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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第6シリーズ 22話 卒業直前スペシャル 「アタシは直を許さない!」

鶴本直(上戸彩)はオランダ行きを取りやめ、ひかり高校定時制を受験。セクシャル・マイノリティの特別授業以来、すっかり3Bに溶け込んだ様子だ。しかしミッチー(川嶋義一)は直だけがチヤホヤされることに納得がいかない。取り巻きがなだめるのも聞かず執念深く憎悪の炎を燃やし、「あいつが女だってことを証明してやる」と息巻く。

金八(武田鉄矢)は千田校長(木場勝己)に呼び出され、桜中からの異動を言い渡される。ショックを隠せず帰宅すると、ノブタ(辻本祐樹)がやってきて家に来てくれと言う。出て行った母親と一緒に暮らすことに決めたノブタは、父親の説得に立ち会って欲しいというのだ。それを見届けてホッとする金八のもとを、今度は成迫政則(東新良和)が訪ねる。政則は中学を無事卒業できることを拘置所の父親に報告したいと言い、ついに面会する意思を固める。翌日には幸作(佐野泰臣)が退院。しかし金八の表情はさえない。来年度の異動先が教育委員会に決定し、現場を離れることになったのだ。

3Bでは出向期間を終えた遠藤先生(山崎銀之丞)による特別授業が開催。その最中、ミッチーが直を呼び止め、仲直りのパーティをしたいと持ちかける。しかしこれは、直を騙して押し倒してしまおうという罠であった。この計画にいち早く気づいた長谷川奈美(中村友美)は、ミッチーのただならぬ様子に恐れを抱き、思い切って金八に相談。知らせを受けた金八はすぐさま動き、ミッチーを追い詰めないよう保健室に呼び出して話を聞くことにする。

ミッチーには父親がおらず、女性だけの家で女の子のように育てられた。そのため小学生の頃男子にイジメられ、女子のカバン持ちになるしかなかったという。その苦しみも分からずに自分をバカにし続けた直は絶対に許せないというのだ。ミッチーは仲間の誰かが金八に通じたと知ると、いっそう孤独を感じ「直を妊娠させてやりたかった。腹の大きい男なんて面白いじゃん」と暴言を吐き鬱屈を爆発。しかし、そんな事態になればその子の父親はミッチーだと本田先生(高畑淳子)は言う。思わぬ指摘に小さくなるミッチーを、金八は父性たっぷりに抱きしめ、自分に正直になれと諭すのだった。

ミッチーの企んだ仲直りのパーティは、それが嘘と知られぬままいつの間にか3Bに広まり、直の家に全員が集まることになった。大勢の友達が訪ねて来るという初めての体験に母・成美(りりィ)も嬉しそうに料理の腕を振るっている。クラスメイトが勢揃いする中、ばかげた企みを思い直したミッチーが木村美紀(森田このみ)に背中を押され最後に姿を見せると、直は「こいつが僕を男にしてくれたんだ」と成美に紹介する。二人は和解し、笑顔あふれるパーティがはじまる。

