セミの旅立ち


7月下旬のある日PM6時頃、わが家の庭の片隅でなかなかお目にかかれない生き物に出くわしました。
「セミの幼虫」です。脱け殻はしばしば見ることがあっても、生きた幼虫が地上に出ている姿は珍しいのではないでしょうか?
庭の片隅にあるキンモクセイの木。地面から50cmほどのところで、こげ茶色をしたセミの幼虫が旅立ちの場所を求めて動き回ってました。ふと足元を見ると直径1.5cmほどの穴が・・・。きっとここから出てきたのでしょう。
セミはの卵は通常、木の枝や、樹皮に産み付けられます。卵は翌年の夏孵化します(種によっては産んだ年の秋に孵るのもいます)。小さな幼虫は地面に落ちて地中生活に入り、それほどあちこち動きまわることなく、その木の根の周辺で数年間過ごすのです。

セミの羽化は、なかなかお目にかかれるものではないので、ヤブ蚊と格闘しながらも少し観察してみることにしました。
長い間、土の中で木の根の汁などを吸っていきつづけてきた幼虫はたぶん目がはっきりとは見えてないはずです。しきりに羽化の場所を探しています。30分後、どうやら羽化の場所を決めたようです。あまり動く気配がありません。

さらに30分後、「羽化」が始まりました。見ていると時間の経つのも忘れるくらい神秘的です。どうやらクマゼミのようです。
クマゼミは日本最大のセミで、関東以北では見ることができないため、アブラゼミ、ツクツクボウシなどに比べてその生態の研究が遅れていたそうです。
しかし1970(昭和45)年、全校生徒わずか10人の瀬戸内海の小さな島、岩黒島にある岩黒中学の生徒たちが3年がかりで取り組んだ「クマゼミの研究」が、日本学生科学賞の中学校部門で第1位に輝いたのです。 生徒たちは、卵と地中で過ごす幼虫の期間を、脱皮の回数などから7年間と推定しました。アブラゼミより地中の生活が1年間長いという考え方に専門家から異論も出たそうですが、運動場や畑のビワやニレの木の下を掘り返し、幼虫の形態を観察して得た結論でした。クマゼミを通して、自然の営みと不思議さを学んだ生徒たちの研究は、のちに「クマゼミの島」(学習研究社)としてまとめられ、それ以来、岩黒島は「クマゼミの島」として有名になったそうです。

さて、いよいよ羽がまっすぐに伸びてきました。透明な羽は見る角度によってさまざまな色に見えるから不思議です。あと2、3時間もすれば、身体が硬化して茶色になり飛び立てるようになるでしょう。
セミがなぜ夜に「羽化」を行うのかについては「最大の天敵である鳥の攻撃を避けるため・・・」と言われています。
地上に出て生きられる期間は、たったの2週間。その短い間にパートナーを見つけて交尾をし、数年後に旅立つ子孫を残さなければなりません。ああ、なんとはかない一生なんでしょうか...。思わず「がんばるんだゾ〜!」と励ましてその場を離れました。

翌朝、近くの雑木林で「シャアシャアシャアシャア・・・」と急がしそうにクマゼミの合唱が聴こえてきました。
きっと昨夜のクマゼミもその中で、待ちに待った「7年目の夏」を迎えているのでしょうね...。
2000.7
 
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