3.  古レールの見方

3.1  古レールの概要

1st wrote in 1999.12.13 / last update at 2002.04.26

 ここでは、古レールを調査・研究する上で暗黙の了解となっている部分について、解説しておきたいと思います。 

目  次

| 定義 | 刻印 | 刻印の内容

3.1.1 古レールとは?

 ここまで漠然と「古レール」という用語を使用してきましたが、その定義については、特に決められたものはないようです。 
 現在、古レールとして観察可能なものは、本来の鉄道用レールとしての敷設された状態ではなく、駅上屋やホーム跨線橋の支柱や梁として、線路脇の柵として、あるいは鉄道を離れて建物の支柱などとして利用されているものがほとんどです(詳しくは「古レールはどこにあるか」)。鉄道業界では、これらの使用済みレールを「発生品」として捉え、「発生レール」 と呼ぶようです。こういった点から見ると、「中『古』品」としての古レールの立場が確立されているように思います。英語で表現するならば−はやりの表現を使って−、「the Recycled Rails」とでも呼べば良いかと思います。
 一方、『鉄道史見てある記』には、JR大糸線穂高駅の側線で見つけたレールが紹介されています。これは、現役ではあるけれども、価値のあるもので研究の対象になるのではないかと思います。この点から見ると、「『古』典的レール」といった側面も見えてくるかと思います。英語で表現するならば、「the Old (Classical) Rails」と呼ぶのが正しいのではないかと思います。しかしながら、この定義に基づいた場合、どこまでが古レールなのかといった問題点に行き当る可能性もあります。 

 そこで、ここでの「古レール」という用語の定義については、前者の「中古品」としての位置づけを原則として、適宜後者の「古いもの」としての意味も持たせながら、緩やかな意味で用いていきたいと思います。

写真:直江津駅近くの線路脇
古レールを利用してつくられた境界柵

3.1.2 刻 印

 『レールの趣味的研究序説』では「標記」、JIS の『普通レール及び分岐器類用特殊レール』(JIS E 1101:2001)の項では「表示」、『新日鐡のレール』パンフレットでは「ロールマーク」という語が用いられていますが、このホームページでは「刻印」としたいと思います。

 古レールの刻印は、レール側面のくびれたところに、浮き上がり文字(記号)で、数mおきに記されています。普通は片面にのみ入っていますが、1910年代までのの官営八幡製鉄所製(1916〜1920年製)のように裏面に発注者のマークが入っている例もあります。 
 これらはレールを圧延する際の圧延用のローラーに刻まれたものが、1回転するごとに等間隔に、転写されて記されていくのではないかと推測しています(正確なところは確認していません)。

 なお、JIS E 1101:2001『普通レール及び分岐器類用特殊レール』では、上記の刻印とは別に、レールの端部に刻み込まれている表示の内容についても決められています(こちらの名称は「刻印」となっている。したがって、いわゆるロールマークを刻印と呼ぶのは多少問題がある)。これについては、一部の古レールで確認していますが、JIS 規格成立前の多数の古レールでは一般的ではないことや、錆で潰れてほとんどのケースで読めないことから、このホームページでの紹介は割愛します。

写真:S&M-60-ASCE-1925
このように、レールのくびれに文字が入っている。

3.1.3 刻印の内容

 古レールの刻印に記されている内容としては、まず基本的なものとして、製造業者名(場合によっては、工場名や商標だけのこともある)と製造年があります。これらは、大抵のレールに見られます。このため、古レールの調査・研究にあたっては、分類の基本となる事項です。 

 その他のものとしては、国名、工場名(メーカー名とは別に)、レールの種類、製造月、発注者名などが記されており、メーカーや商標のマークや発注者のマークが入っていることもあります。

 また、JIS E 1101:2001『普通レール及び分岐器類用特殊レール』によれば、「レールの腹部には、......、レールが使用される限り読むことができるように鮮明に浮き出させる」とあり、多少の錆に関らず読めるように刻印を付けることが、JISでは義務づけられていることがわかります。

 刻印の内容については、次節に整理しましたので、参考にしてください。


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