02年3月21日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 三城真一

視聴率: 17.1%

DVD: 第9巻

小説本: 第22集

参考文献・挿入歌

 みどころ談義
● まだ最終回ではないんですが、「卒業直前スペシャル」と銘打った2時間拡大版という第22話でした。
○ 最初の45分ぐらいまでは、今まで未解決だったエピソードのその後が立て続けに明らかになっていくんで、あぁ、エンディングに向けて終結していってるんだな、いよいよ「卒業直前」なんだなぁと感じて、切なくなっちゃったよ。
● 儀のひったくり事件、直の足のアザと進路問題、信太家の再婚問題、政則と父親の面会、そして幸作と正子ちゃんの寂しい別れ…。いろいろありましたねぇ。みんなしっかり自分を見つめることができるようになって、大人になったなぁというのが共通の感想でした。
○ ノブタは結局、家を離れることにしたんだね。でも「こんな家、嫌や!」というような具合で感情的になるだけだった昔と比べると、今度は家のことも、町代さんのことも、自分なりによく考えての判断。同じ結果でも、プロセスが全然違う。
● エリカ転落事件のとき、ノブタは直に「あの家を出ろよ」と言われていたんです。この一言をきっかけにいろいろと考えたのかもしれません。
○ その直はひかり高校定時制を受験して、無事合格。オランダには行かず、この街で生活を続けることに決めたと。これで生徒全員の進路が決まったわけだけれど…、でも金八先生は、これで一安心とはいかないんだよね。
● そうなんです。この後、ミッチーによる直襲撃計画、そして金八先生の異動問題というまた新たな騒動が持ち上がってくるんです。
○ どこまでも悪役のミッチーは、どうして直ばかりが3Bに歓迎されるんだと怒り心頭! ただそれにしても、パーティを開くと見せかけて直をおびき出して、そこで襲ってやろうとまで考えていたとはビックリだよ。
● 同感です。ミッチーはただふざけて女子の真似をしているのではなくて、それには深刻な理由があったわけなんですが、だからといってそれを馬鹿にした直をこれほどまでに憎み切っているとは思いもしませんでした。
○ でも、目論見が外れてどんどんどんどんパーティの参加者が増えていっちゃって、最終的に本当の仲直りパーティになっちゃうんだよね。これにはちょっと笑ってしまった。
● たしかに(笑)。まぁ直はミッチーと金八先生のやりとりを立ち聞きしていたんで、それでミッチーにかなり同情してパーティに積極的になったんだろうなというのがポイントとしてあると思いますけど。でも冷静にみると少々おマヌケな展開でしたよね。
○ 煮えたぎる憎悪の気持ちとは対照的に、ちっとも練られた計画じゃなかったというのが可笑しかった。3B生徒のほとんどは水面下でこんな計画が動いていることは知らないから、ミッチーが普通に改心して手打ちパーティを提案したんだと思って喜んで参加してくる。この微笑ましい雰囲気にすごくこう、ミッチー自身も救われた部分があるんじゃないのかな。
● 最後、美紀が一日だけボスらしさを復活させるような形で丸く収まったというのもよかったです。美紀はミッチーを顎で使っていたのをすごく反省した様子でしたが、ここではそれをプラスに転換して有意義なものにしたわけですよね。これで美紀の心も晴れたと思います。
○ ミッチーの方も、こう言っちゃなんだけど、やっぱりカバン持ちが性に合ってるようだったよね。安心した顔してた。
● そうですね。ミッチーは「切れたら何をするか分からない怖さ」がものをいってグループの二代目ボスの座にに収まったんだと思うんですけど、普段は特に親分肌ではないですもんね。背伸びをやめて、自分らしくなることが一番なんですよ。
○ しかし、こうやって見るとミッチーは、いろんな生徒の負の部分を併せ持った、気の毒なキャラクターだったんだなぁ…。
● …といいますと?
○ 男なのか女なのかというのは直の悩みと似ていたし、切れると何をするか分からないのは政則も抱えていた要素でしょ? それから、小学生の頃深刻なイジメを受けていたのは直美、誰にも心の闇に気づいてもらえなかったのは美由紀、派閥のボスになりたがるのは美紀…ね。
