第2章 撮影テクニック (注:渓流タイプの管理釣り場にカメラを持っていくことを想定しています)


2の1 撮影場所と背景

  釣れた魚が大きく撮れればどんな背景でもいいというのなら別ですが、やはり美しく撮りたいなら背景にも気を配りたいですね。
 しかしこれは撮影者の好みとセンスで決まるものなので注意点だけを挙げておきます。
 ① 好みの光の当て方ができる
 ② 季節感がある
 ③ 人工物やゴミがない。
 ④ 魚のトーン(色調)とのバランスがいい
 また、魚を水中に置くか、水から完全に出すかで撮影場所は大きく絞られます。
魚を水中に置いて、または半分水中に置いて撮りたい場合に、適当な場所がない時は撮影用の池を石で作ります。作り方は簡単で、

 ①岸辺に小石で二重に池を作る。水が濁るがかまわずに必要な深さを確保する。

 ②上流側と下流側に口を開け、流れを池の中に通す。30秒程で水が澄み、すっかりきれいになる。

 ③開けた口を小石でふさぐ。



2の2 フレーミングと魚の姿勢

 フレーミング(構図)と魚の姿勢に関する注意点は、

 ①画面に対して魚を水平にし、しかも頭を左に向けたりすると、皿の上の焼き魚状態になってしまうので、そのような構図はなるべく避ける。

 ②生き物の場合、顔が向いている方向(進行方向)の空間を大きめにとるのがよい。

 ③後述のピントの項で述べるが、ピントを合わせることにこだわり過ぎると構図がおろそかになるので注意する。                                        (ただし、フォーカスロックは忘れずに)

 ④最終的にプリントしたものを額に入れる場合は、額の内側のVカット紙の寸法分を構図スペースの余裕として周囲に空ける。
   これがなかなか現場では忘れてしまいます。

 ⑤生き生きとした魚を撮るなら、水中で立って(泳いで)いる姿勢がよいのですが、もちろん魚はじっとしていずに泳いでしまうので、
   この場合はフックは外さないで撮る。しかし、もたつくと魚が弱ってしまうので手際よく撮影すること。


2の3 光の当て方

 光源はもちろん太陽の日光。光の当て方は、大別して4タイプです。各特性と注意点は

①順光
  太陽を背にする撮影位置。最も失敗がない無難な撮影位置だが、影がほとんどないため、立体感のないベタッとした写真になってしまいます。また、接近して撮影する場合、自分の影がフレームに入らないように注意が必要です。
②斜順光
  自分の斜め後ろから光を当てる撮影位置。適度に影ができて魚の立体感が表現できます。
③斜逆光
  対象の斜め後ろから光を当てる撮影位置。どこに適性露出を合わせるかが決め手です。魚の鱗のきらめきなどの表現によい。
④逆光
  対象の背後から光を当てる撮影位置。あくまで意図的に撮影することが前提。  ただし、魚の撮影ではほとんど使わない。


 光の当て方は、露出との関係で決定される、カメラで最も難しいテクニックです。トライあるのみ。


2の4 ピントと露出

 現代の一眼レフは機能も進化し、コンパクトカメラと同様に、「全自動」や「オート」といったバカチョンモードが必ず
装備されています。ここではこれらの自動露出モードを使用してなおかつ、オートフォーカス(自動焦点)モードで撮影する場合のテクニック
について説明します。

①どこにピントを合わせるか

生き物の写真の鉄則として「ピントは眼に合わせる」のが良いとされています。魚の場合なら銀鱗(ウロコ)に合わせるのもいいでしょう。
普通のカメラはフレームの中央でオートフォーカスが作動するので、魚の眼を中央にしてシャッターボタンを半押ししてピントを合わせ
(フォーカスロック)、その後フレーミングをきめてからシャッターを切ります。側面から撮影する場合、流線型の魚では、ピントがはずれる
部分はほとんどないですが、斜めや奥行きのあるフレーミング (構図)では、ピントの合っている範囲(被写界深度)に注意が必要です。

②露出

正直言って、露出テクニックは非常にむずかしいです。何度も失敗して少しずつ上達するしかないので、ここでは失敗を避けるテクニックの
概要のみを紹介します。

・オートフォーカスカメラの場合、オートフォーカス(自動ピント合わせ)が作動するのと同時に露出も決定される。
 決定された露出値(絞り値・シャッタースピード)は液晶部などに表示されるのでその値を常に確認する習慣をつけること。

