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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 15話 「給食費未払い3年の両親」

都立推薦合格発表の日。見事合格したシマケン(筒井万央)だが、元気がなく給食を食べようとしない。大工の父親が怪我をしたため収入が途絶え、給食費が払えない自分には食べる資格がないというのだ。狩野伸太郎(濱田岳)は募金を提案するが、自身が給食費を払っていないことを逆に咎められ賛同を得ない。ヤヨ(岩田さゆり)にまで「金払え」と言われてしまう。

伸太郎の家は裕福であった。給食費を払うよう両親(伸介・田口浩正、亜弥・阿知波悟美)に願い出る伸太郎だったが、人より税金を多く払っているのだからその必要はないと一蹴される。妹・アミ(枚田菜々子)に普請するが断られた伸太郎は、800万円の壷を質入れすることを画策。ところが両親はそんな伸太郎を泥棒呼ばわりし警察に突き出そうとした挙句、払えないから食べないというシマケンを要領の悪いバカだと罵るのだった。怒った伸太郎はハンストを宣言し部屋に閉じこもる。

翌日、金八(武田鉄矢)は「これは伸太郎親子の問題だ」と言うが、自分の給食費まで負担しようとしてくれたことを知ったシマケンを中心に、3Bのほとんどが伸太郎の力になろうとする。街中でビラを撒き、狩野鉄工に乗り込んで給食費未納撲滅デモを断行。駆けつけた金八は、そんな生徒らの気持ちを汲みつつも「私の問題だ」として演説をうつ。

やがて伸介は給食費の支払を了承、3Bの面々に歓喜が広がる。友情などすぐに壊れるもの、と傲慢な姿勢を崩さない伸介に対し、金八は「親は子供に背中を見せるもの。壷を見せてどうするんだ」と一喝。親と向き合うキッカケを貰った伸太郎は金八に敬語で礼を言い、その背中に深々と頭を下げるのだった。

05年2月4日放送

脚本: 清水有生

演出: 三城真一

視聴率: 14.2%

DVD: 第6巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● 今回はユーモアとシリアスのバランスがとれた面白い話でしたね。伸太郎の母親はまんま野村沙知代だったし、壷のくだりは父親役の田口浩正さんが以前他のドラマで「壷の精」を演じたことを知っている人には笑いどころになったかもしれないし、七日間戦争を思わせる生徒デモにもニヤリ。
○ デカあすが作ったチラシもヒドかったよね。あまりにも具体的に描かれていて、あれじゃあんまりだ(笑)。そして、一方ではシマケンの悩みを発端に3Bのほとんどが一体になる友情が生まれて。
● ハイライトは金八先生の課外授業! 往年の説得力が戻ったというか。
○ 「天網恢恢 疎にして漏らさず」。天にはアミが張り巡らせてあって、大きいだけに目は粗いけれども、天の眼がちゃんと見ているから悪いことをすると必ず捕まってしまう。…という意味の老子の言葉。これを給食費未払いの追求にただ引用しただけでなく、「ごまかしをしない人は堂々と天を見上げることができる。足立区の地上の星!」と金八節に持っていくところね。
● あれで伸太郎の父親もオチたと。壷に物欲や体裁が象徴されてはいましたが、元々性悪なのではなくて、身を立てるのに必死だったんでしょう。そこを分かって貰えたから渋々ながら支払に納得した部分があると思います。ここでちょっと思ったんですけど、天網の「アミ」ありきで伸太郎の妹の名前を「アミ」に設定していたんだとしたら、作り手さんは相当やり手ですよね。
○ こじつけ過ぎという気がするな(笑)。
 
