
| 大画面で行こう |
| テレビの画面を表す時に使われる**インチ、**型というのは、画面の対角線の長さををはかった数字のことである。昔ながらの四角に近いテレビ画面は4:3という比率で横と縦の長さが決まっている。最近増えている横長のテレビは16:9である。横長のテレビは当然対角線が長い。だから、同じインチ、同じ型でも、4:3の四角い画面の方が大きく見える。16:9だと縦が短いので画面が狭まったように見えるのだ。16:9の横長のテレビを買う時は、今見ているテレビより一回り大きなインチのテレビにしないと、家で観た時にガッカリする。こうしたことが案外よくあるようだ。 |
| テレビで実現できる画面サイズはせいぜい40インチぐらい。どうしてかというと、テレビはブラウン管というガラスで映像を映しているので、これより大きくなると非常に重くなってしまうという欠点があるからである。それはもう現実的ではない。ショウウィンドウなどにあるテレビをいくつも並べたようなものは、小さなものを組み立てて大きくしようという発想にある。一つの大きなブラウン管でやろうとしたら気軽に移動はできないし、奥行きも数倍は必要になる。大画面には別な発想が必要になるわけだ(ちなみに、ビルの壁にある大画面は全く仕組みが違う)。家庭用で50インチを越えるものとなると、主流は液晶のリアプロジェクターと呼ばれるやつである。これは液晶を使った小さな画面に後ろから光を当てることで、スクリーンに拡大して絵を映そうという仕組みになっている。だから、画面は普通のテレビのようなガラスではなくて、スクリーン状になっている。スクリーンの後ろ側から光を当てて絵を映し、人間は反対にスクリーンに向かって観るからリア=後ろ投写型のプロジェクターという。こう説明するとピンと来た人もいるだろう。映画館ではフロント(前面)投射である。客席の一番後ろの小窓から映写機の光が出ていて、観客の頭の上を通って、それがスクリーンに絵を描く。この仕組みを裏返してテレビのように箱に入れたのがリア投写型のプロジェクターなのだ(最近は薄型で大画面を作ることのできるプラズマ方式のテレビもある。これも全く仕組みが違う。ただ、今のところ50インチで100万円近い価格ではある)。 |
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| おなじみの「トトロ」の名場面。上は小さく見えるが32インチのテレビの大きさ。下はプロジェクターで投射した80インチ弱の大きさになる。80インチではそのままではカメラの画面に入らなかったので調整してあるから、実寸とはちょっと違うかも。光る棒の違いはスクリーンの高さがテレビより若干高いせいである。それでも画面の大きさの違いは明らか。少し割り引いて考えても、これだけ違う。100インチはさらに大きい。映画はこのくらいのサイズから、「映画」になると思う。 |
![]() スクリーンの設置も課題。天上につり下げ可能ならこれが一番便利。我が家はスクリーンをポールに設置しているので、見る時はスクリーンを上から引き下ろすだけ。 |
しかし、このリア投写型もそうは大きくはできない。もう一度映画館を思い出して欲しい。あの小さな小窓の光が、大きなスクリーンの映像になる。つまり点から光が放射されて、距離に応じて光が広がることを利用して大きな映像になるのだ。大きな映像を作ろうとしても、リアプロジェクターのように箱に入れれるのなら、箱のサイズは当然バカでかくなる。もし、80インチや100インチの大画面を見たいのなら、素直に映写機を買うのがよい。80インチでも4:3なら縦横1mを越える。16:9だと縦のサイズが小さくなるが、それでもかなりの大画面に違いない。このサイズになると普段のテレビとは全ての印象が違ってくるから不思議だ。ワイドショーなどを見るとかえっておおげさでバカらしくなるが、映画の絵は訴えかける迫力がある。さすがに映画は大画面で見ることを前提に作られているのだ。スクリーンで観ることに慣れると、テレビで観る映画はしょぼくれて見える。何か大事なものが失われて見えるのだ。確実にそう感じさせるものがある。 |
