■本の紹介(平家物語)1
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■2004.11.08 平家物語全注釈

『平家物語』には多くの諸本があることが知られており、また注釈書もたくさんあります。その中で、わたしが1番好きな注釈書は、冨倉徳次郎『平家物語全注釈』(全4巻 角川書店)です。ベッドの横用と、書庫用に2揃い持っています。

形態は、まず本文がきて、口語、語釈、解説が入ります。
本文は、米沢図書館蔵の旧林泉文庫蔵の『平家物語』が底本で、同系統の写本の京都府立図書館蔵の『葉子十行本』および駒沢図書館蔵(沼沢竜雄旧蔵)の『葉子十行本』を比べて参考にし校訂されています。

わたしがこの本が好きな大きな理由は、随時挿入される解説が、史実と虚構を明らかにしていく手法にあります。舞台となる史跡や書画古記録類の写真も豊富なうえに、解説だけを拾い読みしていくのもおもしろく、多くのことを学びました。国文学としての『平家物語』だけでなく、歴史も好きという方に、ぜひおすすめしたい本です。

■2004.12.03 平家物語がわかる

AERA MOOKのシリーズの1冊『平家物語がわかる』(朝日新聞社 1997)。
平家物語がおもしろくなってきた、もっと勉強したいなと思い始めた方におすすめ。
「平家物語の魅力」では、平家物語研究の第一線で活躍する国文学者15人が、それぞれ平家物語の魅力を語り、自らの研究内容について触れられています。
「平家物語の十二面」「平家物語多面鏡」では、国文学のみならず、歴史をはじめ周辺学問からの平家物語へのアプローチがしめされています。
他に、「能・浄瑠璃・歌舞伎への波紋」「平家物語合戦地図」「平家物語構成一覧」「平家物語研究のゆくへ」など、どれも読みごたえ十分かつ便利なものです。
「平家物語ブックガイド」は、比較的手に入り易い本をそろえています。管理人は、ここに載っている本は、とりあえず読んでおこうと決意しました。
「平家物語の魅力」には研究者の写真が大きく載っています。お世話になっている本の著者って、こんな方だったんだとわかり、妙に親しみがわいてきました。

■2005.12.11 石母田正『平家物語』

出版されてからすでに47年も経っていますが、その内容は、今も多くの読者を魅了し続けています。
著者の石母田正は、歴史をことに中世史を志す者にとっては必読書である名著『中世的世界の形成』の著者。わが家の本棚にも『中世的世界の形成』があったので、読み始める前は、きっと歴史学の立場から『平家物語』の史実性を論じられている本なのだろうくらいに考えていました。
ところが、読みはじめるとすぐに違うことがわかりました。この本は、歴史学者の書いた古典文学論でした。

なかでも第1章の「運命について」の中で、平知盛をクローズアップさせた功績は大きいと思います。この本を契機として戯曲家の木下順二は、戯曲「子午線の祀り」を作り上げました。

■2004.12.13 講談社学術文庫『平家物語』

手に取り易い『平家物語』の文庫本を順番に紹介していきたいと思います。
まずは、全訳注・杉本圭三郎『平家物語』全12巻(講談社学術文庫)です。
文庫本といえどもあなどれません。

形態は、本文、現代語訳、語釈、解説が入ります。とにかくじっくり、どこででも『平家物語』を読みたい方にはハンディで便利ですね。
本文は、覚一本の一本である東京大学国語研究室所蔵『平家物語』(旧高野辰行氏蔵、高野本あるいは覚一別本と称する)が底本で、笠間書院刊影印本によって翻刻されています。

■2004.12.17 『平家物語』新潮日本古典集成

水原一校注『平家物語』上中下(新潮社 1979〜1981)。新潮日本古典集成は、大好きなシリーズ。小ぶりなハンディタイプ。古文は苦手だけれど、原文を味わいたいという願いを叶えた画期的な本だと思います。全体の口語訳というのはついていないのですが、本文横に難解な語句について色刷りで傍注がほどこされています。ですから語句につまづくことなく、原文で読み進めることができます。高校時代、おこづかいで少しづつ買い揃えていきました。

形態は、ページの上三分の一くらいに頭注・補説がはいり、下が本文。本文の右脇には傍注として色刷りで口語訳、補訳がつきます。

本文は、百二十句本(平仮名本 国立国会図書館蔵本)が底本。平家嫡流最後の六代の処刑で終わる「断絶平家」と呼ばれる本です。覚一本、流布本につらなる系統の本が多く出版される中、際立った存在といえます。また壇ノ浦で失われた草薙剣に関する説話を集めた「剣巻」も入っています。

■2004.12.18 新潮CD『平家物語』

『平家物語』全12巻をすべて原文で朗読したCD(CD28枚、談話解説CD1枚、全巻原文テキスト付 新潮社 2001)です。全部そろえると52500円します。朗読テキストは、先に紹介しました新潮社日本古典文学集成が使われています。朗読は、木下順二の「子午線の祀り」で主役知盛を演じた劇団前進座の嵐圭史。ジャケットの装画は安野光雅。
わたしは仕事を辞めた時、自分へのご褒美として買いました。最初は就寝前に子守唄代わりに聴いていましたが、今では風邪ひきで寝込んでいる時くらいかしら。目下の野望は、iPodを懸賞で当てて、このCDを持ち運べるようにすること。今日もせっせと懸賞ハガキを書いています。

