元教え子の刑事が登場したのも物語に深みが出たというか、出会いと教育のロングスパンでの影響力をとても印象づけてくれたし。
● 魑魅怒呂の収拾に当たったり報道のカメラを必死に止めようとした上林先生も、「らしさ」がしっかり出ていました。
○ カメラのレンズ鷲掴みだもんな。上林さんは常に冷静でつかみ所のない印象があったけど、あんなふうに身体張るとは。すごく一生懸命ないい先生なんだよね。
● あと、もちろん忘れちゃいけないのが金八先生。誰もが真似をした「加藤ぉー! 松浦ぁー!」の呼び掛けとかありましたし、加藤に手錠が掛けられるシーンでは「俺の生徒になんばしよっとか、きさん!」と博多弁で叫んでました。そして警察では金八的名言のオンパレード。「我々は毎日人間を作っているんです」を筆頭に珠玉の言葉をアツく畳み掛けてました。
○ 最後の本気ビンタも名場面だよなぁ。あれ、武田さんのアドリブなんだって! ビンタで大正解だよね。加藤、松浦が心の中に押し留めていたものがウワッと決壊するという。大泣きして、「貴様たちは俺の生徒だ、忘れんなよ」の名セリフね。このあたりがこのシリーズのハイライト。
● でも最後のあそこ、金八先生噛んじゃうんですよ…。「貴様たちは俺たちの生…俺の生徒だ」って。大事な大事なシーンなのに(笑)。
○ あはは。あれはまぁ、あの勢いでは現場も止められる雰囲気じゃないだろうし(笑)。
● あれこれ言うのは野暮ですかね。
○ 武田さんご自身のお話でも、あのころの自分はまだ若くて器の小さい役者だったので加藤役の直江さんと張り合おうとしてテンション上げ過ぎちゃったとか、悟の父親役の役者さんが次の仕事が迫っていて録り直しができなかったとか、諸説あるようだけど。
● はい。
○ まぁまぁ、しかしそれも含めてやっぱりシリーズ中一番印象深い回なのは間違いないよね。
● それはもうそうですよ。必見も必見、大必見です。
○ ホント、僕らが改めて言うまでもないんだけど(笑)。

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