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第8シリーズ 7話 「金八 生徒 女形競艶」
大学の教育学部に通う幸作(佐野泰臣)が桜中へ教育実習にやってきた。その初日、漆田駿(坂井太陽)が学校に赤ん坊をおぶってきて皆を驚かせる。この赤ん坊は駿の父・錦次(渡辺正行)が座長を務める芝居一座の座員の子で、普段面倒を見ている賄いの女性が熱を出したため駿が預かってきたというのだ。また、茅ヶ崎紋土(カミュー・ケイド)は離れて暮らすアメリカ軍人の父親から「会いたい」という内容の手紙が届き、困惑する。
一座は看板の女形が辞めて以来人気を落としていた。そこで錦次は小学生の頃「中条夢三郎」として好評を博した駿に復帰するよう頼み込むが、駿は音楽の道に進みたいと言って応じない。女形を演じたことでかつてイジメに遭ったという事情もあった。駿の才能を見抜いている錦次は金八(武田鉄矢)からも役者の道を勧めるよう持ちかけるが、積極的な協力を得られず、駿を舞台へ上げるためぎっくり腰になったふりをし、ストリート・ライブをする駿の元へ役者を送り込んで才能のなさを指摘させるなど画策。その小細工はやがて駿の知るところとなり、親子の溝は深まってしまう。
ある朝金八が公衆便所に立ち寄ると、錦次が清掃をしていた。一座の経営が苦しいので作業員としても働いているのだという。3Bでは駿が女形をしているという噂が広まり、からかわれた駿は「拍手もされないのに女形やって、感謝もされないのに便所掃除やって、あいつはクソだよ!」と父親を非難。金八は詩を交えながら、誰もやりたがらないが誰かがやってくれている仕事こそが社会を機能させているのだと説明し、ミュージシャンのように有名になることだけが個性的に輝くことではないと諭す。しかし駿は納得せず、「じゃあ女形やってみろよ!」と反発。金八はいきおい、受けて立つ。
3Bのために貸し切られた芝居小屋に、女形に変身した金八が登場する。しかし出来栄えは酷いもので、しかも腰を痛めて錦次と交代する羽目に。すると見かねた駿が「僕がやる!」と立ち上がり、クラスメイトが言葉を失うほど妖艶で美しい姿を披露する。踊り終わって大喝采を浴びた駿は個人ノートを提出。未だ音楽の夢を諦めないとしながらも、「踊っていた時はマジ充実した感じだった」と、女形という立派な仕事に理解を示すのだった。
平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表
塚田りなりなっとう (萩谷うてな) |
大西悠司便所掃除の詩を朗読 (布川隼汰) |
森月美香便所掃除の詩を朗読 (草刈麻有) |
北山大将 (亀井拓) |
玉田透夢様を見て鼻血 (米光隆翔) |
茅ヶ崎紋土ダンスが上手い (カミュー・ケイド) |
漆田駿赤ん坊をおぶって登校 (坂井太陽) |
五十嵐雅迪 (田辺修斗) |
廣野智春巷の夢様人気を目撃 (菅野隼人) |
里中憲太郎依然として不登校 (廣瀬真平) |
安藤みゆき夢様に「うちよりは下」 (梶尾舞) |
諏訪部裕美便所掃除の詩を朗読 (山田麗) |
金井亮子ネイティブな英語発音 (忽那汐里) |
田口彩華 (高畑充希) |
江藤清花 (水沢奈子) |
渡部剛史一人でうんこコール (岩方時郎) |
金輪祐樹紋土にイヤミ (植草裕太) |
岩崎浩一駿のからかいに参加 (真田佑馬) |
川瀬光也 (高橋伯明) |
長谷川孝志 (坂本優太) |
中村美恵子怖いもの見たさ (藤井真世) |
平野みなみ便所掃除の詩を朗読 (菅澤美月) |
佐藤千尋 (森部万友佳) |
和田順子詩を聞いて「吐きそう」 (井本杏子) |
川上詩織 (牛山みすず) |
教卓 | ※名前にカーソルを合わせると…? |
みどころ談義
- ● いや〜、女形になった駿! あまりの美しさにビックリしました。あれじゃ親父さんも跡継ぎにしたくなるわけですよ。
- ○ 夢様の美貌には度肝を抜かれたね。紋土のダンスの切れ味も相当だったけれど、今回は駿。あのハマり具合は絶対に経験者だ!と思って公式サイトのプロフィールを見たら特技の欄にはそんなこと書いてないし、学級日誌にも初体験だったとあるから、二重にビックリ。
- ● 初めての女形であのクオリティはすごいですね。駿だと知りながら心奪われそうになっちゃいました。まぁ、渡辺正行さんと金八先生のが酷すぎたってのもありますが(笑)。
- ○ そうかと思えば、教室で詩を読んだシーンでは、涙を流しながらの熱い演技が光っててさ。今まではヘラヘラ、クネクネした感じばかりが印象に残っていたから(失礼)、こんな一面もあったのかと驚いたし、駿にも思春期らしい心の葛藤があったんだと考えさせられたよ。
- ● それから、もう一つインパクトがあったのは便所掃除の詩ですよね。「男はつらいよ」でも採り上げられたことがある詩なので割とメジャーなものだと思いますが、汚れた便器の描写がリアルで、最後に本当の意味が分かるという。懐かしい第2シリーズの映像も挿入されていました。
- ○ 金八シリーズ影のベストエピソードの呼び声もある、「クソまみれの英雄達」だよね。過去のシーンとリンクしてくれるとやっぱり嬉しいなぁ…。あのときもすごく汚いところからスタートして、最後にはピカピカに奇麗になって。実はあの回も今回も、演出を担当したのは同じ大岡進Dなんだよ。
- ● へぇ〜! そこまでは知りませんでした。
- ○ その便所掃除の詩だけれど、人のやりたがらない仕事を一生懸命やる人の話だよね。突っぱねる駿に金八先生が厳しい態度で迫ったのもグッときた。で、ここで思い出したのが、武田鉄矢さんご本人が最近熱くお話されていたことでね、内田樹さんの「下流志向」という本から抜粋した「雪かき仕事の論理」というものがあって。
- ● 「雪かき仕事の論理」?
