金八先生マニアックス 「金八先生マニアックス」は、TBSドラマ「3年B組金八先生」を勝手に深読みし分析するサイトです。リンクはご自由に。

ホーム放送年表/鑑賞ガイド > 第7シリーズ8話

3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 8話 「しゅうの愛する父」

ヤヨ(岩田さゆり)がトーチランに参加する日がやって来た。沿道で大勢の人々が見守る中、ヤヨとクラスの仲間たちはランナーとしての役割を果たし無事にリレーする。しかしその様子をヤクザの河合(甲本雅裕)と下部(畠中正文)が見ていた。トーチランを終えさくら食堂に集まる生徒たちの前に現れ「丸山という2年生を探している」と脅し暴れると、シマケン(筒井万央)がつい「3年の丸山ならいます」と答えてしまう。

一方、丸山しゅう(八乙女光)はトーチランには参加せず、不登校になった小塚崇史(鮎川太陽)を学校に出てくるよう励ましていた。だがその帰り道、しゅうはついにヤクザに捕まり拉致されてしまう。父の居所を言おうとしないしゅうは激しい暴行を受け、駆けつけた狩野伸太郎(濱田岳)や夜回り隊に助けられ安井病院に収容される。院長(柴俊夫)の話では、しゅうには以前からの虐待の痕も見られるという。

金八(武田鉄矢)はしゅうを家まで送り、おぶって二階の部屋へと上がる。壁に刻まれた無数のキズや、多くを語ろうとしないしゅうの様子を見た金八は、「いつかでいいから、君の胸の奥につっかえているものを私に吐き出してくれないかな」と優しく伝え、家をあとにする。そのとき奥の部屋から誰かが咳をする声を聞くのだった。

翌日、欠席したしゅうの話題に触れず授業に入ろうとした金八に、伸太郎が猛抗議。「何でしゅうがボコボコにされたか教えてくれ」と主張すると、久しぶりに登校してきた崇史が「人には知られたくないプライバシーがある」と反論する。クラスメイトを心配するそんな2人を、またトーチランに参加してくれたクラスの皆を、金八は「君たちは成長したね」と誉めた。

