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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第6シリーズ23話 卒業スペシャル 「サヨナラ3Bサヨナラ桜中学」

卒業式が間近に迫った。金八(武田鉄矢)は成迫政則(東新良和)を連れ服役中の成迫先生(佐戸井けん太)と面会し、出版社と裁判で争う決意をしたこと、そして桜中学を無事卒業できることを報告する。大掃除が済んだ3Bでは、がらんとした教室で最後の授業が行われ、別れの実感がこもった金八の言葉に皆しんみりとなる。

学校から帰宅した鶴本直(上戸彩)は、母の口から金八が異動することを聞かされ驚く。知り合いの荒谷二中教師がそう言ったというのだ。直はその原因が自分にあることを直感する。

卒業式当日。スーツ姿で出席した直が卒業証書を授与される番になると、千田校長(木場勝己)は制服の着用を要求。一旦は反抗心から壇を降りかけた直だったが、クラスメイトの「一緒に卒業する約束だろ」の声に思い直し、頭を下げて証書を受け取る。ところが事は収まらず、校長は祝辞の中で校則違反をなじり次年度以降の管理強化を宣言、直は答辞の最中に「坂本先生をなぜ追放されるのですか」と口にする事態に。寝耳に水の知らせに現場は騒然となり、卒業式は中断されてしまう。

生徒たちが教室に戻された頃、会議室では服部先生(上條恒彦)ら駆けつけたかつての同僚や兼末健次郎(風間俊介)ら教え子を交え、教師と保護者が校長の横暴に猛抗議を浴びせていた。信念を曲げない校長との話し合いは平行線を辿るが、遅れて到着した和田教育長(長谷川哲夫)が金八を教育委員会に配置することで幅広く活躍させたいという大きな意図を語り、金八本人も勉強を深めるため最後は自分で決めたのだと説明すると、周りも理解。ショックを受けた3Bも健次郎らの檄で顔を上げ、卒業式は再開される。

数日後、笑顔と涙に包まれたお別れ会を終え、生徒を送り出した金八は、荷物をまとめて静かに桜中を去る。正門を出たところで校長とも握手を交わし、荒川の土手に差し掛かると、3B全員のソーラン節が。最後まで見届けた金八は背中を見せて立ち去ろうとするが、「先生!」の声が聞こえると立ち止まって振り返り、生徒のもとへ駆け寄っていくのだった。

02年3月28日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 福澤克雄

視聴率: 20.1%

DVD: 第9巻

小説本: 第22集

参考文献・挿入歌

みどころ談義

● とうとう最終回がやってきましたねー。この二時間半の卒業スペシャルをもって、第6シリーズもお終いです。
前作とは違って、3B30人全員が顔を揃えた卒業式。直が卒業証書をしっかりと受け取って、学ラン姿になれたことがクラスの成長の証しだよね。ただ、やっぱりそれだけで終わる卒業式ではなかった。
● はい。ここまで唯一未解決の、千田校長との対決が残ってました。直がスーツ姿で出席してきたことでまず火花が飛び散って、答辞での金八異動発言で会場が大混乱と。卒業式が途中で中断したのは初めてのケースかな?
○ 金八先生自身はね、もう心の整理がついた様子だったんだけれど、直が自分の経験を反映してか「追放」「排除」と解釈したもんだから、金八先生の気持ちとは別に、異動が「事件」になっちゃったという。まぁ、実質追放で間違いないんだけれど。
● 校長も式の最初から敵意丸出しなんですもん、あれじゃ波風立たない方がおかしいですよ(笑)。でもそのおかげで、同僚の先生方や地域、健次郎たち教え子といった周りの人たちの応援がすごく感じられて、金八先生の蒔いてきた種が時間を掛けて花開いていることがよくわかりました。
○ ただ、だからといって校長が悪者で、金八が正しいという薄っぺらい結論にはならなかったじゃない。そこがよかったんじゃないかな。最終的には、人間を造るんだという考え方も、成績至上主義も、よりよい人材を育成したいという同じ出発点からスタートしているわけだから共存できるんじゃないかということになって。落としどころとしてはすごく納得できたなぁ。
前回「あなたは通信簿の5を作って下さい。私は人間を作ります!」と金八先生が熱く宣言していた部分ですよね。校長は徹底的に憎たらしく描かれてましたけど、和田教育長はそのいい部分も把握していて。校長のスタイルもあり方の一つなんですね。3Bでも、「30人に30通りの意見があるからこそ、30/30=1になるんだ」なんて話が20話であったじゃないですか。それと同じことなんだと思います。
○ そうそう。今まで全体を通してさんざん主張してきた「異質なものとも分かり合おうとしようよ」ということが、この最終局面、校長や教育委員会との関係の中でも話し合いという形で見られたということで、決して教室の中だけの空論なんかじゃないんだぞという何よりの説得力になるじゃない。だから本当に辻褄の合ったいい結末だったと言えると思うよ。
● 北先生と金八先生の酌み交わしとか、最後の校長先生との握手なんかも、二つの立場がいがみ合ったまま終わるんじゃなくて、一筋の光というか。希望の余地があるシーンで終わってよかったです。
○ …さて、このシリーズ、直と政則を中心とする物語を振り返ってみてどうだった?
● うーん。最初はあまり馴染まない設定かなと感じて面食らった部分が正直ありましたけどね。でも物語が進むにつれてやっぱり引き込まれて、こんなテーマもありなんだなと思えるようになりました。幸作の行方もすごく気になりましたね。
○ マイノリティの方々への意識、子を思う親の気持ち…。こういう内容を通して、すぐ隣にいる人に対して思いやりを持てるような意識付けをしてもらえた気がするな。毎週が本当に楽しみだった。ただね、一つほんのちょっとだけ批判めいたことを言わせてもらうと、バランスかなぁ。
● バランス?
○ クラスで起きる事件全てに現代の社会問題が透けて見えるような印象があったじゃない。そのあたりどう感じた? 中学生の抱える悩みって、決してそれだけじゃないよね。
● 社会問題抜きで、日常の出来事から中学生らしさが垣間見えるようなエピソードももっと盛り込んで欲しかったと、そういうわけですね。
○ たとえば、高校入試の最終決戦なんて受験生にとって一番のイベントだと思うんだけれど、軽く流されちゃって残念だったなぁ。あれだけスランプに陥っていた賢がいつの間にか合格していたのは、「そこを省くのかよ」と思わずTVに向かって突っ込んじゃったくらいだし(笑)。
● それはあるなぁ。次回作がもしあるとしたら、そのあたりも楽しみに待ちたいですね!

