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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 9話 「しゅうの母の秘密」

引き続き学校を欠席している丸山しゅう(八乙女光)。心配する小塚崇史(鮎川太陽)は「連絡してほしい」とメールを送るが、返信はない。狩野伸太郎(濱田岳)や車掌(府金重哉)はすっかり元気を無くし、B組は暗い雰囲気に。

稲葉舞子(黒川智花)は金八(武田鉄矢)にしゅうの家庭の事情を説明し、現在の住所を尋ねるが、金八は「待つしかない」と言う。舞子は「ひとつお願いを聞いてもらってもいいですか」と、しゅうにある物を届けてくれるよう金八に頼む。

金八は、三者面談が終わった後にしゅうの家を訪問。母・光代(萩尾みどり)に以前会ったこと、しゅうが虐待を受けている可能性があることを伝えつつ、届け物をしゅうに渡すよう頼む。それは「文化祭敢闘賞記念」とタイトルのついた一冊のノートだった。しゅうがページをめくると、そこにはクラスメイト全員からの励ましのメッセージが書かれていた。

翌朝、崇史のもとに「ノート見た。ありがとう。」というしゅうからの返信が届いていた。崇史とともに登校したしゅうはクラスメイトに「心配掛けてごめん。寄せ書きありがとう。」と感謝の気持ちを伝え、救ってくれた伸太郎と車掌に深々と頭を下げる。伸太郎と車掌がいつものペースを取り戻すと、B組に明るさが戻るのだった。