そのころ、しゅうは寝たきりになった父・栄輔(うじきつよし)に「どんなことがあっても父さんを守る」と誓っていた。

04年12月3日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 福澤克雄

視聴率: 12.3%

DVD: 第4巻

 みどころ&勝手な解説
● 明日はトーチランだ!と盛り上がる3B、というところから始まります。
○ 崇史が不登校になってしまって、心配する生徒もいるんだけれど、いつの間にか恋愛やトーチランの話にすり替わって、ワイワイ盛り上がるんだよね。
● しゅうだけはやはり心配していて、放課後、自宅のトラックの上に呼んで語らうんです。友情のタコヤキを食べながら。
○ 崇史の父は毎晩酔って帰宅、しゅうの父はクスリに侵されている、ということをお互い打ち明けたところがポイントだよね。しゅうは父とドラッグの関連を初めて他人に伝えた。お前も俺も自分が悪いことをしたんじゃない、だから堂々と学校に出て来い、と言う。
● 心配して尋ねてきた金八先生の様子を見たしゅうの表情、良かったですもんね。とても穏やかで。
○ しかししゅうの場合は、ヤクザに追われているという点で崇史とは決定的に違うから、100%堂々とはできない。それで結局、崇史が学校に戻ると決意したときには、しゅうは叩きのめされていてそこにはいない。
● トーチランがきっかけで捕まるんですよね…。トーチランはもっと大きく扱われるのかとも思ったんですが、それ自体は案外あっさりでしたね。まぁそれはいいとして、ヤクザの河合! 良くも悪くも、非常に印象に残りました。金八先生とは思えない本格バイオレンス。
○ 全面的に狂気!という人だった。しゅうの父が一億円相当のドラッグを持ち逃げして、それを探せと上から言われている。早く捕まえろと脅迫もされていて、それがああいう凄惨な暴力シーンになった…。
● 公式BBSにも「やりすぎじゃないか」と過剰な演出に疑問の声が届くほど、衝撃的なシーンだったようです。
○ うーん、ああいう人は普通カタギの人には暴力を振るわないものだし、疑問を感じる気持ちは分かる。だけどまぁ、作り手さんがそういう演出を意図したのだから仕方ないよね。街のチンピラではなくてヤクザという設定なんだし、アンタッチャブル性を強調したかったんだと納得しよう。
● だから警察への通報なども描かれなかったと。
○ まぁ暴力は決して主題じゃないから。「どうだこの暴力シーンは! スゴイだろ!」と見世物にしているワケではないので、目をつぶっていいところなのかな、と思うんだけれどなぁ。
● んー…。
○ まぁ、診断結果が外傷だけで骨折なし、ということならあそこまで強烈な画にしなくても、という気もするけどね。
● 疑問を持っていぶかしがるのもいいですが、良い点にも目を向けよう、ということですか。
○ そうだね。納得できない、と腹を立てても何も始まらないから。この場面では「あっ、車掌が拡声器を有効に使ってる!」とか、どうせ気づくならそういう部分に着目した方が面白かったと思うし。他にはどう? グッと引き込まれたシーン、いくつもあったでしょ?
● そりゃもちろん! 伸太郎ですよ伸太郎。しゅうが連れ去られた後の正義に燃える表情。「車掌、しゅうを助けに行くぞ!」にシビレましたね。「エロ本を棚に戻すように」と小ネタを忘れないところもよかったです。遠目からパッと見でエロ本だと認識するところもスゴイ(笑)。
○ しゅうのMTBに対して、伸太郎はママチャリだったという小ネタもあったよ。…それはともかく素晴らしい勇気だったねぇ。ソーラン節でセンターの大役を務めた経験がこの勇気を後押しした、と考えるのも面白い。おちゃらけるだけだった伸太郎が、本気で怒られて、いきがって反抗してみたけれど、本番では足が震え…、でもそれを乗り越えて、感動を覚えて、強くなって…っていう成長。この後の血だらけのしゅうを見て涙をためるところ、抱きかかえて声を掛けるところも本当によかった。
● やっぱり根は優しいんですよね、伸太郎。最後の教室シーンでも金八先生に「良い奴だな」と言われて必死に涙を我慢していたじゃないですか。グッときましたねぇ。…おや? そういえば、今回はここまで金八先生自身の話題がほとんどないですよ。
○ 先生はもう押しつけがましさが薄れて、後ろから見守る存在になってきているから。
● 浩美からの電話をむげに切ったシーンなんて、とても「見守る」とは言えないような。異変には気づいて欲しかった…。