嵐圭史さんの朗読、ちょっとだけでも聴いてみたいなあという方には、こんな本もあります。CDブック『読む。平家物語』(文学と表現研究会編 朗読嵐圭史 武蔵野書院 2003 CD収録時間35分)。本文は3人の平家物語研究者清水真澄・高木信・源健一郎による平易な解説がほどこされ、嵐圭史朗読のCDがついています。こちらの朗読テキストは、覚一本の一本である東京大学国語研究室蔵の『平家物語』。学校の教科書によく取り上げられる8つの章段が選ばれています。学校の教材にぴったりだなあと感じます。
表紙の女武者の人形、ステキですね。欲しい・・・コレクターの血が騒ぎます。

■2004.12.18 『繪本 平家物語』


前回、新潮CDを紹介しました。CDのジャケットの装画は安野光雅でした。そのつながりで、安野光雅『繪本 平家物語』(講談社 1996)を紹介したいと思います。絵本とありますが、子ども向けというよりも大人が楽しむ画集だと感じました。安野光雅といえば水彩画のイメージがありますが、日本画の手法で描かれています。帯のキャッチフレーズには現代版平家物語絵巻とあります。まさにその通りだと思います。


(追記)1996年に朝日新聞社が主催した「安野光雅 平家物語の世界展」の図録です。展覧会は見ていませんが、古本市で図録を手に入れました。原画は安野光雅美術館(島根県津和野町)で展示されることがあります。要チェック。

■2004.12.18 『絵巻平家物語』



ついでにもうひとつ、絵本を紹介します。文・木下順二、絵・瀬川康男『絵巻平家物語』全9巻(ほるぷ出版 1984)。絵本の原画展で、原画を見て感動しました。瀬川康男の絵は、独特のタッチで個性的です。1度見たら忘れられないようなインパクトのある絵です。この絵本は数々の賞を受賞しています。

■2004.12.21 「あなたが読む平家物語」全5巻



家でカルチャースクール本を紹介したいと思います。
ぼんやりは今は専業主婦ですが、以前はフルタイムで働いていました。そのころカルチャースクールに通って同好の仲間と勉強したいな〜とあこがれていました。忙しくて習いににはいけないけれど、お家でカルチャースクールだ!と読みは始めたのがこの本です。
「あなたが読む平家物語」全5巻(有精堂 1993〜1994)は、平家物語研究者たちが集結して作り上げた本です。全5巻にそれぞれテーマがあり、そのテーマに沿った10本の論文が収められています。内容は、大学講義レベルでしょうか。本当にカルチャースクールへ通っている気分で、ひとつひとつの論文を読んでいくと、自分が何に興味を持っているのかがわかってくるように感じました。

1 平家物語の成立 栃木孝惟編
2 平家物語 説話と語り 水原 一編
3 平家物語と歴史 杉本圭三郎編
4 平家物語 受容と変容 山下宏明編
5 平家物語 伝統と形態 梶原正昭編

■2004.12.21 『平家物語の世界』朝日カルチャーブックス



山下宏明編『平家物語の世界』朝日カルチャーブックス(大阪書籍 1985)。
文字どおり大阪の朝日カルチャーセンターで1984年に行われた6回にわたる講演「源平の世界」の内容を本にしたものです。最初の講演には橋本敏江氏による平曲の演奏もあったそうです。もう20年前になるのですね。本の内容は、下記のとおり。とても読み易くて入門書としてぴったりではないかと思います。

■2004.12.22 『平家物語の世界』上下



家でカルチャースクール本続けて紹介します。
水原 一『平家物語の世界』上下 放送ライブラリー(日本放送出版協会 1976)。
この本は、NHK教育テレビ市民講座で、昭和49年12月から翌年3月まで放映された講義部分をまとめたものです。原文と交互に解説が入り、実際に講義を聴いているような感じで、興味深く読み進めることができました。

同じ著者で、同じシリーズに『保元・平治物語の世界』(日本放送出版協会 1979)があります。こちらはNHKラジオ第二放送の古典講読番組で、昭和53年1月から3月まで放送されたものです。こちらもおすすめです。わたしはこの本をきっかけに、保元物語、平治物語を原文で読んでみたいと思うようになりました。

■2005.01.13 平家物語必携

別冊國文學・梶原正昭編『平家物語必携』(學燈社 1982)。雑誌『國文學』の別冊必携シリーズの1冊。20年前に出たものなので、現在の研究成果は反映されていません。しかし、「平家物語全章段の解析」は、各章段についての問題と参考文献があげられおり便利で、研究史を知る上でも役立ちます。その他、「平家物語の基本史料」では、『平家物語』を読解する上で、重要な意味を持つ基本史料や文献の解説されています。
大学の国文で『平家物語』の勉強を始める学生のための便利本という感じです。
大きな書店の古典のコーナーに、新装版でいまだ現役で並んでいます。