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話が遠回りしたが、プロジェクターを買って、スクリーンを張れば大画面が楽しめるわけだが、ここにもやはり条件があるのだ。リアプロジェクターはなぜ箱に入っているのか。その鍵を握っているのは光だ。映像が光でスクリーンに映されるのが原理だから、その光を邪魔する他の光があると映りが悪くなるのだ。映画館が暗いのは雰囲気作りのためではなくて、映画の光を他の光で邪魔されないためなのだ。映画館で画面を写真に撮ろうとフラッシュをたくと、フラッシュの光で画面の光は飛んでしまう。経験がおありだろうか。リアプロジェクターはその仕組みをそのまま箱の中に入れてしまうことで、スクリーンに映るまで光を邪魔されないようにしている。だから、明るい室内でもスクリーンに映る映像はきれいで明るさも失われていない。逆に映画館は人間が暗い箱の中に入っているといってもいいわけだ。だから、プロジェクターで80インチの大スクリーンを楽しもうと楽しもうとすれば、第一の条件は映画館と同じように光を守る「暗さ」ということになる。 実はつい最近まで大画面を楽しむにはこれがネックだった。普通にカーテンをしたぐらいではプロジェクターの光はすぐに負けて、映像が薄くなってしまっていた。もちろん、電気はつけられない。しかし、最近のプロジェクターはずいぶんと明るくなった。さすがにカーテンを開けっ放しではつらいが、普通に電気を消して、カーテンを閉めれば十分にきれいで大きな画面が楽しめる。それこそ簡易映画館である。この明るさのおかげで日常の生活の中に映画が入ってくるという楽しみが確実に一歩近づいてきたといえるだろう。 |
| これがプロジェクター。三菱製。背の高い棚を置いてその最上段にのっている。棚は排熱を考えてパイプ製の空気の通るもの使っている。プロジェクターを棚に入れる場合はランプの熱に注意。 また、写真をよく見ると逆さまなのがわかるだろうか。足が上にきている。プロジェクターの映像は底辺を基準に上に伸びていく特殊な放射をしている。下に置く場合、プロジェクターの下の位置が映像の底辺の位置にくるわけ。プロジェクターを中心に光が上下に広がると使いにくいから。プロジェクターを上にあげれば当然映像も上に上がる。 それで天上などの高い位置に設置できるプロジェクターは画像を上下左右逆転させる機能がついている。これでプロジェクターが逆さまでも映像は元の通りになる。このときはもちろん映像の上辺がプロジェクターにそろうわけである。 |
| 第2の障害は、光が伸びる「距離」である。原理は映画館と全く一緒なのだ。画面を80インチまで引き延ばしたければ、プロジェクターからスクリーンまでの投射距離を伸ばす必要がある。100インチならさらに長い距離がいる。平均的に言うと80インチなら3.5mくらい必要だろうか。100インチなら4m以上は必要だ。これを日本の部屋で考えると六畳で80インチがギリギリの投射距離であることがわかる。100インチを求めるなら十畳ほどの部屋がいるだろう。こうした計算は十分にしておく必要がある。大事なのは画面の大きさだけではなくて、スピーカーを置く場所も考えなくてはいけないということ。前のスピーカーがスクリーンの後ろに隠れると今度はせっかくの音がスクリーンに邪魔されて聞こえにくくなってしまうのだ。迫力あるサラウンドをセッティングしたのにそれがうまく聞こえないのでは意味がない。スクリーンの横にスピーカーを出すぐらいのすき間が必要である。さらにプロジェクターを置く位置と映画を観る人の位置の関係にも注意がいる。つまり、プロジェクターからスクリーンまでは光が伸びているのだから、その前に人がいると影ができるというわけ。そういう意味でも部屋の大きさが大事になる。プロジェクターの光をさえぎらないように横に座ると、今度は画面を斜めから見るようになるし、音響を担当するステレオも真ん中に座れない。プロジェクターを床に置くなら試聴位置はプロジェクターの前には出られず、その後ろになり、サラウンドで背後にスピーカーを置きたいのなら、そのスピーカーはさらにもっと後ろに来ることになる。壁ギリギリに座ったのではサラウンドには都合が悪いというわけだ。 こうして考えていくとと六畳80インチは本当にスクリーンが部屋におさまるギリギリのサイズであることがわかる。生活にゆとりを持たせるのなら六畳で60インチ、100インチなら十二畳くらいの部屋が欲しくなるというわけだ。ちなみに100インチの画面サイズは2m近くなるので、高さも考えると普通の住宅なら壁いっぱいになることは確かだ。 |
