
| センタースピーカーの功罪 |
| 前回の写真でおわかりの通り、迷っていたスクリーンの設置もこの部屋の中にできました。スクリーンの設置は苦肉の策でカーテンレールにくくりつけることにしました。これもちょっとした工夫ですが、実はスクリーンは下から上に向かって引き上げるように、上下逆さまにして置いてあります。本来なら上から下へ引きおろして使うのですが、なんせ支えているのはカーテンレールですから、あまり重いものは付けられません。それでひっくり返して軽い下側を上に持ってきたというわけです。その代わり巻き取りはできませんので、常時張りっぱなしとなりました。天上の窓も工夫の末ふさぐことができました。引っ越しの用の段ボールを切り取ってフタを作ってしまったのです。すき間ができるところには布を巻いてカバーします。もちろん、サラウンド用の他のスピーカーもこの部屋の中に置きました。これで、この部屋はもう完全に趣味の部屋となったわけです。 写真を見てお気づきの人もおられるかもしれませんが、もう一つ我が家のシステムには変更があります。スピーカーの間の位置に新しい仲間を加えました。センタースピーカーの導入です。この経緯を少し話したいと思います。 実はセンタースピーカーの導入は去年の夏頃から少しずつ実験を繰り返してきたテーマの一つなのです。我が家のシステムにとって左右の大型スピーカーは、その大きさだけでなく、性能的にも質的にもメインとなるものです。これに対してセンタースピーカーはサラウンド用の非常に低価格なもので、メインスピーカーとはかなりの不釣り合いになっていました。このせいか我が家で設置したときは、映画でさえも、センタースピーカーがない方が音質のバランスもよければ、音の定位もよかったのです。それで我が家のシステムでは基本的にはセンタースピーカーを使用しない設定で楽しんでいました。 しかし、一方ではもともとの録音そのものはセンタースピーカー「有り」で行われている以上、センタースピーカーを使わない方式は、制作者の意図とは反する再生であることも事実です。さらに、センタースピーカー「無し」の状態で、あたかもセンタースピーカーがあるように再生することを「ファントム」といいますが、ファントムにするとストレートに再生するよりも手順が一つ増えるという問題が起ります。本来センタースピーカーが担当するはずだった音を左右のスピーカーに振り分け直すからです。その分音質的には落ちるのではないかという意見があります。アキュフェーズなどの高級なアンプではこうした問題も独自の解決法をとっていますが、最近はソニーが低価格ながらこの問題に対処したアンプを出してきました。このようにもともとの録音と違う再生の仕方をしていること、再生にも手順が増えることには少なからず疑問があったわけです。 |
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| 当初のセンタースピーカーの位置。実際には高さだけではなくて、センタースピーカーはさらに手前に来ていた。この位置だとはっきりとバランスが悪く、セリフだけが別な方向から聞えて気持ちが悪かった。この置き方ならセンタースピーカーはない方がよいくらい。 | やはり、理想はこうした配置にしたい。高さも距離も左右のスピーカーと合わせたいところ。ただし、こうした配置を実現できるのはシアター専用ルームがある人に限られるだろう。この位置でスクリーンも必要なら、音の通過性が良いサウンドスクリーンにする必要もある。我が家はなんとかこの位置をキープした。スクリーンはスピーカーより少し上の方に来ているが、音場の位置が自然なので、違和感はない。 |
