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第1シリーズ 21話 「受験戦争に消えた命」
東大の合格発表。不合格となった浅井雪乃の兄・洋一(田鍋友啓)が陸橋から電車に飛び込み自殺する。浅井家には事件を聞きつけたマスコミが押し寄せ、池内商店に身を寄せる雪乃(杉田かおる)のことも嗅ぎつける。金八(武田鉄矢)らの気遣いにも関わらず、記者の口から兄の自殺を聞かされた雪乃は、歩を連れて実家に戻ることを決意する。
教室に戻った金八は、事件のことを正直に報告する。同時に「合格に漏れた者もみな先生のところに帰ってきてくれてありがとう」と生徒に感謝し、「実社会に出たら辛いこともあるだろうが、その時はどうかこの日のことを思い出してくれ」「死んじゃいかん」と涙ながらに訴える。生徒たちは保(鶴見辰吾)と雪乃をみんなで守ろうと誓うのである。
洋一の死により生きがいをなくした父・正太(牟田悌三)、そんな正太を責める母・秋子(野中マリ子)だったが、雪乃と歩が浅井家に戻ると、少しずつ笑顔が戻るのだった。
みどころ談義
- ● 雪乃のお兄ちゃんが…。
- ○ 悲しいねぇ。東大なら一浪、二浪しても許容範囲だと思うんだけれど、失敗は決して許されないと錯覚してしまったんだろうね。そのために家でも王様然としていたワケだし。
- ● この雪乃のお兄さんと教頭の息子との対比が、いっそう衝撃ぶりを引き立てるんですよ。
- ○ 教頭の息子は横国に現役合格。
- ● これでも十分誇れると思うんですけどね。金八先生の「東大に入ることだけが目標だったのだろう」という言葉が頭に残ります。
- ○ 洋一が自殺した後の浅井家で、雪乃の母親が歩をいとおしそうに抱くシーンがあるよね。ここでも背後に受験の跡が見えていい効果を出している。「克己」だとか「東大合格」だとか決意の張り紙があって。
- ● キツイ見せ方してくれますよねぇ。受験に対して意気込んでいた跡がまだ残る部屋を、父親が暴れてメチャクチャにする。
- ○ もう何もかもお終いだ、という状況を見せておいて、そのタイミングで雪乃が歩を連れて戻ってくると。
- ● こうでもしないと雪乃は浅井家に戻れなかったのか、という気もちょっとしますね。
- ○ もう一つ印象に残ったのが金八の説教シーン。
- ● 「死ぬな」ということを言うんですが、死なないで戻ってきてくれて「ありがとう」というところから入っていくのがスゴイと思いました。
- ○ 説教なんだけれど、完全に生徒たちと同じ高さまで降りて話してるんだよね。「入試の日は先生も恐かったし、発表の日はもっと恐かった」と。
- ● 同じ目線の「いい兄貴分」でいてくれた金八先生…。
- ○ 「先生泣いたりしてみっともなかったけど、このみっともない教師の顔を、何度でも思い出してください。」
- ● 僕、そこで泣きました。
- ○ 金八は常に生徒と同列にいた。ということは、この言葉の中の「先生」や「教師」という部分を、生徒一人一人が「自分」と置き換えることもできるんだよね。巣立ちゆく生徒に対してのはなむけの言葉でもあったような気がする。
- ● はなむけ…そうですよね。荒川土手も春の匂いがしてきました。
- ○ ラストで金八と保が、交差点で別方向に歩いていったでしょ。もうすぐ卒業式なんだなぁと寂しくなるシーンだったね。
- ● 最後に気になったことを一ついいですか。流れを無視するようで申し訳ないんですが、金八先生、お通夜でも火葬場でも喪服を着ずにいつもの服装で通していたんですよ。
- ○ 金八は貧乏なんだってば!
- ○ 悲しいねぇ。東大なら一浪、二浪しても許容範囲だと思うんだけれど、失敗は決して許されないと錯覚してしまったんだろうね。そのために家でも王様然としていたワケだし。
小ネタ拾い読み
- 宮沢家は雪乃に父・進一郎の建築事務所で働いてもらい、歩は自宅が施設託児所だとして預かりたいと申し出た。
- 浅井家に押しかけた取材陣の一人に、大地康雄さんがいる。雪乃が十五歳の母であることを嗅ぎつけた人。
- 自殺未遂事件を起こした越智はるみ、雪乃の兄自殺の報を聞いて、クラスでただ一人顔を覆うほどのショックを受ける。
- 雪乃の誕生日は9月。