■本の紹介(平家物語)2
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■2005.02.17 平家物語の諸本

読み本系のテキストの紹介に入る前に、諸本について簡単にまとめます。

『平家物語』には、数多くの諸本(=異本のこと)が存在します。大きくわけて「読み本系」と、「語り本系」の2つに分けられています。

「語り本系」はさらに、2つに分かれます。
十二巻とは別に、壇ノ浦で捕らえられた建礼門院の後日譚を一巻にまとめた潅頂巻(かんじょうのまき)を持つ「一方系」諸本で、覚一本、覚一別本、米沢本・葉子十行本、康豊本、下村時房本、京師本、流布本などがあります。
潅頂巻を持たずに建礼門院の記事は分散され、断絶平家で終わる「八坂系」諸本で、屋代本、百二十句本、平松家本、鎌倉本、佐々木本、中院本、城一本などがあります。

「読み本系」には、源平闘諍録、四部合戦状本、南都本、延慶本、源平盛衰記、長門本などがあります。語り本系の諸本に比べて読むためのもので、いずれも個性的で大部あることが特徴。

『平家物語』の諸本については、水沢優雅氏のWEBサイト「樹陰読書」内の「平家物語諸本へのいざない」で詳しく解説されています。お気に入りのサイトです。

もう少し詳しくまとめたかったのですが、わたし自身がまだよく理解できていません。
今後の課題として、ちゃんとまとめられるように努力します。

【参考文献】
千明守「さまざまな『平家物語』・諸本」(『AERA Mook 平家物語がわかる』朝日新聞社 1997)
冨倉徳次郎「平家物語概説」『平家物語全注釈』下巻(二)

■2005.02.20 延慶本平家物語

「読み本系」の代表的なテキスト『延慶本平家物語』は、平家物語諸本中最も古い書写年時(延慶2、3年、1309〜10年)を示す奥書を持っています。また現存諸本の中で、最も多く古い形態を残していると言われています。

 
北原保雄・小川栄一編『延慶本平家物語 本文編』上・下(勉誠社 1990、1999再刊)。大東急記念文庫蔵『応永書写 延慶本平家物語』の翻刻。形態は、本文の上に頭注。
姉妹編に『延慶本平家物語 索引編』上・下(勉誠社 1995)があります。
勉誠社の『延慶本平家物語 本文編』(25000円)、『延慶本平家物語 索引編』(51500円)を揃えようと思うと、かなりな金額になります。

本文を通読することを目的とするならば、汲古書院から刊行中の、『校訂延慶本平家物語』(全12冊中、1〜6、9が既刊)もあります。1冊2000円。

※「延慶本」の「延慶」は、1303〜08年の年号で、「えんきょう」「えんけい」と訓みます。したがって「延慶本」は、「えんきょうほん」あるいは「えんけいほん」と訓みます。「えんぎょうほん」と濁って訓まれてきたのは、「延享(えんきょう、1744〜47年)」と区別するための近世以降の訓みだそうです。

■2005.02.24 源平盛衰記

左は、現在刊行中の中世の文学シリーズの市古貞次・大曽根章介・久保田淳・松尾葦江校注『源平盛衰記』(三弥井書店、2005年2月現在1〜4、6既刊)。内閣文庫蔵慶長古活字版全四十八冊が底本。本文の上に頭注。巻末には文書類の訓読文、校異、延慶本・長門本・覚一本との記事対照表、参考資料として関係史料が集められています。

右は、水原一考定『新定源平盛衰記』全6巻(新人物往来社 1991)。史籍収覧『参考源平盛衰記』を底本として、通俗日本全史3・4『源平盛衰記』で本文を補充しています。本文の下、右には下注、左には訳注。巻末には後注として、諸本や史料との対照が載せられています。水原一・松尾葦江氏による『源平盛衰記』の解説もあります。

『源平盛衰記』は、膨大な関連説話を含んでいます。中には通俗的な話まで多種多様です。
読み方ですが、「げんぺいじょうすいき」または「げんぺいせいすいき」とも読み、「盛衰記(じょうすいき・せいすいき)」とも略されます。

研究する目的ならば、前者の本。
通読するのなら後者の本かなあ。
わたしは拾い読みばかりで、まだ全部読み終えていません。いつか読み通したいと思っています。

■2005.03.22 平家物語図典


味文彦・櫻井陽子編『平家物語図典』(小学館)が出ました。
オールカラーのビジュアル本です。
帯の言葉を借りると「豊富な図版で読み解く『平家物語』の世界 源平合戦の様子がわかる 変わりゆく時代の社会がわかる 登場人物の実像と虚像がわかる 『平家物語』のストーリーがひと目でわかる」そうです。
へぇ〜と思って手に取ってみると、たしかにわかる、わかる。
3800円(税別)と高かったですが買ってしまいました。
5章に分かれており、1章は源平合戦、2章は『平家物語』をめぐる人々、3章は貴族、武士、庶民の暮らし、4章は『平家物語』ゆかりの地、5章は『平家物語』。
特に1章の源平合戦の近藤好和氏の解説と図版で、今まで理解できなかった武具と武芸のことが、よくよくわかりました。

■2005.04.20 平家花揃

NHK大河ドラマ「義経」第11回「嵐の前夜」で、平家の女たちの集まり、一門の人々を花に喩えることが流行っているという話をしているシーンがありました。
これは『平家花揃(へいけはなぞろえ)』をモチーフにしたものです。

『平家花揃』とは、平家物語の登場人物について、その人物を花や風景に喩え、和歌をそえて評をつけたものです。室町時代末期の成立と考えられています。

『平家花揃』の翻刻
高橋貞一校注『新註国文学叢書 平家物語』上巻の解説の中で、53人のうち12人が抄出
翻刻に榊原千鶴「京都大学蔵平家花揃翻刻」(『名古屋大学国語国文学』79 1996年)
松尾葦江「付 慶応義塾図書館蔵『平家花ぞろへ』翻刻並びに校異」(『平家物語論究』明治書院 1985年)

【参考文献】
高橋貞一校注『新註国文学叢書 平家物語』上巻
『平家物語研究事典』
『別冊國文學 平家物語必携』


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