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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 12話 「事件続発3B混乱」

小塚崇史(鮎川太陽)の意識は依然戻らない。丸山しゅう(八乙女光)は苦悩のうちに覚醒剤を打つ。

病院を飛び出したしゅうを心配し確認に向かった金八(武田鉄矢)は、それとも知らず落ち着いた様子に安心し学校へ戻る。桜中では崇史の転落を問い合わせる電話が鳴り止まず、受験期を前に動揺が走っていた。金八は3Bに崇史の状況を説明し、何もできないが崇史のために祈ろう、と言う。生徒らは手を組み祈る。

丸山家に光代(萩尾みどり)を伴った家宅捜索が入り、供述どおりに覚醒剤が発見される。しかしこの時、粉の一部と注射器が押収されなかったことに光代は気づく。やがて捜索が終了、再び家を去る光代はしゅうとすれ違いざま、「今までごめんね。一からやり直すから」と告げる。

翌日、今度はしゅうの父親が覚醒剤で捕まったとの噂が流れ、3Bに憶測が乱れ飛ぶ。崇史の件でショックを受け学校に出てこない生徒もいる。金八は事実を説明するが、しゅうと崇史の関連性だけは言い出せない。振り回されて迷惑だと主張する生徒がいる中、しゅうが現れる。しゅうは稲葉舞子(黒川智花)の心のこもった弁当を投げ返し、崇史を裏切り者と罵ったことを平然と口外するなど明らかに人格が豹変。「ここ空気悪いねぇ!」と声を荒げ教室を出て行く。慌てて追いかける金八。

3Bでは、「崇史もしゅうも苦しんだ」と思いやる舞子に崇史しか見えない麻田玲子(福田沙紀)が絡み、殴り合いに発展。クラス全体を巻き込んだ混乱に陥る。「私はしゅうを信じてるから!」と舞子が教室を飛び出すと、他の生徒も次々に出て行く。金八は再び一人取り残されてしまうのだった。

05年1月14日放送

脚本: 清水有生

演出: 三城真一

視聴率: 14.5%

DVD: 第5巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● 前回の話が終わった時点で、興味は「しゅうが覚醒剤を使ってしまうのか」ということと「金八先生を含む周りがどんな反応を見せるか」にあったんです。
○ 崇史のことももちろん心配だけれど、こっちはまだ進展しないと予想できたからね。すぐに容態が悪化して死ぬ展開にするくらいなら即死でも変わらないはずだし、回復が早ければ飛び降りにした意味がない訳だから。
● そういうことです。それでその2つのポイントなんですけど、どちらとも最悪の方向にいっちゃったなぁというのが今回の率直な感想です。
○ ますますダークになっていく。このコーナーなんてバカ話を交えながら軽いノリでやりたいんだけれど、そういうわけにもいかなくなってきてしまった。
● しゅう、割と早い段階で打ってしまいましたね。昔の思い出に陶酔したり、アルバムの写真を並べ替え続ける常同行動のようなものがあったりして。
○ 25年前、いや5年前の金八なら、針を刺す直前で止めに入って間一髪ギリギリセーフ、ということになっていたと思うんだけれど、間に合わないところが今作の金八。「老い」とか「くたびれた」とか言われるところだよね。しゅうが見せた症状は極端で、オイオイと思うところもあったのに、先生まるで気づかないんだもんなぁ。
● 丸山家に泊った時、しゅうに食欲がなかったのは崇史の一件でショックだったからだと取っても仕方ないと思うんですよ。でも、口が渇いて何度も水を飲むところには何か感じて欲しかったです。それどころか崇史のメールを見たことを言っちゃうわ、受験の話を持ち出しちゃうわで、どうしたんでしょう。ラスト近くの人格の変わりようにも気づかないなんて…。
○ しゅうの一件と崇史の一件の関連性について黙ることにしたのも裏目に出てしまったし、元を正せばしゅうの「母親を待つ」という姿勢を大事にするあまり坂本家に引き取らなかったことも失敗だった。
● もどかしいですねぇ。
○ この「待つ」というのは、7話で崇史の父親が警察に出頭した際に金八が崇史に「信じて待とう」と言った言葉であり、8話でしゅうがボコボコにされた理由を話せと迫る3Bに「話してくれるまで待とう」と言った言葉でもあり、10話でヤヨの母や民間校長候補の板橋とも一致した教育論でもあったキーワードだったわけで、これが裏目に出てしまうのは辛い。
● うーん…。しゅうの方も、大切な家族と離れてしまって心の留め金が外れてしまったんでしょうが、金八先生や舞子といった周りの心配してくれている気持ちを少しでも感じていてくれたら…。
○ 舞子は金八の「あいつ(しゅう)はしっかりしてる。そのことを一番良く知ってるのは舞子じゃないか」という言葉に勇気づけられて信じ抜くことを決意したんだよね。
● 金八先生は確かにスーパーな感じではなくなっていますが、そういう本質的な部分は今も変わっていないんです。未だ予断を許さない崇史に対して言った「生きろ!」という言葉には力がありましたし。
○ それなのに、しゅうを信じ舞子を励ました言葉がラストの大ゲンカに繋がってしまうというのは本当に皮肉だよね。
 