鶴本直 答辞全文

 (※スーツ姿を校長に咎められ、政則から学ランを借りて壇上へ。答辞の封筒はジャケットにあったため、直は原稿なしで語りはじめる。)

この良き日、校長先生をはじめ、御来賓の皆様より数々のご祝辞を賜りまして、ありがとうございました。校長先生と同じく三年生の半ばで転校してきた私が、卒業生を代表し栄誉ある答辞の大任をいただきましたのは、担任である坂本先生をはじめ、3年A組C組、いや、一年生二年生をはじめ、全学級にセクシャル・マイノリティの特別授業を実施してくださった諸先生方のお励ましであり、ありがたくお受けいたしました。

この良き日に伝統ある制服を着用しなかったことは、改めてお詫び申し上げます。けれど、私が性同一性障害であることは、諸先生方に取り組んでいただいたおかげで、皆様に理解していただいたところであります。したがって、今朝まで制服について悩みました。私は男子です。それを認めてくれた多くの友の前でスカートを穿いてくることは、自分を偽ることになります。未だ生物学的には女子ですが、今、この制服を着れてとても幸せです。私がこの桜中学に転校し、今卒業していくことを、心から感謝し、幸せに思っております。

…だからこそ、校長先生にお答えいただきたい。私と同じように中学を転校ばかりさせられていた成迫政則君の名誉を回復し、3B仲間を一つにしっかりと結んでくれた教師であり、僕の人生の指導者である、坂本先生をなぜ本校から追放されるのですか! なぜ排除するのですか! (ここで生徒の方へ振り向いて)坂本先生は、新学期から荒谷二中へ異動させられるんだ。

 (※ここで会場大混乱、式は中断。話し合いが持たれたのち再開。)

まずはじめに、大事な式典を混乱させたことをお詫びします。申し訳ありませんでした。けれど、教育長さんをはじめ、諸先生方、先輩卒業生、地域の皆さんのおかげで、坂本先生の本当の気持ちを知ることが出来ました。ありがとうございました。

しかし、4月から坂本先生の姿は、桜中学にはありません。けれど、毎日の学習の中で、身近にいらっしゃると感じられると思います。それは乾先生をはじめ諸先生方が、君たちを守り育てるということに同じ考えでいらっしゃるからです。この素晴らしい先生方を信じてください。

私が桜中学の卒業生になれたこと、先生方のおかげであります。私たちは先生方に、生命の不思議さ、複雑さを学びました。自分の命も、他者の命も、大切にいとおしむこと。それが愛であることを教わりました。卒業生一同、このことを胸に刻み、今日この桜中学を巣立っていきます。僕自身、マイノリティであることを堂々と受け入れて、生きていくことを誓います。

