オイカワ釣り用フライライン(ローコスト版)製作メモ                      
UPDATE  2010-05-18
  


 Special thanks

 このコンテンツ内容はオイカワ釣りの釣り友
プラントFさんのご指導によるものです。プラントFさん、ありがとうございました。
 
プラントFさんに親切に教えていただいたのですが、たぶんレシピ通りにできていない自己流の部分もありますので、その点はご承知おき下さい。
 
また、私がまだ実践していない内容(プラントFさんのノウハウ)もコンテンツに含まれています。

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 ◆オイカワ釣り用フライライン(ローコスト版)コンセプト

  昨年、「市販品でオイカワ釣り用フライロッドがない。・・・ないものは自分で作るしかない。」ということでロッドを自作しました。
  
オイカワ釣り用フライロッド(ローコスト版)製作メモ

  当然フライラインも適したものがないわけですが、
プラントFさんが既に自作フライラインを研究、自作されていて、それを分けていただきました。
  ロッド自作でいろいろ試行錯誤した結果、アクションの異なるロッドが数本できたので
プラントFさんのレシピを教えてもらい、
  各ロッドに合わせてフライラインを自作してみることにしました。


 ◆材料

  ①ライン本体           
リリアン糸(ダイソー)

                     

                     素材はポリエステル
                     10m×6本(6色)で105円 

  ②ハーダニング(硬化)液   
ペインティングオイル クイックドライ
                    
                     

                    メーカー:クサカベ  油絵の具の溶き油の一種です。画材店で購入できます。 
                    55ml入り 344円(20%OFF)      280ml 1260円(20%OFF)

                     または、トールペイント用 
布用混合剤(ダイソー) 30ml 105円
                     


 ◆製作手順

 ① 長さ、太さの調整

  10mでは少し短いので、また太さ調整を兼ねてリリアン糸を引っ張って伸ばします。
  もちろん長さを調整しない場合は、そのままでいいです。引っ張って伸ばすと概ね15%程度伸びます(10m→11.5m)
  ギリギリまで引っ張ればもっと伸びます。それでもまだ足りない場合はハーダニング処理後2本繋ぎにします。
  太さは伸ばしたラインのハーダニング処理後で直径1.0mm程度。ただし、このリリアン糸は中国製なので長さ、太さ、断面形状のバラツキが大きいです。


 ② ハーダニング(硬化)処理

  リリアン糸そのままでは柔らかすぎてフライラインとしてキャストできないので、ハーダニング(
hardening :硬化 )の処理をします。
  適当な厚手のビニル袋にリリアン糸と適量のクイックドライ液を入れ、袋の外から手もみして液を染み込ませます。
  全体に染みたら袋から糸を出して干して乾燥させます。(いい天気なら半日で乾きます)
  出来上がりのラインが重くなるか、軽く仕上がるかは染み込み具合、絞り具合などで異なるので、そこのところは試行錯誤が必要です。
  例えば、袋からリリアン糸を出してそのまま空中に張って干すと、液は表面張力でほとんど落ちずに糸に抱え込まれて重くなります。
  少し、拭き取ってから同様に干せば少し軽くなります。キッチンペーパーの上に置いて乾燥させるとかなりの液がペーパーに染み出して軽くなります。


 「クイックドライ」はアルキド樹脂が主成分です。アルコールが揮発するとアルキド樹脂が糸に残ります。
 アルキド樹脂は硬化性、耐候性、耐磨耗性、耐水性があります。また弾性、可撓性がある(曲げられる)のでフライラインには適しています。
 乾燥後はさらさらした感触になります。
 なお、「クイックドライ」は火気厳禁なので取扱は注意が必要です。

 「トールペイント用布用混合剤」(ファブリック・メディウム)は、もともとTシャツなどにペイントする時に用いる中間剤(メディウム=AとBの中間、
 つまりTシャツの繊維とペイントの塗料を結合させる役目の液剤)で、種別はアクリル樹脂エマルジョン。アクリル樹脂の粒子が水に溶けて乳液状になっているものです。
 アクリル樹脂も硬化性、耐候性、耐水性(この場合、一旦乾燥すると再び水には溶けなくなります)があります。
 アルキド樹脂よりも弾性、可撓性は少ないようです。そこはリリアンの編み形状に期待する点です。
 乳液なので少しべとつき、また乾燥後はパリパリした感触になりますが、シリコンなどでラインドレッシングしてしごけば、しなやかになります。


 乾燥時間はどちらも約1日。

 古くからある油絵の具は見た目の表面乾燥に1〜5日、完全乾燥には半年以上必要とのこと。
  「クイックドライ」は油絵の具の速乾性溶き油です。
 ちなみに近代、速乾性を求めて開発されたのがアクリル絵の具で、こちらは表面乾燥に30分、完全乾燥に60分程度とのこと。

 ところで、油絵の具とアクリル絵の具の差が絵の出来栄えにどう影響するのかは、絵心のない私にはま〜ったくわかりません。(^_^;)



