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第8シリーズ 2話 「赤い私服の転校生」
3年B組に転校生・森月美香(草刈麻有)がやってきた。美香は「転校の理由は親から自由になるため」と言い放つ毅然とした少女で、「制服を着る意味が分からない」と私服で登校、北副校長(金田明夫)の厳しい注意にも「だったら私を追い出してみてください」と悪びれる風もない。北は他の生徒への影響を懸念し、はじめ美香に好意的だったクラスメイトたちも教師に強気な態度をとる様子を見るや、美香に近づくと自分の内申に傷がつくのではと疑う者が出始める。
長谷川孝志(坂本優太)の両親が絵画展の件で都の教育委員会に直訴し、理不尽にも立花先生(藤澤恵麻)の異動を申し立てた。その噂は瞬く間に広まり、立花を慕う北山大将(亀井拓)が孝志を殴る事件が起こる。事を穏便に収めたい鹿島田校長(浅野和之)が孝志の絵の出品を勧めるため、立花は苦悩。金八(武田鉄矢)はそれを見て、大人の都合でルールを変えてはいけない、孝志が苦しみながら自分の力で問題を解くことが大事だとアドバイスを送る。
親が撒き散らす身勝手な噂に耳を塞ぐ孝志、その噂のためゴマ擦りの嫌疑をかけられた生徒が絵の入選辞退を申し出て動揺する立花。裏サイトには早速この騒動について陰湿な書き込みが…。
立花は金八の言葉を思い出し、美術の授業で自画像を描かせて自分を見つめさせることを思いつく。出来上がった絵はどこか違う顔だと生徒たちが口を揃えると、金八は「人間は自分の目で自分の顔を見ることができない。本当の顔をよく知っているのは自分以外の人、特に親だ」と言う。親は本当の自分を見てくれているだろうか、煩悶の末に帰宅した孝志は必死に尋ねるが、両親は答えをはぐらかすばかり。孝志はついに絵は自分が書いたものではないと白状し、「もっと僕を見てよ!僕が誰なのかちゃんと教えてよ!」と泣きながら訴えるのだった。
翌日、孝志は個人ノートを提出する。そこには「何が変わったのか分からなかいけれど、とにかく僕は本当のことを言えました」と書かれていた。両親は教育委員会への抗議を取り下げたという。立花が「長谷川君の答えを待ってよかった」と金八に嬉しそうに語る帰り道、荒川の土手には自分の手で風景画を描き始めた孝志の姿があった。
平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表
塚田りな (萩谷うてな) |
大西悠司美香を見て「超カワイイ」 (布川隼汰) |
森月美香私服で登校、制服は着ない (草刈麻有) |
北山大将かおりんシンパ (亀井拓) |
玉田透美香に見とれる (米光隆翔) |
茅ヶ崎紋土実は英語が嫌い (カミュー・ケイド) |
漆田駿美香の態度に「格好いい」 (坂井太陽) |
五十嵐雅迪 (田辺修斗) |
廣野智春美香は特例なのかと抗議 (菅野隼人) |
里中憲太郎自画像発表のとき「ヤベェ」 (廣瀬真平) |
安藤みゆき「ニコラスがちんちんいじってる!」 (梶尾舞) |
諏訪部裕美転校生情報をいち早く発表 (山田麗) |
金井亮子 (忽那汐里) |
田口彩華絵の出品を辞退 (高畑充希) |
江藤清花 (水沢奈子) |
渡部剛史ちんちんいじる (岩方時郎) |
金輪祐樹「入選した奴はゴマ擦り」と煽る (植草裕太) |
岩崎浩一遠藤に携帯を没収 (真田佑馬) |
川瀬光也金八曰くポリネシアの少年 (高橋伯明) |
長谷川孝志美香の態度にハッとする (坂本優太) |
中村美恵子 (藤井真世) |
平野みなみ悠司と舌戦 (菅澤美月) |
佐藤千尋 (森部万友佳) |
和田順子バレエの練習 (井本杏子) |
川上詩織絵画の出品を辞退 (牛山みすず) |
教卓 | ※名前にカーソルを合わせると…? |
みどころ談義
- ● タイトル通り、風変わりな転校生がやってきたという流れと、前回から続く孝志と立花先生の話が解決するという流れ。そういう第2話でしたね。
- ○ 孝志の件では都議会議員が動くなんて話も聞こえてきたから、オイオイそういう政治力を相手に戦っていかなきゃならないの?とちょっと気が重くなりながら最初は見てたんだけどね。でもそうじゃなくて、後半は初回のパターンを踏襲したすがすがしい展開になって、すごく温かかった。
- ● 立花先生も孝志も、悩みぬいた末に自分で答えを出したという、ちょっといい話でしたね。第1話もそうでしたが問題の本質からまるまる解決できたわけではないんですけど、気持ちが本当に前向きに、強くなっていくという感じで。
- ○ そうだなぁ。金八先生は孝志本人の力で回答させるのが大事なんだと立花先生に言うんだけれど、その言葉が立花先生にとっても自分のポリシーを信じることに繋がって、二人をいっぺんに解決に向かわしめたというところはホント上手いと思う。孝志は自画像にも個人ノートにも書き直しの跡がたくさんあってさ。悩んで悩んで悩みながら一生懸命書いたという感じがすごくして。グッときたなぁ。
- ● 立花先生もすごくいい先生なんですよね。前回の最初の方では孝志の親にちょっとヒステリックになっていてビックリしたんですけど、実はあの若さで生徒を思ってかばうことが出来るという。きっとしっかりした審美眼があるから、あの絵を他人のものだと見抜けたんですよ。
