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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第8シリーズ 8話 「子守歌に託した夢」

「中学生英語スピーチコンテスト」が近づき、帰国子女で英語の得意な金井亮子(忽那汐里)が3Bの代表に選ばれた。一方、実習生の幸作(佐野泰臣)が担当する英語の授業では、ハーフだが英語の苦手な茅ヶ崎紋土(カミュー・ケイド)が、教材であるキング牧師の名演説をスラスラと暗唱して皆を驚かせる。ただし意味は分からないという。実はこの言葉は、父親の顔を知らない紋土へ母親がよく子守歌がわりに聞かせた「パパが大事にしていた言葉」でもあったのだ。

紋土はフロリダで暮らす軍人の父から届いた手紙を読むことが出来ず、亮子に翻訳を頼もうとする。ところがその様子を目撃したクラスメイトがラブレターだと決めつけ、3Bはその噂で持ちきり。気まずくなった亮子は紋土の手紙を叩き捨て、「何で私が黒人なんかと付き合うの!」と暴言を吐いてしまう。傷ついた紋土は差別を受けた幼い頃の記憶が蘇り、気晴らしのストリート・ダンスでも街の不良に絡まれて、ついに暴力で反撃。警察に補導されてしまう。

金八(武田鉄矢)は、ゲームを交えつつ、身近に蔓延る差別問題を3Bに説明。幸作の授業を引き継ぎ、差別とは何か、愛とは何かをキング牧師から学ぶべきだと諭す。また、紋土の父が子守歌に託した“I have a dream”の一節について、「その言葉を受け取りたいと思うなら、君もまた“I have a dream”と返事をすることだ」と紋土に伝える。手紙がラブレターでないことを知った亮子は涙ながらに謝罪し、改めて手紙を通訳。父親の気持ちを知った紋土はむせび泣く。

スピーチの3B代表には紋土が相応しいと亮子が提案すると、生徒たちも次々と賛同する。亮子の特訓やクラスメイトの協力を受けてコンテスト当日を迎えた紋土は、出だしこそ躓くが仲間の声援で持ち直し、自らの差別体験や支えてくれる人々の大切さについて堂々と演説。3位という十分すぎる結果に紋土は笑顔を浮かべ、団結して後押しした生徒たちも自分のことのように喜び合うのだった。

07年11月29日放送

脚本: 清水有生

演出: 加藤新

視聴率: 9.3%

参考文献・挿入歌

平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表

塚田りな
(萩谷うてな)
大西悠司
(布川隼汰)
森月美香
(草刈麻有)
北山大将
(亀井拓)
玉田透
(米光隆翔)
茅ヶ崎紋土
(カミュー・ケイド)
漆田駿
(坂井太陽)
五十嵐雅迪
(田辺修斗)
廣野智春
(菅野隼人)
里中憲太郎
(廣瀬真平)
安藤みゆき
(梶尾舞)
諏訪部裕美
(山田麗)
金井亮子
(忽那汐里)
田口彩華
(高畑充希)
江藤清花
(水沢奈子)
渡部剛史
(岩方時郎)
金輪祐樹
(植草裕太)
岩崎浩一
(真田佑馬)
川瀬光也
(高橋伯明)
長谷川孝志
(坂本優太)
中村美恵子
(藤井真世)
平野みなみ
(菅澤美月)
佐藤千尋
(森部万友佳)
和田順子
(井本杏子)
川上詩織
(牛山みすず)
教卓※名前にカーソルを合わせると…?

