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第2シリーズ 15話 「生きることは学ぶこと」
授業中の教室に土屋英樹の姉でフラワーボックスのさくらこと珠子(日向明子)がやってくる。加藤優の就職口について良い話を持ってきたというのだ。所詮キャバレーの客の話だといぶかしがる野村教頭らをよそに、金八(武田鉄矢)は紹介された墨東工業へ向かう。すると社長の上野(高木淳一)は無骨ながら理解ある人物で、定時制に通いながら働いてもいいと言うのだった。
珠子はキャバレーで働く傍ら、金八の部屋で週3回、国語の個人授業を熱心に受けていた。普段は明るい珠子だが、実は以前、付き合っていた男性の母親に誤字だらけの手紙を書いたことで無教養さを咎められ、それが一因となり結婚目前で破局した過去を持っていたのだった。その相手の母親にもう一度手紙で一言いってやりたい一心で国語を習い始めたのだという。
翌朝、金八に珠子からの手紙が届く。珠子が深夜から朝までかけて書き上げたその手紙には、今さら相手の母親に手紙を書いたがおかしくなってやめたこと、そして親身になってくれた金八への感謝の気持ちが立派な文面で綴られていた。金八は「僕の生徒はどの子もみんな素晴らしい」と感じ入るのだった。
みどころ談義
- ● すごくいい話じゃないですか。しかもただいいだけの話じゃなくて、天真爛漫な珠子さんのキャラクターとか、キスマークだらけでうろたえる金八先生の姿とか、笑える要素もしっかり入ってるところが好きです。
- ○ 手紙なんて出されちゃうと、まぁ泣けるよね。なんか重松清のビタミンFに通ずる雰囲気の(なんて言ったら金八アンチの重松さんは怒るかな)、ちょっと理想にすぎるけれども、元気をもらえる良い話。
- ● 若干都合のいい展開かとも思うんですが、ドラマ的なストーリー性がすごくあります。
- ○ 前回14話「東京は理社に弱い」は物語性が薄かったなんて言ったんだけどさ、その分こっちに持ってきたのかもね。
- ● 今回は、前回のアンサーっぽいということですか?
- ○ そういう側面もあるかなって。前回金八が「やるべき時にやるべき勉強をやることが大切だ」という説を出して、今回はその実例のような出来事が展開された、というようにも思えるよね。
- ● 確かに対応しているような。珠子さんの手紙の中で「あとは自習します」という文が出てくるんだけれど、これも自習時間につい騒いでしまう生徒と対比になっているのかな。
- ○ そうそう。ああいう過去を持つ珠子がたどり着いた「自習」と、まだ子どもっぽい生徒にとっての「自習」ね。それにしても珠子はカラッと明るいし嫌味なところがないし、ホント偉いよなぁ。
- ● 最後、珠子さんの晴れ晴れとした姿が映し出されるじゃないですか。見た目はケバイんですけど、そこでの振る舞いはあの小さな商店街によくマッチしているんです。案外下町らしい人なんだなと思いました。
- ○ あ、それから3Bの授業でも珠子の個人授業でもテキストに使われた、むのたけじという人の詩なんだけどね、これ、演者の武田鉄矢さんご本人が日常でも大好きな作品のようだよ。
- ● そうだったんですか。
- ○ 武田さんの対話集「言葉をもらいに…」(三笠書房)の中に、武田さんとむのさんの対談が収録されているくらいで。武田さんは滅入ったときにむのさんの「詞集たいまつ」(評論社)という本をいつも読んで気持ちを入れなおすんだって。
- ● 詞集たいまつはまさに今回を通しての参考文献ですね。
- ○ 手紙なんて出されちゃうと、まぁ泣けるよね。なんか重松清のビタミンFに通ずる雰囲気の(なんて言ったら金八アンチの重松さんは怒るかな)、ちょっと理想にすぎるけれども、元気をもらえる良い話。
その他の周辺状況・小ネタ
- 墨東工業は、車と名のつくものなら何でも修理するという従業員4人の小さな会社。初任給は中卒で84300円+残業手当(税込)。休みは日曜だけ。ただし夜学へ通う場合は残業なし。
- 墨東工業の上野社長は息子を勘当した。
- 金八、悦子の部屋に初めて足を踏み入れる。
- 珠子は金八の出した宿題のテストで90点を獲得。