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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 17話 「人命救助で入試に遅刻!」

■ 全体のあらすじ

都立高校一次試験が近づく。金八(武田鉄矢)は受験心得をアドバイスするとともに、ヤヨ(岩田さゆり)の作った合格祈願キャンディを生徒に手渡して励ます。

入試当日。姫野麻子(加藤みづき)が泣きながら電話を掛けてきた。受験先へ向かう道すがら、突如苦しみだしたお婆さんと遭遇し、捨て置けず大きく遅刻してしまったというのだ。駆けつけた金八は、「もうダメです」と諦める麻子に「あなたの夢は何ですか」と問いかける。麻子の夢は、テニスの強豪である港南高へ進学し全国大会へ出場することであった。金八は麻子にヤヨのキャンディを見せ、夢に向かって頑張ることの大切さを説きながら、諦めず残りの科目に全力を尽くすよう励ます。

試験が終了し3Bに戻った生徒たちは、麻子に救済措置が認められないことを知ると、親切心が報われない世の中に抗議する。金八は「私も同じ気持ち」としながらも人生に不条理はよくあることだと言い、「不運に泣いても諦めずに、辛くても負けたと言わずに、一生懸命頑張る人のところに未来はやってくる」と説く。「私、負けていません」と前向きに立ち直った麻子に、3Bは拍手を送るのだった。


■ 丸山しゅう

残りの覚醒剤をなんとかトイレに流した光代(萩尾みどり)だが、しゅう(八乙女光)が覚醒剤に手を染めたのは自分が隠し置いたからだと責任を背負い込む。しゅうは光代の財布を奪って新たに買い求めようとするも、「しゅうは父さんと母さんの大切な宝物なんだから!」という言葉で我に返り、「母さん、助けて」と呟く。この言葉を受けた光代はしゅうを本人の同意のもとにベッドにくくりつけ、訪ねてきた金八にも助けを求めず自分の力で救おうとする。禁断症状に苦しむしゅうは激しく暴れ、縛られた腕に無数の傷が残るのだった。

登校したしゅうは金八からヤヨの合格祈願キャンディを手渡され、車椅子でやってきた小塚崇史(鮎川太陽)に「緑山の二次を一緒に受けないか」と誘われる。しかし崇史が去った後に気を失い、稲葉舞子(黒川智花)によって保健室へ運ばれる。舞子はしゅうが覚醒剤を使用していることに気づき光代に報告していたのだが、そこで口止めされ金八には打ち明けられずにいた。しゅうの傷痕に気づいた本田(高畑淳子)は光代の虐待が続いているのではと怪しむが、金八は「彼女は生まれ変わったんだ」と光代を信じようとする。

早退したしゅうは、ベッドの上で光代の作ったお粥を口にしていた。高校受験への意欲を語りだし、「このまま頑張ってクスリやめる」と宣言するのだが、もはや食事を受け付ける身体ではなく嘔吐してしまうのだった。

