リリースを前提とするスポーツフィッシングですが、やっぱり記録に残したいのが人情。魚拓という和風の手法もありますが
フィールドでは無理。やっぱりカメラが便利だ。でも、なかなか思ったように撮影できないというアングラーのために、
「大きく、美しく」魚の写真を撮るためのカメラ基礎講座を書いてみました。
ただし、デジタルカメラの内容ではありません。俗に云う一般的な「フィルムカメラ」です。なぜかというと、私もデジカメを使っていますが、
引き伸ばしてフレームに入れたりする場合、やはりアナログ(フィルム)の表現力にはかないません。
パソコンにはデジカメが圧倒的に便利なんですが・・・。
第2章 撮影テクニックへ進む 第3章 デジタルカメラで、ミッジフライ等を撮影する(マクロ撮影)へ進む
第4章 水面の写真を撮影する(デジタルカメラにPLフィルターを使う)へ進む
第1章 カメラとレンズの特性を知る
1の1 画角(がかく)
カメラのレンズをよく見ると、レンズの縁の部分に「28mmF3.5」などと表示されています。前半の28mmは焦点距離、
後半のF3.5は絞り値です。とりあえず絞り値は今回あまり関係ないので考えなくてかまいません。また、焦点距離についても
その原理や理屈を理解する必要はありません。ここで重要なのは、焦点距離の数値と撮影画面の大小関係です。
途中の理屈を省略すると、
「焦点距離の小さいレンズは広い範囲(人の眼でいう視野)が写り、焦点距離の大きいレンズは狭い範囲が写る」ということです。
そして、この 「写る範囲」(角度)のことを画角(がかく)と呼びます。
一般に画角の広いレンズを「広角」、狭いレンズを「望遠」と呼びますが、望遠レンズは、なにも遠いモノを撮影するばかりではありません。
広角と同じ距離で撮影すれば「拡大」レンズという意味にもなります。呼称としての広角と望遠の境は焦点距離50mm前後とされていて、
50mmレンズは標準レンズとも呼ばれます。(50mmを標準とするのは、人間の視野の画角に最も近いためです。)
なお、構成するレンズ群の一部を機械的に動かして広角側と望遠側の間で順次変化するレンズがズームレンズです。
1の2 最短撮影距離
ピンボケ写真は撮影者の技術だけが原因でありません。どんなに、いいカメラでもカメラ(レンズ)にはピントの合わない範囲が必ず
あります。つまり、被写体が近すぎる場合にはピントは合わないのです。ピントの合う最も短い距離(被写体からレンズまでの距離)を
「最短撮影距離」といいます。
オートフォーカスカメラの場合、ピントが合わないとランプの点滅や電子音で警告する機能をもつカメラがほとんどなので、この警告に
注意すればいいわけです。
1の3 最大撮影倍率
被写体の実物の大きさとフィルム面に撮影された像の大きさの比率を倍率といい、特に、最短撮影距離で撮影した場合の倍率を
「最大撮影倍率」といいます。例えば、30cmの実物が,フィルム面に3cmの像として撮影されたならば、その倍率は1/10または
0.1です。(仕様の表示としては1:10と表示することが多い)
1の4 フィルムとプリントのサイズ
一般に使われるフィルムは「35mmフィルム」と呼ばれています。この35mmとはフィルム1コマ(1画面)の横寸法であり、
縦は24mmです。レンズを通して撮影された画像はこのタテ24mm×ヨコ35mmのサイズになります。
フィルム画像をプリント(印画)する場合、一般に「サービス版」または「E版」と呼ばれているサイズにプリントすることが多いが、
このサイズは82mm×117mm前後が多く使われています。プリントサイズは他にも各種あり下記のようになっています。
2L | 127mm× 190mm | |
キャビネ | 117mm× 168mm | |
六切り | 193mm× 243mm |
つまり、DPEショップの機械でフィルムの画像が、それぞれのプリントサイズに拡大されるわけです。
カメラの理屈はこのくらいにして、さっそく実践に当てはめてみましょう。
●演習問題
1:18cmのヤマメをフィルム面ヨコいっぱいに撮影するにはどのくらいの倍率のレンズが必要か?
2:問題1で撮影したフィルムをサービス版にプリントした場合、プリント面上でヤマメは何cmになるか?