- ○ なるほどね。そういう眼を持っているからこそ、孝志の内面に潜む悩みにも目が向いたのかもしれないね。
- ● 孝志は殴られたりもしてたのでイジメの対象に既になっているのかな、という暗い予感も一瞬よぎったんですが、案外あっさりと大将は謝っていて。いつも目の敵にするような表立った暴力はないみたいですね。
- ○ そのぶん陰に隠れた部分に根深いものがある。裏サイトでは誰が書いたか分からないような格好で「孝志が転校すればいい」とか言われているわけだから。
- ● そこはホント陰湿なんですよね。
- ○ 「内申にひびく」という言葉が生徒たちの口からすごくよく出てくるじゃない。それもこの問題と無関係じゃなくて。生徒の間には、表立って問題を起こすと即、内申にひびくという頭があるし、噂レベルのことでも先生の心象を悪くしかねない。だからチクリとやるにも誰にも分からないようにしなければならない、という理屈なんじゃないかな。
- ● 孝志の親って、生徒たちが裏サイトで身を隠しながらやってるような無責任な噂話を電話でじゃんじゃんやってるんですよね。だもんだから子供、つまり孝志はそこから逃れるように、逃れたくて、内へ内へと向かわずにはいられない。このあたりに一つ大きな根っこがありそうです。
- ○ 今回のキーワードは「本当の自分」だったのかな。自宅で悩む立花先生が鏡を見ながら呟いた言葉だし、金八先生は自画像の授業の中で「自分の知ってる自分と違うのは、本当の自分ではないから」と言っていたし、孝志も最後、個人ノートに「僕は本当のことを言いました」と書いていた。
- ● 転校生の美香という子も、本当の自分を出そうとしてああいう態度になっているんでしょうかね。
- ○ んー、こっちはまだまだ謎だらけだね。
- ● 「制服を着る理由が分からない」ということですが、○○する理由が分からない、という悩みはこの時期よくあることじゃないですか。勉強しかり。
- ○ そうなんだけど、でも美香は悩んでいる風ではないんだよな。「理由が分からない、だからしない」で完結している感じで、屁理屈こねてるようにも見える。そして社会の一員として規範を守る意識が希薄。なぜそうする必要があるのか自分で考えようとしていない様子が気になる。
- ● もしかしたら、第1話の「なぜ自分は生きていくのか、それが分からないと人間は生きていけない」という金八先生の主張にも繋がってくることかもしれないですね。まぁ、深く考えずに周りに流される方が楽だと考える人も実際大勢いるんでしょうけど。金八先生はそうは考えない。
- ○ 美香のことで一つ言えることは、「親から自由になる」という美香の最初の挨拶を聞いて、孝志がハッとしてたでしょ。だから、孝志が両親に正直に話すことができたという大きな流れの要因として、美香の存在もあったと思うんだよね。
- ● そうでしたね。そして最後にはみなみが美香の私服を真似て登校するという、かなり分かりやすい形での影響というのが見えて次回に続きます。騒動になりそうで、気になりますね。
- ○ ところで、今回はベテランの生野Dが演出した久しぶりの金八でした。
- ● データを見ると第6シリーズの2話以来の担当ということなんですが、その前に担当したのは第4シリーズですからとても久しぶりな気がしますね。あの加藤優の連行シーンに中島みゆきの「世情」を乗せるという英断をしたディレクターさんなんですよ。
- ○ 第1シリーズでは、長ラン姿で街を闊歩する回で甲斐バンドの「特効薬」、元気が出る課外授業の回では永井流雲の「道標ない旅」、悦子先生に恋をした沢村にはオフコースの「さよなら」と、そのときの心情とうまく重なった挿入歌を入れて、PV的な映像を作るのが本当に上手いんだよね。
- ● そして今回は森山直太朗を使ってきました。
- ○ これが生野さんの金八だ!と膝を打ったマニアの方、結構いたんじゃないかな。
- ○ 孝志の件では都議会議員が動くなんて話も聞こえてきたから、オイオイそういう政治力を相手に戦っていかなきゃならないの?とちょっと気が重くなりながら最初は見てたんだけどね。でもそうじゃなくて、後半は初回のパターンを踏襲したすがすがしい展開になって、すごく温かかった。
その他の周辺状況・小ネタ
- 「制服を着たがらない転校生」といえば、第6シリーズの鶴本直か。
- 校長は意外にも立花を擁護し、孝志の親のクレームは根拠に乏しいと冷静に分析している。しかしまず波風を立てないことが大事だという経営的観点から、立花に孝志の絵を出品するよう暗に指示。矢沢先生の言う「バランス感覚」もこういうことなのだろう。
- 立花先生は生徒から「かおりん」と呼ばれ親しまれている模様。特にファンなのは大将、チャラ、悠司。
- それを聞いた本田先生は自分も「ともりん」と呼ばれたいと言うが、金八は「本ちゃん」がいいとそっけない。
- 「悪いことをしたクラスメイトが謝らない場合、ニコラスが『ぐりしっぺ』になる」というルールが3Bにはある模様。なぜそんなルールが出来上がったのかは謎。そもそも「ぐりしっぺ」とは何だ?