05年2月18日放送

脚本: 清水有生

演出: 三城真一

視聴率: 13.5%

DVD: 第7巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
● 上のあらすじが、ついに二分化。
○ このところの数話はホッとするようなエピソードが中心で、その中にしゅうの凄惨さをピンポイントに挟んでいたんだけれど。
● 徐々にしゅうの割合が増えてきて、いよいよ…といった印象ですね。
○ ただ、全く別軸の2つの話を見せられたワケではないよね。ヤヨの作った合格祈願キャンディが両方のエピソードの中でとてもよく光っていたし、他にも一つポイントがあった。
● ヤヨのキャンディ…。麻子もしゅうも崇史も、他の生徒もこれを握り締めてじっと見つめていましたもんね。
○ 今回、ヤヨが登場したのは冒頭の金八の回想シーンだけで、実質的には一度も出てこなかったでしょ。それなのにこの存在感はスゴイよね。みんなの心にヤヨがいた。未来へ向かっていち早く動き始めたヤヨの意識がキャンディに凝縮されて。
● そんなヤヨのお菓子をクラスメイトの受験のお守りとして携帯させる発想は抜群でした! キャンディにヤヨの生き生きとした姿が透かし見えたから麻子は夢を諦めてなるものかと思ったし、しゅうは高校入試を受けてみようという気になれて、崇史は二次を受けるという自己主張としゅうへの思いを強くしたんです。
○ 麻子のエピソードは「人命救助の功績を評価されて特例が認められた」という童話的ないい話にしなかったところがよかったなぁ。社会のシビアさの一端を3Bに勉強させることになったし、以前に武田さんが雑誌インタビューで仰っていた「正しく絶望した上で光を探す」ことにも繋がっていた。
● テニス部である意味は全くなかったですけど(笑)。
○ もう深読みの必要ナシ。パンフの「エースをねらえ!」が上戸彩さんと繋がっているな、と素直に笑いましょう(笑)。
● 一方のしゅうは、金八先生とは別のところ、つまり光代さんと崇史の気持ちやヤヨのキャンディに動かされて進学への意欲を持つようになってクスリも断とうと思い始めるんですが、そういう前向きな意識も覚醒剤の前には形無しというか、もはや救いようがないんじゃないかっていう。
○ 「母さん、助けて」と言われたのを光代さん、責任を感じて背負っちゃって。一人で解決させなければと思い込んでしまった。
● こうなると少なくとも一人で治すことは絶対に不可能だと分かっているはずですよね。それなのに、舞子にも口止めしてしまって。
○ 秘密を知って口止めされた舞子は以前の崇史の立場に似てきたような印象もあるよね。
● まさか再び自殺騒動なんて…それは考えすぎか。でもこれからが非常に心配です。
○ どのみち、しゅうの覚醒剤依存が発覚するのは時間の問題。だけど、光代さんが早く相談してくれることを願いたいなぁ。誰か(おそらく金八だろうけれど)に打ち明けてくれれば、親と教師と地域が一体となって子を導くんだという地域評議会や民間校長の話とも繋がってくるのに。
 
● ところで、先ほど言っていたヤヨのキャンディ以外に共通する「もう一つのポイント」とはなんでしょう?
○ いや、そんなに大したことではないんだけれど、ちょっと逆説的な繋がり方をしているように感じた部分があって。麻子の親切心が受験に関してはアダとなってしまったよね。それを金八先生は、仕方ない、どうにもならないことだってある、と言って、特例などという甘い希望に期待をかけるのではなく不条理を受け入れて、その上で決して諦めず可能性を探そうと励ましていた。
● そうでした。
○ でもその先生が、しゅうや光代さんを「信じます」と簡単に期待してしまっているんだよね。既に信じるだけじゃどうにもならない事態になっていることに気づかずに。
● あぁ、スゴくシリアスで深刻な「志村、後ろ!」状態のような感じになっているんですね。全然いい例えでもないですが。
○ …まぁ、本人のみ気づかないという部分ではあながちハズレだともいえないけれど。「泣きながらでも一生懸命手探りし続けた人だけが未来と握手できる」という悲壮な励ましが、この先全部金八先生に返ってくるのかと考えると胸が締め付けられる思いがするなぁ…。
● しゅうの覚醒剤依存を知った時、金八先生はどんな表情をするんだろう?
○ もうしゅうのドラッグ問題は「先生は自慢に思うよ」くらいの言葉や気持ちだけではどう頑張ってもプラスへ持っていけないんだよ。いくら金八が側で一緒に泣いてやっても救いきれないことなのかもしれない。だから今後の展開を想像するとスゴく苦しいし、終盤にどんな物語が編まれるのかとても興味が湧くところでもあるなぁ。
 
