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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 16話 「中3は巣立ちの時だぞ!!」

休日の金八(武田鉄矢)をヤヨ(岩田さゆり)と母・昌恵(五十嵐めぐみ)が訪ねる。バレンタインチョコを渡したいというのだ。ヤヨの手作りチョコはとても美味しく、乙女(星野真里)は作り方を教わることに。その間、昌恵はヤヨを就職させるつもりだと金八に話す。

私立一般入試の結果が出た。合格した者、不合格だった者、悲喜こもごものクラスメイトを見ているうちにヤヨはパニックに陥り、「みんなといっしょ」という言葉を繰り返すばかり。本田先生(高畑淳子)や3Bの有志は、皆と別れたくない思いからの症状ではないかと考える。しかし乙女や杉田祥恵(渡辺有菜)は、ヤヨの本心が「皆と同じように受験したい」ことだと気づく。金八はそれを自分の進路を自分で決定しようとする「自立の芽」だといい、昌恵に対し、ぜひ高校も受験させるよう頭を下げる。

そんな折、養護学校の青木(加藤隆之)が、ヤヨをケーキ屋に体験就労させてみてはどうかと持ちかける。青木は乙女から貰ったチョコがヤヨから作り方を教わったものだということを聞き、ヤヨにお菓子作りの才能を感じたというのだ。話を聞いたヤヨは、深く考え込む表情を見せる。

ヤヨはケーキ屋に行くことを自分の意志で決めた。金八は3Bに「ヤヨは君たちより一足先に自分の道を見つけたんです」と説明する。応援に駆けつけた仲間が手を振るが、ヤヨは仕事に夢中。その姿を目にした富山量太(千代将太)は、「俺らも受験頑張るか」と言い、金八は窓越しのヤヨに「ケーキ屋さん合格おめでとう」とそっと声を掛けるのだった。

05年2月11日放送

脚本: 清水有生

演出: 加藤新

視聴率: 14.4%

DVD: 第7巻

 みどころ&勝手な解説
● しゅうの母親の光代さんが戻ってました。前回のラストは幻覚じゃなかったんですね。
○ 毛布も舞子が掛けてやったものだと思っていたのに。意外だった。
● ま、それは追々話すとしまして、今回の主役・ヤヨについてをまず。
○ 「みんなといっしょ」という言葉の解釈をめぐる物語だよね。進路が二転三転したので、よく噛み締めないと理解が追いつかない話ではあったんだけれど、大体は上のあらすじに書いたとおりだと思う。子どもの自立を描いた、微笑ましさと厳しさが同居するようなエピソードだった。
● 第一印象では、ヤヨが場の雰囲気に乗ってワガママを言い出したのかと思いましたよ。
○ はじめは先生も生徒も、「みんなとずっと一緒にいたい」というモラトリアム的な発想じゃないかと考えていたんだよね。でも違った。母親の提案に対して○か×か判断するのではなく、本当に自分の意志で進路を決めたい。そんな気持ちの芽生えだと捉えた。
● モラトリアムどころか、自立への扉を開いたのがヤヨでした。
○ 3B全体で守るべき存在だと思われていたヤヨが、3Bで一番早く大人になろうとは…。
● 金八先生が「ダメもとで高校受験させてもらえませんか」と言い出したのは、おせっかいだと言うよりも、ヤヨの可能性を信じてやりませんかという希望に満ちた話だったんですね。
○ そうそう。母親の言うように、たしかに高校へ行かせても通うだけになることは十分予想の範囲。でも、何かが大きく花開くことだってあり得るじゃない。現に今回ヤヨはこんなに成長した姿を見せてくれたんだから。
● 何がキッカケになるかなんて誰にも分からないですもんね。それなら早くから限定しない方がいいと。
○ そういう考えのもとに、高校受験も就職も同列にあるということを金八先生は言いたかったんだろうなぁ。
● いやぁ、しかしヤヨは偉いですよ。自立の気持ちが出てきたことももちろん偉いと思いますが、特に驚いたのは、開栄に落ちて悔しがる哲史の姿をじっと見て、その上で「みんなといっしょ」と言っているんです。喜んでいる人ばかりを見て「ああなりたい」と思ったのではないところがスゴイ。
○ 世の中の厳しさにも魅力を感じたとは…目をみはる成長。金八に「ケーキ屋さんを受験してみよう」と言われたときに見せた深く考える表情は感動的でさえあったし、昌恵さんが無理をしてでも面接に引っ張っていく理由はもうないんだよね。
● 結果として、ケーキ屋さんの話が舞い込んできて、ヤヨが高校に進学することはなさそうです。都合のいい急展開だったのは否定できませんが、ドラマだから仕方ない部分ではありますね。
○ たしかに、昌恵さんは心臓が悪くて、いつ大変なことになってもおかしくないから早く娘を独り立ちさせたいという事情があって、そんな中でヤヨの大好きなお菓子作りの仕事にコネがあったのは渡りに舟だよなぁ。
● おや、珍しくあっさり同調してしまうんですね(笑)。
○ いやいや。でもね、金八にチョコを渡した冒頭のシーンを思い出してみて。飾っておくと言った金八に、ヤヨは「食べて」ときちんと自己主張していたんだよ。「みんなといっしょ」と言い出す以前に、お菓子についてのことでは既に自己主張できていた。だから、やっぱりお菓子作りはヤヨと縁がある仕事で、当然の帰結だったようにも思うよ。
● なるほど…。ヤヨのチョコには先生の風邪を吹き飛ばすパワーもありましたしね。
○ 高校受験騒動という回り道をしたけれど、そのおかげで、素敵な進路が見つかったんじゃないかな。
 
