音楽・道楽
シンプル・ライフの夢 その1

 部屋をシンプルに使いたい。これはオーディオにとっても永遠のテーマのひとつと言っていいと思います。僕は最近すごくこのことが気になっているのです。オーディオはもともとが機械を中心とした趣味ですから、性能にこだわりこそすれ、外観にはこだわらないという人がたくさんいます。実力本位となると、見てくれが犠牲にされても致し方ないという意見はよくわかります。僕も外見にはこだわらないタイプで、そう思ってきました。しかし、一方ではそれが女性の理解を遠ざけ、家族からも白い目で見られる原因でもあると思うのです。部屋の中心はスピーカーであり、人間の居心地は後回しにしているのですから、家族が良い顔をしてくれるわけはありません。部屋をゴチャゴチャさせている理由は機械のデザインや大きさだけではありません。我が家の部屋は最新の建築なので、機密性が高くて防音効果はそこそこですが、機密性が高いということは、部屋自体の音の反射が大きいので、単純にシンプルに済ませることができないことにもなります。本当なら、必要な機械とソファだけで済ませたいところなんです。しかし、そうすると音が響きすぎてダメなんです。結局、吸音のために次から次へと荷物を入れてしまいました。カラーボックスには本を入れ、小物の置ける棚も部屋の中に入れました。パソコンも毎日使う必需品ですが、ディスプレイは大型の19インチでしかもブラウン管型。今や邪魔そのものです。試聴室は本来三方の壁に窓がある明るい作りなのですが、映画のためにわざわざ窓も布で窓をふさがれています。カーテンをつればよいのですが、窓がスリット上の縦長の特殊な形状で、普通のカーテンが吊せません。それで思い切ってふさいでしまったのです。しかし、どうもこれが息苦しいし、部屋も暗い。部屋の雰囲気をすごく悪くしています。

引っ越しから2年がたち部屋の様子もだいたいわかってきました。それで改めてこの部屋を見回してみると、当初は音楽を聴いてリラックスできる空間にしたいと思っていたにもかかわらず、見た目にはそうした理想とかけ離れている現状に気がつくのです。ステレオの機械やケーブルの入れ替えも一通り済んできたこともあります。そうしたゆとりも手伝って部屋のことを考える次期に来ていたのかもしれません。何とか少しでもこの部屋をシンプルに、上手に使いたい。

スクリーンでの投射には暗さの確保が第一。そのために閉ざされた窓はいかにも暑苦しい。暗い部屋も精神衛生上よくない。


 AP−5の素材となっているミスティックホワイトは普通のハサミで切ろうと思ってもなかなか切れません。切れることは切れますが、繊維がほつれて切り口がかなり汚くなってしまいます。それだけ強い特殊な繊維です。見た目には何とも頼りなく、これで大丈夫かなぁという感じ。音がざわついていたり、雑に聞える時は効果があります。
 我が家での最終的な設置位置は、自分の真正面と真後ろの2カ所。つまり、自分は2枚のAP5にはさまれている状態。この位置だと前後共に反射が抑えられるので、ちょっと独特の空気感が漂うのがわかります。スタジオのような完全遮音の部屋に入ると独特な空気感を感じますが、AP−5を設置した後も慣れるまで少し耳にキーンと来るくらい空気感にも違いがあります。

 こうしたことはオーディオを楽しんでいる方なら誰でも感じる点なのではないかと思います。そこで最近は少しでもこうした環境を改善していきたいということで、ルームチューニングということに興味を持っています。我が家ではこの一年少しずつ導入してきて、感想なども書いていますが、今回はそれをまとめて紹介していこうと思います。と言いましても所詮は素人で、どこかのコンサートホールのような素晴らしいチューニングなどができるはずもありません。目標はとりあえず「部屋の中からいらないものを出していくこと」「部屋から出せないものは視野の外に」「部屋の雰囲気はできるだけ柔らかいものに」ということにしました。とにかくもう少し、スッキリとしたシンプルな部屋を作りたいということです。

 まず、我が家で一番最初に購入してみたのがクリプトンの「AP−5」という吸音材です。これは以前にも紹介しました。よりサイズの大きい「AP−10」というものもあるんですが、我が家は部屋ももともと8畳程度と狭いので小さいサイズにしました。構造はシンプルで、額縁のような縦長の木枠にミステイックホワイトの生地を二重に張り込んだだけのものです。簡易の足もついてきますので、自立しますからそのまま好きな位置に立てればセッティングも完了します。薄くて、軽いのも特徴で、なんにつけ苦労はありません。ミスティックホワイトというのは単品でも売っていますが、一見綿のように見えながら実は科学技術の先端を行くような特殊な布なのだそうで、グラスウールの4倍ほどの吸音効果があるそうです。とても、そのようなものには見えませんが、説明ではそうなっています。実際に使用してみるとスピーカーの周囲ならどこに置いても、再生音にあった雑味が消えていくのがわかります。消えていくのは部屋の残響であり、もともとのスピーカーから出た音ではない反響音というわけです。置き場所によっては吸音効果が目立ちすぎる場合もありますが、基本的には吸音を求めるよりも、部屋のノイズっぽさを取とって、すっきりさせる効果の方が本来の役割のように感じます。ですから、整音に近いかもしれません。スピーカーの外側の壁や後ろなどでも試しましたが、我が家ではリスナーの正面に設置するのがよいような気がしました。現在は2枚購入して、リスナーの正面と後ろに1枚ずつ設置してあります。



