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第8シリーズ 1話 スタートスペシャル「ギラリと光るダイヤのような日!」
後期の授業開始日、桜中3B担任・坂本金八(武田鉄矢)は、遠藤先生(山崎銀之丞)が痴漢行為で捕まったとの知らせを受ける。すぐに被害者の勘違いと判明するのだが、鹿島田校長(浅野和之)は遠藤を非難。区が導入した「学校希望選択制」により教師の悪評は学校存亡の危機に直結するため、誤解を生むような行動は慎めと言うのだった。また校長は桜中の評価を高めようと、成績重視の学校改革を提案する。金八はどうしても割り切れない。
そんな中、長谷川孝志(坂本優太)の親が乗り込んできた。息子の絵が絵画展へ出品されないのは美術教師・立花(藤澤恵麻)の不公正だというのだ。しかし立花はその絵が本人の描いたものではないと見抜いており、きっと理由があるはずだと、表沙汰にせず不当な抗議に耐えるのだった。内気な孝志は内申書のため躍起になる親の期待に沿おうと、つい他人の絵を流用したのであり、やはり親の言いなりで学級委員にもおずおずと立候補する。だが選挙の得票数はゼロ。孝志が自分自身に投票しなかったのを見た金八は苦悩に気づき、「お前の本当の気持ちを見た気がして嬉しかった。男らしかったぜ」と声を掛ける。
翌日、江藤清花(水沢奈子)が授業中に倒れ病院に運ばれる。診断結果はいわゆるエコノミークラス症候群。狭いネットカフェにしょっちゅう泊まっていることが原因だった。あのいい子がまさか、と衝撃を受ける金八だったが、隣り合った個室に一晩泊まって話を聞くと、清花は中学受験に失敗して両親の不興を買い、弟が開栄中学に合格してからは両親とも弟に夢中。家出をしても気づいてさえもらえず、それ以来このネットカフェで「学校裏サイト」など見て夜をやり過ごすようになったというのだ。「生まれてこない方がよかった」とまで清花を追い込んだ母親を金八は一喝。「どうか子供の気持ちを聞いてやって下さい。抱いてやって下さい」と訴えて頭を下げるのだった。
その日の国語の授業は詩の朗読。「本当に生きた日は」「指折り数えるほどしかない」とその言葉の一つ一つを噛み締めながら、なぜ自分は生きていくのか考えていこう、それが分からないと人間は生きていけないのだと金八は生徒に言う。そして裏サイトではなく心のホームページに鉛筆で文字を書き込もうと、個人ノートを配る。多くの生徒は渋々受け取るのだが、清花はすぐに書き込んで提出。そこには「私は本当に生きてみたい」と力強い文字で綴られていた。
平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表
塚田りな恰幅いい体型 (萩谷うてな) |
大西悠司細身で長身 (布川隼汰) |
森月美香謎の転入生 (草刈麻有) |
北山大将タイショウ (亀井拓) |
玉田透タマちゃん (米光隆翔) |
茅ヶ崎紋土後期学級委員 (カミュー・ケイド) |
漆田駿路上ライブ (坂井太陽) |
五十嵐雅迪イガピー (田辺修斗) |
廣野智春お稲荷さんの絵 (菅野隼人) |
里中憲太郎サトケン (廣瀬真平) |
安藤みゆきピコピコハンマー (梶尾舞) |
諏訪部裕美寿司政の娘 (山田麗) |
金井亮子絵画が入選 (忽那汐里) |
田口彩華絵画が入選 (高畑充希) |
江藤清花夜の商店街の絵 (水沢奈子) |
渡部剛史ニコラス (岩方時郎) |
金輪祐樹たぬき風の猫の絵 (植草裕太) |
岩崎浩一チャラ (真田佑馬) |
川瀬光也父さんが入院中 (高橋伯明) |
長谷川孝志気弱、他人の絵を提出 (坂本優太) |
中村美恵子みーちゃん (藤井真世) |
平野みなみナルシスト、顔が命 (菅澤美月) |
佐藤千尋あったかい絵 (森部万友佳) |
和田順子絵画が入選 (井本杏子) |
川上詩織絵画が入選 (牛山みすず) |
教卓 | ※名前にカーソルを合わせると…? |
みどころ談義
- ● 第8シリーズがいよいよ放送開始です!
