おしえて№765 投稿者 Tsuneさん
大勢の中から、標的にされることを「白羽の矢が立つ」といいますよね。この語源を知りたいと思います。おしえてください。
のんきさん

  白羽とは読んで字のごとく「真っ白な矢羽」のことで、人身御供(ひとみごくう)(いけにえとして神に供えられる人)を求める神が、望みの少女の家の屋根に人知れず白羽の矢(鷹の羽という説が多い)を立てた、という俗説に基づく言葉です
 もともとは犠牲者として選び出されることを指しましたが、今では大切な任務に抜擢されたような場合に使います。
『参考図書、学生・社会人のための日本語入門(読売新聞校閲部著)』
乱気流さん

  「弓矢」は、古来より卜占・呪い・選定等の用具とされ、各地にその説話・風習等が伝承されているようですが、「白羽の矢が立つ」に関しては、世阿弥没後は観世座の音阿弥と伴に能界の双璧と称された金春座の能役者で能作家の禅竹・金春禅竹(1405〜1470年頃)の作と推定されている謡曲(能楽の歌詞)『賀茂』に基づく語として「白羽の矢が立つ」が広まったとされるのが一般的なようです。

 賀茂川の川上から白い羽の付いた矢が流れて来た。少女が神に捧げる水を汲んでいたところ、矢が水桶のところでぴたっと止まった。不思議に思った娘は矢を持ち帰って軒にさしておいた。すると、たちまち彼女は懐胎して男児を出産した。白羽の矢は、神がその子供を生ませる少女を求めて流したものだった。

 この話の神意で大役を押しつけられるさまから、多くの人の中からこれぞと思う人が選ばれる事、又犠牲者になる事を「白羽の矢が立つ」と言うようになったとされています。
 尚、謡曲『賀茂』の元なったとされる『山城風土記逸文』では、「丹塗りの矢(赤塗りの矢)」となっています。『秦氏本系帳』等にも同種の説話が有り、「丹塗りの矢」では有りますが『古事記』にも同種の記述が有って以上からも「白羽の矢が立つ」の言葉が普及した原因は、謡曲『賀茂』に求める事が出来るようです。

 又、古代大和ことばで綴られた一万行に及ぶ叙事詩の現代語訳と謳われる『ホツマツタエ』にも「タマヨリ姫に白羽の矢」の項があり、その中でも「白羽矢」の記述が存在する様子ですが、残念ながら関連性は不明です。

参考URL:f-anex/八百万の神々 http://www.ffortune.net/spirit/zinzya/kami/kamowake.htm
愛知学院大学
http://www.aichi-gakuin.ac.jp/~kamiyama/ka2.htm
ままうさ美術館
http://mamausa-jp.com/noh/Kaisetu06Kamo.html
ホツマツタエ
http://www.hotsuma.gr.jp/aya/aya27.html
参考図書:平凡社『世界大百科事典』/弓矢、能武光誠著『歴史から生まれた日常語の由来辞典』東京堂出版
そくらちゃん

 むかしむかし、ある村の山奥にはこえー怪物がおってな。その怪物様をなだめるためには、どうしても若いむすめごを生け贄として差し出さねばなんねかったとさ。
 ほんでもって、人身御供になるむすめごはだれか、それを知らせるために、朝起きてみると、白い矢が、ささっていると、そこの家から、むすめごをださねばなんねーかったのさね。そんでもって「白羽の矢」と言われたのさね。それからもひとつ昔話さするべぇ。
 別の村では、雨降らねーもんだから、みんな困っておったら、 都で有名な武の内宿弥という大将が村をとおりがかり、村人から事情をきくと、背中のうつぼから一本の白い羽の矢をとりだして、「これは、世にも珍しい白鷹の羽で作った矢である。これを御神体として水神様を祭るとよいであろう。きっと水を授けて下さる。」といって村人に渡したんだとさ。早速村人たちは祠を建てて、その矢を祭り、一心に祈った。
 すると、どうだべ、雨っこ降り出すばっかじゃなく、どんな日照りの時も、決して水の枯れるときのない村になったんだとさ。そんでもって、村人たちはこの矢を祭った祠を「矢白神社」と呼びいつまでも大切にお祭りしたんだとさ。

 このほかにも、言い伝えはあるかも知れませんが、おおむね、このような故事にならって、「白羽の矢」ということがいわれていったのだそうな。
参考URL:見付天神裸祭り
http://aikij.com/iku/mitsuketenjin/shippeitaro.html
matsumotoさん

  「白羽の矢が立つ」というのは、神様への生贄・人身御供となる人の家の屋根等に白羽の矢が人知れず刺さっていたということから来ています。
 現代では出世や大役に抜擢される等、いい意味で使われることが多いですが、本来はありがたくない意味だったわけです。 「白羽の矢」に関する伝説や民話は全国各地にあり、下記URLを始めとして多くのHPで紹介されています。
参考URL:でか山
http://www.noto.or.jp/nanao/cci/dekayama/legend.html
参考URL:
黒田人形のふるさとかみさと
http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/kamisato-sci/rekisi/hihitaiji.htm
(そのほか上記そくらちゃんと同じURLを紹介していただきました。)

よりかさん

  山城国風土記によると賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)の娘である、玉依比売命(たまよりひめのみこと)が、毎日賀茂川に出て身滌(みそぎ)をしていると、あるとき丹塗り・白羽の矢が上流より流れてきました。これを拾い、床の間に飾り置くと美しい男神が現れ、二人の間に御子神が生まれました。
参考URL:矢来能楽堂へようこそ
http://www.kanze.com/kamo.htm より抜粋
 また、阿遅志貴=「あぐしき」とはアポローン神の別名アレキシス(Alexis )のL音がぬけて転訛しアジシキ・アザシキ・アザスキ等ともよばれることになった。この神は加茂の神で、白羽の矢が神体である。

参考URL:株式会社 Qプレス
http://www.avis.ne.jp/~qpress00/bun6-3.htm より抜粋
 白羽の矢が立つ=神(神の意志)が下るとなり、人身御供(ひとみごくう)を求める神が、求める少女の家の屋根に白羽の矢を立てるという俗説ができたのではないでしょうか。(大辞林 第二版より) それが転じて「白羽の矢が立つ」=大勢の中から選ばれ、逆らえない命令 みたいな意味になったのではと思います。
 人身御供説と日本版マリア様?説と分かれているようですね。もし人身御供説から来たとすれば、「ちょっとそんなの聞いてないよ〜」的なありがた迷惑な状態のことを指すというふうに使い方を変更した方がいいかもしれませんね。
 それにしてもそくらちゃんの大阪弁編に続く日本昔話編もいいですね〜。このシリーズは続くのでしょうか?期待してます!
正答者の方々です。本当にありがとうございました。
のんきさん・乱気流さん・そくらちゃん・よりかさん・matsumotoさん・くろぅさん

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