● 金八先生がラストで黒板に貼り出した「負けたと言わないかぎり 勝っている」という言葉、先生自らの書だったようですね。
○ ようやく金八オリジナルの言葉が!という意味では嬉しい気持ちもあったんだけれど、ちょっと「あれっ?」と思った部分もあって。あまりいい言葉ではなかったようにも思っちゃった。
● ええっ!
○ 昔からのファンとしては、勝ちを意識させる言い方じゃなく、「人生に勝ち負けなどない!」と言って欲しかったんだよなぁ。言葉を貼り出すまでの流れは、「キミの優しさが正しかったのか、間違っていたのか、実は誰にも分からない」というものだったのだし。
● まぁでも、それで気持ちを強く持てるようになった生徒もいましたから。
○ たしかに先生の本意は「諦めない」というところにあって、それを強調しようとして敢えてこういう言葉を使ったとは想像できるんだけどね。他人との比較で勝ち負けをつけるような先生ではないのに、字面どおりに伝わったら危ないなと思って。「勝ち組」「負け組」という考え方を否定する意味で皮肉っぽく「勝」「負」を持ち出したんだと納得してみることにするよ。
---【註】---
第6シリーズ13話。木村美紀の父親がキツイ仕事を与えられた上リストラされ自殺を図った件に触れ、「どんな状況の中にあっても自分の頭で考え自分で行動し活路を切り拓く子供たちを育てる。そんな時代になったんですよ。父ちゃんも負けるもんか」とこぼした金八に対し、乙女が「人生は勝ち負けじゃない。『負けた』って言わない人が勝ちなのよ。」と後押しする場面があった。
このとき金八は感じ入ったような表情を見せており、心に深く刻まれた言葉として今回の書に繋がった様子。やはり「人生に勝ち負けなどなく、諦めないことが大事なんだ」という主張が込められているようで一安心。 (情報提供:Tubasaさん)
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● そうですよ。麻子はもちろん、孝太郎や哲史の意識も変えさせる力があったんですから。
○ 孝太郎や哲史、それから玲子あたりの意識の成長も、時間があればもっと丁寧に見せてもらえたんだけどね。麻子の話、しゅうの話の他にもあった今回の第3第4のエピソードは、我々が思いをめぐらすことで補完していきたいところだね。
● 特に玲子は最後の土手のシーンで、みんなに混ざって土手を滑りたいという淳の言い分を聞いて、ついにバッグを持たせることをやめているんです。
○ みんなが爽やかに土手を滑って、哲史が「超キモチイイ!」と叫ぶ姿、よかったよね。
● デカあすは段ボールに立ち上がってサーフィンっぽく滑ろうとして、そりゃ無理だと思っていたらやっぱりコケました(笑)。
○ そんなホッとするすがすがしいシーンにあって、生徒の中でただ一人、先生の言う前向きな気持ちだけではしゅうの状態がどうにもならないことを知っている舞子は、最後まで沈んだ表情なんだ。
● 舞子は辛い立場になってしまいました…。
 