| そこで昨年の夏ぐらいからセンタースピーカーの位置というのをまず考えていきました。一般にセンタースピーカーを置くといっても、中央であるがゆえに、設置するときは他の家具の邪魔にならないように、どうしても足元の方に置くことが多くなります。左右のスピーカーの置き場所でも苦労しているのに、中央の位置までスピーカー用の空間を作るのは現実的ではありません。我が家ももちろんそうでした。我が家はこの時中央に大型のテレビがあったのです。しかし、足元に置くと、当然スクリーンよりもかなり下の位置になってしまい、セリフがどうしても下の方に引っ張られていきます。こうなると耳と目がちぐはぐになって、映画の雰囲気を壊してしまうばかりです。我が家ではセンタースピーカーを使わないファントムに設定し、セリフもメインスピーカーで再生するとちょうどスクリーンの位置で音がつながり、俳優の顔と声の位置がそろって聞こえていたのです。このために我が家では無理にセンタースピーカーはいらない、むしろメインのスピーカーをきちんと設置して音像の定位をしっかりさせることの方が好結果を生むというのが、これまでの考え方だったわけです。 でも、これはやっぱり置き方の方に原因があるのは明らかです。センタースピーカーにとっては不利な条件で比べられているわけです。本来なら両サイドのメインスピーカーとセンタースピーカーの高さを合わせて置くのが最善のはずです。そうすれば音が下に引っ張られることはありません。しかし、こうするとセンタースピーカーはスクリーンの位置と重なるので、実際にはスクリーンの後ろに置かなければならなくなって、今度はその音が遮られてこもった音に聞えてしまいます。町の映画館ではサウンドスクリーンといって、音が通過できる特殊なスクリーンを使っているのでした。サウンドスクリーンは高価なので普通の家では手が出せません。 それでも考え方は一緒のはずです。要はできるだけセンタースピーカーの高さを上げてスクリーンに近づけることが大事といえます。それで我が家はテレビの位置をできるだけ後ろにズラし、メインスピーカーとスクリーンを前にズラし、センタースピーカーを置く位置をなんとか確保してみたのです。 この時もう一つ大事にしたのはメインスピーカーとの距離の関係です。センタースピーカーの音が目立つのは左右のスピーカーとの距離がちぐはぐだからだとも言えます。考えるとわかりますが、左右のスピーカーと等距離に置くということは、センタースピーカーの位置は左右のスピーカーを結ぶ線より少し後ろに来るわけですね。三角形の底辺のラインより少し下がるわけです。サラウンドをやっている方はご承知でしょうが、AVアンプやDVDプレーヤーには各スピーカーの距離が合わないときのために、音の発する時間をズラすことで、あたかも距離が等しくなったように見せかける機能がついています。しかし、それにも限界はあるので実際に同じ方が絶対によいと言えます。こうしてセッティングを詰めていきました。この際センタースピーカーばかりでなく、他のサラウンドスピーカーについても距離を合わすように、少なくともサラウンド同士4本の距離を合わすようにセッティングをしなおしていったのです。 |
| さて、それでどうだったか・・・。実はこれでセンタースピーカーは見事に消えたんですね。あれだけ目立って我を張り通していたセンタースピーカーは、目の前からすっかり消えてしまいました。それでなおかつ映画のセリフの発音がよくなっています。ボーカルの定位も非常によい位置に落ち着きます。これに比べるとセンタースピーカーなしのファントム設定では明らかに音場が拡散していると感じるのです。セリフの口の大きさがどうしても大きく、布一枚はさんだ感じに聞えます。センタースピーカーの効果がはっきりと体験できたわけです。 しかし、いろいろ聴いていくと音楽CDなどはセンタースピーカーがない方がより自然に感じます。これはセンタースピーカーの質がメインのスピーカーと合わないことにも大きな原因がありそうです。我が家は音楽再生時にもサラウンドを使っていますが、そうするとセンタースピーカーはやはりちょっと邪魔に感じました。一方で映画は間違いなくセンタースピーカーがあった方がよいと思います。セリフが立ってくると、周囲の効果音が後ろに沈みますので、総体的には映画の奥行きが生まれるという効果もありました。サラウンドスピーカーの距離を合わせていくのも効果があって、効果音の均一性がとれてより自然な音場に包まれる感じを受けます。考えれば距離をすべて合わせることがTHXが推奨するセッティング法なわけです。本来どおりのセッティングをすると、本来どおりの実力が出せるのは当たり前のことなのでしょう。