音楽・道楽
「音楽・道楽」な部屋を借りよう
 どうこう言っても、転勤は変わりようがありません。年末年始休みを開けたら、職場では仕事の引き継ぎをして、家では荷造りと、休日には部屋探しです。「音楽・道楽」の部屋探しの条件は次のようになりました。

・八畳間以上の部屋があるか、
 二間続きの部屋、押入れの空間が利用しやすい部屋があること。
・オーディオが趣味なのでできるだけ騒音問題を避けられるところ。
 できれば、借家が望ましい。
・家賃五万円前後。
・車がないので通勤にも便利のよいところ。

 さて、いくら四国の田舎といってもこの条件は厳しい。家賃の上限をぐん上げるとか、通勤が遠くても郊外の方に借りられれば問題はかなり解消されるのはわかっていますが、いかんせん僕は免許がない。もちろんお金もない。ここが大きな問題になっていることは事実です。会社は町のはずれにあるものの、それにしても部屋の広さ、住宅環境を考えると難しいというのは誰の目にも明らかです。

 探してもらいました。ご迷惑をおかけしました、不動産屋さん。古くてもよい、汚くてもよい。まず、この条件で探してほしい。しかも、時期は年明け早々の1月中旬。不動産屋さんに希望の部屋を申し込んでお願いするだけなら、悪くない時期です。よい物件を優先的に紹介してもらえます。しかし、2月には引っ越しを完了しなくてはならないというせっぱ詰まった状況もあります。無理難題をふっかけているわけです。ケンカを売っているといわれても仕方のない状況でしょう。
 それでも不動産屋さんはがんばって二軒の候補を見つけてくれました。最初の一軒は六畳間と四畳半が縦につながっている構造の家。ようするに縦長の十畳間という家です。後ろが畑で、横が倉庫、前が道路です。ただし、右横にはお隣が一軒あります。建物もかなり古く、しばらく誰も住んでいなかったようです。部屋を見たときは畳もとってあって、かなりガタのきている印象でした。道路に面した壁は一面がサッシとなっていましたが、サッシは開きません。倉庫側の窓はもちろん光がまったく入らないのではめ殺しです。シアタールームになるので部屋の明るさは求めないのですが、作り的にもちょっと気になります。家賃は四万五千円。会社へは自転車で20分でいくとのことで、この条件はクリアしています。
 二軒目は会社からちょっと離れました。そこになると通勤はバスしかありません。1時間に一本のバスです。行きも帰りも、不自由にはなります。家の方は最初の一軒よりもだいぶきれいではありました。部屋は八畳と四畳半ということです。ただし、こちらは現在まだ入居者がおられるため肝心の中身が見られないのでした。間取りの細かいところが不明です。中がどうなっているか全くわかりません。環境として隣がすべて空家となっていて、どちらも住むには建て替えが必要なほどです。その点多少の音を出しても問題にはならないでしょう。家賃は四万円。2月1日にならないと入居できないという条件付きです。今年は2月1日が土曜日で、実際の出社は2月3日からと考えれば、ギリギリでも間に合う勘定にはなります。

 条件にみあったのはこの二軒です。一軒目は通勤にはよいが、家はかなり古く、右隣に一軒だけ民家があるというもの。二軒目は一軒目より家の造りはよさそうだが、肝心の中が全くわからない。ただし、部屋はギリギリながら大きさの条件はクリアしているらしい。隣家の心配は全くない。家賃は四万円だが、バス通勤なら出費はあまり変わらず、時間の制約が増える。どちらがよいか。満点の家はありません。何を求め、何をあきらめるか・・・・。一軒目は右隣の一軒がどうしても気になりました。「騒音問題は、ここの地域では一番難しいんですよ」と不動産屋さんにも会社の上司にも念を押されているのです。この地域の人は海の人だから器質が荒い。苦情・ケンカは当たり前だと。そう思うと一軒でも問題は避けておきたい。それと家としての古さも正直気になりました。二軒目は音楽的にはクリア。ただ、部屋の広さがギリギリの八畳。そして、最大の問題がバス通勤ということ。どちらも一長一短ですが、最初の条軒「音楽をまず聴きたい」という点で二軒目の方がまず候補になりました。

 しかし、せっかくなのでオーディオの条件を緩和したらどんな部屋が借りられるかというのも実際に探してもらいました。これならマンションが候補として入ってきます。不動産屋さんで登録のある家を見せてもらいました。ざっと見てここでも候補は3軒です。そのうち2軒は六畳と四畳半が隣り合わせですがどちらも間取りがマンションサイズで一回り小さい部屋になっています。これではスクリーンがまず張れないので意味がありません。角部屋で階下もお店となっていましたが、先の借家より取り立ててよいものではないのでパスします。
 最後に見た一軒は新築でダイニングと洋間がひと続きになるという作りの部屋でした。仕切りはアコーディオンカーテンですが、それを開けてしまえば縦長の広い空間ができてしまいます。洋室としてみれば縦長12畳は楽にあるでしょう。さらに六畳の和室がついています。ここはなんと壁が一面収納スペースになっているというから驚きでした。階下は駐車場で、もちろん角部屋です。家賃は6万円でした。この部屋を見てしまうと、ここを選ばない理由はまず考えられません。僕も候補として一気にこの部屋が浮上しました。建て付けもしっかりしているので、借家同様とはいかないまでも音楽を楽しむことにも不満は少ないでしょう。映画は残念ですが、こちらはヘッドフォンにしてしまえばスクリーンはなんとか張れるかもしれない・・・。部屋は十分に広い作りです。設備も最新でしっかりしています。この部屋は会社まで3キロとダイエットのために徒歩通勤をしている現状なら、これも問題のない距離です。家賃が6万円とちょっと高いですが、部屋の作りからすれば十分に安いものです。

 これで候補は2軒になりました。バス通勤でもオーディオの条件を満たしている一軒家をとるか、オーディオの条件に問題があり、家賃がやや高いものの、設備も新しく格段に広いマンションをとるか・・・。引っ越しの日取りもあるのでいつまでも悩んでいるわけにはいきません。もうこの当日に決めなくてはならない状況でした。1時間不動産屋さんの店内で悩みました。不動産屋さんは半分あきれているようです。どう考えても普通はマンションを選びます。悩む必要なんかないのです。満点ではなくても、平均的には明らかにこちらが上です。僕も結局マンションの方を選びました・・・はじめは・・・。さらに悩んだんですね。帰りの電車で。何を悩んだか。部屋の間取りにあわて荷物の配置を考えたんです。我が家は確かに一軒家で荷物が多い。さらにオーディオやスクリーンを張るという事情もある。でも、配置を考えていくとなぜかマンションの部屋では行き詰まってしまう。広いダイニングと洋間の方にオーディオを配置していくと、なぜか中途半端に使い勝手が悪くなるのです。逆にオーディオを六畳間の和室にまとめてしまうという方法もありました。壁一面の収納スペースがあるので、ここにプロジェクターを設置できれば、投射距離はどうにか稼げそうだからです。しかし、そうすると広い洋間が無駄になります。おかしい、広すぎる。広すぎてうまく使えない。そうすると6万円という家賃に重みが出てきます。その差2万円。無理に詰め込んで4万円にするか、贅沢な広さをとって6万円にするか。これが究極の選択になりました。2時間半かけた電車の旅で着く頃には不動産屋さんに電話しようと決めていました。
 結局、古くても狭くてもオーディオ的な条件を満たした借家に僕は部屋を決めたわけです。しかし、入居は2月1日。さて、本当に引っ越しはうまくいくのでしょうか。


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