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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第7シリーズ 20話 「裏切られても生徒を信じる」

丸山しゅう(八乙女光)の覚醒剤使用発覚を受け、その夜、桜中学で保護者や地域住民への説明会が開催された。保護者からは学校や金八(武田鉄矢)の対応を非難する声があがり、地域代表も学校への不信感を表明。金八が「私がしたことは教師として正しかったか間違っていたか分かりません」と発言したことで、その場は騒然とした雰囲気に。しかし板橋校長(木野花)が「今回の出来事は特別な家庭の事例ではない。それを未然に防ごうとする下町の地域力はどこへいったのか」と訴えると、町会長以下も頷くのだった。

3Bでは狩野伸太郎(濱田岳)が「今俺らにできることは、崇史のときみたいにバラバラにならないこと」だと言っていた。翌朝、その言葉どおり3Bはしゅうと稲葉舞子(黒川智花)以外の全員が顔を揃える。しかし登校してきた生徒も前日の出来事の受け止め方は様々で、しゅうが卒業式に出席できないことを知ると一部で言い争いさえ起こる。シマケン(筒井万央)に一言促される金八だが、動揺が激しく、すまない気持ちで一杯だと頭を下げるばかり。HRの後、3Bは落ち込む金八を何とかしようと話し合いをもつ。

勾留中のしゅうに面会に行く金八。規定により会わせることができないと別室へ通されるが、居合わせた大森巡査(鈴木正幸)の咄嗟の計らいで、しゅうの後姿に一瞬の再会を果たす。また部屋に閉じこもる舞子のもとを訪ね、しゅうを救えなかったことを悔やみ塞ぎこむ舞子の思いを聞き、「それは違うよ」と慰める。

乾先生(森田順平)は金八のただならぬ様子を察し、おでん屋台でともに歩んだ25年間を語りつつ励ます。だが、翌日金八はフリースクールに服部先生(上条恒彦)を訪ね、「力尽きました」と心情を吐露。乙女(星野真里)に続いて幸作(佐野泰臣)も大学の教育学部に合格したことを伝えると、服部は「今や、彼らの時代か…」と呟く。

