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第8シリーズ 5話 「親の希望 子供の夢」
定期テストまであと一週間。美術と体育の他はオール1の川瀬光也(高橋伯明)には既に就職口が決まっていたが、突如、高校へ行きたいと言い出した。教師になる夢を諦めたくないというのだ。父の入院で家計が苦しいこともあり、母親は進学に猛反対。しかし金八(武田鉄矢)は働きながら定時制で学ぶ道もあると言い、「まずはやらせてみて、それで内申が少しでも上がれば考え直すというのはどうか」と提案する。
この話は耳聡いクラスメイトの手でさっそく裏サイトに流され、3Bでは光也をからかう生徒が現れる。そこで金八は、光也よりも低い成績から一念発起して教師になった人の本を紹介。著者と同じように人生に「自分だけの問題」を見つけた光也を称え、「問題を持っていない人は自分を変えることができない。問題さえ見つかれば、人は答えに向かってまっすぐ歩いていくことができる」と生徒たちに伝えるのだった。
光也は、小学生の頃イジメられていたと金八に告白する。我慢できずに学校を飛び出し、死のうと思ったが、担任の先生が黙って後をついてきてくれ、そのおかげで踏みとどまれたという。そんな落ちこぼれの気持ちが分かる先生になりたいというのが真意だった。もう遅すぎるかと尋ねる光也に「遅すぎるもんか」と即答する金八。他の先生の理解もあり、光也は放課後に補習を受け、中一の勉強からやり直して高校進学を目指すことになった。
一方、サトケン(廣瀬真平)の不登校は続いていた。自分のことで両親が言い争いを始めると、サトケンは「全部お前のせいだ!」と父・和彦(小宮孝泰)を殴ろうとする。和彦は息子に幸せな人生を送らせてやりたいと、自分の経験から「一流の大学を出て一流の企業で働くべき」との考えに至り、野球を取り上げたのだ。しかしその思いが伝わるどころか親子がまともに口をきくこともなくなり、和彦は息子に憎まれたと思い込んでいた。
金八は、訪ねてきた和彦に光也のことを話し、「小さい頃の宝物のような思い出が人を動かす」と語る。そして母親から預かったサトケンの古い野球帽を見せ、これを返すところからやり直してはどうかと提案。帽子に記された「一球入魂」の文字はかつて和彦が贈ったもので、その言葉はサトケンにとって今もメールアドレスに使うほどの宝物になっていたのだ。「野球はお父さんの愛情そのもの」。その金八の言葉に和彦は胸が一杯になり、夜の河川敷で泣きに泣くのだった。
平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表
塚田りな裏サイトに書き込み (萩谷うてな) |
大西悠司 (布川隼汰) |
森月美香 (草刈麻有) |
北山大将九教科の評定が19 (亀井拓) |
玉田透九教科の評定が21 (米光隆翔) |
茅ヶ崎紋土九教科の評定が23 (カミュー・ケイド) |
漆田駿チャラとコンビニ (坂井太陽) |
五十嵐雅迪ミラクルゴーグルを知ってた (田辺修斗) |
廣野智春 (菅野隼人) |
里中憲太郎依然として不登校 (廣瀬真平) |
安藤みゆき (梶尾舞) |
諏訪部裕美光也イジメをたしなめる (山田麗) |
金井亮子 (忽那汐里) |
田口彩華 (高畑充希) |
江藤清花 (水沢奈子) |
渡部剛史裏サイトでオール5説 (岩方時郎) |
金輪祐樹「3Bで一番バカは誰」を企画 (植草裕太) |
岩崎浩一九教科の評定が18 (真田佑馬) |
川瀬光也九教科の評定が14 (高橋伯明) |
長谷川孝志自分だけの問題がない (坂本優太) |
中村美恵子 (藤井真世) |
平野みなみ九教科の評定が21 (菅澤美月) |
佐藤千尋 (森部万友佳) |
和田順子 (井本杏子) |
川上詩織裏サイトに書き込み (牛山みすず) |
教卓 | ※名前にカーソルを合わせると…? |
みどころ談義
- ○ ラーメン屋に第4シリーズの杉山修一が!
