天然酵母のパンについて。



 まずは、問題の『天然酵母』の対照語ともいえる『イースト』のお話からしていきます。長い文章ですが、辛抱強く読んでみてください。
今度パンを食べる時に、いろいろ考えながら食べるようになるかもしれませんよ!

ワタシ達が普段よく食べているパンは、そのほとんどが『イースト』を使って膨らませてあります。
この『イースト』は、第一次世界大戦末期にドイツで誕生したものです。
ハイダックという学者が、カエデの木から代用糖を取った廃液と科学肥料を主培養基として、酵母菌株の増殖に成功しました。
これが『イースト』の誕生です。それまでの『天然酵母』と違い、発酵力が強く、発酵スピードが早いイーストは人気を集め、
以後、パンの酵母として定着していきました。

世紀の発明とも言えるイーストですが、天然酵母派の間では、イーストが科学肥料で培養していることや
強い酵母菌だけを摘出してしまっているので、味わいの面で劣っていることを指摘する人もいます。
 つまり、『イースト』は経済性からしても工業生産に向く、【人口酵母】といえるでしょう。

 一方の『天然酵母』ですが、元来パンはイーストが誕生するまでは、様々な『天然酵母』が培養されて、それらを使って作られていました。
パン以外でも、納豆やチーズ、ヨーグルト、ワイン、ビールなどの酒類は、【自然界にある単細胞の菌類=酵母】の働きを利用して作られているわけです。
話しをパンに戻しますが、かつてのパン屋さんは、天然酵母の元種づくりを祖先から引継ぎ、パンを作っていたのです。
 そこで、『天然酵母』の酵母種の主なものをあげてみましょう。


【北欧のホップ種】

 ビール酵母を使ったパン種。ジャガイモを茹でてマッシュポテトを作り、砂糖、ホップの煮汁を入れて発酵させ、
元種を作ります。味は淡白で、酵母のうまみはあまりないのですが、小麦粉の持ち味が出る元種です。
大正末期までの食パンはこの種で焼かれていたそうです。

【旧ロシアのドロジー種】

 黒パンといわれるもので、酸味が強いのが特徴。
赤マツの葉をお湯の中に浸し、葉についていた酵母が活動を始め、
泡が出てきた頃に小麦粉を加えて元種を作ります。製粉したライ麦の粉を加えて発酵させます。

【フランス古流の果実種】

 果実を洗わずにつぶし、小麦粉を入れます。外皮についていた酵母を微生物が小麦粉を養分にして発酵します。
小麦粉を混ぜなければ、ワインづくりとほぼ同じ造りかたです。温度操作を上手に行って元種を作ります。
微生物は雑菌とも呼ばれ、除去した方が良いともいわれていますが、実はパンの味づくりでは重要な役割を演じています。
微生物を上手にコントロールすることが、おいしいパンづくりの秘訣ともいえます。
この3つの種の中では、3番目にあげた果実種が一番おいしいパンを作るといわれているそうです。

【サワード種】

 フランスで使われている種。小麦粉と同量の、水または、お湯を入れて混ぜ、24?28度で、約24時間保温しておきます。
温度が高いと酸味のあるパンになります。軽くかき混ぜて泡がたくさん出るようになったら、
新しい粉を混ぜて24度くらいに保温しておくと、2?3時間で元種ができます。
天然酵母の中でこれが一番簡単な種の作りかたですが、培養基(酵母の養分)が小麦粉だけのため、味は劣ります。フ
ランスでは、このサワード種とイーストを併用してパンを作ることが多いようです。

 ところで、日本での天然酵母と呼ばれるパンづくりは、ほとんどが『ホシノ酵母』が使われているそうです。
この『ホシノ酵母』はパン本来の味わいを求めて、ホシノ天然酵母パン研究所の星野昌さんが、30年の研究の末に完成させたものです。

 イーストが2?3時間で発酵するのに比べて、天然酵母は完熟発酵までに40時間以上もかかりますが、
この間にうまみ成分であるアミノ酸を作りだし、おいしいパンを作り上げます。

 というわけで、『天然酵母』をつかったパンは、てまひまをかけて味を追求した、『こだわりの逸品』であるといえるでしょう!最近では
手作りで天然酵母パンを作る人も増えているそうです。みなさんもお試しになってはいかがでしょうか?

参考文献:『職人さんが教えるやさしいパンづくり』(パッチワーク通信社)




        アンパンマンさん、ありがとうございます。(さちパパ)