みんな、こんな僕を受け入れてくれた3年B組のみんな、みんなは僕に、生きていく力と生きていく希望を与えてくれた。勇気を与えてくれた。そして、友情をくれた。みんな、ありがとう。

坂本先生、僕を救ってくれて、ありがとうございました。僕はこの学校に転校し、本当によかったです。在校生の皆さん、この素晴らしい桜中学を、感謝と誇りを持って、君たちに託します。ありがとう。

卒業生、起立してください。お世話になった先生方に、ありがとうございました。ケアセンターの皆さん、お父様方、お母様方、ありがとうございました。

卒業生代表 3年B組 鶴本直

金八先生から3Bへ「贈る言葉」

ではここで、君たちから預かっていたものを返したいと思います。

覚えてますか。1月15日の立志式。ここには君たちの志があります。あれから3ヶ月。いろんなことがありましたが、どうか15歳の志をこれからも忘れないでください。それでは、お返しします。しっかり握り締めて、旅立ってください。

   ◆◇◆

青沼美保(本仮屋ユイカ)
「初志貫徹」。美保、涼しい声をした美保。もし友達の誰かが夢を諦めそうになったら、ぜひ君の声で「初志貫徹」と、こう励ましてやってください。
赤嶺繭子(佐藤めぐみ)
「Take it easy」。気楽にいこう。長〜い長い旅をする旅人は、案外気楽な顔をしています。肩に力を入れない旅人が、遠く遠くへ行けるんです。どうか、遥か遥かを目指してください。
今井儀(斉藤祥太)
「麻薬ボクメツ」。その通りだよ! 麻薬なんかに若い奴が頼ってどうすんだ!儀。兄ちゃんがもしガタガタ言ったら、儀、言ってやれ兄ちゃんに。俺は「正しい」って。
江藤直美(鈴田林沙)
「希望の日」。希望とは、暗闇の中で見つけた光のことです。星のように輝いて、寂しい人の目印になってあげてください。
笠井美由紀(高松いく)
「死んでもいい」。でも、命はどうか大切にしてください。面白いねぇ。「大切」という漢字は大きく切ると書きます。真っ二つにされる覚悟があればこそ、その人のことを大切に出来るんだよね。
風見陽子(中分舞)
「唯我独尊」。ブッダの言葉です。私の命は尊い。そのことが分かるからこそ、あなたの命も尊いということが分かるんですね。ぜひ人にも教えてあげてくださいね。
嘉代正臣・カッシー(佐々木和徳)
「愛は世界を救う」。まず世界を救うだけの愛を、自分の中で育ててくださいね。簡単だ。一人の人を真剣に愛すれば、その愛で世界は救えます。仲良くやれよ。
北村充宏・ミッチー(川嶋義一)
「俺は男だ」。君は男です! でも君はその前に、とってもいい奴です。私ははじめっから君のことをいい奴だと、知っていました。
木村美紀(森田このみ)
「明日は明日の風が吹く」。「風とともに去りぬ」のスカーレット・オハラの言葉です。苦難に打ちのめされたスカーレット・オハラは、それでも泣きながら微笑んで、この言葉を呟いたんです。スカーレットのようになりなさい。
小堀健介・コボ(佐藤貴広)
「有言実行」。コボはまだ、声だけが少年の声です。でも青年になって声変わりをしたら、もう一度この言葉を呟いてください。頑張れ、学級委員。
近藤悦史・主任(杉田光)
「科学こそ万物の進歩だ」。確かにその通りです。しかし20世紀、科学ほど人を苦しめたものはありません。どうか君はこれから、人を幸せにする科学をつくってください。
笹岡あかね(平愛梨)
「暴力反対」。あかねは笑顔がいい。だから、ゲンコを振り回す馬鹿者がいたら、ぜひ笑顔で「暴力反対」って教えてあげてくださいね。あなたの笑顔はゲンコツを握手に変える、不思議な力があります。笑え、ほら、笑え。
下田江里子(須尭麻衣)
「幸せな結婚」。大好きな人と出会って結ばれて小っちゃな家庭を築く。それはね、簡単なことだけども、でも、イチバ〜ンすごいことなんです。イチバ〜ンすごいことに、挑んでください。
榛葉里佳・シンバ(住吉玲奈)
「口は災いの元」。でも君はちゃんと知ってるよね。口を人の悪口のために使うと災いのもとになりますが、その口でいっつもニコニコ笑っていると、幸せを呼び込むもとになります。上手に賢く笑う人になってください。
菅俊大・スガッチ(途中慎吾)
「当たって砕けろ」。男だったらガーンとやんなきゃ、思い切ってなぁ。でも、スガッチは太鼓が好きだから分かるでしょう、バチも太鼓も、当たっても当たっても砕けないからいい音がするんだよな。頑張れ。
