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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 19話 「しゅう最後の日、最後の授業」

警察が捜している生徒は丸山しゅう(八乙女光)だ、との金八(武田鉄矢)の言葉に、職員たちは衝撃を受ける。警察へ通報しようとする国井(茅島成美)や北(金田明夫)に対し、金八は「私に時間をいただけないでしょうか」と頼む。しゅうの担任として自分にできることがあるはず。ミスを悔やみながらもそう思った金八は生徒らを教室に集め、「これがしゅうとの最後の授業です」とドラッグの害に関する授業を始める。

眠っているしゅうを怒鳴り起こす金八。強烈な禁断症状に苦しみ暴れ怯えるしゅうの悲惨な光景を、3Bは全員が目の当たりに。金八は「ドラッグを憎め!」と生徒たちに強く訴える一方、しゅうに寄り添い優しく抱きしめる。何気ない日常の素晴らしさが「生きる」ことだと語り聞かすと、寂しさから身を滅ぼし当たり前のことさえできなくなったしゅうは、初めて「生きたい」と呟くのだった。

ついに警察が教室へ。前向きな思いを口にしたしゅうも再び襲う怯えに勝てず、逃走を図ろうとする。大好きな母・光代(萩尾みどり)の胸に飛び込む前に、その手には手錠が。

パトカーの前で、しゅうは級友たちに深々と別れの一礼。走りだした車の中、言葉に出来ない思いを込めた絶叫をあげるのだった。

05年3月4日放送

脚本: 清水有生

演出: 福澤克雄

視聴率: 15.7%

DVD: 第8巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
○ 「二番煎じ」と話題の場面から話そうか。
● わっ、いきなりですね。
○ 考えさせることが目的だったこの回の中で唯一、考えなくても分かりやすかった場面。
● ほとんどの人が、「あっ、加藤優のと同じじゃん」と思ったに違いない場面。中には、「シリーズ随一の盛り上がりを見せたスローモーション学内逮捕をもう一度やりたかっただけかよ」と興ざめした人もいるようです。
○ たしかにそうなんだよね。しゅうと金八、3Bの現状を見せつけられて、果たしてどんな未来が待っているのだろうかと思いを馳せていたところに、過去のシリーズを思わせる演出が挿入されて、余計な思い出がよぎってしまったということはある。救いのない状況に敢えて「アヴェ・マリア」の曲を乗せるセンスは素晴らしかったんだけれど。
● 少しもったいなかったですかね。
○ でも思うんだけどね、じゃあ優の逮捕よりもっと壮絶に描いてくれた方がよかったかというと、そうじゃないでしょ? 逆に甘く描けば甘く描いたで、絶対に不満の声が挙がったはずなんだよ。
● 絶対にですか? うーん…。
○ つまり、これ以上しゅうの悲惨な様子は見るに耐えないよ!もう見ちゃいられないよ!と、どうしようもなく鬱積する思いが我々にはあって、それをこの分かりやすい不調和というか、ちょっと「あれっ?」と思わせるような演出に、ちょうどスケープゴートにするように、ぶつけてしまったということなんじゃないかなぁ。
● …そう言われると、思い当たるところがありますね。
○ やっぱり今回の本題は、覚醒剤を常用するしゅうのあの救いのなさを印象づけるところにあったと思うんだ。慄然とした職員室、事実を知った3Bの沈黙、同級生の禁断症状を目の当たりにして恐怖する様、「なぜだ」と泣いて問う伸太郎、3時までの時間を精一杯に使って諭し寄り添い続けた先生の姿、そしてその僅かな希望もドラッグに打ち消されたしゅうの逃走(未遂)、渾身の愛情も時既に遅しなのかというラストシーン…。これらのことからあなたは何を考えてくれますか?ということ。
● そうですね。あんなに多くの一般生徒や住民が好奇の視線を送る中、見せしめられるように連れて行かれたしゅうを見て、さあどう思いましたかと。描き方がどうだではなく、こうなるに至らしめた憎むべきものは何なのかと。
○ だから、大事なのはそっちで、議論を呼んでいる二番煎じの逮捕シーンというのは、実はどうでもよかったんだよ。
● !! どうでもいいというのは言い過ぎでは?
○ いやいや。だってしゅうが逮捕されるだろうことはみんな分かっていたじゃない。分かりきっている1シーンがどう描かれるかなんてそれほど重要じゃないよ、大河ドラマじゃないんだから。作り手さんが完全に遊びの気持ちで「第2シリーズと同じにしちゃえ」と思ったんだとしても(そういう事実はないと思うけれど)大した問題じゃない、と思えるんだけどなぁ。
● すると、「金八先生がもっと早く気づいてくれていれば…」「警察がちゃんと覚醒剤を残らず押収してくれていたら…」とついどこかに責任を求めてしまうような気持ちも…
○ いらないよね。見るべきところはそこじゃない。鬱積をぶつける捌け口でもない。…授業の前に孝太郎がさ、「危ねぇだろ、警察に連れてけよ」と金八に言ったシーンがあったよね。悪ガキ孝太郎がこういう意見を言えるようになったのは素晴らしいことなんだけれど、ここではそんな正論いらないんだよ。そこからもう一つ超えたところに意味がある。
● 孝太郎ははじめ廊下で待っていたんですが、しゅうの禁断症状をしっかりと見て、「ここに居させてくれ」という意識に変わって、ラストでは崇史をおぶってしゅうを追いかけていました。
○ 「居させてくれ」の意識を我々も持ちたいなぁ。しゅうが暴れ出した時、3Bは廊下にいたはずの生徒もみんな見ていた。目の前の出来事を、全員が顔をそむけずに焼き付けていた。全員がだよ。手で顔を覆っているような子は一人もいなかった。ならば、こっちも逃げたりしないで、目を逸らさずに見届けて、刻み込まなきゃウソだよ。
● 見るに耐えない光景を目に焼き付ける意味…か。
○ まぁ、落ち着いて二度目を見返したからこそ思えることではあるんだけれどね(笑)。
 
