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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第6シリーズ 21話 「鶴本直」

金八(武田鉄矢)は鶴本直(上戸彩)を伴ってメンタル・クリニックを訪れ、セクシャル・マイノリティについての特別授業を行うことにしたと報告する。衝動的にカムアウトしてしまった直の抱える障害をクラスメイトに理解してもらうためだ。直は自分を見世物にするつもりかと嫌悪感を示すが、「このまま3Bと別れることになってもいいのか」という金八の言葉が胸に響き、仲間の理解を信じて特別授業へ出席することを決意する。

直も登校し久しぶりに全員が顔を揃えた3Bで、「男女共同参画社会」を題材とした総合学習がスタートする。お互いの将来の夢を当てるゲームを通して、現代社会が「ジェンダー・フリー」の時代に突入していることを生徒たちが理解すると、金八は「では、皆に分かるように君のことを説明してください」と直を指名。直は「生物学的性」と「性自認」が一致しない自分についてゆっくりと語り、「でも僕は化け物じゃない。必ず本当の自分になります」と誓う。

続いて養護の本田先生(高畑淳子)が教壇に立ち、生命誕生の場面から「性同一性障害」の成り立ちを心を込めて解説する。そして、このようなマイノリティも含め、一人の人間が自分らしく生きていくことのできる社会を皆で作り上げていくことが大事だ、と結論づける。最後に金八が直を前に呼び、「皆で力になるから、どうか頑張ってください」と言うと、いまだ直に敵意むき出しのミッチー(川嶋義一)を除く生徒たちが、口々に直を励ますのだった。

放課後、直は土手へと向かう。yesterdayとしてハセケンへメールを送り、会う約束を取りつけていたのだ。待ち合わせ場所で長谷川賢(加藤成亮)と対面した直が、自分がyesterdayだったのだと告白すると、賢は「yesterdayが君で、俺は嬉しい」と答える。笹岡あかね(平愛梨)、前多平八郎(田中琢磨)ともyesterdayは直じゃないかと話していたというのだ。晴れて仲間となった直は、「明日からのハンドルネームはtomorrowだ」と言って、固く握手を交わすのだった。