みどころ談義

● 人種差別という大きな社会問題をテーマに、一人の生徒をクラス全体が応援するという展開。とても金八らしい王道のストーリーでしたね。
○ うん。有名なキング牧師の「I have a dream」という演説の言葉を介して、世界の人権問題から紋土の家庭事情、15歳が将来に抱く夢までがうまく絡まった構成は見事だったなぁ。
● 紋土は亮子の暴言に反論する気力さえなくしていて、差別を受けることに対して諦めがあったと思うんですが、何度も気持ちが揺れる中、最後には自分自身を愛せるようになって…。今回もまた生徒の意識が前向きに変わった、いいエピソードでした。
○ 思えば、紋土は今まで目立ったことがないという悩みも抱えていて、たしかそれを打ち破ろうと学級委員になったんだと記憶してるんだけれど。
● あっ、そういう話がありましたね。今回はスピーチコンテストという晴れがましい舞台が用意されましたから、じゃあ、そういう部分でも紋土は嬉しかったでしょうね。
○ 生徒個人にしっかりと背景があるぶん、その気持ちがよく理解できたような気がするな。亮子にだって自分も差別を受けて傷ついた経験があるのに、それでも瞬間的にカッとなったり、ちょっとした油断があると罵る側へ無意識に回ってしまうという怖さ。これもなるほど、分かるというか。
● 生徒の背景ということで言えばですよ、亮子に手紙を読んでやるよう率先して提案し、また廊下に出ようと先鞭をつけたのは、駿悠司孝志の3人だったじゃないですか。この3人は、これまで金八先生に力になってもらって、個人ノートを提出した3人なんですよ。
○ そうなんだよね! 第8話までストーリーが進んできて、「前向きな意識を持てるようになった生徒」が「今、悩んでいる生徒」を思いやって同情するやり取りが見られるようになってきたという。
● 特に前回紋土と親しくなった駿! 効いてましたよねぇ。屋上で、紋土の隣に黙って座ってやるところなんてすごく優しさが出ていました。
○ 紋土からラブレター事件の真相を聞いて、それを皆に話した方がいいと言うんだけど突っぱねられて、何も言えなくなった場面があったでしょ。あそこもさ、駿は前回の自分の気持ちと照らし合わせて色々思ったんだろうなぁと考えるとグッとくるよね。
● さて、そういう悩みを授業の中で快方に持っていくのが最近の金八先生なわけですが。珠玉の名言が今回も出ましたねぇ! キング牧師からの引用で、「憎しみは憎しみを生む。愛だけが憎しみを消し去ることができるのだ」という言葉。印象的でした。
○ そうだね。これは単に差別問題だけについて言っているんじゃなくてね、自分の価値観だけを大事にして他者をむやみに否定するのはよくないよ、という風に解釈すれば、美香の様子なんかとも繋がって、3B皆の心に響く言葉なんだろうと思う。
● このキング牧師の話って、幸作の授業内容を金八先生が引き継いだものじゃないですか。それにもまたグッときちゃって(笑)。冒頭で大森巡査やアッコさんが「親子鷹!」と目を細めていたのと同じような感慨を感じちゃいました。
○ 一応、2話で一度立花先生と自画像の共同授業のようなことをしていたことがあったけれど、坂本家の親子リレーとなると特別だよね。幸作は紋土のことを「無茶苦茶気になるんだよね、あの子のこと」と金八先生に相談してさ、金八さんも「じゃあもっと突っ込んだ授業やってみろよ」なんてアドバイスしたでしょ。あの関係がとってもいいよ。
● 金八先生の影響が見える幸作の授業といい、幸作の思いを引き継ぐ金八先生の授業といい、最高の親子ですね。
○ まったく同感。今回のシリーズは親子関係が大きな主題になっている中で、この父と子は本当に素晴らしい、理想的な関係だと思うよ。
● 最後にまた一ついいですか。紋土の母親役の女優さんは池津祥子さんでした。もともと舞台の人なんですが、最近はTVドラマや映画でも独特の存在感を放っている実力者の役者さんです。
○ ということは、第7シリーズの甲本雅裕さんみたいに、後々までストーリーに関わってくるかもしれない存在だってこと?
● そう思うんです。あんまりまだ知名度は高くないんですけどバイプレーヤー適正が非常に高い実力派の演者さん、という共通性からすると、決してチョイ役なんかではないはずで、まだまだ重要な役割を果たすんだと睨みます!
○ まぁたしかに、ここ何話かでは、チョイ役と呼ぶのに相応しいのはサトケンの方だもんなぁ。7話ではまるで出番がなくて、今回はメールが届いたシーンの1カットだけっていう。
● サトケンはすっかり不憫です…。次回こそ進展を期待したいんですけどね。でも次回予告には、また紋土の母親が出てました(笑)。

その他の周辺状況・小ネタ

戦地に赴く父親から、紋土に届いた手紙

今さら言い訳をしてもどうにもならないかもしれないし、お前は許してくれないかもしれないが、アメリカに帰った時、私の父、つまりお前のお爺さんが重い病気で、私は看病するために必死で働かなければならなかった。

そして、お爺さんは二年前に死んだ。

ただ、この十数年、日本にお前とお前の母親を残してきたことを後悔しない日は一日もなかったことだけは分かって欲しい。

できれば最後に、もう一度この腕の中にお前を抱きしめてから死にたい。

紋土のスピーチ

僕は父親の顔を知りません。でも僕の肌の色や髪や顔のかたちは父から受け継いだものです。

僕は日本人の母に育てられ、日本語を話し、日本で教育を受けましたが、小さい頃からこの容姿のために差別され、いじめに遭ってきました。

僕は差別されながらも、どこかでそれは仕方ないことだと思って諦めてきました。

だけど、金八先生がそれは違うと教えてくれたのです。

幸作先生も公民権運動の指導者、キング牧師について教えてくれました。

そして僕はあの有名なキング牧師のスピーチ「I have a dream」の本当の意味を知りました。

僕は今まで自分が差別されて当たり前だと思ってきましたが、今は違います。

僕はキング牧師が残してくれた言葉を理解した事で、生まれて初めて自分自身を愛する事ができるようになりました。

それに僕には僕を支えてくれる先生がいます。そして大切な友達がいます。

それから自分を生んでくれた母と、父がいるのです。

みんなへの感謝をこめて父がよく口にしていた「I have a dream」の一節を聞いてもらいたいと思います。

I have a dream today.

I have a dream that one day down in Alabama, with its vicious racists, with its governor having his lips dripping with the words of interposition and nullification - one day right there in Alabama little black boys and black girls will be able to join hands with little white boys and white girls as sisters and brothers.

(※実際は全て英語スピーチ。日本語部分は翻訳テロップを記載。)

参考文献・挿入歌・BGM

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