- ● そこから入りますか(笑)。たしかにいましたね。修一ってなんだかんだで、第5シリーズ以降も地味〜に結構な頻度で出ている気がします。
- ○ でもあそこでわざわざ修一を出してきたのには意味があったと思うんだよ。修一も光也と同じように、勉強のできる生徒ではなかったじゃない。それが今やこうして自分の道を見つけて、立派に店を切り盛りしている。だから光也の夢の先輩みたいなものだよね。
- ● なるほど。その修一のお店を舞台にしたぶん、あのシーンは味わいを増したというわけですね。さあ、その光也の話なんですが、勉強するモチベーションを得た生き生きした表情が印象的で、イジメられた苦い経験から「落ちこぼれの気持ちが分かる先生になりたい」と言ったのも素敵でした。金八先生に憧れたのではなく、昔の担任やオール1の宮本先生に感銘を受けたというのも面白いところだと思います。
- ○ そして、金八先生が持っている「まずやらせてみよう」という姿勢。これが昔から本当に変わっていなくて、いいんだよね。前作のヤヨもそうだったんだけれど、ほとんど無理に見えることでも、種をまくことが大事なんだっていう。
- ● やる前に無理かどうかを決めてしまう必要はない、と可能性をすごく大事にするんです。
- ○ でもここでポイントなのは、金八先生も「努力すれば何でもできる」とやみくもに押し付けてるんじゃなくて、あくまでも生徒の気持ちが先にあって、その気持ちを酌んで後押ししようとしてるということ。芽を摘まないことで、自信をつけさせようとしている。
- ● 一方、先生がそういう姿勢でいる反面、3B裏サイトがかなり盛り上がっていて不穏です。やっぱり金輪祐樹が率先して煽ってましたし、詩織やりなといった、わりと地味で目立たない子が積極的に書き込んでいることが分かりました。
- ○ 祐樹は第1話からやけに携帯をいじっていたり、噂に火をつけるような言動が目立っていたり、前回では3歳からパソコンを使っていることが分かった。やっぱりきたかという感じ。詩織やりなは、このからかいが教室に場所を移したときには全く関係ない顔をしているのが怖いよねぇ。
- ● それで教室では光也がかなり残酷な仕打ちを受けてしまうんですが、これは少し唐突だったというか。
- ○ そうだね。今回の生徒は表立って卑劣なことはしない明るい印象があったから。まぁ、祐樹が光也をバカにするような書き込みを裏サイトにしたのが事の発端だから、そこから急にこうなってもいいのかもしれないけど、前回までに前フリが一つあってもよかったかな。いきなりあんなバカ認定証なんて作っちゃったら誰が裏サイトに参加してるのか丸分かりだと思うし。
- ● チャラが特にすごい悪態つくんですよ。こんな悪い生徒でしたっけ?っていう。
- ○ でも最後にはそのチャラと大将とみなみの3人が光也の補習に合流してたんで、何らかの理解はあったようだけれどね。2割引が分からないというのが補習参加の前フリだったのかもしれないけど、これまたちょっと情報が足りないというか…。今回はあれかな、内容が濃かったぶん、端折らざるを得ないシーンが多かったのかな。
- ● 「これからも丁寧に作っていってほしい」ってことを前回ここで言ったばかりだったんですけどね…。後半、サトケンと父親との話になってからは特に場面展開が速かったように感じました。
- ○ でも内容自体はいい話だったよ。サトケンの「一球入魂」で泣いた父、ついに息子の味方になった母。前にも言ったけど、親が単なる悪者っていうんじゃなくて、このお父さんにも理由がある、お父さんも救われる、そういう話が見たかったから。
- ● たしかに、和彦さんの愛情がすごく分かりましたね。自分が学歴で苦労してるから、息子を思って、学業を優先させたかった。それが息子のためだと思っていた。
- ○ でも、押し付けじゃ何にもならないと金八先生は言うわけ。ほら、「押し付けない」「芽を摘まない」という光也のときと同じ姿勢がここにも。
- ● そうですねぇ。だから金八先生の結論も、「学歴がなんだ!」と一方を否定するような安っぽいものではなくて、お互いの気持ちを表に出して「話し合ってみてください」というものだったんですね。親子が会話することが大切なんだと。
- ○ そしてもう一つ、光也のこともサトケンのことも、「少し前に戻ってやり直す」という共通点でまとまっていたよね。「将来」をしっかり見据えるために、少し「昔」に立ち戻ってみるのもいいじゃない。そんなメッセージも感じたなぁ。
- ● なるほど…。それにしても今回は、金八先生の言葉がたくさん楽しめた回でしたね。
- ○ うん。生徒だけ、親子だけで何かするというシーンがあまりなくて、展開のほとんどに金八先生が直接絡んでいたからね。教室で3Bに、ラーメン屋で光也に、夜にはサトケンの父親に、名言・至言の大放出(笑)。
- ● 舌まわりがよすぎて、前回の「愛情があまりに深いと無口になる」というのはどこ行っちゃったんだいう気もしますけど(笑)、これどうですか? 名言は金八先生の大きな魅力ですが、連発するとよさが薄れるというか、なんかこう若干勿体無いような感じもしてしまいます。
- ○ たしかに、語らないことで伝わるものもあるよね。だから場面の展開を急いで内容を詰め込むよりも、ゆったりとした時間の経過の中、ここぞのタイミングで名言一つ、みたいなのが一番バランスがいいのかもしれないな。それと、懐深い余裕から満を持して真理を諭すような言葉が多いけれど、もっと単純な「こんっ、バカチンがぁ!」みたいな熱いパワーも見たいなぁ。ここまで要求しちゃうと贅沢かな。
- ● では、最後にもう一ついいですか。成績アップを謳う、2万円もする怪しげなミラクル・ゴーグルってのがあったじゃないですか。あのくだりは必要だったんでしょうか? バカ証明書だけで十分でしたよね。
- ○ あぁ、あれは光也のおバカ加減を示したというのと、あと金八先生はすぐにクーリング・オフを勧めたじゃない。「気づいてすぐにやり直せば、手遅れになどならない」という今回のテーマを、一番最初に微妙〜に意識させたんだと思うよ。
- ● !! これにもそんな意味が込められてたのか!