ただ、普通の環境ではこれがなかなか難しいわけです。せめて前方の3つ、後方のサラウンド4つのスピーカーの距離は合わせるというのが、実験からの感想でした。 もう一つおまけでいうと、センタースピーカーはなぜ横長のものが多いんだろうかという疑問が少しあります。メーカーとしては低音の再生力のアップが目的らしいのですが、日本の狭い住宅事情で低音がそれほど必要かどうか・・・。むしろ、横長のスピーカーは音が広がりやすい上に、メインスピーカーとの関係にも自己主張しやすいのではないかと思うわけです。かなり広い部屋で大勢の人と楽しむような環境ならセンタースピーカーの横長化も意味があるのでしょうが、我が家のように狭い部屋、せいぜい数人の視聴ではどうか。人間の声の帯域を中心にしっかり再生できるような小型スピーカーを置く方が音の集約にも効果があるのではないかと思うのですが、どうでしょうか? |
| こうした経験を踏まえて、新居ではセンタースピーカーの導入を最初から考えていました。少なくとも映画にはあった方がよい。そして、今回の新居ではSACD、DVDオーディオという新しい規格のCDにも完全対応しようと考えております。この新しい規格は従来の2本のスピーカーだけでなく、映画の時と同じようにいくつものスピーカーを使って、より豊かな音楽再生ができるように考えられています。センタースピーカーももちろん必要なのです。 センタースピーカーの条件ですが、できればメインのスピーカーと同じ音色のスピーカーをそろえるのが良いとされます。本来ならまったく同じスピーカーを並べるのが1番良いというのです。しかし、我が家のような大型のスピーカーを3つも並べるのは不可能です。せめて同じメーカーのスピーカーが良いともされますが、こちらもダイヤトーンはすでにこの世にないメーカーであきらめざるを得ません。こうなると好みで選ぶしかないようです。ただ、できればセンタースピーカーもある程度グレードの高いものを導入しようかと考えていました。中央の音質を左右するのですから、グレードの違いは大きいように思います。そうしたことからして実は第1候補はB&Wの805というスピーカーを考えていました。音の出方がメインスピーカーとは少し違いますが、音離れがよいので左右のメインスピーカーの音にもとけ込みやすいのではないかということと、音質的にもかなりバランスのよいスピーカーだと以前から感じていたからです。もし、フトコロに余裕があればその上のSignatureモデルというものもあります。ここまで来れば不満はないだろうと考えていました。 まあ、しかし、現実とはそうはいかないもので、スクリーンはなんとか部屋に持ち込んだものの、試聴位置がこれまでより非常に近い位置になりましたし、引っ越しの費用にしてもかなりかかってしまいました。高価で大きめのセンタースピーカーの導入は当面見送らざるを得ません。小さくて性能的にも良いスピーカーということで、最終的には写真にあるとおりビクターの代表手な小型スピーカー「SX−LC3」が、我が家のセンターにおさまることになったわけです。これも新製品の発売のために半額程度で投げ売りされたのを購入できたわけですが・・・。「SX−LC3」はメインのスピーカーに比べると音色的にやや華やかかもしれません。しかし、これがちょっと微妙なアクセントになってる感じもして、印象は悪くありません。映画のセリフなどにはかえってハリがあります。新製品はしばらく使っていくとなじんで音も落ち着いてきますので、このまま様子をみていこうかと思います。 こうして我が家は事情が許せば、センタースピーカーの導入は意味があると意見を変えました。「事情が許せば」が結構くせ者ですが、いろいろ実験するのは楽しいものです。センタースピーカーの導入で、これまで見た映画もまた見直してみようかなとも思っております。 |
![]() 我が家の新しい仲間、Victor「SX−LC3」。新製品発売のために半額で投げ売りされたのを購入。小型だが定評あるバランスの良い音質。サイズも手頃。布がかぶせてあるのは、映画をスクリーンに映したときに光がスクリーンに反射するのを防ぐため。 |