3:下図A、Bのように2通りの撮影をしたい。どちらにも使用できるレンズはイ〜ハのどれか?
レンズ |
最短撮影距離 |
|
イ |
1.0m |
|
ロ |
0.7m |
|
ハ |
0.5m |
1の5 クローズアップレンズ
さて、少しレンズのことがわかると、次のような疑問がおこる。
魚をなるべく大きく撮影したい。
↓
それには倍率の大きな望遠レンズが必要だ。
↓
しかし望遠レンズの最短撮影距離は長いので、魚から離れて撮影しなければ
ならない(問題3のA、Bのようには撮影できない)。
↓
撮りたい距離で、撮りたい大きさに撮影できるレンズはないのか?
確かにその通りで、レンズの各特性は、それぞれ連動しており、演習問題のように独立して処理できないのです。しかし、それは
「マスターレンズ(カメラに付いている主レンズ)のみではできない」という意味です。そこでクローズアップレンズの登場になります。
クローズアップレンズは、レンズといっても非常に薄く、外見はレンズを保護するフィルターと全く同じで、マスター レンズの前面に
ネジ込み式に取り付けます。そのため、クローズアップフィルターとも呼ばれます。クローズアップレンズは、その名の通り、撮影倍率を
大きく(拡大=クローズアップ)することが主目的ですが、このレンズを使用することで最短撮影距離を短くする効果があるので、
そのために使用されることが多いです。
クローズアップレンズには、NO.1、NO.2等と番号がついていますが、魚の撮影ならば、NO.1、NO.2のどちらかでよいでしょう。
(マスターレンズはクローズアップレンズの拡大率を加味してを選択する必要があります)
下の表はある35−105mmのズームレンズにNO.1のクローズアップレンズを装着した場合の撮影倍率を示したものです。
( )内は画面いっぱいの実物(つまり魚の)サイズ(単位はcm)です。
撮影距離 cm | 35mm側 | 105mm側 | |
100 | 1/25 (90) | 1/8 (30) | |
80 | 1/20 (70) | 1/7 (25) | |
60 | 1/15 (53) | 1/5 (18) | |
(min)42 | 1/10 (35) | 1/3 (12) |
使用レンズ: CANON
EF35−105 (min):最短撮影距離
【ひとやすみ】
テレビ番組「千夜釣行」に出演した、ウィスコンシン大教授のゲーリー・ボーガー先生が首から一眼レフを下げて
手にした魚を撮影していたが、はたしてクローズアップレンズを使用していたかは確認できなかった。いずれにしろ
左手に魚、右手にカメラというのは意外とムズカシイ。少なくともロッドはなんとかしなければならない。
1の6 一眼レフカメラとコンパクトカメラ
レンズ、レンズといってきましたが、いままでのレンズの話は、実はすべて一眼レフカメラを前提に進めてきました。
ではコンパクトカメラではダメなのか?ということについて説明します。 結論からいうと、思い通りに撮影しようとすれば、どうしても
一眼レフカメラが必要になります。その理由は「TPOに応じてレンズの交換が可能」なためです。
しかし、コンパクトカメラ(レンズの交換のできないカメラ)の軽量と機動性は大きな長所であり、「証拠写真」的に使用するならば、
申し分ないカメラです。これから、コンパクトカメラを購入するならば、以下のような選定条件を参考にするとよいでしょう。
1:最短撮影距離が短い。
2:ズームレンズが付いている
3:マクロ機能が付いている。
*マクロとは、レンズのメカニズムから決定される標準的な撮影範囲(最短撮影距離)よりも近い距離で撮影を可能にする
「接写」メカニズムで、従来は「AFが作動しない」「周辺ピントがあまくなる」など「なにか」を犠牲にすることで実現していました。
しかし、最近では技術進歩により標準範囲と区別なく機能するようになっている機種もあります。
4:フィールドでの使用を考えると、防水機能も欲しい。
なお、普通、コンパクトカメラの取扱い説明書にはレンズの画角や倍率等のデータは表示されていないので、
自分で確認(測定)することになります。また、私の知る範囲では、クローズアップレンズ(フィルター)のオプションがある機種は
ないと思います。
さて、第2章
撮影テクニックとしては、一眼レフもコンパクトカメラも全く同じなのでガンバッテください。