○ あれはその直前のシーンでビールを飲んでいるからだよ。金八もほろ酔い気分になりたい時があるのッ。その代わり(と言ってはなんだけど)しゅうには気遣って優しくしてやっているんだから、許してあげてよ。
● んー、まぁそうですね。金八先生がしゅうの家に入ると、なんとなく空気が変わった印象がありました。おんぶしてあげるんですよね、二階へ。金八先生が生徒をおんぶするのは兼末健次郎以来かな。二人とも家庭に問題があって親の愛情が薄いという共通点がありますね。
○ 健次郎は家庭の辛さを同級生にぶつけていたんだけれど、しゅうは泣いている他人に優しくしようと思っている。偉いよね。そういう思いやりがある。あれだけの暴行を受けながらついに父親の居所を黙り通したんだから。「どんなことがあっても父さんを守る。」泣けるねぇ、強いねぇ。
● 以前「僕が殺す」と言っていたのも、「僕が守る」が強すぎるあまりに出た言葉だったんでしょうね。優しい子ですよ。
○ だから虐待の痕についても言いたがらない。病人など本当にいるわけじゃなく家に帰るための方便だ、と言ったところもそう。金八もまた、そんなしゅうの嘘に気づきつつも「何も考えず眠りなさい」とだけ声を掛けるんだ。
● クゥ〜ッ。それぞれに思いやりがあるんですよね。じゃあ、翌日に金八先生がしゅうのことについて何も触れずに授業に入ろうとしたのも、対処の仕方がわからないから逃げたということではなく思いやりなんでしょうか。舞子は泣いていましたが。
○ そう思うなぁ。
● 本当のことを言って欲しいと詰め寄られた金八先生が「成長したなあ」と答えたのも、体の良いゴマカシではないと。
○ いやいや。あの場面、「本当のことを言え」の答えは「しゅうを待とう」だよ。金八がしゅうにアザのことを聞いたとき、話したがらないしゅうを見て、金八は「いつかでいいから吐き出してくれないか」と言った。それを踏まえた答えなんだよ。
● なるほど…。でも教材の「そのうち そのうち べんかいしながら 日がくれる」を突っ込まれたのは痛かったですね。
○ しゅうの問題は金八の請け負える範囲に収まらないほど底が深い、ということを表したのかな。
● このシーンでは直明が突っ込んでシマケンが乗ってきて、弁解する金八に伸太郎が怒って、反論しようとする崇史を玲子がたしなめる…となかなか興味深いやり取りがありました。崇史と玲子は立場逆転。
○ ここで崇史が「学校にまた来れたのはしゅうのおかげ」と言って、しゅうの優しさをみんなが知ることになる。そして金八先生はしゅう、崇史、伸太郎を「良い奴だな」「ありがとうな」と言う。今回は「ありがとう」がキーワードだったよね。印象的な場面が他にも2度あったんだけど、覚えてる?
● えーと…。
○ まず、河原で崇史が、学校に来いとずっと励ましてくれたしゅうに対して「ありがとう」。ボコボコにされたしゅうが、駆けつけて抱きかかえてくれた伸太郎に対して「ありがとう」。
● 優しさの連鎖…。
○ 冒頭では欠席した崇史をさほど気に留めなかったクラスが、トーチランを経てしゅうのことを思えるようになった。
● 金八先生の「君たちは成長しました」という言葉は、決して嘘ではなかったんだ。
 小ネタ拾い読み
◇タイトルバックなし。その代わり、主題歌の「初恋のいた場所」はトーチランのシーンからフルコーラスで流れた。
◇第2シリーズ卒業生の迫田(現姓・渡辺)八重子が協議会のシーンに、平尾久之と羽沢康男が夜回り隊としてそれぞれ登場。八重子はマドンナ的存在、久之は嫌味ったらしいガリベン、康男は学級委員だった。
◇髪を切った浩美。誰かに似てるなぁ…と思ったら、「21世紀の石原裕次郎」の徳重聡だ!
◇前回の予告にあった「国井先生のヒステリーシーン」はカットされた模様。
◇孝太郎はまだゲームをしていた。ゲーム=クスリ中毒の象徴とすると、まだ収まっていないということか。
 過去の金八シリーズでは
■おんぶ
…第5シリーズ20話。謝って母親を刺してしまい水門にこもった兼末健次郎が警察へ出頭することを決意し、金八が健次郎をおぶって階段を下りていったシーンがあった。
■ヤクザ
…スペシャル2「入れ墨をした教え子」で、卒業生の岩沼幸一郎がヤクザになっていた。金八は事務所に乗り込みボコボコにされながらも岩沼を奪還。ちなみに金八の長男・幸作の名前はこの岩沼の名前から一字もらったもの。
■便所掃除
…夜回り隊の第2シリーズ卒業生・久之と康男が言った台詞「便所掃除ナツカシ〜!」。最近のファンには何のことやら分からないと思うが、11話「クソまみれの英雄達」で金八らとともに詰まったトイレを開通させた経験があったのだ。

7話≪ - 放送年表 - ≫9話

金八先生マニアックス