 都立高校一次試験
▼青嵐高校
玲子 : 髪を二つ縛りに。淳からバッグを受け取る時に「ありがとう」。「受験票を忘れないことなど当たり前」といいながら危うく忘れそうになり、指摘されても淳のせいにせず笑顔。手ごたえは「まあまあ大丈夫」。
哲史 : 今回も出来が悪かった模様。スランプ?
▼緑山高校
康二郎 : 練習中、1600年に起きた合戦を「大阪夏の陣」と答えてしまったものの、本番は「カンペキ」。
ソン : 1338年を「いざサンバ踊り明かそう鎌倉幕府ゥ!」と暗記OK。康二郎と同様にカンペキだった様子。「緑山チームは合格間違いなし!」
ウガ : 「余裕だった」。浮かれるなと注意する北先生を面白がる仕草。
信子 : 出来がよかったようで、花子先生に誉められている。
▼晴海総合高校
直明 : 高校は逆方向にあるにも関わらず、堀切駅まで仲間と大森エールを受けに来た。出来はバッチリ。
▼港東高校
伸太郎 : 「ウカール(カール)」を2袋食べながら登校するも、玲子にぶつかられ「落ちた」。教室に着く頃には食べきってしまい「ウカールない…受からない…」と自虐。実際出来は「ダメだ、もう」。二次試験を真剣に考える。
量太 : 「キットカット」を3個食べながら登校、「きっと勝つぞ」と意気込む。教室では4箱に増えていたが、ヤヨのキャンディを貰うとそそくさと鞍替え。本番の出来は伸太郎同様よくない様子。
車掌 : キシリトールガムを大量に頬張り「きっちり勝利する」と言っている? 「きっちり通る」と言っている模様(情報提供:ヒマ人さん)。ヤヨのキャンディをマイク代わりにしていたが今回は致命傷にならなかったようで、本番は「手ごたえアリ」。
智美 : 淳以外の港東組4人+孝太郎はスーパーさくらのワゴン車を占領する余裕あり。智美も本番の手ごたえはあった。
: 玲子を駅まで見送ってから戻り港東組と合流。ワゴン占領風景を見て呆然。手ごたえは玲子と同じく「まあまあ大丈夫」。
▼港南高校
浩美 : 遅れる麻子を心配し携帯で連絡をとり、会場では励ます。
比呂 : 「A組もC組ももう行っちゃったよ」と焦る。
真佐人 : チョンマゲを注意され七三分けに。慣れないのか終始髪形を気にするそぶり。試験に集中できたのだろうか?
隼人 : 「麻子だってガキじゃねぇんだから一人で来れんだろ」と先に行くことを決断。港南組を代表し「俺らはボチボチ」。
麻子 : 学力は緑山レベルにあるがテニス部に憧れ港南を選択。「決められた時間より少し早く行く」と心得ていたのにお婆さんを助けているうちに…という話の流れではあったが、実はお婆さんに遭遇する以前の段階で他の港南組がイライラするほどギリギリまで待たせてしまっているような気が。もしお婆さんに遭遇しなかったとしても彼らが乗り込んだらしきバスには間に合っていないように思われる。ちなみに得意科目の国語を受けられなかった。
▼荒川学園高校
孝太郎 : 和晃に「本番はボクいないんだからね」と心配される。金八に「他校の生徒にガン飛ばしたりしないこと」と釘を刺され、まさかのニッコリ。デカあす驚く。試験へ向かう道でもニコニコ。結果は「全然ダメ」だったようだが、ラスト近くには前向きに思い直した麻子に対し「俺も頑張るよ!」と二度目のまさか。デカあす再び驚く。どういう風の吹き回し?
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※ 学ランのボタンを外したり、カーディガンやベストを着用したりはなく、みんな正装。
 小ネタ拾い読み
◆乙女、バレンタインデーに青木と一泊疑惑。話を逸らそうと幸作に「落ちる」「滑る」と禁句を連発。狡猾だ。
◆幸作、この時ショックのあまりカメラ目線に。
◆「受験」を「受検」と表記していたのは、「学力検査」という名目だったから?
◆ウガ、「リラックス!」と言った伸太郎の顔を真似ようとしておかしな表情に。
◆量太が音頭を取った「ちからをいれて りきまない」コール。その2回目に、量太の表情を至近距離で見ていた祥恵が我慢できず吹き出してしまっている。量太・伸太郎コンビの中間地点に位置している祥恵は毎回大変だ。
◆大森巡査はC組の生徒にもエールを送っている。
◆説教の後「こっからだ、こっからだ」と励ました金八。1話では典子が「こっから、こっから」と言っていた。
 過去の金八シリーズでは
■お守り
…今回はヤヨがキャンディを配ったが、第4シリーズではタコヤキお守り、第5シリーズではセンターのお年寄りがお守りを作って生徒に渡した。第6シリーズでは平八郎が今回の幸作のようにお守りをたくさん集めてご利益に預かろうとしていた。
■受験で他校生とケンカ
…孝太郎が金八から注意を促されていた「他校の生徒と大ゲンカになって試験が台無しになった生徒」とは、第1シリーズの九十九弥市のこと。第6シリーズのスガッチはケンカしたにも関わらず合格。ちなみにどちらも舞台は青葉高校。
 みなさんからの印象的なお便り
◆受験の遅刻ですが、実は初めの設定では試験はバツという脚本だったのですが、都立高校に問い合わせたら「やむを得ない理由がある場合は試験を受けさせてもらえる」ということで急遽書き換えられたそうです。 (袴田課長さん)

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