02年3月14日放送

脚本: 小山内美江子

演出: 福澤克雄

視聴率: 16.5%

DVD: 第8巻

小説本: 第22集

参考文献・挿入歌

 みどころ談義
● 一話の約半分、時間にすると大体30分弱ほどを「セクシャルマイノリティの特別授業」に充てた、第21回でした。
○ 直がやっと学校に出てきてくれたね! ここ2話ぐらいずっと光が差し込んできていたのに、それでもどうしても踏ん切りがつかなかった直。その背中を最後に押したのは、3Bと分かり合わないまま卒業してしまっていいのか、という金八先生の問いかけだった。
● そうですね。弱気になった直にお母さんも「仲間がいるじゃない」と優しく励ましてやって。そうして、直が復帰して30人になった3Bで、特別授業がはじまるわけです。
○ この時期に「教師がやりたかった授業」を総合学習として行うのが、桜中の恒例になっているようだね。
● そうなんです。第4シリーズの「印度カレーの神秘」が最初で、第5シリーズでは太田アスミの泊まり歩きに関連した生命の授業、それから「手と目と声で、勉強しよ〜う」の掛け声が印象的だった清掃工場の見学なんかがありました。
○ 今回のテーマは「男女共同参画社会」。実はこれ、前回北先生が職員室で提案していた議題なんだけれど、気づいてた? セクシャルマイノリティについて意見交換しているうち、「これは男女共同参画社会へ向けて絶好の総合学習のテーマになりますよ」と言って、周りの先生たちに「ご指導ください!」なんて頼まれていた。
● へぇー。そういえばそんなシーンがあったような。それで校長派だった北先生もこちらに参加しているんですね…。さぁ、そして特別授業がスタートです。直は自分の置かれた境遇を皆に理解してもらうために、覚悟を決めて3Bに全てを告白します。政則がしたのと同じように。
○ 今までずっと思い悩んできた直も、3Bに復帰して全て打ち明けると決めてからは頑張ったなぁ。マイノリティの方々が抱える悩みって、とても理解されにくいし、それだけ人に言い出しにくいものだと思うんだけれど、このときの直は言いづらいエピソードもしっかりと言い切った。
● 専門家の間でも諸説あるような難しい問題だから、この授業一つでみんな理解できたかというと、さすがに違うとは思うんです。でも、伝えようとする姿勢、そしてしっかり受け止めようとする姿勢が素晴らしかったんじゃないでしょうか。
○ そうだね。しかしセクシャルマイノリティの方々が直面している問題ってのはものすごく多いんだなぁと、この授業を聞いていてつくづく感じたよ。周りの偏見の目がなくなればいいのかというとそうではなくて、法整備の問題が本当に大きいんだね。
● 戸籍の問題ですよね。ここが変わらなければ、結婚はできないし、出入国審査でも不利益を被るとのことでした。ということは、おそらく就職活動もままならないでしょう。文字通りの死活問題なんですね。
○ 3Bの生徒たちも、我々も、少し前まではこんな問題があることを全く知らなかったんだよなぁ…。性同一性障害やセクシャルマイノリティなんて言葉があることさえ知らなかった。
● だから今回のこのシリーズをきっかけに、もっともっとアンテナを広げて、いろんなことに敏感な自分になっていかなきゃイカンと思います!
○ その通りだなぁ。いくら問題がややこしくても、結局は「思いやり」というシンプルなところに帰っていく気がするしね。
● さて、そうして3Bと分かり合うことができた直は、yesterdayを捨てるためにハセケンに会いにいくことになります。このシーン、ちょっとドキドキでしたね。賢だけではなくあかね、平八郎も直を親友として迎え入れてくれて、本当によかった。
○ お互いが手と手を差し出して握手をした、手を握り合ったというのが象徴的。これはメールじゃ絶対にできないことだから。
● でもですね、ちょっと余計なこと言っちゃうようで恐縮ですけど、もし奈津美の出会いサイト事件のように、直じゃなく変なおじさんが来ていたら賢はどうしてたんでしょう? 顔の見えない相手と会うときは十分気をつけろという教訓はどこへ言っちゃったんだと。
○ それを突っ込んじゃマズイなぁ(笑)。まぁ、yesterdayとハセケンはメル友と呼べるくらい親密なやり取りがあったわけだから、出会い系と一緒にするのはちょっと違うってことでどう?
● そうですよね、失礼しました(笑)。さあ、これであとは拡大版スペシャル2話を残すのみということになりましたよ!
○ この流れでミッチーも仲間の輪に入っていくのか、それとも最後に予想外の事件がまたまた起こるのか?
● んー、楽しみです!
 その他の小ネタ/周辺状況
◆ 幸作は来週に退院できることになり、金八、乙女と肩を抱き合って泣く。
◆ 生徒たちの将来就きたい職業:
・奈美:芸能人、・主任:ケーキ屋、・繭子:パイロット、・雪絵ちゃん:科学研究者、・賢と直:カメラマン、・陽子:宇宙飛行士、・直美:花屋、・スガッチ:野球選手、・平八郎:弁護士、・奈津美:作曲家、・カッシーと香織:サッカー選手、・美紀:カウンセラー、・ミッチーとシンバ:社長、・政則:養護教諭、・健富:幼稚園の先生
◆ 政則は緑山高校の二次募集に合格した模様!
◆ ノブタ、「わいは立派なもんぶら下げとるでぇ〜」と発言。
 参考文献/挿入歌/BGM
◇ 【書籍】 ある性転換者の記録 (虎井まさ衛著、青弓社)
◇ 【書籍】 性のグラデーション —半陰陽児を語る (橋本秀雄著、青弓社)
◇ 【書籍】 季刊セクシャリティ (エイデル研究所)
◇ 【資料】 STN21 (セクシャルマイノリティ教職員ネットワーク)
◇ 【書籍】 ジェンダーセンシティブからジェンダーフリーへ —ジェンダーに敏感な体験学習 (ジェンダーに敏感な学習を考える会編著)
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