オイカワ釣り用フライロッド(ローコスト版)製作メモ

 
UPDATE  2013-01-14  意外にも、このコンテンツを参考にしてロッドを製作された方がたくさんいることを知り、改めて補足などを追記しました。(^_^;)
                  
なお、ロッドビルディングのノウハウは、プラントFさん(
F.FF備忘録。)からたくさんの貴重な情報をいただきました。
  


 ●オイカワ釣り用フライロッド(ローコスト版)の製作メモです。言うまでもなく自己流ですので、その点ご承知おき下さい。

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オイカワ釣り用フライロッドのコンセプト

 
・・・その日のことはよく覚えています。クルマに乗っている時に思いつきました。
 「オイカワ釣りに適した竿は・・・オイカワ釣り用の竿。ならば、その小物釣り用の振り出し万能竿を振り出したまま、ガイドやグリップをつけてフライロッドにしてしまえばいいんだっ。」

 今から思えば、それはいろんな先輩方がすでにやっていたことなのかも知れませんが、その時は本当に自分で思いついたので「よっしゃ〜」と少し興奮しました。

 1.市販フライロッドでオイカワ釣りに適したロッドがない。・・・なければ自力で作るしかない。
    "オイカワ釣りに適した"という意味は小さな魚でもロッドがよく曲がり、釣り味を楽しめるという意味です。
   ロッド番手目標 #0。自作の目的から、出来上がりが市販ロッドと同じ程度の番手、アクションになっては意味がないです。
   ただし、私の好みはグリップから曲がってしまう「へたった」ようなアクションではなく、バットに余力を残した感じのアクション。
   具体的なイメージとして、緩い流れの中で7、8cm程度の魚を掛けた時、ティップ側半分が90度くらい曲がる調子。

 2.ローコスト(安)、身近な材料(近)、短時間(短)で作る。当然外見の見栄え、装飾性はあまり追求しません。
   追求するのは、「よく曲がる」という機能です(^_^)


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 ■ A.材料、道具を用意する。

 1.ブランク

  ロッド本体となるブランク(竿部)の用意ですが、市販されている竿でフライロッドになりそうな竿を購入します。
  ローコスト版ですから、高い竿ではいけません(笑)
  OIKAWA Queen のブランクは万能振出し竿を使っていますが、お好みで竿を選んで下さい。
  基本的にオイカワ釣りに適した竿は・・・オイカワ釣り用の竿。小物釣り用の竿がいいと思います。
  たとえば、へら竿はへらくらいの魚がかかった時に適正な曲がりに、鯉竿は鯉くらいの魚がかかった時に適正な曲がりになるということだと思います。
  よく曲がるのはグラス、軽くて強いのはカーボン。曲がる性能重視なので、バランスとしてはグラス6:カーボン4くらいでしょうか
  軽さを追求するのであれば、市販竿の塗装をサンドペーパーで落としてしまうのがいいと思います。(これはプラントFさんのアイデアです)
  ブランク選定の重要ポイントはアクション目標をクリアするための柔軟な調子、柔軟なティップです。
  ティップはソリッドトップがいいです。カーボンにしろ、グラスにしろチューブラ(筒)では限界があり、柔軟なティップになりません。

  出来上がりの長さは6.5〜7.5フィート前後ですが、これはお好みです。  
  ブランク竿のグリップやリリアントップをカットして使うので、ブランク竿は出来上がりの長さよりもその分長いものが必要です。