04年12月10日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 三城真一

視聴率: 10.9%

DVD: 第4巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● 今回は珍しくハッピーエンド。中でもやはり「寄せ書き」に心打たれました。めいめいにあたたかい言葉をかけてやって。金八先生に「待つしかない」と言われた舞子が考えた、思いやり溢れる計らいですよね。
○ ホントに全員が心を込めたメッセージを贈れるの? そんなにまとまりのあるクラスだった? なんて穿ちたくなる気持ちもあったんだけれど、よく見るとノートの表紙に「文化祭敢闘賞記念」の文字があってね。あの団結したソーラン節を持ち出されるとダメだわ。
● しゅうにしても、重要な役を任されてみんなと一つになれた、かけがえのない思い出です。どんなに励まされたことか。
○ その励ましがね、しゅうの背後にある強大な事情を考えると、ときに重荷にもなりそうなんだけれど、崇史のメッセージにあった「でも、無理はするなよ」の一言。これで、あぁ、本当に分かってくれているんだ…という気にしゅうはなったんだよね。
● それで学校に戻って来れたと。しゅうが全く引きずる様子なく、あまりにも素直に挨拶をするものだから3Bの面々はどう対応していいか分からないような空気に一瞬なって…
○ そこで直明率いる3B'sが、ピースサインでイェーイ!という無理矢理な盛り上がり。優しいよね。好きなシーンだなぁ。
● あの場面では画面の端っこの方で、ヤヨもちょっと遅れてピースしているんですよ。可愛らしかったです(笑)。
○ 次いで舞子が声を掛けに行って、しゅうは笑顔になりかけるんだけれど…ノートは舞子が直接手渡したわけではないから、舞子の優しさはイマイチ伝わっていないのかな。伸太郎と車掌にもお礼を言わなきゃ、と思って、伸太郎の席まで行って深々とおじぎ。
● 伸太郎はコンタクトしていないと思うんですが、「ズレた」なんて言って教室を出て行って。車掌は今回ここで初メガホンですよ。「涙は心の汗」って。中村雅俊の「われら青春!」からの引用なんですが、車掌はドラママニアなんでしょうかね(笑)。まぁこれで二人は吹っ切れて、3Bみんなも笑顔を取り戻すんです。
○ この二人がヘコんでいると、本当にクラス全体が沈んでしまうんだもんなぁ。
● 伸太郎が虚ろに外を眺めながら窓拭きに身が入っていない掃除の場面なんて、あぁ、声掛けづらいなこれじゃ、なんて思ってしまいましたよ。こちらは視聴者なのに。もしかしたら伸太郎はしゅうが来ないかと正門の方を見てたのかもしれません。
○ 自習時間もそうだったよね。いつもは自習といったら大騒ぎと相場は決まっているのに(笑)、シルビアもビックリするくらいにシーンと静まり返るんだから。
● あのシルビア先生は英語の先生でありながらセネガル出身で「マドモアゼル」と言われたり、かと思えば3B'sにサンバを踊らせたり、日本語も流暢で、わりと国籍無視。
○ 国際経験が豊富なんだよ、きっと。フローラン・ダバディさんのような感じで(笑)。
● あの自習時間のうちにしゅうの励ましノートが回って、みんなが寄せ書きを書いたんですね。舞子が金八先生に相談した時、「この自習時間を使って書くので、三者面談が終わったら、先生、しゅうの家に…」というやり取りがあったんでしょう。
○ あの相談シーンでは見逃してはいけない重要な新情報があったよね。しゅうの母親は昔は優しくて自慢の母だった。父親の事故、倒産があってから変わった、ということ。今回のサブタイトル「しゅうの母の秘密」というのはこのことだよね。血の繋がっていない後妻だからしゅうに冷たくしてるのではなかったんだよ。
● そういえば、いつもは暴力の対象であるしゅうに、今回は食事を作って持っていってましたもんね。三者面談で真佐人が母親に「この子がいなければ私も向こうに…」と何気なくスゴイことを言われていたのを見て、てっきり「しゅうと同じ境遇だ…」などと思ったんですが、確かに違うのかも。そういう意味ではしゅう母にも救いはありますね。
○ 後半の方で、金八が訪ねてきて虐待のことを聞かれて、その母親が「あんた、何も言ってないわよね?」としゅうを疑う場面があったでしょ。あそこでしゅうがまた殴られるのかと思ったらそうではなかった。他人にボコボコにされて帰ってきたしゅうを見て、何か思うところがあったのかもしれないよね。
● 他、今回は民間校長候補の板橋さんが初登場。親と地域も一緒にみんなで教育していこう、という和田教育長の話に理解ある様子でしたよ。
○ 民間校長候補は男性でもよかったはずで、わざわざ女性に設定してあるということは君塚校長タイプかな? と思ったらやっぱり出てきたね、君塚元校長。
● もうすっかりお婆ちゃんで、ケアセンターに通されちゃって。勘違いして案内した3Bの生徒が国井先生に怒られていました。
○ 朝の散歩中にセンターの英子さん(カンカンの奥さん)と遭って、その流れで遊びに来ていた花子先生がちょうどそこにいたんだよね。怒られる生徒を見て「私が担任だから」というつもりで謝りに飛び出たんだけれど、もう担任は金八に取って代わられていて、所在無さげ。
● 絶対、今後花子先生絡みの事件が起きる前フリだと思います!
○ そうだね。小林先生が金八の家でクダを巻くシーンも唐突にあったから。「居場所がないじゃないの!」と不安定になる花子先生の様子が目に見えるよう。
● その君塚元校長と新校長候補の板橋さんが参観する中、ひさしぶりの30人の授業が行われました。額田王の句を「現代にも通ずる部分があるから優れているんだ」と誉めるところから始まったこの授業、よかったですよねぇ。
