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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


◆ 第5シリーズ 11話 「金八涙の体罰…3B騒然辞表提出」

冬休みに入った12月28日、3Bとセンター合同の餅つき大会で、お年寄りの洋造が餅を喉に詰まらせ昏倒してしまう。洋造は必死の救助で一命を取り留めるが、少しの不注意が命取りになることを目の当たりにした生徒たちは大きな衝撃を受ける。兼末健次郎(風間俊介)ら進学塾の合宿参加組はホテルに泊り込みとなるが、引き篭もりの兄・雄一郎への対応を巡って夫と口論になった母・麻美(田島令子)が同じホテルへ宿泊することになり、健次郎は息つく暇がない。

年が明け合宿を終えた健次郎は、約束どおり花子先生(小西美帆)と初詣に行くべくアパートを訪ねるが、花子は新年会の迎えに来た生徒に強引に連れ出されていく。金八(武田鉄矢)の自宅の新年会には大勢の教え子や教師仲間が集まっていた。現3Bの生徒らは金八の歴史と信頼を肌で感じ、大西(織本順吉)は若い教師に大人の教育責任について講釈し「私らだって大いに役に立ちたい」と語る。

新学期になり、市村篤(内田祐介)が登校してきた。懸案の恥ずかしい秘密も金八の口からあっけらかんと語られたことで肩の荷が下りたのだ。一方、健次郎は花子との初詣を奪われた怒りが収まらず、ちょうど3Bに来ていた大西にケンカを売ってクラスを混乱させるようヒノケイらをけしかける。次々に浴びせ掛けられる非礼な態度に腹を立てた大西は、塩沢好太(森雄介)の「死ね!」という言葉でついに激怒。礼儀が分からなければ死んで教えてやろうと迫ると、好太は大西を突き飛ばしてしまう。大西は頭を強く打ちつけぐったりと倒れ、動転した好太は屋上から身を投げようとしてその寸前で確保される。

金八は健次郎の仕業だとはじめから分かっていた。それでも犯人探しをしなかったのは、一人一人に3B全体の問題だと捉えて欲しかったからだ。しかし生徒らは「いのち愛しむ」の言葉からも洋造の事故からも何も学ばず、再び事件を起こしてしまった…。金八は黒板に大きく「約束」と書き、人と人とが信頼し合うには約束を守るという前提がある、だから就任時に誓った「人の心を踏み潰す生徒がいればぶん殴る」という約束を今から果たすと言う。5人の代表者、そして健次郎を平手打ちにした金八は、体罰の責任を取り辞表を提出するのだった。