- ● そこから入りますか(笑)。たしかにいましたね。修一ってなんだかんだで、第5シリーズ以降も地味〜に結構な頻度で出ている気がします。
その他の周辺状況・小ネタ
- サトケンに励ましのメールを送った生徒は裕美と悠司のみ。二人ともサトケンとは以前から近い仲であり、前回の裕美の提案を受けて新たにメールを思い立った者はゼロ。
- うまそうなビーフシチューを作る金八。「お隣の福澤さんに教わった」と、福澤元Dの「ジャイカレー」を連想させるような一言。このシチューを乙女は帰宅早々パクつくが、手を洗った様子がない。昔のしっかりした乙女はどこに…。また、金八はこのとき老眼鏡を掛けていた。
- 光也の母親役を演じている柳岡香里さんは、第7シリーズでは長坂和晃の母親役として出演していた。舞台的な声量と滑舌のよさですぐにピンと来ました。サトケンの父親役の小宮孝泰さんは第5シリーズの鈴木サオリの父。
- 乙女と幸作、光也がどこから勉強が分からなくなっているか一緒に探してやる。二人とも、人の心の痛みが分かるいい先生になれそうだ。幸作が教えている英語の内容は、第1話の矢沢先生の授業に続いてキング牧師について。
- 彼氏からの電話をやたらと気にする金八に対し、乙女は「今すぐ家を出て行ってもいい」と強気の抗議。
- 遠藤先生は中学生の頃、相当ボンクラだったらしい。金八談。
- 補習授業に前向きな姿勢を見せる校長先生。「生徒の成績が上がれば桜中の評判も上がる」と経営的観点からのことだったが、動機はどうあれ珍しく金八と意見が一致。
- 光也は、本の著者の宮本さんだけではなく物理の天才・アインシュタインにも似ていると言われ、目の前がパッと明るくなる。
- 乾先生、本田先生は補習授業の依頼を快諾。本田先生の授業はなぜかストレッチで、本田先生、かなり体が柔らかい。金八はガチガチに固く、無理をして関節を痛める。
- 金八、修一に「乙女をお前に嫁にやっときゃよかった」発言。杉山家はその昔、家族揃って乙女を嫁にと狙っており、修一は今なお乙女が気になっている様子だ。
- 竹刀を片手に授業を進める菫子先生、我が子のことで煩わしそうにしながらも、光也の熱意に触れて補習に協力する。矢沢先生は「安っぽいヒューマニズムは大嫌い」と言いながらプリントで協力。遠藤先生は出遅れ、バツが悪そう。
- サトケンの古い野球帽は、父親が捨てようとしたゴミ袋の中から、母親が拾って取っておいたもの。
- 裕美が作った「サトケンを励まそうポスター」のおかげで、サトケンが「一球入魂」という言葉を今も大事にしていることが父親に伝わる。勝手にメールアドレスを掲載してしまうという裕美のお節介がこの結果を生んだのだが、金八が前回言った「いい意味で、お前みたいなお節介が絶対に必要なんだよ」という言葉が実証された形。
参考文献・挿入歌・BGM
- 【書籍】 オール1の落ちこぼれ、教師になる (宮本延春著、角川書店)
- ※金八先生がビーフシチューを取り分けながら口ずさんでいたのは、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」。