● この出来事が3Bにもいい影響を与えましたよね。ヤヨを心配する気持ちを中心に、祥恵&奈穂佳、車掌量太伸太郎のおバカトリオwithシマケン、渋谷ギャルズという3組が合体。
○ 思いやりの輪が一回り大きくなった。このままクラス全体まで広がればいいね。それから、夢中で働くヤヨを見て量太が言った「俺らも受験頑張るか」という言葉もよかったよ。この時期に大切なものは恋を語り合うことじゃなく、一人ぼっちで行く道を探すことだと気づかされたんじゃないかな。そういう意味ではバレンタインの季節に自立のエピソードが描かれたというのは面白いよね。
● 崇史も、やや勉強を焦り気味ながら順調に回復していて、30人のクラスに戻る日も近そうな気がします。
○ そうなるとやはり問題はしゅう。「母さんに見つけて欲しかった」という切なる訴えが実を結んで、帰ってきた光代さんが残りの覚醒剤をトイレに捨てた。
● 救いの女神になるのかとも思ったのですが。
○ でも揉み合いになったことからも分かるように、今度は禁断症状との戦いになるよね。病院の治療なしで立ち直るのは不可能だと思うんだなぁ。崇史の出席としゅうの欠席がまた入れ違いになって、30人にならない予感も…。
● せっかくいい人に戻った光代さんが、また壊れてしまった可能性もあるんですよね。
○ 舞子も、しゅうを助けてやりたい気持ちはあるのに、誰かに話してしまうとしゅうが捕まることになるかもしれないという葛藤があって黙っているんだよね。もちろん、秘密をしゃべってしまったばかりに崇史がああいうことになったという意識もあるはずだし。
● 相手が覚醒剤なだけに、気が重くなります…。
 
 それぞれのバレンタイン
■ヤヨ: 校則を遵守して休日に金八宅へ手作りチョコを届ける。→お菓子作りの才能を見出されケーキ屋へ。
■金八: 教師生活30年にして初めて生徒からチョコを貰う。乙女が青木用に作ったチョコをぶちまける場面も。
■乙女: ヤヨに作り方を教わり、金八、幸作、青木にプレゼント。金八が妨害したため青木用のチョコは作り直した。
■比呂: 野球部の一年生(名前聞き取れず)にあげるらしい。
■車掌、量太、伸太郎: たくさん貰っても大丈夫なように大きなバッグを持参。しかし貰った形跡はなし。伸太郎は専用バッグを忘れたシマケンのために紙袋を貸してやった。
■チビあす: ウガとデカあすの力を借りて康二郎へ手渡し成功。
■舞子: しゅうに弁当を投げ返され、また秘密を見てしまって以来、どう接していいか分からない状態。チョコをあげるそぶりはなし。
■遠藤先生: 乙女から預かり物がないか金八に聞くが、色よい返事はなし。シルビアとなにやらヒソヒソ。
■小田切先生: 生徒から抱えきれないほどのチョコを貰う。
■北先生: 小田切先生が落としたチョコをどさくさにゲット。さらに小田切から直接1個貰っている。
■シルビア: 遠藤にチョコバナナをプレゼントしようとするが国井に注意される。しかし後ろの方でこっそりと遠藤に渡し、さらに2、3個付け足している。
■花子先生: 小田切が貰ったチョコの中から大きめのチョコをイタダイている。
■玲子: 淳に小さなチョコを投げやりに渡している。
■しゅう: 母・光代から昔よく作ってもらっていたと思われるチョコレートケーキを貰った。
 小ネタ拾い読み
◆ヤヨが当初就職の面接を受けようとしていた会社は「東和(?)商事」。社長は障害者に理解があり雇用に積極的。
◆私立を第一希望とする合格者は…舞子(開栄)、和晃(青葉)、チビあす(紫蘭女子)、有希(聖クリフト?)。
◆哲史は開栄を滑った模様。ガリベン君の受験失敗は金八の風物詩。
◆量太、「クラス全体が波に乗っている」と言うときに、ソーラン節の「波」の振り付けを披露。
◆教室シーンの後ろの方で、麻子が元気をなくしている様子。典子が付き添っている。
◆ヤヨは皆と一緒に受験したいのでは、と金八に意見した乙女と幸作。二人も大人になったなぁ。
◆崇史のギプスにみんなからの寄せ書きのようなものが書かれているのを確認。
◆焦らず治そうと提案する金八だが、崇史は「少し」考えさせてくださいと答える。「ゆっくり」考えなさいと金八は言う。
◆自分の過ちに気がついた崇史としゅうの母・光代に、金八はそれぞれ「大丈夫」という同じ言葉を掛けている。
◆「ヤヨを高校へ行かせてあげてください」と3Bが嘆願するシーンで、真佐人が泣いている?
 過去の金八シリーズでは
■就職
…卒業後すぐに社会に出た生徒は数多くいる。中でも第1シリーズ生徒・安藤卓は3Bの中で一番早く実社会に出る意味をよく理解し、卒業式で立派な答辞を述べた。
 みなさんからの印象的なお便り
◆ヤヨの自立は、なんだかさわやかな風のように感じました。今まで3Bのマスコットであり、みんなに大切に守られ、癒しの存在であった彼女が自分の道を見つけた瞬間、フワーッと一気に走り抜けていってしまったような感じがしました。 (やまだれいこさん)
◆ヤヨはずっとパティシエを続けるのかは分かりません。ある時期に、はたから見たら「我侭」にも見えるように「〜になりたい」とか言い出すかもしれません。でも、それも自分で決める進路でしょう。その選択が可能であること、選んでもよいということがヤヨにも周囲の人々にも理解されたから、金八先生の役割はプラスだったと思います。 (みすみさん)

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