● あとは、どうも舞子が気になって仕方ないんですよ。今回も外に向かって何も発信しなかったというか。
○ 常にしゅうを気に掛けてはいるんだけれど、あまり言葉に出さないから伝わらないんだよね。
● そうです。金八先生が「ずっとしゅうと一緒にいながら全く気がつきませんでした」と生徒に謝ったときにも、舞子は同じような後悔を持っているはずなのに黙っているんですよ。崇史は責任を感じていることを素直に言葉にしたことで「悪いのは君じゃない」と言ってもらえて、救われた部分があると思うんですが、舞子にはそれがない。
○ マジメだから考え込むし、責任感が強いから背負い込むし、思いやりがあるゆえに自分の発言が迷惑になるような気がして黙ってしまう。一度思い切って主張した時に玲子とケンカになってしまったマイナスの記憶もある。
● で、今回しゅうの口から明らかになったドラッグ使用の理由が「寂しかった」「勉強が遅れて…」なんですよ。
○ 「あのとき声を掛けていればしゅうは傷つかずに済んだかも…」「開栄に合格している身なのにどうして協力してやれなかったんだろう…」という舞子の後悔に繋がっても不思議じゃないね。
● さらに決定的なのは、3Bみんな秘密を知っているんだと金八先生がしゅうに言い放ったとき、しゅうは舞子が喋ったものと思い込んで怒りの矛先を舞子に向けているんですよ。
○ アチャ〜。危険な要素が満載だ。舞子は特に仲のいい友達がいるようにも見えないし…。いつからこんな孤独で寂しい子が増えるような世の中になったんだろう…。
● 金八先生、第2の見過ごしにならなければいいんですけど。
○ 先生自身もだいぶ参っているからね。心配。
 
● 残るはあと3話。まだラストシーンの想像がつきませんね。希望あるものになるのかな…?
○ 目を開いて恐怖を焼き付けた立派な3B。次はみんな、感動に目を開けますように。
 
 小ネタ拾い読み
◆しゅうの側の席は危険だからと席を替わるよう有希に申し出た量太だったが、「いいよ、あんたより強いから」と言われてしまった。さすが空手有段者。
◆パトカーが行こうとする時、明子が猛ダッシュで駆けつける。
 過去の金八シリーズでは
■先生、何度でも言うぞ
…「先生何度でも言うぞ。ドラッグを憎め!」という金八・魂の主張。第4シリーズでは「何度でも言うぞ。イジメはよせ!」というセリフがあった。
 みなさんからの印象的なお便り
◆現中学生の目から書き込ませてもらいます。昔の金八先生を見ている方々にしてみれば、「第二シリーズと同じ」だの「テーマが重すぎる」など思うかもしれませんが、今の金八先生しか知らない私達には、それが金八先生なのです。 (紫樹さん)
◆3月5日の『チャンネル・ロック!』に金八先生こと武田鉄矢さんが生出演していました。あのしゅうの最後の授業は、撮影に約15時間かかったそうです。金八先生も合計で7回泣いたそうです。 (鉄さん)
◆金八先生が語っていた「生きる」という詩は、同名で合唱曲にもなっています。私も歌いました。“生きるということ”がひしひしと伝わってくるよい曲です。そして、とても難しい曲です。原作と合わせて、お聞きになってみてはいかがでしょうか。 (もちかび。さん)

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