- ○ いやぁ、3年ぶりの新シリーズだよ。金八が帰ってきたね。もうないかとも思ってたけど。
- ● 今回は原作者の小山内さんがスタートの段階から参加していなくて、かわりに前作を途中から引き継いだ清水有生さんが全編脚本を担当することになっているんです。
- ○ スタッフもこれまでチーフだった福澤Dが外れたから、ここ最近の金八シリーズとは輪郭からして違った物語になりそうだよ。もっとも、清水さんのブログではだいぶ前から「今回は大事件が起きない」と告知があったし、主役の武田さんも同様のことをラジオや番宣番組ではっきりと仰っていたので、一味違った物語に「なりそう」ではなくて、「なる」ことがもう確定しているんだけどね。
- ● 職員室の顔ぶれも変わりますしね。さあ、それでこの第1話・2時間スペシャルなんですけど、いきなりその違いが出たような気もします。まずダークな伏線が思わせぶりに張られている様子はなかったですし、何より、第1話から泣かされそうになったのは初めてですもん。
- ○ そうだなぁ。前作の第1話は麻薬汚染の心配としゅうのパニック、その前は幸作の病気発覚と直のケンカでしょ、第5シリーズは教師リンチと葬式花だもんな。そしてそれらは第1話の中では一つも解決の方向に向かなかった。
- ● それが今回は早くも清花が前向きになって、一つの感動を与えて終わってるんですから、これは大きな違いです。最後の個人ノートがいじらしくて…。「いいんだよ、みんなそんなに強くないんだから」と言ってやりたくなりました…。
- ○ 孝志のエピソードも含めて、第1シリーズの影がちらっと見えるような気がするのはオールドファンだからかなぁ。あの時も確か第1話で吉村孝という全く問題を起こしそうにない子が家出をして、美術で描いた絵というキーポイントがあって、居場所が見つかってちょっとした感動があった話だったんだよ。
- ● なるほど。そこに現代的なモンスターペアレンツやネットカフェでの寝泊りなんていう問題が絡んで新しく生まれ変わると、今回のこのエピソードになるのかもしれませんね。清花は「言えばママがお金をくれる」と言っていて、これはものすごくショックでした。
- ○ 少し前のシリーズなら、清花は援交でお金を稼いで…なんて展開だったかもしれないよね。
- ● そうです。でも何と言ったらいいのか…こっちの方が気にも掛けられていないんだという感じが強くあって、より哀れに思えて。
- ○ 親が出来のいい兄弟の方ばかりに過保護になって、私立の受験に失敗した女の子の方は捨てたも同然というのは、これも第1シリーズの浅井雪乃のケースを思い出した。今回は、親に見放されている清花、親に期待されている孝志が対になった話だよね。でもどちらの子供も心で悲鳴を上げている点は一緒。それが辛い。
- ● 金八先生はもちろんそういう親を熱く一喝する存在なわけですが、ただそんな金八先生も、職員室では予想以上に支持されていなくて、孤立している感じです。遠藤先生は「お父〜さん」というあの馴れ馴れしい気配が全くなくて校長派に鞍替えた様子ですし、本田先生も全面的な金八寄りではないんです。
- ○ 学校選択制による桜中存続の危機というのがかなり深刻なんだね。だからこういう金八先生の理想の行動はいつも以上に学校側から歓迎されなくて、子供に媚びたり成績を上げてやることがまずもって第一という空気に囲まれた中でやらざるを得ない。
- ● うーん。となると、これは今回のシリーズを通して横たわることになる問題なんでしょうね。
- ○ そうだろうね。子供を希望の高校に合格させるためには何だってしなければという親の発想と、学校存続のためにはなりふり構っていられないという桜中の方針。この二つは実はよく似たところがあるんだよ。そのどちらも真の意味では生徒本位じゃないんじゃないのか、生徒の気持ちが反映されていないんじゃないのかと、疑問に思っているのが金八先生、ということなんじゃないかな。
- ● なるほど〜。流れが少し見えてきましたね!
- ○ まぁ、それが正解かはまだ分からないけれど(笑)。ひとまずこの1回目のストーリーの感想としては、子供を泣かすのも笑わせるのも周りの大人次第、そして金八先生のお説教をさっそく堪能できて溜飲が下がったということはいえるかな。清水さんらしいあったかい脚本でありながら、金八シリーズらしい味もしっかり出ていたよね。画もすごく繊細だった。
- ● では細かいことで気になった点はありますか。僕は教室のシーンが最初からすごく盛り上がっていて驚きました。もうちょっと冷めたところからスタートするのが常なんですけどね。おっかなびっくり演技をしてる子も今までより少ないのかなという印象です。
- ○ 演技といえば「顔」の印象が強かったな。美術の立花先生の藤澤恵麻さんには「ミス・困り顔」、以前信太家の継母として登場していた清花の母役のひがし由貴さんには「ミス・ヒステリー顔」の称号を差し上げたい(笑)。それから真面目なことも言うと、金八先生がその清花の母親を一喝していた場面で、清花役の水沢さんがずっと強い目で先生を見ていて、これもなかなかいい顔だったと思う。
