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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


◆ 第5シリーズ20話 「ガラスの少年(3)」

デラ(香川佑太朗)が高校入試の二次募集に合格し、3B全員の進路が決定。生徒たちはお別れ会について相談しはじめ、もう一度みんなでソーラン節を踊りたいという兼末健次郎(風間俊介)の提案が支持される。健次郎は中野先生(ラサール石井)に謝る決心を固め、金八(武田鉄矢)に一緒に行って欲しいと申し出るが、その日に限って金八は行かれないという。

健次郎の兄・雄一郎(須藤公一)の退院の日が迫る。母・麻美(田島令子)は新しいマンションで一緒に暮らす気でいるが、雄一郎はこれに反発。密かに荷物をまとめて家を出ようとするところを咎められ、二人は言い争いになる。思わず傍らの包丁を手にとる雄一郎、思い詰め心中を迫る麻美。健次郎がたまらず止めに入り揉み合ったところ、包丁が麻美の腹部に刺さってしまう。

救急車が到着するまでの間に雄一郎は姿をくらました。「僕がやりました」との書き置きを発見した健次郎は兄が死ぬつもりであることを確信し、行方を追う。警察は健次郎を事件の容疑者とみなし逃走を図ったものと判断、パトカーを出動させて捜査網を敷く。金八ら桜中の教師陣やクラスメイトは健次郎を心配しその姿を必死に捜索する。

方々を探し回った健次郎は、最後に兄弟思い出の水門に辿り着く。そこに雄一郎はいた。雄一郎は罪を被ろうと、健次郎を殴って気絶させ、警察を引きつけるために「俺がやった」と喧伝しながら川に向かって走り出す。水門に残された健次郎を抱きかかえた金八は、母親を刺した事実を知ると、「力になってやれなかったな」と嗚咽。勇気を出して警察にひとり謝りに行くという健次郎をおぶって階段を降りていく。大勢の人々が見守る中、やがて健次郎を乗せたパトカーがゆっくりと動き出すのだった。

00年3月9日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 福澤克雄

視聴率: 21.2%

DVD: 第7巻

小説本: 第18集

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● いやぁ、衝撃の展開でしたね。ついに金八でも、人を刺して警察が動くというような事態が起きてしまいました。
○ 作り手さんが「第2シリーズを超えるんだ」と意気込んでいるという話が早くから聞こえていたじゃない。だから一体どんな山場が待っているのかすごく期待していたら、こういうことか。まぁ、揉み合ってるうちに刺しちゃったというのはもうちょっと捻れないものかとも思うけど、警察に連行されていくあたりは確かに加藤優のエピソードを彷彿とさせたよね。
● 今までの紆余曲折の末に、健次郎がようやく中野先生に謝る決心をした。そういう希望の持てる冒頭だったのに、あんな目に遭うなんて…。
○ ただでさえ健次郎は家族に対して責任を感じていたのに、この展開はキツイよなぁ。しかも悪いことは何一つしてないというのに。ホント衝撃だよ。
● 健次郎の母・麻美役の田島さんの演技がすごく神懸かっていましたよね。麻美の精神状態というか狂気というか。迫真でした。
○ そう! 狂気だよな。溺愛ぶりもあそこまでいくとやっぱり異常なんだとよく分かったよ。すごかったね田島さんは。あとは健次郎がやっぱりもう限界で、麻美に「僕も取ってよ」と言ったり、「お姉ちゃん、ママを助けて」と祈ったり、幸作に「一緒にお兄ちゃんを探して」と懇願したり、誰かに助けて欲しいんだというようなセリフが多かったのも印象的だったね。
● 見せ場だった水門のシーンについては、特に何も言うことはないですよね。ただ涙、涙で。
○ 見入っちゃったね。浸らせてもらったと言った方が正しいかな。ただ、その中で一つ思ったことがあって。金八が倒れている健次郎を抱き上げた場面なんだけどね、これがミケランジェロのピエタの格好と瓜二つだなぁと。
● みけらんじぇろのぴえた?
○ 彫刻作品でね、死んでしまったキリストを抱きかかえて嘆き悲しむ聖母マリアの像があるんだけど、これと似せた画にしたのかなと思ったの。
● ほほう。そこには何か意味があるんですか。
○ つまりね、健次郎は両親からまっすぐな愛情を注がれなかったわけじゃない。そこに寄り添っている金八先生というのはまさしく親の代わりとして、親のような優しさでそこにいるんだと、そのことをより強く印象づけようとして、強く伝えようとして、マリア様に姿をなぞらえたんじゃないかって思うんだ。
● なるほど。BGMがそういえば賛美歌のアメージング・グレイスでしたよ。これはその説を裏付けるものかもしれないですね。読み解きが深いなぁ。
○ あとはこのサイトらしく細かい点に注目してみようか。金八つぁんが健次郎のもとへ行ったとき、乾先生が「これは教師の仕事だ」といって警察を必死に止めるシーンがあったよね。あれは感慨深いものがあった。普段は反りが合わないように見えるけど、やっぱり金八を認めている戦友なんだ、って。
● 僕は、警察に激しく抵抗していた雄一郎をピタリと止めた安井院長の一言が気になります。スロー映像だったんでセリフが聞こえなかったんですけど、いったいどんな言葉が雄一郎の心をうったんでしょうかね?
○ 聞こえない一言といえば、パトカーに乗せられた健次郎が最後に振り返って何か言った、ラストの場面でしょう! 何と呟いたのかは分からないんだけど、金八は健次郎が何かを伝えようとしたと思って必死に自転車こいで追いかけるんだよね。んんー。この続きはどうなるんだ!
● 早く見たい気持ちもあるし、もうこれ以上見てられないという気持ちもあるなぁ…。
 他のシリーズでは
■母親と包丁
…健次郎母子には、実は金八シリーズの中でその原型となった登場人物がいる。第3シリーズ7話の柴田至則母子がそう。至則は過干渉な母親にがんじがらめにされ、ついに耐え切れなくなり台所から包丁を持ち出す。健次郎のケースとは異なり実際に母親を刺すことはなく、その後のオチもコミカルになっているのだが、それまでの雰囲気はかなり近いものがある。ちなみに健次郎の母・麻美、至則の母・早苗の両者とも、演じているのは田島令子さん。
■警察に連行
…荒谷二中で立てこもり事件を起こした第2シリーズ24話の加藤優らがあまりにも有名。第7シリーズ19話では覚醒剤取締法違反の容疑で丸山しゅうが。
 この回の参考文献/挿入歌
◇ 【音楽】 アメージング・グレイス (ナナ・ムスクーリ)
◇ 【音楽】 三月のうた (石川セリ)
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