○ このところ放課後、外でばかり活躍していた金八先生だけれど、授業でも力があることを証明してくれて嬉しかった(笑)。いわゆる受験に直結する授業ではなかった。でも生徒の興味を一気に惹きつけたね。題材の万葉も、君塚校長時代の第1シリーズで採りあげたことがあったテーマだから、懐かしさもあった。
● 詩の実技は面白かったです。恋バナだからおそらくわざと玲子に振って活発な授業にしようとしましたよね、金八先生。そしたら盛り上がる盛り上がる。伸太郎の「お前来なけりゃ 俺泣くぞ」は、あれ、ヤヨを見ながら言っていましたが、絶対にしゅうに向けたメッセージですよ。照れ隠しでヤヨに言ったふうにしたに違いない。
○ それがヤヨには無意識に分かったんだろうね。返歌するという流れの中で、だからヤヨはそのお返しに、「後ろのしゅうがいないから 寂しかった」と詠んだ。
● しゅうの名前が出たところで、金八先生はノートのことに触れて「君たちの言葉の力でしゅうは学校に出てきた」と言うんです。そして「おかげさま」という冒頭でとりあげた詩をもう一度示すと。
○ 少し前の回にも、「いいときは、おかげさま…」という詩が出たでしょう、相田さんの。いつも誰かの力を借りている、だから誰かに力を貸してやる、というのがね、いいんだよねぇ。
● 「おかげさま」という言葉の意味をいち早く理解したのが寄せ書きノート発案者の舞子で、しゅうの励ましに力を貸したみんなもまた「おかげさま」に気づいた、ということだったんですね。
○ この「おかげさま」という言葉の「陰」の部分に注目するのがまた金八らしさなんだよなぁ。誰かから貰った、ともすれば気づかずに終わってしまいそうな後押しパワーのことを「陰」だと金八は言って、とても大事なものだと教える。そして実は、今作の金八はまさに陰となって生徒の力になってやろうとしている。
● ああっ、そうですねぇ! 今シリーズの金八先生は「陰」なんだ。
○ 最後、君塚校長が板橋新校長に「人間を作っている」という金八先生の24年前の言葉が今も生きていると嬉しそうに言って、目を細めるシーンが印象的だったな。
● 万葉の句が今に通じる、というのと同じことですね。大事なものは変わらない、と。
 小ネタ拾い読み
◆しゅうの携帯の着メロが、平原綾香の「Jupiter」だった。第5話、ソーラン節の場面で流れた挿入歌。
◆「家来がいるから女王様がいる」と発言した淳。自覚している?
◆事件が続発する千住柳原地区に置くにはどうみても頼りなかった大森巡査についに助っ人警官が3人。ヤクザの乗る車のナンバーを控えようともしなかった重大ミスで大目玉を食らったのかも?
◆板橋の教育関連会社の正式名称は(株)エンデバー・コーポレーション。
◆18分頃の掃除シーンで、シマケンが比呂と麻子(?)から「見たよ絶対。鼻の下伸びてたもん。」と責められる。シマケンにいったい何が? 前後の関係からシルビア絡みの出来事?
◆三者面談で生徒の素性が明らかに。直明は家業がペンキ屋、建築関係の資格を取れる高校に行くつもり、ダンスは続けたい。真佐人は父が大阪に単身赴任中で浮気疑惑あり、母子で髪型が同じ。
◆君塚校長をケアセンターに案内してしまったのは、渋谷大好き三人組の有希、比呂、智美。
◆エンドロールの挿入歌クレジット。今まで「Il pleure dans mon coeur」というタイトルだったしゅうのテーマ曲が、「心の雨」に変更された模様。
 過去の金八シリーズでは
■学校は楽しいところ
…金八が板橋を学校見学に誘った時に言った「学校は楽しいところ」という言葉。以前、不登校になった生徒のことを考えた金八が「学校は、楽しいところなんだ」と呟いたシーンがあった。第4シリーズの紀美だったかなぁ、第5シリーズの篤だったかなぁ…。
■猿
…シルビアの発案でサンバで盛り上がった3Bが国井に怒られた場面で「3Bの猿軍団」という言葉があったが、第1シリーズ9話では乾が「3年B組は猿の惑星だ!」と叫んだ。成績下位の生徒を名指しし反感を買い、暴行を受けたことによる。
■万葉集
第1シリーズ3話でも万葉集の恋の詩をとりあげた。このときは女子高生に恋をした梶浦にジャストヒット。乾家の出産を控えた第6シリーズ11話でも万葉集をとりあげた。第5シリーズ3話のラストの授業風景でも少々扱われている。
■お前死んだら…
…詩の実技、金八が例として挙げた「お前死んだら 俺泣くぞ」は、第5シリーズの流れをくむスペシャル10(2001年)でも登場したフレーズだが、元々は秋田県二ツ井町が主催する「きみまち恋文全国コンテスト」の第7回で大賞を受賞した秋元絵梨さん(当時14歳)の作品から引用したもの。
■人間を作っている
…ラスト近く、君塚は金八がかつて言ったこの言葉を思い出す。第2シリーズ6話、問題児とされた加藤優を追放しようとする動きに対抗した金八が決意を込めてこう主張した。
 みなさんからの印象的なお便り
◆確かこの回で君塚元校長を囲んで給食を食べるシーンが先週のTV雑誌に書かれていましたが、ものの見事にカットされていましたね。見たかったな〜。 (袴田課長さん)
◆(公式サイトにある寄せ書きノートのうち、文字が薄い頁が一部あることについて)パソコンでいろいろいじって判読してみたのですが、「みんな待ってるから 早く出てこい 孝太郎」と書いてあるようです。とりあえず孝太郎の寄せ書きであることは間違いなさそうですネ。 (やまだれいこさん)
◆シマケンはキャラが確立されてますね。掃除シーンで女子に責められてたのは、拭き掃除するふりして実は女子のスカートの中覗き見して責められているんじゃないかと思いました。 (きちまんさん)
◆寄せ書きの崇史と浩美の名前の間に、玲子が割り込むように書いていたのが印象的でした。こういうちょっとした演出好きです。 (きちまんさん)

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