ΑΝΑΚΡΕΩΝ アナクレオン

358

さてもそれから
金髪のエロースさまは私に
貝紫の手鞠を投げて
刺繍のサンダルのあの乙女子と
戯れせよとけしかけなさる
けれどあの子は堅く構えたレスボス生まれ
私の白髪をあげつらい
ほかの娘に見惚れてる

「エロース」は愛の神のこと。

 「他の娘」と訳した「アレーン」はLoebでは女性形になっていますが、男性形になっている写本もあるようです。レスボスはレズビアンの語源になった地名ですので、私は女性形で訳しました。

359

クレオブーロスの恋しさ
クレオブーロスに夢中
クレオブーロスを見つめる

ギリシャ語には五つの格(case)があります。この詩ではクレオブーロスという人名の属格、与格、対格が並んで出てくるところが面白味です。

360

うぶなまなざしの坊や
私は君を焦がれ求めているのに
君は気付きもしない
私の魂の手綱を握っているなんて
知りもしないで

363

どうして君は飛びまわるの
香油を塗ったその胸は
葦笛よりももっと空ろなのに

「ペテアイ」をD.A.Campbellはall of a flutter(震える)と訳しているのですが、これは一般的には「飛ぶ」を意味する動詞です。胸のうちに何の情熱も無いのに香油を香らせて浮薄に飛びまわる想子を少し非難するような意味合いの詩だろうと考え、そのように訳しました。

398

恋の賽
気の狂れた乱戦もよう

もっと長い詩であったはずですが、断片しか伝わっていません。

最終更新日: 2001年6月9日   連絡先: suzuri@mbb.nifty.com