● そのラストの大混乱シーンですが、舞子の弁当箱が効果的に使われていました。
○ 「余計なお世話かも」と思いながらも金八さんの力添えでやっと渡すことができたお弁当だった。そしてしゅうはその時「ありがとう」と言った。確かに言っていた。それなのに…。
● しゅうがあんなになってしまって。玲子もまたくだらない理由で舞子に絡んでいくんですよ。
○ 玲子のモチベーションは崇史が好きだということだけなんだよね。それも相手の気持ちなんかお構いなし。だから崇史に近づく女子は誰でも敵だと思い込んでしまって、舞子に「売人やってんじゃないの」なんてことも平気で言ってしまう。
● 元々素直じゃない性格のように見えるし、オレンジバッグなので何か悩みを抱えているんだとは思うんですけど、ちょっと自己中心的な面がありますね。
○ 淳を下僕のように使っているという設定もその強調なんだろね。
● この場面では他にも哲史が受験に不利になると主張したり、典子が友人が休むことになって迷惑だと言ったり、孝太郎が「てめえの親父もシャブ中か」と罵ったりしていましたよね。ソーラン節で団結した5話、荒らした保健室をみんなで片付けた6話、トーチランに参加した8話、しゅうを寄せ書きで励ました9話、ヤヨを壁塗りで復帰させた10話…という道のりがあっても、まだ3Bは「おかげさま」の意識が本当に芽生えた訳じゃなかったんでしょうか。
○ そうそう。4話のラストで「考えろ」と言われた時にみんな教室を出て行ってしまったのが、10話で話し合えるようになったはずだった。それなのにまたこういうことになって。ソーラン節でクラス全員が一つになった瞬間に流れた「Jupiter」が今度はまとまりが崩れる瞬間に流れることになってしまった。
● クラスは再びバラバラになってしまったんですね。花子先生の出産の時にはおちゃらけていた3Bが、崇史のために祈ろうといわれてみんな必死に祈って、優しくなったもんだと思ったんですが…無責任な噂話に舞子が怒ってしまって。
○ 悪いのはしゅうだ崇史だ、ましてや舞子だなんて言うけれども、そんなことは少しも重要じゃないんだよね。10話でクスリの話をした女子や孝太郎、しゅうに謝らせて生徒だけで場を収めたことがあったけれど、所詮犯人探しに過ぎなくて、本当に相手を思いやって解決したのではなかったでしょ。
● あの話し合いは不完全なまま成立してしまっていたと。金八先生は「涙が出そうだった」とまで思っていたのに…。
○ ただ成長が全くなかった訳ではなかったよね。先ほど話に出た「みんな必死に祈った」という事実もそうだし、生徒が次々と出て行くシーンでは、舞子をWあすかが追っているし、玲子を淳が追い、浩美を3B'sが追い、ヤヨを祥恵と奈穂佳が追い、典子を比呂と車掌が追い、孝太郎を和晃が追い…と小さい範囲での思いやりは芽生えている。
● それが救いであり希望の光ですね。その気持ちを3B全体まで膨らませていけば…。
○ それに、1話での騒動の時はその原因となっていた伸太郎が、今回は最後まで残って金八先生の味方になってくれたじゃない。「心配だから見てくる」と。金八さんと信頼関係を築いた伸太郎は、もうちゃんと応えてる。
● 再びバラバラになってしまった3Bだけれど、元に戻ってしまった訳ではないと。
○ そう。特に伸太郎の役割の変化は嬉しかった。
 