● 伸太郎、仲間が協力してデモを起こしてくれて、友情のありがたみを感じながらも徐々に表情が曇っていったじゃないですか。そこにはいざ父親の顔を見ると意見をぶつけられない弱さがあって。
○ そしていつの間にか伸太郎の意思を3Bの勢いが追い越してしまって、伸太郎が思う以上に身内が一方的に責めたてられることになった。そういう理由もあって、ああいった複雑な表情になったんだろうなぁ。
● その中に、「あんなのでも俺の父親なんで」という、一代で大きな会社を築いた背中を見てきた思いもあったと思います。行動を起こした3Bと狩野社長の功績と、両方立たせつつ解決した金八裁きはお見事!
○ 金八先生は、「夜空の向こう側から地上を見ている眼がある」と考えているし、命の授業では「亡くなった人が土になり根っこになって支えてくれている」と言っていたよね。宇宙から足下まで、スゴく大きなスケールで物事を考えていて、その中で生きているということを自覚している人なんだと感じたなぁ。それがあの器の大きさの根源なんだ。竜馬と一緒だね。
● 今回は、子供の手本となる大人という意味で「父ちゃんの背中」(幸作)がキーワードだったと思うんですが、ああいう背中を20年間ずっと見続けてきた幸作、父のような教師になりたい!と憧れて目標にする気持ちが分かりますよね。金八先生は「背中を見せずに壷見せてどうするんだ!」と言えるだけの説得力を持っているんですよ。
○ 金八らしい堂々とした主張で父に給食費支払を了承させた先生の姿を見て、伸太郎は、3Bの力を借りずに自分の気持ちをぶつけてみよう、という気になった。でもそれだけではまだ全面的に向き合うことはできなくて、友情をバカにされるとすぐにカッとなって壷を割っちゃった。きちんと本当に面と向かって、心を込めて話そうと思わせてくれたのは、やっぱり金八先生の「お前は成長してる、大丈夫だ。」という自信づけなんだよね。
● 「ちゃんと話し合いたいと思います」と敬語で決意表明ですからね! 車掌でいうところの「メガホンからの独り立ち」と同じ意味を持っているように思いました。壷を割ったところは「す…す…シャケ弁」の場面と重なりましたよ。もう一息!って。で、そんな伸太郎はラスト、去っていく金八先生の「背中」に深々とお辞儀するんです。
○ 昔と比べると幾分丸まってきた背中。でも最後に金八の大きさを印象づけてくれたというのが嬉しかった。その直前にあった伸太郎の「先生に何すんだよ!」というセリフも含めてね。
● しかし、悪ガキだった伸太郎が、とうとう面と向かって敬語を使ってくれるとは…。
○ 今までのいろいろな場面が思い出されて。顔合わせでいきなり茶々入れて金八を唖然とさせた姿。ハッピをずさんに扱って卒業生とケンカした姿。ソーラン節でセンターを務めて見せた涙と照れ隠し。しゅうを助けた勇気。金八の信頼に応えてクラスのまとめ役を買って出た場面…。
● ホントいろいろあって、成長したんですねぇ。
 
○ 親の顔色を窺いながらオッカナビックリ掛け合っていた伸太郎。気持ちを前に出し始める最初のキッカケになったのは、マジメなシマケンが悪く言われたことに対しての怒りだったよね。
● シマケンの方も、自分の給食費まで払おうとしてくれた伸太郎の気持ちを知って、力になろうと思ったという。ビラ配りの時のあの笑顔にはヤラレました。
○ 実はこの二人、13話の「命の授業」の直前に話し合いを提案した二人なんだよ。つまり3Bの中では比較的早くから「おかげさま」の大事さに気がついた二人。あの時はクラスの同胞意識が希薄だったから提案は金八に却下されたけれど、今回はこの二人の思いやりがほぼ全体に波及して、逆に金八が「伸太郎親子の問題だ」と言っているにも関わらず「あんなヤツでもいなきゃいないで寂しい」(智美)とビラ撒きやデモにつながった。
● 伸太郎の成長、そして3Bの成長…。グループレベルで芽生えていた思いやりの心が、クラスレベルまで広がっていった出来事だったんですね。まさに「壊れない友情」だ。
○ 思えば伸太郎はソーラン節の練習場所として広大な工場を提供してクラスの団結に一役買ったこともあった。今回も知らず知らずのうちに団結に貢献しているんだよね。
● 存在感があって憎めなくてしかも良いヤツだなんて、なんてオイシイんでしょう(笑)。
○ ところで、伸太郎の家は全然見た目だけの金持ちなんかじゃなかったね。予想が大ハズレ。母親も金策に忙しいんじゃなくて接待だった。
● 前作のノブタとは同じ鉄工会社でもかなり差がありますよね。
○ 家族が「学校へ行こう!」が大好きだという点だけだよね、一緒なのは。
5話の感想で「工場が操業していない!」なんて見破った気でいた自分らが恥ずかしいですねぇ。
○ 伸太郎、カバン代わりに紙袋なんて意味ありげに持っているから、すっかり騙されたよ!
● だいぶ早い段階から伏線が張られていたのに、だいたい引っ張りすぎなんですよ!
○ まぁでも、友情がある程度形になった今でなければ成り立たない話ではあったよね。それに車掌は片手にメガホンを持ったまま800万の陶器を運ぶのは危険すぎるから、依存を克服するエピソードの後じゃないとマズかった(笑)。
 