 2.ブランク以外の部品類          /概略価格  Dは100円ショップ、HCはホームセンター、FSは釣具店の略。

  ①グリップ
    ・木管(外径20mm 内径11 長さ200mm) /HC \218
    ・コルクシート、テープ /D、HC \80〜

  ②リールシート
    ・木管 /①と同じ  約90mmにカットするので2本作れます。

  ③リング、キャップ
   ・水道管(塩ビ管) エンドキャップ /HC \25〜
    または手すり金具 /HC \150〜 など
   
 
  ④ガイド、フックキーパー
   ・ゼムクリップ(大、中、小)  /D \100
    サイズは中だけでも可。またフックキーパーは省略可です。

  ⑤印籠継の芯
   ステンレス棒 /HC \250〜 または バーベキュー串(丸)など /D \100 またはグラスファイバーの棒 /D \100 など
   

 3.補助材料

  マスキングテープ  /HC  \50〜100
  糸(綿、ポリエステル)  /D  \100〜  タイイングスレッドでも可ですが、もったいないです。

  エポキシ接着剤(速乾)  /D、HC  \100〜
  エポキシ塗料 (できれば速乾) /HC、FS   \700〜
  好みの塗料、ニス等 /D、HC  \100〜
  マジック   /D、HC  \100〜
  筆(速乾エポキシで使う場合は使い捨て) /D \100/3本 

  瞬間接着剤  /D、HC  \100〜
  木工ボンド  /D、HC  \100〜

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 4.加工道具    

  パイプカッター   /D  \315〜
  紙ヤスリ、小型棒ヤスリ(仕上げ、調整用)  /D \100〜
  ノコギリ(木工または塩ビ用) /D  \100〜
  カンナ /HC  \500〜
  彫刻刀  /D \100〜
  バリ取り工具 D  \315
  ラジオペンチ /D \100〜

 その他
   コンベックス   /D \100〜
   ハサミ      /D \100〜
   カッターナイフ  /D \100〜

 
 ・・・ブランクを除けば\1,000以上のものがありませんね(^_^)

 あると便利な道具
   ノギス   >直径、内径を計る
   電動ドリル >材料を手で回したりする代わりに使う。
   軸付き砥石 >ヤスリの代わりにドリルに付けて使う。 /D \100〜

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 ■ B.製作手順        

 1..ブランクをカットする。 /作業時間 15分

   寸法設計し、切断位置を決定する。(印籠継の長さも考慮します)

     継部カット位置は、例えばロッド全長 L=200cm、印籠継差込寸法 F=5cm とした場合
     トップ側の長さは L/2+F/2=102.5cm、
     グリップ側の長さは L/2-F/2=97.5cm でカットします。
     グリップ側先端に長さ F=5cm の印籠継が飛び出すので 97.5+5=102.5cm 
     という同じ長さの2ピースになります。
     (トップガイドとリールシートで多少誤差はでます。印籠継芯材全長は倍の10cm必要) 

   まず、ブランクトップのリリアン部根元をカッターでカットします。
   全長と継部の2ケ所をパイプカッターでカット。

  

   テーパーのあるブランクをカットするので、パイプカッター刃先がズレないように注意します。
   ちなみにオイカワロッドではスパイン位置は無視していいと思います(笑)

 2.印籠継 /作業時間 30分

   理想は継ぎなしの1ピースですが、1ピースではさすがに扱いが面倒になるのでやはり2ピースにする必要があります。
   クルマで移動するのであればマルチピースにする必要はないと思いますし、継ぎが多くなると曲がり性能に大きなデメリットとなります。

   ブランク切断後、継(フェルール ferrule)を最初に作ります。
   完成している竿のテーパーをカットするので、基本は印籠継(スピゴットフェルール spigot ferrule)です。
   並継、逆並継もできないことはないですが手間がかかりますね。

   継部の内径は切ってみないとわかりませんが、ブランクの板厚は概ね0.5mmなので内径は外径よりも1mm小さい程度です。
   切ってから内径に合わせて芯材を用意すれば間違いありません。

   10cm程度の芯(ステンレス棒またはグラスファイバーの棒)を用意して、
   継部の径を調整(↓)して、芯材の1/2をバット側にエポキシ接着剤で埋め込む。
          調整=芯が太い場合はヤスリなどで削り、細い場合は接着剤などで太くする。

    

   芯材でカーボンやグラスファイバーを削る場合は、削り粉を吸引しないように注意した方がいいですね。
   マスク、ゴーグル着用。必要に応じて掃除機を動かしながら掃除機のノズルの前で作業するといいでしょう。

