大半の形容詞は、語幹にという語尾をとり、第一・第二変化をしますが、という語尾を取って第三変化をするものもあります。また一部の形容詞の比較級は不規則です。
第一・第二変化形容詞でもになるものもあれば、第三変化名詞でもになるものもあります。第一・第二変化形容詞はすべてという比較級になり、第三変化名詞はになるというのではありません。
また、比較級でという語尾をとる形容詞は、最上級では、
比較級のときにという語尾になる形容詞は、最上級ではという語尾になります。
大半の形容詞は、語幹にという語尾をつけて比較級をつくります。これは「−ος、−α、−ον」という語尾をとる第一・第二変化形容詞の変化をしますので、たとえば(「正しい」)の比較級ですと、次のようになります。
ただし、第一・第二変化形容詞のうち、男性単数主格形の語尾−οςの前の音節(つまりpaenultima)が短音節になっている単語(paenultimaが短母音で後ろに二つ以上子音がついていない単語)の場合は、−οςのοをωに変えます。たとえば(「価値ある」)の比較級ですと、次のようになります。
第一・第二変化をする形容詞の比較級がすべて上記のような変化をするわけではなく、第一・第二変化の形容詞でも比較級では第三変化をするものもありますし、第三変化の形容詞でも比較級では上記のような変化をするものもあります。
οがωに変わるという以外にも、比較級・最上級を作るときに語幹が変化する形容詞があります。
また、形の異なる比較級・最上級をいくつも持つ形容詞もあります。
結局、ある形容詞がどのような比較級・最上級を持つのかということは、辞書で確かめるほかありません。しかし、いずれの場合も語尾の変化自体は上の表と同じです。
語尾がなどで終わる形容詞のなかには、語幹ではなく語根にという語尾をつけて比較級をつくるものがあります。この種の形容詞の比較級は第三変化をします。
第三変化形容詞の比較級がすべて上記のような変化をするのではありませんし、また第一・第二変化形容詞でも比較級の時には第三変化をするものもあります。たとえば、上記の例の「恥ずべき」も第一・第二変化形容詞ですが、比較級では第三変化をしています。
よく使う形容詞のなかには、原級と比較級・最上級とでまったく語幹が異なるものがあります。これは、もともとの起源が異なるにもかかわらず、意味が似ているために一つの言葉にまとめられたためだと推測されます。
たとえば、「良い」は、比較級・最上級では次のような三種類の形をとります。
比較の対象は次の二通りの仕方で表すことができます。
「〜と比べて……」という比較の対象を属格形にします。冠詞はつくこともあればつかないこともあります。
比較級が修飾している言葉(例文では「ソクラテス」)は、文章の必要に応じた格になります(例文では男性単数主格形)。また形容詞の比較級は、その比較級に修飾されている名詞と性・数・格を一致させます。
比較される二つのものを(≒英語のthan)という接続詞で繋ぎます。冠詞はつくこともあればつかないこともあります。
比較される二つのものは同じ格にします。たとえば間接話法中で主語が対格になっている場合は、主語に合せて比較の対象も対格にします。
は女性の冠詞()など似た言葉が多いので、気息記号やアクセントの向きに注意する必要があります。
Sgreek(この文書に画像にして貼り込んだ古典ギリシャ語フォント)では、大きなサイズにしないとのアクセントは気息記号と重なって判然としません。文脈からだと推察できる箇所ではSgreekによる表示のままアクセントの無い状態になっていますのでご注意下さい。特に注意が必要だと思われる箇所でのみ画像にアクセントを書き足しています。
比較級の代わりに、英語のmoreにあたるという副詞を使って、「+原級」によって比較を表すこともできます。形容詞(原級)は修飾されている名詞(例文では「ソクラテス」)と性・数・格を一致させます。
劣等比較には、「より少ない、より劣った」を使い、「+原級」で表します。
どれくらい違うのか、という比較の程度は与格形で表します。
比較級が単独で(比較の対象なしに)使われて、「何かと比べて〜」というのではなくて「比較的〜、わりと〜」という意味になることがあります。