鶴本直(上戸彩)
「自分になる」。自分になることの厳しさ、自分を目指すことの険しさ。君はそのことを私に教えてくれました。どうか美しい青年になってください。
長澤一寿(増田貴久)
「ツールドフランス制覇」。いいぞ! お前だったらどんな坂道でもペダル漕げる。俺はな、自転車漕いでるお前の後姿が、一番好きだったんだ。しっかりペダル漕げ! 一寿。
成迫政則(東新良和)
「自立」。政則、君はもう自立した。君は自分で立ち上がった。背中にはいっぱい重たいものを背負っておりますが、君は立ち上がれました。歩けないはずがない。こっから、頑張って歩いてゆけ!
信太宏文・ノブタ(辻本祐樹)
「お笑い芸人一等賞」。何をおっしゃいますやらノブタ。悲しい人の気持ちがすぐ分かる君は、必ず一等賞になれますよ。涙のあと、笑顔がよ〜く似合う男になってください。
長谷川賢(加藤成亮)
(泣きすぎて)バ〜カお前、二枚目が台無しじゃねぇか。「上を向いて歩こう」。その通りだハセケン。辛いことがあったら青空を見上げて、瞳の中にいつも天の青、青空の青、その青で瞳を染める人になってください。
長谷川奈美(中村友美)
「ダンスわが命」。しっかり踊れ! 先生はね、踊ってる娘が大好きです。でも、舞踏会で踊るシンデレラよりも、豊作を願って懸命に踊る、娘の踊りが大好きです。
馬場恭子・かあさん(金沢美波)
「一日一膳」。な〜にを言っとんだ! ちゃんと一日三回ご飯食べましょうよ。かあさん、どうかタンポポのような人になってください。あなたは白よりも黄色が似合います。いいお母さんになれ!
星野雪絵(花田亜由美)
雪絵ちゃ〜ん。「欲張って生きる」。その通りだ雪絵ちゃん。「私なんか」なんて言わないで、「私だから」と大きくいっぱい手を広げて生きていこうね。歩いていこうね雪絵ちゃん。
本田奈津美(谷口響子)
「相思相愛」。君にピッタリの言葉です。奈津美はおっきいお目々をしています。「相思相愛」にも、おっきなお目々が二つあります。素敵な恋をしてくださいね。
前多平八郎(田中琢磨)
「メロスは走るぞ」。約束を守るために走る人こそ美しい。友情を守るメロスになってください。
森田香織(松本真衣香)
(返事の声が裏返って)なんだ変な声出して香織〜。「同じアホなら踊らにゃソンソン」。昔から伝わる郷土の踊りを踊れるということはね、すごい教養を持っているということと同じなんです。お母さんになって子供が生まれたら、同じ踊りを君が教えるんですよ。
安原弘城(竹沢正希)
なんだ弘城〜。笑えよお前笑顔がいいのに。笑え、ほら笑え。君の志は「一生懸命」。先生はね、君の笑顔に何度も救われたんですよ。なんで弘城、君の笑顔が素敵か分かるか? それはね、君の笑顔が一生懸命だからです。
山越崇行・チュー(中尾明慶)
「ノッポになる」。ノッポになれ。でっかくなれよ、チュー。お前絶対でっかくなる。ただね、先生がイチバ〜ンでっかくなってほしいのは、心でっかちになってほしいの。優しさノッポになってください、チュー。
山田哲郎(太田佑一)
君の志は「はイ」。その人と同じ意見のときは、てっちゃん大きく手を上げて「はい!」って賛成すんだよな。友達から名前呼ばれたら「はい!」って返事するんだよな。そう、てっちゃん。君が大きな声で返事してれば、素晴らしい友達が何人も集まってきます。
山本健富(高橋竜大)
君の志は「怪物を愛そう」。バカだなあ健富。お前は愛されてるんだぞ。お前は自分の才能に気がついてないだろう。健富には愛嬌がある。すっごい才能なんだぞ。頑張れよ。

   ◆◇◆

はい、聞いてください。今、君たちに拍手を私がしていますが、拍手をしているのは私一人ではありません。この3年B組には150人の先輩がいます。その150人の先輩が、今、街のどこかで君たちに拍手しています。「今度の3Bは本当に頑張った」って。3年B組のこの教室の先輩たちが、いま君たちに一生懸命拍手を送っています。私はね、それが嬉しくてなりません。先輩たちも一つだけ君たちに聞きたいそうです。「3年B組は楽しかったですか?」私も、とっても楽しかった。あなた方と出会えて、また心がきれいになりました。ありがとう。

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