   継(トップ側の差込み)寸法は5cm程度は必要です。
   トップ側の芯材とブランクの径もバット側同様に調整します。ただし、接着はしません(笑)

   ※フェルールを付けた場合、キャストのフィーリング感の変化は避けられません。
    特にステンレス棒を使うと重量増(約5g)になります。

   継部のブランク外側はマスキングテープで補強し、(後で)エポキシをコーティングします。

 3.グリップの製作   /作業時間 30分+乾燥時間

   

   木管を好みの長さにノコギリでカットし、端部にヤスリがけして形状を整えます。

   端部露出部はニスなど好みの塗装をします。
   コルクシートを木工ボンドで貼り付け、マスキングテープでぐるぐる巻きにして乾燥させます。

   

   乾燥したらヤスリで仕上げます。案外、丸く仕上がります。

 4..リールシートの製作   水道管の場合 /作業時間 90分+乾燥時間  

   木管を約90mmにカットし、カンナ、彫刻刀、ヤスリ等で、太さ調整とリールセット溝を加工します。
   ローコスト版は市販パーツを使わないので費用はかかりませんが、その分手間がかかります(^_^;)

    

   一般的にリングは内径19mmが多いようですが、水道管パーツは内径18mmです。
   したがって、リールシート本体を一回り細く17mm程度に仕上げる必要があります。
   リールセット溝深さは2mm程度。寸法は使うリールに合わせて調整します。

   リング、ポケットは水道管(VP管)のエンドキャップをノコギリでカットして作ります。
   リール差込部内径側はバリ取り工具、ヤスリなどで仕上げます。

   バリ取り工具??
    Deburring tool
   バリ取りといっても、基本的に内径側の角部を削る道具です。つまり、リールの足がリングに入る部分を削ります。
   この刃先はグリップに対してくるくる回転します。 どうやって削るの??となりますが、
   まあ、どんな道具もそうですが、使いこなすにはある程度技術が必要になります。
   使えるようになると、ちょっと感動する道具ですね。
   私はこれがダイソーにあったことに感動しましたが。(^_^)

   好みで塗装してもいいですが、塗膜を厚くするとリングがきつくなるので注意して下さい。ニス程度で十分です。

   手すり金具で作る場合もほぼ同じですが、少し重くなります。

                                VP管を塗装したもの                手すり金具を加工したもの
     

    
   グリップとリールシートで木管を使っていますが、中心にまっすぐ穴が開いている材料というのが重要なポイントです。
   手加工で無垢材に穴をまっすぐ開けるのは至難の業です。

 5.グリップ、リールシートの固定 /作業時間 30分

   位置を決めてから、グリップの中に入るブランク部にマスキングテープを巻き、太さを調整します。(2、3ケ所)

   

   エポキシ接着剤をマスキングテープ部にたっぷり塗り、グリップを入れて固定します。
   接着剤が少ないと、摩擦を起こす部分ができてしまい、キャストのたびにキコキコと音がするロッドができてしまいます。

   

   リールシート部も同様に固定します。

    

   ワインディングチェック(グリップのブランク入口の飾りパーツ)、リールシートのチェック(先端部パーツ)等は
   マスキングテープを巻いたり、コルクシート、ゴムシートなどを工夫して代用すれば十分です。

 6.ガイドの製作、仮止め /作業時間 120分

   ゼムクリップをラジオペンチ(2本)で曲げ、ガイドを作ります。
   なるべく細くて軽い材料が望ましいです。昆虫標本用の虫ピンがいいようです。(これもプラントFさんのアイデアです)

   

   

     ストリッピングガイド、トップガイドは輪を作るようにした方がラインのひっかかりがないと思います。
     スネークガイドは捻り方向が同じになるように揃えます。
     ヤスリで各ガイドの足部底面を平らに削ります。(ガイドの倒れ防止のため)

   ガイドの取り付け位置を決めます。
     基本の位置は、手持ちのロッドなどを参考にして下さい。
     特にトップ近くのガイドはラインを通して曲がりを確認しながら決めます。

   ガイドの並び、通りを確認しながら、マスキングテープで止めます。

   

