第4回 母音幹変化の名詞

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[要点]
  1. 第二変化名詞(ο変化)
    1. 男性・女性
    2. 中性
    3. 中性複数の名詞についての注意
  2. 第一変化名詞(α変化)
    1. 女性
    2. 男性

第二変化名詞(ο変化)

 第二変化名詞はο変化名詞(o-stem nouns)とも呼ばれます。−οςに終わる男性名詞と女性名詞(女性名詞はわずか)と、−ονに終わる中性名詞を含み、次のように変化します。

第二変化名詞の変化表

 青字や赤字の部分が変化語尾です(注: アクセントの位置と種類は単語によって変わります)。第二変化では男性と女性はまったく同じ変化をします。男性・女性と中性が異なるのは単数主格と呼格、複数の主格と対格と呼格で、それ以外の格では男性・女性・中性ともに語尾は共通です。

男性・女性(第二変化名詞)

 名詞はふつう男性・女性・中性のいずれか一つの性でしか使われませんが、第二変化名詞のなかには男性・女性の二通りの使われ方をする単語があります。このような単語は、辞書の見出し語に男性と女性の両方の冠詞がついています。(通常の名詞については辞書の見方を参照のこと。)

この単語は次のように変化します。

男性・女性変化表

男の人は「男の人」、女の人は「女の人」という意味で使われます。性は違ってもともに第二変化ですから語尾の変化はまったく同じです。ただし冠詞はそれぞれの性に応じたものがつきます。

 なお、呼格には冠詞がありませんが、一般に間投詞という間投詞を伴います。

中性(第二変化名詞)

 第二変化の中性名詞では、主格・対格・呼格は単数、複数ともに同じ形になります。ですから、その単語が主格(主語)・対格(目的語)・呼格(呼びかけられている相手)のどれなのか語尾の形では見分けられません。文脈から判断しなければならないのです。

中性複数の名詞についての注意

 主語が中性複数形である場合、通常、述語動詞は三人称単数を用います(つまり、中性複数主格に対する動詞は三人称単数)。

 本来中性名詞には主格が無く、第一変化の女性名詞の単数形の形を借用したため、単数の動詞を用いるのだと説明されています。

【参考】

 中性はもともと(生き物ではなく)物品などを表す性という雰囲気があります。物は自分で何かを行ったりはできませんから、中性の言葉(物)が主語になることはありません。つまり本来は、中性については主格はあり得なかったのです。

 しかし実際問題として中性名詞にも主格が無いと困りますので、第一変化の女性名詞の単数形を借りてきたようです。どうして複数形ではなく単数形を借用したのか、この発想はよく分りません。

 ただし、主語がひとかたまりのグループとしてではなく、「ばらばらにある多くのもの」という意味合いで使われている場合は(つまり、主語が複数なのだと強調したい場合は)、述語動詞は複数になります。

第一変化名詞(α変化)

 第一変化名詞はα変化名詞(a-stem nouns)とも呼ばれます。−α、−ηに終わる女性名詞と、−ας、−ηςに終わる男性名詞を含み、中性名詞はありません。女性名詞の−αは長母音(アー)のこともあれば短母音(ア)の場合もあります。男性名詞の−αςは長母音(アース)です。

 このような名詞は次のように変化します。

第一変化名詞の変化表

 変化が異なるのは単数の場合だけで、両数、複数ではすべて同じ変化になります(アクセントの位置は単語によってそれぞれ違います)。

女性

 第一変化の女性名詞は−αに終わるのが本来の形でしたが、後にアッティカ方言などでは語末のαの前の文字(表中では緑で示した文字)がε、ι、ρの時は−α、ε、ι、ρ以外の単語については−ηに変化したと考えられます。

 海のような、短母音の−α(ア)に終わって、その前の文字がε、ι、ρ以外である単語は、−α型と−η型の入り混じった変化をし、単数主格・対格・呼格は−α型、単数属格・与格は−η型の変化になります。

男性

 第一変化の男性名詞は−αςに終わるのが本来の形でしたが、女性名詞と同様、−αςの前の文字(表中では緑で示した文字)がε、ι、ρの時は−ας、ε、ι、ρ以外の単語については−ηςに変化したと考えられます。

 また単数主格形の語尾が−ς、属格形が−ουになっているのは、第二変化の男性名詞につられたためです(男性名詞は大半の言葉が第二変化をするため、第一変化の男性名詞であっても、つい第二変化ふうの語尾がついてしまう)。

 ふつう男性名詞で−ουに終わっていれば第二変化ですが、属格が−ουに終わっていても、主格形が−αςまたは−ηςであれば第一変化をします。第一変化の男性名詞については、辞書を引いた時に主格の語尾も確認しなければなりません。

最終更新日: 2001年6月9日   連絡先: suzuri@mbb.nifty.com