● ほほう…。あと生徒ではないんですが、直を襲おうと計画したというのは、政則の姉にそういうことをした少年グループのことがちょっと頭をよぎるようなところがありましたよね。
○ このシリーズで登場してきたいろいろな「暗」の部分の結晶、それがこのミッチーだったのかもと思うんだ。仮にそうだとするとね、そういうミッチーが一番最後にこうして3Bの仲間の環に入ったというのは、生徒が皆わだかまりが解けて一つになれたことの象徴なのかもしれないなぁと、そんな風に思うんだ。
● んー、なるほど。ミッチーとの和解は、ある意味このシリーズを総括するようなことだったのかもしれませんね。
○ 以前のシリーズで出た言葉で、絶対的な悪というものはない。いい人の心の中にも悪の部分はあるし、その逆もしかり…というようなものがあったじゃない。今回のはじめにも「突っ張っていないと自分がガタガタに崩れる気がした」と、外面と内面のギャップを示す政則の言葉があった。だから一見すると負の塊に見えるミッチーだって、勇気一つでいくらでも優しい人に変われて不思議じゃないんだよ。そのことを今回強く感じたなぁ。
● それと美紀のような、仲間の支えも大事ですね。ミッチーにも同情できる要素があったんだとこの回でよく分かりました。いま改めて第1話から見直してみると、また違った目でミッチーを見れそうな気がします。
○ さぁ! そして残るは金八vs千田校長の対決! 和田教育長に呼び出されて同席になった二人は、侃々諤々の議論をするんだよね。上の権力に向かってあれほどアツくなる金八先生は久しぶりに見たなぁ。
● 初期のシリーズを彷彿とさせるロック魂でしたよね。
○ でも二人の意見はどこまで行っても平行線。結局異動を受け入れることになって。
● 異動というのは公立の先生だと割とよくあることなんでしょうけど、金八先生にとってこの桜中は長年ずっと築き上げてきたものなので、ショックが大きいのも頷けます。
○ しかも、理想に燃えたことが原因で追放同然に去らなければならないという理不尽さね。さらには、次の職場は現場を離れて教育委員会だというじゃない。これは金八先生にとってものすごく辛いことだよな〜。
● 次回、最終回はこの問題をめぐって一波乱起きることがまず確実です。果たしてどんな結末を迎えるんでしょうか?!
 その他の小ネタ/周辺状況
◆ 定時制高校の入試を受けた直、後ろの席のおばさんに答案を見せてくれとせがまれ、見せてやる。そのおばさんとは早速友達になった模様。
◆ 本屋への出向期間を終え、遠藤先生が桜中学に復帰。自分の机のガラクタが捨てられてることに気づき動揺、しかしすぐ「復活!」と書いたプチのぼりを掲げてアピール。
◆ はじめに金八に言い渡された内示では、金八の異動先は荒谷二中になる予定だった。荒谷二中は校内暴力の激しい近隣校として初期シリーズから名前が出ている学校で、第2シリーズ「卒業式前の暴力」で加藤優が乗り込んだことでも有名。
◆ 以前兄の命令で引ったくりをしていた今井儀、被害者だったケアセンターの木村さんに誠心誠意謝罪し、許しを得る。こちらも無事解決。
◆ 退院する幸作は、車椅子バレエのプリマを正子ちゃんに、バレリーナをあしらった可愛らしいオルゴールをプレゼント。またこの時、仲間を代表してヒノケイが手伝いに来ていた。
◆ 小田切先生、愛車のオートバイを遠藤先生に実験台にさせられそうになった場面でオートバイを「ステディ」と呼び、並々ならぬ愛を語る。
◆ 校長から金八異動の件をただ一人聞かされた北先生は坂本家を訪ね、自分が情けないと言って頭を下げる。立場があるため、他の先生方と一緒に異動に反対することができないのだ。金八はあくまで北を責めることはせず、あとをよろしくと頼んで酒を酌み交わす。
◆ 金八先生、この回では漢字の解説を連発。「親切は親を切ると書く」、「悲しいと哀しいの違い」、「寂しいと淋しいの違い」、「息子は自分の心の子」など。
 参考文献/挿入歌/BGM
◇ 【書籍】 教育は死なず (若林繁太著、労働旬報社)
◇ 【書籍】 森をつくった校長 (山之内義一郎著、春秋社)
◇ 【書籍】 小倉百人一首
◇ 【民謡】 佐渡おけさ
◇ 【資料】 毎日新聞『記者の目』大津支局 宇城昇(平成13年7月5日)
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