始業前、生徒らは「先生のためにできること」について、なおも自主的な話し合いをもっていた。それと時を同じくして、金八は板橋校長へ退職願を提出していた。

05年3月11日放送

脚本: 清水有生

演出: 三城真一

視聴率: 15.9%

DVD: 第8巻

参考文献・挿入歌

 みどころ&勝手な解説
○ 今回は幸作だよ。幸作がよかったなぁ!
● 埼玉大に合格してましたね。おめでとうございます。
○ 合格ももちろんよかったんだけど、家族が忙しくて合格発表に気が回らないのを「それも無理ないな」というように全然恨めしそうにせず黙って出掛けて行くところとか、健ちゃんとちはるが連名でケーキをくれたところに二人のただならぬ関係を予感してもよさそうなのに寝言で「ちはるちゃん…」と幸せそうに呟くくらい平和なところとか。
● なるほど。幸作は優しくて、あまり人を疑わないし、ポジティブ思考なんですよね。ケーキを持ってきてくれことに純粋に感激して、一緒に食べてはくれなかったことを残念がったフシはない(笑)。
○ メッセージを貰ったことがただただ嬉しくて、健次郎が爆発的に達筆になっていたことに疑問を持とうとしない(笑)。
● あと、家族がなかなか帰ってこないもんだから待ちくたびれてコタツで寝ちゃってましたけど、決してフテ寝じゃなくて、幸せそうに寝てるんですよ。
○ いいねぇ〜。見習いたいところだなぁ。
● でもそんな平和な幸作が、服部先生の「今や、彼らの時代か…」という言葉によって金八先生退職届提出の決定打になるという。
○ まぁ、金八さんの心はその前に決まっていたよね。乾先生がガラにもなくああやって説得してくれたのにただ頷くだけで、自分の言葉はもう学校を辞めた人である服部先生の方にこぼしに行ってるワケでしょ。
● 初期のシリーズの笑っちゃうくらい若い金八先生の映像が挿入されて、そこと今の対比もあって。
○ あの頃の金八はインパクトがあったよね! 今見ても飽きないくらい異端的な。その源というのは、自分の信念をとても強く持ってメッセージを送っていたところにあって、今はその信念が揺らいじゃってるから金八自身もぼやけて、言葉に続きがあることが分からなくなっている、ということが言えるんじゃないかな。
● 言葉…?
○ PTA説明会で糾弾されてしまった「(しゅうの姿を生徒に見せたことが)教師として正しかったか間違っていたか、分かりません」という言葉。これ、本当はまだ続きがあるんじゃないかと思えてきて。つまり、「しかしながら、人として間違ったことをしたとは思っていません!」…というような。
● あぁ! 若い頃の金八先生だったら確実にそう言ってますね。「…覚醒剤に蝕まれるこのしゅうの、目を覆わんばかりの悲惨な姿を、しっかりと我々は心に焼き付けるべきなんです! そして、こんな悲しい子どもを二度と出しちゃいけない、こんな悲しい人生を選んじゃいけない、そう強く願って生きていく、それこそが我々に出来る唯一のことなんじゃないんですかねぇ!」なんて、目をつり上げて、涙ながらに。
○ そうそう。上手いじゃん(笑)。衰えたとか時代が変わったとか今の金八先生は言うんだけどさぁ、じゃあ昔は自分のことを力のある教師だと思って生徒に説教してたのかというとそうじゃないと思うし、「時代が変わった」なんて言葉に飲み込まれて金八さんも変わってしまうというんじゃ寂しいよ。言葉を借りて言えば、「『力尽きた』なんて言葉をそう簡単に使うなよ!」という気分。これじゃ「腐ったミカンの理論」に屈した第2シリーズの米倉先生と一緒だよね。
● そういえば、番組に対する否定的な意見って、「昔の金八の説教はよかった」けれど「もうおっさんの説教なんて聞きたくない」という言い方をよくされますよ。初期の方が「金八」が立っていて、今は「おっさん」と括られがちになってその中に先生が埋没しちゃってます。
○ 知らず知らずのうちに「信念」が薄らいでいて、今作ではそこが煮え切らなく映っていたのかもなぁ。理想を追っていた金八が現実路線にシフトしかけて見ていられなくなっていたともいえると思う。
● 問題は、こんなにドーンと落ち込んでいる金八先生に誰がどんな言葉をもってこのことを伝えて、思い出させるかですね…。
○ 別にね、言葉じゃなくてもいいと思うんだよ。たとえば3Bの生徒を見てもさ、心にダメージを負って立ち上がれなくなっている子なんて、金八や保護者が勝手に想像して言ってるだけで、実際はいない。みんなそれぞれに受け止めて動き出しているじゃない。
● 金八先生が心配するほど彼らはもう弱いチビッ子じゃなかったと。
○ 伸太郎は「独りになりてぇんだ」といち早く群れるのをやめて少年期の終わりの切なさのようなものを噛み締めてさ、崇史や3B'sたちは暗くなるまで川に石投げてやるせなさをごまかしていたんだけど、ギャル3人組が渋谷グッズを燃やす様子を見て彼らもまたある種の決別を感じたというか、覚悟を決めたと思うんだよね。
● それでみんな気丈に登校して、「先生のためにできること」について話し合いをもって行動に出ようとしているんだ…。
○ 金八先生が思い詰めて思い詰めて退職願を出そうという流れと対比して、金八先生が教え育てた生徒たちは考えて大人になっていって。それを知った先生は教えることの喜びをまた感じてくれる、と信じたいなぁ…。
 
● 3Bでただひとり、やっぱり舞子だけは部屋に篭ってしまったんですが…。
○ 金八先生はしゅうの苦しむ姿を見せたことで舞子の心にキズをつけてしまったと思っていたんだけど、そうじゃなかった。舞子はしゅうを助けてやれなかった自分が許せないという理由で塞ぎこんでいた。
● …それって、金八先生が思い詰めたのと同じ理由じゃないですか。
○ そう! 閉じこもる舞子、マジメゆえ考え込み責任感ゆえ背負い込む舞子は、実は金八先生そのものなんだよ。舞子を描いているようで金八の姿がそこに見える。だから、「私はもう最低なの」と泣き崩れた舞子に金八がかけた「それは、違うよ…」という言葉が、すごく深く響いてきた気がするなぁ。
● うーん…。舞子=金八ということになると、舞子がこのまま不登校になって卒業式に出ないという展開は考えづらいですから、金八先生も退職を撤回してくれるんでしょうか。
○ どうだろうね。ほんの少しだけでも幸作のようにポジティブな意識を持ってくれて、どんなに小さくてもいいから光を探してくれたらと願いたいね。
 