- ● 金八先生が孝志や清花から話を聞こうとするときに、必ず最初に自分の話をして警戒心を解いていたのも、そうそうこれが先生のやり方だよな〜なんてニヤニヤしちゃいました。
- ○ そうそう、あれは嬉しかったね。孝志には土手の思い出話、清花には「最近子供が隠し事をして、家に帰っても少しも楽しくない」なんて逆に相談なんかして、うまいこと入っていくのね。これぞ金八節! 清花とは壁越しの会話だったのもよかったな。壁越しだから話せたこともあると思うから。
- ● そしてどうしても気になるのが、便所のラクガキ「裏サイト桜中3B」の問題です。
- ○ 生徒の中にあのサイトを運営してる管理人がいるってことでしょ? これも後々まで尾を引きそうだね。
- ○ いやぁ、3年ぶりの新シリーズだよ。金八が帰ってきたね。もうないかとも思ってたけど。
三年前との教員の比較
- 【校長】 千田喜朗/板橋香奈 → 鹿島田浩二(新/※現実的、成績至上主義)
- 【教頭】 国井美代子 → 【副校長】 北尚明(昇格)
- 【国語】 坂本金八 → 坂本金八
- 【数学】 乾友彦(A組担任) → 乾友彦(学年主任)
- 【社会】 北尚明 → 川口菫子(新/※すみれこ、一風変わった雰囲気)
- 【理科】 遠藤達也 → 遠藤達也(A組担任)
- 【英語】 小田切誠 → 矢沢亮(新/※昔のカンカン風、クールで自信家)
- 【家庭】 小林花子 → 未登場
- 【A・E・T】 シルビア・マンデラ → 未登場
- 【美術】 未登場 → 立花かおり(新/※新採用から半年、教師の信念持つ)
- 【体育】 未登場 → 木村正(新/※サッカー部顧問、さわやかイケメン)
- 【養護】 本田知美 → 本田知美
その他の周辺状況・小ネタ
- 今回のタイトルバックは、柳原の町側から荒川土手を見たショット。
- 坂本家では乙女が養護教諭になり、家を出て「例の人」と暮らす計画がある模様。幸作は埼玉大教育学部在学中で、遠距離恋愛中? 永遠の三角関係は終結か。沖縄県の教員採用試験を受けようとしている。
- 生徒の中で岩崎浩一(通称チャラ)には、「アチャ〜」発言や身振りなど、狩野伸太郎の幻影も若干見える。
- 北山大将、漆田駿に「お前は内申なんて関係ないだろ」とからかわれるとカッとなりケンカを仕掛けようとするが、金八が出席簿で渡部剛史(ニコラス)を叩く真似をすると、「悪りぃ、ニコラス」と言ってあっさり引き下がる。ルールだという言葉も聞こえるが、これはどういうことだろう?
- 絵画展へ出品されることや学級委員になることが内申点のアップに繋がるという定説はクラス中に蔓延しているようで、後期の学級委員を決める際には入試に有利になるならと多くの生徒が続々と立候補する。結果、諏訪部裕美と茅ヶ崎紋土が新学級委員に選出。
- 自信をなくす立花先生に、自分のことを後回しにして生徒のことを考えられるのは良い先生の証拠だと声を掛け励ます金八。第3シリーズの真野との関係にも似ている。ちなみに立花はめいせい美術大卒だとか。
- 清花は大人びた私服に着替えたうえ化粧をしていたので、基本的に中学生の夜間の入場を禁止しているネットカフェに入れたものと思われる。
- この時点での、来年度桜中入学希望者はたったの32名。前年度の2分の1だという。校長は学校PRのため教師陣に個別の家庭訪問を課し、それを受けて金八は第2シリーズの教え子である(旧姓)赤上近子の花屋を訪問。
- 来年中1になる近子の息子は荒谷二中を希望。前年に校舎を新築し、冷暖房を完備して人気の学校だという。あの荒くれ者の巣窟だった荒谷二中に今や入学希望者が殺到しているとは…隔世の感。
- 清花が倒れたのは英語の授業中だったが、そのとき扱われていた内容は、アメリカの黒人公民権運動のために尽力したキング牧師について。
- 金八が足をくじくと介抱してやる優しい清花。また、金八が格好いい役割を果たしながらも足を痛そうに引きずって歩く姿は、どこか三枚目の要素があって微笑ましい。
- 「裏サイト3年B組」はパスワード入室制らしい。
- 詩の授業の最中、金八が清花ばかり指名するシーンで、よく聴くと生徒の中から「ひいき」という不満の声が低くあがっているのが分かる。
江藤清花の「私」ノート
私は何を言われても別にいいって言ったけど、それはウソです。
私は人一倍まわりのことが気になってしまいます。
誰かに何か言われるたび、平気な顔をしてても
本当はものすごく傷ついています。
それは私が弱いからです。
弱いから、母から逃げ出していたのだと思います。
私は強くなりたいです。
誰に何を言われても、どんな仕打ちにあっても
傷つかない強い心が欲しいです。
私は本当に生きてみたいです。
——— 金八 「お前は強くなれる。今度は、俺がしっかり見てるから。頑張れ、『私』。」
参考文献・挿入歌・BGM
- 【音楽】 私の存在の意味 (城之内ミサ)
- 【書籍】 ぎらりと光るダイヤのような日 (茨木のり子著、思潮社「茨木のり子詩集」に収録)