    ※一般的なロッドビルディングではラッピングスレッドでガイドを止めますが、・・・
    ガイドは最終的にはラッピングスレッドで固定されるのではなく、エポキシ(接着剤、塗料)で固定されます。
    (ラッピングスレッドを使っても、位置調整のためにガイドは動くように少し緩く巻かなければなりません。)
    つまり、仮止めできればいいわけなので、面倒なラッピングスレッドを使わず、マスキングテープで仮止めし、
    そのままエポキシで固定してしまいます。・・・ロッドビルディングにこだわりのある方からお叱りを受けそうですが(^_^;)
    したがって、ラッピング関係の材料、道具は使いません。

   まず、リールシートに合わせてストリッピングガイドを付け、その次にトップガイドを付けます。
   トップガイドは綿糸等と瞬間接着剤で固定します。(さらにテープを巻いてもいいです)
   

   ストリッピングガイドとトップガイドの中心線に合わせてスネークガイドを順次付けていきます。
   スネークガイドの横方向の傾きはトップガイドに真横にテープを張り、それを基準にすると便利です。

                                 少し傾いてもすぐにわかります。 
     

    あまりシビアに並びを揃えなくても大丈夫です。
    

   マスキングテープ幅はガイドの足の大きさに応じて、幅方向に切って調節します。
   巻き回数は少ない方が細く仕上がります。
   より細く仕上げたい場合、特にトップに近いスネークガイドは綿糸を巻くのもいいでしょう。
   綿糸で仮止めする時はガイドと反対側(裏側)で瞬間接着剤をつけます。
   →ガイドの通り調整のためガイドは左右に動くようにしておくためです。

 7.塗装色調整 /作業時間 30分+乾燥時間

   エポキシ塗料を使わない場合はエポキシ接着剤での固定前に、マジックや好みの塗料で色を塗ります。
   瞬間接着剤の白化部もマジックで色を塗っておきましょう。
   必要に応じてブランクのオリジナル塗装(柄、色など)をカバー塗装(塗りつぶし)します。

   軽量化するなら、塗装なしがオススメ。サンドペーパーでつや消し状態になります。

 8.ガイド他の固定、塗装 /作業時間 30分+乾燥時間

   エポキシ接着剤(接着、クリアコーティング兼用)、エポキシ塗料を塗って各部を固定、塗装します。
   エポキシの接着や塗装は(その度に筆が固まって使えなくなるので)なるべくまとめて行いましょう。
   ※速乾エポキシを使うのでブランクを回転させて均一な厚さにするという工程はありません。
   
   ガイド固定の際にはもう一度「通り」(まっすぐ並んでいること)を確認して、固定、塗装します。
     

   マスキングテープを固定するのではなく、ガイドを固定するためにガイドの足部に十分にエポキシを塗ります。
   つまり、テープよりもブランクとガイドの固定が重要です。
   なお、ここではマスキングテープを本来の使い方(接着、塗装のマスキング)でも使用します。

   速乾エポキシの場合は塗る箇所、順序をよく考えてから塗りましょう。
   ゆっくり作業したい場合は数回に分けて作業します。

   十分に乾燥させます。エポキシ(コーティング)を厚くしたい場合は重ね塗りします。
   また、振り出しの継部も固定します。

   ・・・これで完成です。

   

 ブランク=万能竿 \1,880  (この万能竿は川越水上公園の釣りイベントで\300で売られていたことがあります。)
 
グリップ=木管 \218+コルクテープ \105
 リールシート=木管 \218+
手すり金具 \148×2
 ガイド=
GCガイド \1×10コ=\10とカウント
 補助材料=塗料、ニス、テープ、接着剤 約\50とカウント
 材料費合計 \2,777

 ------ 実釣 --------------------------------------------------------

 曲がります(^_^)
 

 釣ってみてわかった特性ですが、ティップがよく曲がるロッドは小さなアタリもよく分かる感度のロッドになりますね(^_^)。


 参考 :  
オイカワ釣り用フライライン(ローコスト版)製作メモ



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