  小ネタ拾い読み
◆「教室へ戻りなさい」と促す金八の言葉を受けて、一緒に3Bについていく教え子のアッコさん。
◆しゅうが連行された直後の3Bは、それぞれの気持ちの不安定さを表すように席順がてんでバラバラ。翌朝になると、教室はある程度元通りの席順に戻っていた。
◆伸太郎も金八も、しゅうが活躍した文化祭ソーラン節を思い出していた。再演への前振り完了。
◆舞子の父親はPTA副会長でもあった模様。
◆ギャル組が渋谷卒業を宣言しグッズを燃やすシーンで、火の粉が真佐人(?)の足下へ。熱そう。
◆教室後ろに貼ってあったしゅうの個人目標は「自立」。和晃は「ゲームは一日一時間!」。
◆合格発表日を乙女にも金八にも忘れられていた幸作。里美の写真に「行ってくるね」の挨拶。
◆乙女、青木さんから唐突なプロポーズを受け、「一緒に北海道へ来てくれないか」と言われる。
◆舞子はしゅうの注射痕を金八にすぐ知らせればよかったと悔やんでいるが、知らせようとしたのに金八が演説中だったために果たせなかったというのが本当。責任感が強いんだね。
◆乾先生はマツダの新車で通勤しているはずが、徒歩でおでん屋台に通りかかった。ハナから金八を励まそうとして計画していたのかもしれない。
◆第1シリーズの金八による数学の実験授業を見て自分に欠けているものに気がついた、と乾は振り返るが、第2シリーズでもピーマン10事件と同じような事態になりかけ、金八から大人になるように諭されたことがあったはず。
◆「先生のためにできること」会議の中で、チビあすが「これなら舞子も誘えるし…」とちゃんとフォローしてくれている。
◆退職願を提出する金八の後ろに、君塚元校長の写真が見える。
  過去の金八シリーズでは
■ピーマン10
…乾先生が25年前を思い出し話題に挙げた「ピーマン10」は、第1シリーズ9話で登場。期末テストの成績ワースト10を公然と発表し、頭が空っぽという意味で「ピーマン10」と名づけた。成績の上がらない生徒を罵倒し、進学しない生徒を切り捨てようとしたために生徒の反感を買い、若き乾は複数の生徒に取り囲まれて暴行を受けた。
■教師の覚悟
…金八が服部先生との会話の中で思い出していた「教師が体ごとぶつかっていけば、彼らは必ず分かってくれます。それがもしできなかったら、教師は教師を辞めるべきなんです!」という言葉は、第2シリーズ24話、荒谷二中の放送室に立てこもった加藤優らにまつわる警察や教師、保護者との話し合いのシーンで主張したセリフ。
…また、第4シリーズ23話、広島美香(今作の6話にも登場)の答辞の中にも在校生へのメッセージとして「この学校にはどんな事にも諦めない先生がいます。悩みがあればぶつかっていくこと。必ず体ごと受け止めてくれます。」という形で引用された。
  みなさんからの印象的なお便り
◆今日の感想は「オールドファン総崩れ状態」とでも題しますか? カンカンと二人で屋台で飲んでいる時の会話、泣けましたよ。「坂本金八が居たから私は教師が続けられたんだ」って。懐かしいパート1の映像も出てましたが、あの当時のカンカンからは絶対に想像できない一言でした(思わず目頭が熱くなりました)。そして、こんな時に良き相談相手になってくれる服部先生。「これからは彼らの時代」という台詞も何だか重みを感じました。 (袴田課長さん)
◆あの屋台のシーン、実際は5時間以上ロケしてましたよ。何たってロケしている時に第18話が放送されていましたから(後ろに映っていた日の出屋さんにてロケの模様を見学していました)。 (袴田課長さん)
◆今回は、絶望の中、乾先生の励まし、幸作の合格、服部先生のまなざしが、まるで夜の海で迷子になった金八の船を導くように、暗い海の上に灯りがともったように感じました。それに3Bがなにやら行動を開始しました。ずっと以前の3Bなら、自分達で何かをしようとはしなかったはず…これは確実に金八が植えた種が芽吹き始めているんじゃないかと思いました。 (やまだれいこさん)
◆しみじみと25年という時間の重みを感じました。「不可抗力」という逃げ道を自ら閉ざし「生徒のために何ができるか」を常に考え、そして実践してきた金八先生だけに、ドラッグにしゅうを奪われてしまった今、立ち上がることができなくなったのも無理からぬことでしょう。そして、そこに自分の老いた姿をまざまざと見せつけられた思いだったのでしょうか。しかし、奇しくもまさに彼が授業で説いた「人という字は支え合って」の通り、彼が教えた生徒達、そして影響を与えた乾先生をはじめ同僚教師達が、金八先生を支え、彼を(そしてしゅうも)再生の道に導いてくれると信じています。 (old boyさん)
◆金八が服部先生に第2シリーズの警察での名場面について話してましたが、あの時、あの警察の会議室みたいなところに服部先生はいなかったよなーとか思っちゃいました。 (nicoさん)
◆板橋校長が言ってた「地域力」という言葉は、初めて聞いたと思っていたら第一話で遠藤先生が「しかしここには、父兄などの地域力があります!」と言っていました。 (鉄さん)

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