00年1月6日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 福澤克雄

視聴率: 17.2%

DVD: 第4巻

小説本: 第17集

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● いやぁ、泣ける要素満載の、凄まじいやりとりでしたね…。「先生のことが、好きだから…」にはやられました。
○ 新春スペシャルらしい大事件なんだけど、まず話の流れが凄すぎるよ。初登場の兼末父はダメオヤジで、両親がケンカして母親はホテルまで健次郎を追いかけて。健次郎は束の間の合宿なのに家のことから解放されず、姉似の花子先生との初詣も邪魔されて、その怒りと閉塞感が悪い心を再び呼び覚まして、大西さん事件のけしかけに。大西さんは新年会終わりで「役に立ちたい」とちょうど決意していてああいう行動をとって、好太が…。金八は健次郎の仕業を全てお見通しだと示しつつ「約束」を守ってビンタ…って、見事な繋がり方してるよなぁ。今回は全てが見どころだよ。
● そうですねぇ。見事といえば細かい点もそうで、好太は実は初回から「死ね」という言葉を口癖のように使っていたとか、辞表のシーンでは金八先生の後ろに君塚校長の校長の写真が見えていたとか、そういう気配りもポイント高いですよ。見直してみるとよく分かるんですけど。完成度が高いです。
○ 終盤のテンションは圧巻だね。金八が馬乗りになって好太を押さえるシーンはちょっと笑っちゃったけど、その後の力のこもった弁舌というかお説教の語り口、説得力は改めて素晴らしいなと思ったし、そしてそれに応える生徒の演技もすごく熱いんだ。
● 普段はクールな友子までが金八の気持ちを察して平手を打ち返したり、さらには今作ではずっと金八先生と対立する嫌な奴だった乾先生も、辞表提出後の職員室では熱く話し出して。本当にテンションが高くて圧倒されます。
○ 金八は全てお見通しだったわけだけど、しかしクラスメイトの逆襲を食らってもなおシラを切ろうとする健次郎にも、たしかに同情する点はあるんだよなぁ。
● そうですか? なんか往生際が悪い気がしますけど。
○ 塾の合宿と花子との初詣という、家のことから解放される二度のチャンスがあったのに、それをどちらも邪魔されて、心休まる時間が全くとれないんだよ。
● あぁ、たしかに…。特に花子先生のことなんてとても楽しみにしてたのに…。
○ そういうあざといまでに可哀想な目に遭っている悲惨な健次郎の気持ちを考えると、前回のラストでちょっと弱気になっていた健次郎が今回また悪事に目覚めるという点にも、少しは同情できる面はあるんじゃないかなぁ。もちろん暴力のけしかけを正当化はできないけど。
● ん〜。その点を考えると健次郎に直接けしかけられたヒノケイたち以外の、いわゆる尻馬に乗っかって酷いこと言った多くの3B生の方にも責任を感じてほしいし、そういう意味では金八先生が「3B全体が犯人」と言った理由も分かる気がします。
○ 中野先生が自殺未遂したという噂を自分たちから遠いものに聞こえていた3B。「いのち愛しむ」で泣き、洋造さんの事故を目の当たりにして意識が変わったのかと思っていたのに、本当の意味では全く実感できていなかったんだね。
● 大西さんの入院という大きな代償を負って、好太を自殺寸前まで追い詰めて、そして金八先生から厳しい口調で魂の説教を受けて、体罰教師にして、失職するかもしれないというところまでいって、やっと気づくことができたんだ…。
○ …さて、「マニアック視点」が売りのこのサイトとして見逃せないシーンは、金八宅の新年会だよね。卒業生大集合で、豪華。賑やか!
● あ、それ僕ちょっと調べてみたんですよ。えーと、第4シリーズの紀美、歩、信二、真穂、修一がいて、第2シリーズからは八重子、近子、明子が来て、第1シリーズは雪乃と麗子。それに池内先生もいて。現3Bは数えたら12人いたんですよ。
○ 後から明彦も寿司持ってきたから13人かな。
● あっそうだ(笑)。で、はじめからいたのは金八、乙女、幸作、大西さんだから…全員合わせてなんと29人があの小さな(失礼)家にギュウギュウだったんです。ほとんど一クラス分の人数ですよ!
○ あはは。よく調べたな〜。
 小ネタ/周辺状況拾い読み
◆通知表の文字から、和田校長の名前は「政伸」、中野先生の名前は「明」と判明。
◆開栄への合格を目指す塾合宿に参加したのは、健次郎の他、慶貴、修三。
◆友子は鳶の親方の娘であった。だけでなく、既に若い衆を引き連れる立場。カッコイイ。普段から男勝りの口調だったのはこのためだったのか。
◆大西と金八の会話で分かった家庭事情は…大西の息子は過労で早死に、孫はいるが再婚相手のところにいる。金八の父は既に亡くなっている。
◆金八が自宅について語った「不動産屋の後を継いだ教え子がおりまして、そいつが中古で手頃な物件を持ってきたもんですから」というのは、第4シリーズの生徒であった大畑享大のこと。
◆ヒルマンの実家は寺だった! どおりで仏教徒なわけだ。
◆年始の挨拶に訪れた雪乃の苗字が「浅井」になっていたが…離婚?!
◆明彦の実家である寿司屋の名前は「寿司トメ」。
◆突き飛ばされた大西さんが頭を打ちつけた場所は、蹴飛ばされた中野先生が頭を打ちつけた場所とほとんど同じ…。
◆救急車で運ばれた大西さんは「鎖骨骨折と肋骨に2本ヒビが入っている。頭を強く打ち付けており脳の検査が必要」という状態。
◆健次郎は物語の中で採りあげられたこと意外にも、バーバラのカンニングや祥夫の万引きをネタに脅しを掛けていた模様。
◆去り際に好太の肩を無言で叩く金八。職員室では乾先生もまた金八を肩を黙って叩いた。
 他のシリーズでは
■エッチ話
…ブラの件で悩む篤に、同じ目線まで下りて自らのエッチな体験談を話し、不安を取り除こうとした金八。第1シリーズ3話では悶々とする梶浦裕二に同じように下ネタ系のアドバイスをしていた。しかし「中学の時、女子バレー部の部室に入ってブルマ被って遊んでた」とは!金八つぁんったら。
■餅つき大会
第1シリーズ10話で、生徒のストレスを発散させてやろうと金八が餅つきを企画した。しかし生徒はその途中で勉強等の理由でひとりまたひとりと帰っていく。ひとり取り残された金八は、勉強第一の社会に対し怒りの杵を振り下ろす…。ちなみにこの時も末広がりで縁起のいい28日の開催だった。
■死ぬということ
…餅を喉に詰まらせて昏倒したお年寄りを目の当たりにした山田邦平が「人って簡単に死んじゃうんだな」とこぼしているが、第3シリーズ10話では、ラストの山田裕子との電話のシーンで、金八は太吉の死が信じられず「人がそんな簡単に死ぬわけないだろ」と言っている。
■飛び降り自殺
…金八シリーズでは非常に多いパターン。第1シリーズ8話、傷ついた越智はるみが屋上から投身自殺しようとして池内先生に止められた。同じく21話では、東大受験に失敗した浅井雪乃の兄が跨線橋から電車に飛び込んだ。第4シリーズ16話では両親の離婚を聞いた広島美香が自宅マンションのベランダから飛び降り未遂。のちの第7シリーズでは初回にいきなり幸作の予備校同級生が合格発表の場で飛び降り、11話では小塚崇史が身を投げるも一命を取り留める。
■優秀な兄
…学業優秀な兄を過保護にしたことがトラブルを招くというのは第1シリーズの浅井雪乃家のケースと一緒。
■生きることは学ぶこと
…金八が説教の中で語ったこの言葉は、第2シリーズ15話のタイトルだった。手紙を書くために金八に漢字を習い始めたホステス・珠子のお話。
■殴った生徒
…金八は、これまで殴った生徒は第1シリーズ1話の吉村孝、第2シリーズ24話の加藤優、松浦悟の3人だという。第2シリーズ22話で入水自殺をしようとした佐々木博子に愛の鞭をふるっていることは忘れている模様。ちなみに今作のはじめにもヒルマンの頭を軽いノリで叩いている。
■辞表
…85年のスペシャル4、第7シリーズ20話でも提出。
 この回の参考文献/挿入歌
◇ 「朝の読書が奇蹟を生んだ」 (高文研)
◇ 「朝の読書 はじめの一歩」 (大塚笑子著、メディアパル)
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