● 年が明けてから、最終回間際まではどんどん重い展開になっていくのだろうと思っていましたが、全然そうではなく、むしろ明るいですよね。まぁ、それだけしゅうとの落差がくっきりしていく面もあるんですが。
○ 今回の団結にも、しゅうと舞子は参加できていないんだもんね。それどころか、舞子はしゅうの注射の跡や症状に気づいて。
● さっき「おかげさま」の大事さの話が出ましたが、舞子は初めから思いやりの心を持つ数少ない生徒の一人でしたよね。報われないとおかしいですよ。
○ 天網恢恢。舞子の優しさも、夜空の向こう側から天の眼が見てくれていると信じたいね。
 
 狩野伸太郎特集!
■実はシマケンのために募金することをいち早く提案したのに、取り合ってもらえなかった可哀想な男。
■給食を3人前も食べようとする男。
■なぜかスプーンをマイク代わりにして主張。
■「全然別問題」と言おうとして「全…ぶつ問題」と噛んでしまっているが、そのままOK。
■家は本物のブルジョア。親とは敬語で話していた。
■アミにお金を借りようとするシーンで、江頭2:50の「がっぺムカツク」のポーズ?
■大森巡査に「鳩が豆鉄砲食らった顔した中学生」と表現されてしまった。
■アミのパジャマは牛の柄。
■従業員からは「坊ちゃん」と呼ばれている。
■父・伸介は、自称「登り竜のカノシンと呼ばれた男」。
 小ネタ拾い読み
◆祥恵は青嵐高校、奈穂佳は緑山高校、シマケンは晴海総合高校にそれぞれ推薦合格。
◆乾先生の話によると、しゅうも勉強ができる子らしい。
◆教室でハンストを「パンスト」と聞き間違えた真佐人。デモの時は「ハンバーガーストライキ」と間違えてしまった。
◆教室で伸太郎に「金払え」コールをした隼人。デモの時は伸太郎の父に向かって「金払え」コールを起こした。
◆シマケンの父親は大工。役所から補助が出ると聞き、泣きながら学校へ感謝の電話を入れてきたらしい。シマケンもこの父親の背中を見て情の深い子に育ったのかな。
◆遠藤先生が言う「給食費滞納額が1000万円を超えた区」というのは葛飾区。「財産の差押を訴えた自治体」とは岩手県滝沢村のこと。
◆デカあす、ダイエットに興味を持っていたはずが、浩美からチーズはんぺんフライを貰っている。…と思ったが、もしかしたら伸太郎のために集めていた?
◆哲史の超防寒スタイル。
◆デモの垂れ幕に「未納オヤジィ」の文字。TBSドラマ「おやじぃ。」を意識?
◆無意識のうちにメガホンを持つポーズをとってしまう車掌を真佐人が止め、典子がフォロー。
◆車掌、「天網恢恢」を「陰毛カイカイ」とボケてしまう。
◆実は、武田鉄矢さんのお母さん・イクさんも「給食費未払いの親」だったという。
 過去の金八シリーズでは
■学校へ行こう!
…狩野アミが見ていたテレビ番組。第6シリーズ3話では信太宏文の父親がこの番組を見て爆笑していた。ともに鉄工会社だという共通項が一応はある。
 みなさんからの印象的なお便り
◆「金八先生の職員室の机の上に、車掌のトラメガが置いてありました。もう依存症から立ち直った(癖はなかなか治らないみたいだけど)からといって、あっさり捨てずに思い出(?)として取っておいてくれてるのかなと、ちょっと嬉しかったです。」 (やまだれいこさん)
◆「屋上でのビラ撒き抗議があったからこそ、最後の伸太郎の「今度はちゃんと話し合いたいと思います」という言葉が生きてくるような気がしました。伸太郎も最初は、ハンストをしたり壷を持ち出そうとしましたよね。でも、一方的な力技だけでは何も解決しないんだということに気付いたのではないでしょうか。聞き入れてもらえなくても、自分の言葉で自分の気持ちを伝え続けることが大切なんだと…。」 (みちるさん)

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