● 他、何かありますか。僕はですね、車掌が典子へ好意を持ちだしたのを見逃してません。それから、遠藤先生と本田先生がやたらと後追い自殺を強調してるので、玲子か浩美あたりに繋がらないか心配ですね。
○ 自分は「たこわさび」だね。
● たこわさび! 乙女が弁当を作ってる時の。
○ 普通たこわさびって弁当のおかずにならないよねぇ? 弁当全体が生臭くなりそうじゃない。そういう突拍子のなさに意表を突かれたし、そもそも何故ここでたこわさびなのかさっぱり分からない。分からないんだけれど、どこかホッとする響きだという。
● 崇史の家に捜索が入った時も、なぜか唐突に「とんかつ弁当」と限定したことがありました。
○ それから明子がリンゴを2つ手渡したシーンかな。随分くたびれていた先生に届いた卒業生からのメッセージ。嬉しくて半泣きだったよね、金八さん。それでまた勇気づけられて。明子はしゅうと先生に一つずつあげたつもりだったと思うんだよ。でもそれを金八さんは一つをしゅうに、もう一つを崇史の枕元に置くんだよねぇ。すごく象徴的だった。
● 金八先生のその気持ち、報われて欲しいなぁ。
 
 小ネタ拾い読み
◆小田切先生とシルビアがなにかと行動を共にしている気が。
◆しゅうが左手で右腕に注射したことに意味が隠されているような気がしたが、しゅうは元々左利きだったのでした。
◆崇史が奇跡的に数箇所の骨折とかすり傷だけで済んだのは(頭は強く打っているようだが)、駐車場の落下防止ネットの上に落ちたため。
◆舞子に付き添い励ましていたのはWあすか。デカあすは崇史の転落にショックを受ける浩美のそばにもいてあげていた。
◆桜中教師陣が作った崇史の入院先当直表の中に「小林」の文字。楓中の小林先生?と思ったが、花子先生のことか。
◆職員会議で本田先生が言った「ウェルテル効果」とは、ある自殺が引き金となって自殺が相次ぐこと。ゲーテの名著「若きウェルテルの悩み」にて主人公の自殺が反響を呼び、感化された若者の間に自殺が流行したことによる。
◆「たこわさび」は幸作の好物でもある。
◆「金八定食」とは、つまりトーストと目玉焼き。
◆崇史の件にショックを受け翌日欠席したのは、信子、麻子、ウガ。
◆舞子と玲子のケンカを止めに入ろうとして、人知れず顔面をしたたか殴られた伸太郎。さすが分かっていらっしゃる。
 みなさんからの印象的なお便り
◆しゅう…彼の不幸な過去は確かに可哀相です。最後は薬に対してもやめることが出来てもとのしゅうに戻ったって設定で終わって欲しいのは確かなんだけど…現実はそう甘くは無いよね。このドラマを見ている多くの子供たちに勘違いを招かない為にも、しゅうには落ちるところまで落ちて欲しい。薬をするとここまでなるんだってことを分かってもらう為にも。ここまで薬を扱うんなら徹底的にやって欲しい。中途半端には終わらせないで欲しい。 (ありすさん)

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