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イノブータン王国

西牟婁郡すさみ町


 イノブータン王国
すさみ町が過疎対策や観光資源として興した、町おこし戦略。すさみ町を「イノブータン王国」というミニ独立国・パロディ国家として、様々なイベントを行ったり、施設の呼称を「イノブタ」「独立国家」に関連させたものにわざわざ変更したりして、かなり真剣にやっている。その気合の程は「建国宣言書」における一節「そのパロディ精神は(中略)過疎の国よりの脱出をなし得ることを信じるものであります。」に顕われているように、「本気」だ。

 すさみ町の概要
すさみ町は、人口およそ6,000人。磯釣り・船釣り・ダイビングといったマリンスポーツのメッカでもあり、初夏から秋にかけては特に多くの観光客が訪れる。およそ27㎞に及ぶ海岸線には、景勝・枯木灘や沖の黒島・地の黒島、岩礁を回り込んで二手に分かれた波が再度出会う夫婦波など、南紀特有の雄大で美しい海辺模様を楽しめる。内陸部では雫の滝・琴の滝、熊野古道(大辺路街道)といった見所がある。
海産物も無論、豊富。イセエビの水揚げ漁が日本一であることは意外に知られておらず、世界で唯一の「エビとカニの水族館」が存在するのも「ならでは」といった感がある。また「ケンケン漁」と呼ばれる、木製のフロート(簡単に言えば、仕掛けを浅い水面下に浮かせて流す為の、水泳で言うビート板みたいな水深安定板)を道糸に装着したカツオ漁はすさみ町独特の釣法で、魚体を痛めない為に良質なカツオの水揚に寄与している。余談になるかもしれないが、このケンケン漁の生命とも言えるフロートの作成には大変な熟練を要し、現在その後継職人が不足(ほとんどいらっしゃらない)状態にある事も申し添えておく。
さて、忘れてならない温泉ファンには、野口雨情がこよなく愛したと言われ硫黄を主成分とする名湯「すさみ温泉」、炭酸ナトリウムを主成分としニセ和歌山人・たかがこよなく愛していると言われる「いのぶた温泉」があるのでご安心を。いずれも数ヶ所で日帰り入浴ができ、全体的に入浴料が安い(¥200〜¥500)点もポイントが高い。

 すさみ町、その強烈な個性
ダイバーに人気のすさみ町には、何と海底にまでポストが設置されている。無論、普通の紙製の葉書では密封しない限り単なる紙クズと化してしまう為、主にプラ製のものが用いられる。この海底ポストは「世界一低いところにあるポスト」として、かのギネスブックにも載っているというホンマモンだ。
その他、冬季に気温が零下になると、宿泊者に「寒さ料」として宿泊費の一部サービス等が行われるという企画もあれば、「するめ」が郵便物として進化した「するめーる」なる驚愕のアイテムまでラインナップされている。この「するめーる」、すさみ町によれば自身満々「ウイルス対策不要な、次世代通信メディア」との事。次世代も何も、スルメを葉書にしようなんて、歴史的にこれまでも、そして今後何万年経とうが・・・まずマトモなものはありえません。さてと、ここでよく考えてみれば、スルメの葉書には確かにウイルスには無縁な事は想像に難くないものの、カビや経年劣化の心配が懸念される方もいらっしゃると思う。しかし心配は御無用。しっかりと真空パックされており開封しない限り長期にわたり使用可能だ。そのまんまのスルメの葉書を想像してたアナタ!軽く忠告しておきますが何かと食品に関してはお気を付け下さい。
イノブタやら伊勢エビやら海底ポストやらスルメ郵便やら寒さ料やら・・・ハァハァ・・・とにかく異様なまで強烈なアイデンティティ、そしてそれを町おこしウェアとして実行・実現に移すことを可能にするパワフルさ。ここまで徹底されると、かえって清々しいものを感じてしまうでしょ。ややこしい利権争いはさておき(多少はあるんだろうけど)、まずは町を元気にしようという姿勢。これには不肖ニセ和歌山人、感服致します。

 王国建国までの経緯と国家行事
イノブータン王国の建国は1986年5月4日。その2ヶ月前の同年3月4日には、何と当時の首相・中曽根氏に建国宣言書を手渡すという離れ業をやってのけている。さらに翌日の3月5日、当時の通産大臣・ミッチーこと故・渡辺美智雄氏と通商友好条約を締結。もう国家権力にも止められない、スサマジイ外交手腕を発揮。「独立国・やまと」もビックリだ。
イノブタイベントのはじめの一歩は、1981年に第一回が行われたイノブタダービー。王国はこの5年後に建国されたわけだ。そして恒例行事として毎年5月3日には建国記念祭とイノブタダービーが行われ、その他、王国夏祭り、王国運動会、王国通常国会、王国グルメンピックなど年中通してさまざまなイベントが開かれている。

 呼称の変更例とイノブタ
JR紀勢線すさみ駅が「入国管理所」、道の駅すさみが「イノブータン城」などと公共施設にまでパロディが浸透しているのはさすが。「イノブタ君の家」は「和歌山県畜産試験所」となっているが、このイノブタは1967年、イノシシを父に、ブタを母に、この県畜産試験所において日本で初めて誕生している。
王国の通貨単位は「ブータン」。100ブータン=100円の固定相場制だ。年号は「猪豚」、猪豚元年=昭和61(1986)年で、これ以前は紀元前であり、さかのぼって数えられる。つまり、イノブタその物が誕生した昭和42年は紀元前19年である。

 キャラクター商品
イノブータン王国パスポート¥300は無論、持っていなくても入国できるが、すさみ町いや王国の宿泊・特産品情報やアクセスマップをはじめとした機密事項を網羅、さらには町内でのスタンプラリーに参加できたりと持っていればすさみ町観光がさらに楽しめる。
その他、イノブタグッズはTシャツ、キーホルダー、ランチバッグ、果ては王国国歌のカセットテープまで用意され、イノブタマニアのコレクター魂をくすぐる商品展開となっている。これらはイノブータン城である「道の駅・イノブータンランドすさみ」等で購入する事が可能だ。

 イノブタファミリー
イノブタファミリーは「イノブータン大王」と、お妃様の「キララ王妃」、そして「サミー君」「イブちゃん」の“4体”。「王&王妃」はリアル系、「サミー&イブ」はコミカル系と、明らかにデザインの路線が違うのが興味深い。王と王妃は、居城であるイノブータン城、つまり道の駅・イノブータンランドすさみに鎮座されており、いつでも謁見させて頂ける。ただし動かない・・・念の為。

 最後に
すさみ町には今後、実質的にシーズンオフとなる秋〜冬にかけての新たなイベント企画を期待したい。また、ドライブ・旅行で王国を訪れたなら一歩引いてしまわずに、せっかくの旅行なのだから積極的に参加したいものだ。串本や新宮、那智勝浦への、単なる通過点ではあまりにもったいないと思うのだが?

 関連情報
道の駅「イノブータンランド・すさみ」
すさみ町HP

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