 ③ 重量の確認と調整(再ハーダニング)

 狙いの重量になっているか確認します。オイカワ釣り用フライラインとしては#0〜#2の番手ですね。

                                    アメリカ釣具製造業協会(AFTMA)基準  フライラインの
先端30フィート(9.144m)の重量

ライン
 ナンバー 

重量 (グレイン) 
*注参照
 重量 (グラム) 
0  40 2.59
1 60 3.89
2 80 5.18
3 100 6.48
4 120 7.78
5 140 9.07
6 160 10.37
7 185 11.99
8 210 13.61
9 240 15.55
10 280 18.14
11 330 21.38
12 380 24.62

注:グレインとは小麦一粒の重さから決められた単位。1グレイン=0.0648グラム。
上記基準表の重量(グレイン)には、
±6(#1)〜±12(#12)の許容誤差があります。
 ※ #0の数値は私の類推値です。


 狙いの重量より軽い場合は2回目以降のハーダニングを行います。(注:ハーダニング2回で2倍のライン重量になるわけではありません。)
 重過ぎた場合は元に戻せないので、1回目は軽め狙いで液を強く絞るなどして調整するといいでしょう。

 基本的にオイカワ釣り用であればラインはレベルラインで十分ですが、WFやDTのテーパー、重量分布構造にしたい場合は
 部分的に伸ばす、部分的にハーダニングの回数を増やして重くするなどの調整は可能です。

 狙いの重量…まあ、軽いか重いかはロッドにセットしてキャストしてみないとわかりませんね。(^_^)
 また、ラインナンバー(#番手)の重量ピッタリに作る必要もないですし、できません。

 AFTMA基準(基準が#1までしかない?)からの類推値の#0 40グレインでは軽すぎてなかなかキャストしにくいと思います。
 リリアン糸はハーダニング前で3g/30ft程の重量です。1、2回ハーダニングして4〜5g/30ft(#1〜#2の間)がオイカワロッドでは振りやすいと思います。

 ハーダニング回数を5〜7回と重ねると、ライン重量は#3弱〜#4程度になり、
 リリアン糸の繊維が樹脂で完全に塞がり、浮力向上、ガイドの滑りも滑らかで、このライン製法での最高のパフォーマンスになるとのことです。
 #3〜#4ということは、小中規模渓流なら十分カバーできるわけで、実際に
プラントFさんは渓流でも市販ラインを一切使用していません。


 ④ リーダーの接続、ラインの接続                参考:
フライラインとリーダーの接合

 出来たラインにテーパーリーダー、ファールドリーダーなどを接続します。
 私の場合は、リリアン糸にスプライス( splice=繋ぐ ですが、フライ用語では貫通させて繋ぐ方法をさすのが一般的)で3号ナイロン糸を繋ぎ、
 さらに1.5号、0.8号と3段リーダーにしています。各3ft、全9ft程度。実釣では先端にもう一本細いティペットを使うことが多いです。

 (ファールドリーダーは研究中です)

 また、リリアン糸を2本繋ぎにする場合の
プラントFさんオススメの接続方法は、
 「5号ナイロンを芯にして両方向へ1cmほどスプライスで接続しラインの境目をエポキシで補強。
 このエポキシの乗せ方がキモで、境目を覆うように小さい玉状にします。
 
藪次郎さんが川越水上公園でかけたイトウ、また小畔川の大きなコイでも大丈夫という実績あり。」


 こんな感じ。
   


 これでフライラインとして完成です。

 

 ラインのメンテナンスは樹脂を溶かしてしまう有機溶剤の含まれていないドレッシング剤またはシリコンオイル・ミンクオイル等を使用してください。
 リリアンの編み目に入るように丁寧に何度かドレッシングします。釣りをしていると編み目に水が浸入してしまうのでこまめにドレッシングしましょう。

 基本的にリリアン糸にハーダニング液を染み込ませて乾燥させるだけなので作業工程はシンプルです。
 まあ、この作業をカンタンと思うかメンドクサイと思うかは考え方次第ですが、費用としては・・・、


 ◆コスト

  リリアン糸 1本当り           約18円
  クイックドライ 8〜10mlとして      約50円      計68円

  市販フライラインの1/50〜1/100くらいでしょうか。これは圧倒的にローコストですね。
  というか、オイカワ用フライラインは市販品にないので比較する意味はないですが。

  ハーダニング液の性能は「クイックドライ」が優れていますが、1、2本だけ作るならファブリック・メディウムもコスト的に選択肢となると思います。


 とにかく、この「リリアン糸」と「クイックドライ」のふたつの材料選定(発見)が最大のキモであり、
プラントFさんの研究努力の賜物です。
 私は答えを教えてもらったに過ぎません。


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  注:
  ハーダニング(硬化)液の化学的、物理的特性や油絵の具の乾燥時間などは私の拙い知識、調査によるものですので間違っているかも知れません。
  その場合はご指摘いただければ幸いです。(おいおいっ)



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