 次に試したのはRWL−1のブラックタイプ(写真はバージョンアップしたRWL−2)。良くも悪くも、この製品は大きな変化をもたらす。我が家では下記の通り、ゴージャスで明るめな変化を示した。そして、設置もシビア。ポンと置くだけでは使えない。ルームチューニングは最近流行ってきているが、この製品はこうした点を考えて導入した方がよいと思う。案外好みが分かれるのではないだろうか。


 次に登場するのがアコースティックリヴィブの「RWL−1」です。こちらは反射材として使います。内部の構造のくわしいことはわかりませんが、縦に溝を切ったものを中央からから左右に向けて配置したという製品です。中央により厚みがあって左右にかけては少しずつ薄くなっていくのですが、これによってさまざまな周波数を適度に分散させるので、その部屋固有に生まれる音響上のクセが緩和されるといいます。もともとの製品はベージュだったのですが、ホームシアター用に黒く塗った物が発売されましたので、我が家は黒いタイプを使っています。最近はトルマリンを含んだ絹を使ってマイナスイオンを発生させるという新製品も登場しました。「RWL−1」も軽いのが特徴ですが、ちょっと強く持つだけでも内側に凹んでしまうので頼りない気もします。音を跳ね返すのだからと思うと、しっかり頑丈そうなものを期待しますが、固ければよいというのではないようです。実際に使用するとさすがに反射材というだけあって、音響に与える変化はかなり大きな物でした。置く場所、向きによって、試聴位置で感じる音圧感が非常に大きく変化します。この製品の良いところは返ってくる音に変なクセがないということです。音圧感とか音量感がアップするのに音のたまりができず、むしろすっきり感の方が高まるのです。そうすると不思議なことに、これまで部屋の残響のクセでマスクされていたと思われる細かい音が、良く聞えるようになります。設置すると音量も上がり、パッと音数が増えるので、いわゆるゴージャスな音に変化するのです。こういう体験も新鮮です。プレーヤーが変わったかのような印象すらあります。たぶん、低音より中・高音が分散される割合が多いようで、その華やかさが音をやや明るめな(少し軽やかな)雰囲気に変える感じもありますが、このようなゴージャス感は多くの人に受け容れられるのではないかと感じます。ただ、しばらく聞いているとゴージャス感がややにぎやかでわざとらしくも感じたり、設置の場所によっては音が中央により過ぎて広がりが希薄になったり、その逆になったりするようです。我が家は最初はスピーカーの後ろに置く設置でした。スピーカーの背後に回る音が拡散されてやや音が前に出てくる感じが、好ましかったからです。スピーカーの外側の壁面はあまり良くなくて、現在ではスピーカーよりやや内側の位置、正面向きに置いています。内側に傾いたスピーカーの一次反射を拡散させるぐらいの位置でしょうか。いろいろやってRWL−1の使用上の注意としては、やはりこの跳ね返りによる音圧のコントロールにあるように思います。我が家で中央によせすぎると音もどんどん中央によってきて、非常に積極的な感じになりましたが、逆に左右の広がり感が薄れ、顔の正面に音が当たるというような感覚にもなります。それでちょっとずつ外側に広げていくという作業をしました。音圧感と華やかさが少しずつ弱まって、自然な雰囲気になる場所で決めたら、今の場所になったということです。また、この製品はこうしてかなり強く影響するので左右2枚の位置のズレが非常に気になります。軽いので動かすのはたやすいのですが、スピーカー設置並みに左右そろえた方がよいようです。一度良い場所が見つかると音が空間に放たれる率が上がって、スピーカーや部屋にまとわりつく感じがなくなります。
 最近のJ−POPの新譜から紹介するのはMisiaのこの1枚。「Song For Singer」。日本を代表するアーティストたちがMisiaのために書き下ろした曲を、Misiaがいかに歌いこなすかというのが、このCDの本来の内容だが、それにもましたエイベックスがチャレンジした新録音はこれまでのJ−POPの制作過程に一石を投じるのではないかと思う。解説によると録音からマスターまでを直結し、オーディオでも話題のクロック制御を行ったとある。音もその通りストレートで分解能も高い。スタジオのガラスが1枚取りはらわれたよう。ぜひ、この録音方法が広がってくれることを願わずにはいられない。
「AppleSeed」
公開が「イノセント」と近かったのと、原作がアニメ系なので見る人を選んだためにマニア以外では話題にならなかった作品。映画としてはモーションキャプチャーで全ての人の動きをコンピューターで読みとり、それにあわせて登場人物の動きを描いたこと、「イノセント」同様にアニメと実写の融合を試みたことでチャレンジ精神のある作品ではある。どの解説にもあるが、最初の30分は融合の失敗が目立って嫌になるが、次第にこなれてくるから面白い。制作が慣れたせいかもしれない。
 ただ、「音楽・道楽」がすすめるポイントは話題の映像ではなくて、音の方でした。中盤からはストーリーのテンポが上がるのに従って、効果音もあちこちで炸裂。このダイナミックな音作りを聴くと、このところのハリウッド映画はサラウンドの配置にやや神経質になりすぎているのでは、と思えてしまう。もちろん、この映画だってサラウンドに手抜きはない。レンタルでも良いから、一度聴く価値はあるかも。


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