・フレーミングのままシャッターを半押しすると、フレーミング時の露出値がわかるので、フォーカスロック(魚の眼にピント合わせをした)時の
 露出値と大きく差がないことを確認すること。
 大きく差がでる場合、AE(露出)ロックというテクニックもあるので、カメラの取説をよく読んで試すとよいでしょう。

 ・どうしてもこのショット(撮影)は露出ミスしたくないという場合は、オートブランケット機能(自動的に露出を少しずつ変更して、
  露出アンダー → 修正なし → 露出オーバーと3枚撮影する機能)を使用することをお勧めする。


2の5 「釣れた!」から「撮った!」までの手順

リリースをモットーとするスポーツフィッシャーとしては、写真撮影に手間取り、せっかくの魚を殺してしまっては本末転倒となります。
手際よく撮影するための下記手順と心得を参考にしてください。

①フィルム・電池等のカメラの準備はあらかじめ、しておく。

②魚が釣れたら、なるべくその場で撮影する。魚を持ったまま移動しないこと。魚をテリトリーに帰すのと移動による魚へのストレスを
  防ぐためです。

③カメラのセットができるまで、ランディングネットやビクを使って魚をキープしておきます。
  (この段階ではフックはつけておいた方がよい。準備OKイザという時に手がすべって逃がしてしまうこともある)

④背景または場所を選び、小道具(一緒に写し込むモノ。ロッド・メジャー等)をセットする。

⑤魚の位置、自分(カメラ)の位置、太陽の位置を確認。魚なしの状態でピント、露出を確認する。

⑥魚をネットから出して、向き・角度等を決める。フックを外すか外さないで撮影するかは魚の元気度で判断。

⑦フレーミングに注意して数カット(最低2、3カット)撮影。
  ・眼にピント
  ・額に入れたいなら、周囲に余裕のあるフレーミング
  ・頭側スペースを広めに。(尾がフレーム切れするのにも注意)

⑧撮影が終わったら、リリースする。(撮影中の魚の扱いとリリースの心得は省略)

⑨カメラを片づけ、釣りに戻る。



2の6 撮影機材

主な撮影機材は下記の通りです。デイバッグに入れる場合、首から下げる場合いずれもカメラの保護と防水に注意が必要です。

①カメラ(電池)
②レンズ(レンズキャップを忘れずに)
③クローズアップレンズ
④フィルム(ネガ・ポジ) 感度はISO100以下
⑤PLフィルター
 PLフィルターとは、肉眼に使用する偏光グラスと同様のモノで、カメラの偏光グラスに相当します。
 このフィルターを使用すると、水面の反射を抑えるため、水中の魚をきれいに撮影することができます。
 AF(オートフォー カス)カメラには、偏光の指向性のないPL−Cフィルターを使用します。ただし、偏光フィルターは人間用と同様に
 一種のサングラスであるため、カメラにとっては暗くなったのと同じで、撮影(露出)条件として厳しくなります。
⑥ネックストラップ
⑦ハーネス(カメラを胸に固定するバンド。小さなウェストバッグなどを利用するとよい)
⑧ハンドタオル(どうしても手が濡れるので必要。ただしこのタオルでレンズは拭かないこと)


2の7 その他モロモロのこと

①フィールドで

 ・自分自身または同行者との記念撮影の他に釣り場の情景や渓相も撮影しておきたいものです。
                            (もちろん、クローズアップは外します)
 ・魚を持ったままどうしても移動するなら、必ず「活かしビク」などを使用します。
 ・初めのうちはしかたないですが、あまり図鑑的な写真にならないように、時にはドアップ、時には遠景と
  工夫をしましょう。
 ・ヒットパターンとなったフライも一緒に写し込みたいですね。

②家で

 ・つり雑誌の写真も、自分がカメラマンのつもりでイメージトレーニングするとよいでしょう。
 ・カメラの操作には、慣れが一番。普段から練習しておくと完璧です。


さあ、これであなたもフライフィッシャーマン&ネイチャーフォトグラファー、ロッドとカメラを持って、いざ、フィールドへ。

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