- 金八、矢沢先生に反論した勢いで北先生を「あの人は綱渡りと皿回しの人」と言ってしまい、本人に聞かれてしまう。遠藤先生も「あと玉乗り!」と乗っかってしまった。
- 親に抵抗できずにいた孝志、裏サイトに「バカ親は死ね」と書き込んでいた。が、そんなことで鬱憤は晴れず、もちろん解決にもならず。
- 乙女、新恋人とディナー? そのころ金八と幸作は焼きそば(カップ麺)に炒飯にフライドポテトというコンビニ的な夕食をとっていた。幸作は料理も出来るマメな子のはずだが…忙しかったのだろうか。
- このとき幸作は都合よく裏サイトの話題を持ち出す。「毎日顔合わせてるのに、直接言わないでネットでいろいろ言うからおかしなことになる」「コミュニケーションが進化したように皆錯覚してるけど、かえって人と人とのふれあいが希薄になった」「知らない間に自分の悪口が書き込まれているかもしれない、その不安でチェックせずにはいられない」「誰が書いたか分からないから発言もかなり過激になる。悪口や中傷がひどいらしい」と次々に解説。無意識のうちになかなか重要な言葉をピンポイントで投げかけてくるあたり、さすが金八の遺伝子を継いだ息子である(笑)。
- また幸作は、金八が心のホームページを開設したと聞いて、そのネーミングセンスに「父ちゃん、それ生徒かなり引いたでしょ」とグサリ。
- かおりんシンパの大将、チャラ、悠司は異動を阻止する署名集めをしようとするが、クラスメイトたちはこれも内申に傷がつく可能性があるといって乗ってこない。一方で噂には敏感で、多くの生徒が面白おかしく反応。祐樹にいたっては「入選した奴は皆ゴマ擦りじゃん」とまで煽っている。
- 金八は美香の私服登校について全く見ぬフリをしていたわけではなく、美香に放課後職員室に来るようにと言ってフォローに当たろうとしていた。が、美香はすっぽかした。
- 土手に座り川を眺める孝志、金八が無言で横に座ると走り去ろうとするが、途中で立ち止まり、金八に何か言いたそうな顔で振り向いた。1話では一目散に走り去っており、このあたりにも孝志の微妙な心境の変化が表現されている。
- 生徒の顔を次々に何かに例えていった金八だが、実は第3シリーズ2話でも同様のことをしている。「正直地蔵様」、「インカ帝国の女王」、「南太平洋の少年」などと言われた生徒がいた。
- 金八、「家に帰ったら、私の本当の顔ってどんな顔、と親に聞いてごらん」と生徒に向けて言った際、孝志の机の端をさりげなくコツコツと叩いて訴えかけている。
長谷川孝志の「私」ノート
立花先生は自画像を描くのは
自分を見つめる作業だと言いました。
金八先生は自分の知らない自分、
本当の自分が見えてくると言ってました。
僕は自分の顔を描くのがすごく怖かった。
何度描いてもまるでお化けの顔みたいに
なってしまって、何度も何度も描き直したけど
描けませんでした。
それはどうしてか自分でわかってます。
だから昨日、僕は親に本当のことを言いました。
なにが変わったかわからないけど、
とにかく僕は、本当のことを言えました。
——— 金八 「人生は、自分で出した答えだけが答えなんです。」
参考文献・挿入歌・BGM
- 【音楽】 生きとし生ける物へ (森山直太朗)