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| この黒い箱は何だ? プロジェクターにも画像の調整機能がついているが、さらに別の機械で画像を細かく調整しようとする機械もある。これは低価格の画像調整機。さらにはラインダブラーといって、画像の走行線を機械処理で2倍に増やしてきめ細かい画像を作ろうとするものもある。パソコンでもそうだが画像は大きくなるにつれて荒くなる。これはデジタルの性質。フィルムはいくら拡大してもドットや走行線は見えないが、テレビやデジタル映像ではそうはいかない。ゆえに大画面ではこうした調整機が活躍する。 | サラウンドはいくつものスピーカーを使用すると書いた。最新のデジタルアンプには、それぞれのスピーカーから出る音を、一つひとつマイクで聞き取って、実際に人間のいる位置で聞こえる音によって、バランスを調整しようという機能がついてきた(現在はパイオニアだけ)。さまざまな住宅事情があるのでこの機能は今後どんどん採用されていくだろう。全ての調整を自動でしてくれるので全くの初心者でもすぐにバランスのとれた効果音を聞くことができる。これはそのマイクを設置したところ。このあと信号音を再生しながらものの15分ほどで調整が終了する。 |
| こうしたことを解決する方法が実はある。プロジェクターを天上に設置するという方法。最近のプロジェクターは驚くほど小さく軽いので、よほど弱い天上でない限りは設置できるだろう。専用の金具もある。そうすると映画館と同じ原理だから、スクリーンの目の前はダメにしても、試聴位置についてはかなりの自由が利く。暗闇でプロジェクターを蹴飛ばす心配もないから、子供がいても安心できる。天上に工事ができないのであれば天上と床の間にポールを立てて棚をのせるインテリアラックもある。その上の方にプロジェクターを置いてもいいし、背の高い家具があるのならその上でももちろんそかまわない(この場合は置く位置を固定するのでプロジェクター側に投射距離によって画面の大きさを調整できる機能があることが条件)。もう一つはSONYが提案してくれた。SONYの最新機種は正面から光を投射するのではなく、斜めの位置から投射しても正確に観られるように工夫がしてある。少し考えるとわかるが普通斜めに光を投射すると映像は当然台形を横にしたように歪む。光が届く距離が長いほど画面が大きくなってしまうからだ。プロジェクターから近い側の辺が短く、遠い方の辺が長くなる。SONYはこれを調整することで斜めから移しても、真っ直ぐの四角になるようなプロジェクターを発売した。これなら生活の邪魔にならない壁際に置けば、人間はちゃんと真ん中に座ることができるし、設置も簡単だ。こうした開発はこれからも進むだろう。 |
大画面で見たい映画は何だろう。いくつかの作品を迷ったが、やっぱり個人的に好きな「ジュラシック・パーク」をあげたい。DVDでも最新のパートⅢも発売される。新しくなるほど恐竜の動きはスムーズになるが最初に見た恐竜は感動の一言につきる。緑の島を歩く恐竜たちの姿は永遠の夢だ。あの大きさは大画面で見たい。恐竜の存在感があってこそ、この映画は輝く。子供の頃にコナン・ドイルの「失われた世界」をわくわくして読んだ方にはぜひ恐竜の復活を楽しんでもらいたい。 |
| 大画面最後の問題は価格だろう。80インチはどれぐらい出せば実現できるのか。プロジェクターの価格はおおよそ25万円前後。もう少し安い実売20万円を切るものも最近はでてきた。斜め投射できる機種はまだ少ないが、映写機としてはどの製品の性能もマニアでなければ不満の出るようなものではない。最近の製品であれば明るさはもはやどのメーカーのものでも十分だし映像もとてもきれいだ。部屋の明るさによって当然影響は受けるが、ある程度暗くできればテレビにも負けないほどのものもある。最近のプロジェクターは自宅の状況に合わせて投射距離や機械の大きさ、デザインで選んでも後悔はしないと思う。スクリーンは大きさや材質によって価格も違うが、3万円くらいからある。80インチなら5万円くらい、100インチでも10万円ほどだろう。学校によくあるように天上に設置して引き下ろすものの他、賃貸で部屋の工事ができなければ、普段は収納ボックスに入れておいて、観る時にだけ簡単に組み立ててスクリーンを張る方式のものもある。これもやってみるとほんとに簡単にスクリーンができあがるのでビックリする。折り畳み式の支柱を伸ばして、下から上にスクリーンを引き上げて引っかけるだけなのだ。簡単そのものである。見終わったらケースに入れて、片づければよい。セットで買えば値引きもあるだろう。総額30万円からのホームシアターデビュー。音響のためのサラウンドのセットを入れても40万円くらい。最近はやりのリアプロジェクターや薄型テレビと比べる魅力は十分にあるのではないか。先の条件をクリアできる人は、すでに可能性を手に持っている恵まれた人でもあるはずだ。人生の楽しみにチャレンジしてみても悪くはないと思うのだが。 |