現在、平家物語研究の第一線で活躍されている先生方の20年前の仕事なんだと思って読むのも楽しいです。

■2005.01.19 中山義秀訳『平家物語』

古文が苦手なので、現代語訳で読んでみたい。まず内容をざっと知りたいという方には、現代語訳のこちらの本がおすすめ。
中山義秀訳『平家物語』日本古典文庫13(河出書房新社 1976)。中山義秀は、小説家で、戦前に芥川賞を受賞しています。
ハンディタイプなので、持ち運びにも便利かも。古書店で安価で見つかります。

わたしはまだ現物を見ていないのですが、2004年の10月に河出文庫から上中下と3巻で再刊されています。

■2005.01.25 文庫本の『平家物語』

文庫本をまもとめて紹介します。
岩波文庫の山田孝雄校訂の上下旧版は、古書店などでしか手に入らないかもしれません。
その他は、Books.or.jp(Booksとは国内で発行され、現在入手可能な書籍を収録する書籍検索サイト)で確認すると、手に入るようでした。

左上1)講談社文庫 上下
右上2)角川日本古典文庫 上下
左下3)岩波文庫 上下
右下4)岩波文庫 1〜4

1)高橋貞一校注
形態は、本文、下段に脚注、巻末に補注。上巻に解説、下巻年表・系図・索引。
本文は、流布本の一本である元和九年刊行の片仮名交り附訓十二行整版本が底本。

2)佐藤謙三校註
形態は、本文、下段に脚注。下巻に索引。
本文は、流布本の一本である寛文十二年刊行平仮名整版本が底本。

3)山田孝雄校訂
形態は、本文のみ。
本文は、覚一本の一本である東京大学国語研究室蔵本(旧高野辰行氏蔵、高野本あるいは覚一別本と称する)が底本。

4)梶原正昭・山下宏明校注
形態は、解説、本文、章段ごとに注。各巻末に、系図、地図等、4巻巻末には主要人物一覧。
本文は、覚一本の一本である東京大学国語研究室蔵本(旧高野辰行氏蔵、高野本あるいは覚一別本と称する)が底本。
新日本古典文学大系『平家物語』(全2冊 1991・93 岩波書店)を、文庫化されたものです。

2005.01.26 『平家物語』新編日本古典文学全集

市古貞次校注・訳『平家物語』上下(小学館 1994)。
小学館の新編日本古典文学全集は、とても読み易いシリーズだと思います。わたしが初めて買った古典文学は、この全集の旧版の『今昔物語』でした。新編になってからは多色刷りとなりさらに見易さが加わったように思います。
もしご家庭で、家族全員で『平家物語』を楽しもうというならば、わたしはこの本をおすすめします。

形態は、ページの上段に頭注・補説がはいり、中段が本文。下段に口語訳がつきます。また本文中には、明暦二年(1656)板本に収録されている絵が挿絵として入っています。解説、系図、年表、地図、挿図などが豊富で、索引もついています。

本文は、覚一本の一本である東京大学国語研究室所蔵『平家物語』(旧高野辰行氏蔵、高野本あるいは覚一別本と称する)が底本。

■2005.01.27 『平家物語』三弥井古典文庫

佐伯真一校注『平家物語』三弥井古典文庫上下(三弥井書店 1998・2000)。
京師本の初めての全翻刻。
解説の最初の行にも書かれていますが、この本の特色のひとつは、頭注欄に研究文献を多く紹介していることです。

形態は、ページの上に頭注、下に本文。上下巻末には付録として、地図、系図、略年表、甲冑図解がついています。
本文は、国会図書館蔵京師本『平家物語』が底本。

■2005.01.28 屋代本高野本対照平家物語

麻原美子・春田宣・松尾葦江編『屋代本高野本対照 平家物語』一・二・三(新典社 1990・91・93)。
この本は、凡例にも書かれている通り、「語り本平家物語の研究及び教授に使いやすいテキストを提供することを目的」とされた本です。

形態は、見開きの右ページが屋代本、左ページが高野本の本文。おおよそ同じ内容が対照できるようになっています。右ページの頭注には屋代本独自の表現や記事に関する略注がつけられ、左ページの頭注には両本の校異がつけられています。各所に元禄十二年版平家物語(日本女子大学国文学研究室蔵)の挿絵、地図、系図などが載っています。

右ページの屋代本の本文は、国学院大学図書館蔵屋代本平家物語と京都府立総合資料館蔵本屋代本巻二が底本。京都府立総合資料館蔵本屋代本巻二は、国学院大学図書館蔵屋代本平家物語と元は一揃いであったと考えられています。
左ページの高野本の本文は、覚一本の一本である東京大学国語研究室所蔵平家物語(旧高野辰行氏蔵、高野本あるいは覚一別本と称する)が底本。


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