- ○ うん。大雪が降った朝に、家を出たらもう道が雪かきしてあって、楽に歩くことが出来たという経験あるでしょ。それは、皆が家を出る前にひっそりと雪を道端に寄せてくれた誰かがいるということだよね。その人は決して目立ちたいとか、感謝されたいとか思ってやってるんじゃなくて、ただただ周りの人たちのためを思って行動している。社会全体が円滑に回っているのは、実はそういう人たちがいてくれるお陰なんだと。
- ● おおっ、まさに今回のトイレ掃除の件や金八先生の主張と同じじゃないですか!
- ○ この本からちょっと抜き出してみると…。
“若い人がよく言う「クリエイティヴで、やりがいのある仕事」というのは、要するに、やっている当人に大きな達成感と満足感を与える仕事のことです。でも「雪かき仕事」は、当人にどんな利益をもたらすかではなくて、周りの人達のどんな不利益を抑止するかを基準になされるものです。だから、自己利益を基準に採る人には、その重要性が理解できない。”
- ● これはまさに駿のことですね。駿が夢みる音楽アーティストという職業は、目立つし、ちやほやされるし、クリエイティブでもあって、分かりやすく気持ちのいいものかもしれません。でも本当に大事なのは、自分のために自分を表現する気持ちよさではないんだと。
- ○ まぁ、金八先生だって駿の夢をハナから否定しているわけではなくて、駿が心から納得することが一番だと言っているけれどね。でも華やかさだけでは生活できないし、自分がいい思いをするために頑張るというだけじゃなく、皆のために奉仕する意識もやりがいとして大事な要素だということを知っていて欲しい、そういうことだと思うな。逆に言ったら、地味な仕事にいつも黙々と汗を流している人への優しい理解でもあったと思う。
- ● なるほど…。武田さんご自身の普段の興味や思考が金八に反映されることもあるんですね。内田樹さんの「下流志向」、覚えておきます。
- ○ クレジットはされていないけれど、十分参考文献だと言えそうでしょ? この本はとても面白い本で、「もしかしたらこれは森月美香の行動原理に言及しているのか?」なんて思えちゃう箇所もあったりするのでね、もし興味があったら読んでみてよ。
- ● さて、その他には…幸作が教育実習にやってきたという大きな出来事がありましたね。
- ○ そうそう。それを忘れちゃいけなかった。ようやくやってきた今作ならではの展開! 駿が大衆演劇に反発する一方で、幸作は父親と同じ道を選ぼうとしているという対比もあって。
- ● 難病を乗り越えて、社会人の一歩手前まで成長した幸作に拍手ですね。実習期間は3週間あるようなので、次以降の展開にも期待したいです。
- ○ それから、今回全く触れられなかったサトケンも忘れちゃいけないよね。そろそろ3Bに復帰して欲しいなぁ。
- ○ 夢様の美貌には度肝を抜かれたね。紋土のダンスの切れ味も相当だったけれど、今回は駿。あのハマり具合は絶対に経験者だ!と思って公式サイトのプロフィールを見たら特技の欄にはそんなこと書いてないし、学級日誌にも初体験だったとあるから、二重にビックリ。
その他の周辺状況・小ネタ
- 卒業生・幸作の凱旋に嬉しそうな桜中職員室。特に担任だった北先生の歓迎ぶりは本当に嬉しそう! 逆に今回初対面となる矢沢先生の態度はそっけなく、今後何かありそうな予感。なお幸作の教科は国語ではなく英語。お辞儀の角度が深い。
- 幸作から乙女の彼氏について聞き出そうと必死になり、脅しさえかける遠藤先生。駿が連れてきた赤ん坊を本田先生が冗談で「乙女ちゃんの子」だと説明すると、慌てふためく。
- 生徒から普段の金八について質問された幸作、「とにかくだらしない。臭い靴下脱ぎっぱなしだし、TV見ながらオナラもする。でも僕にとっては最高の父親。広い心で接してくれて、悩みなんかも聞いてくれる。何より教師としては素晴らしい人」と答える。しかしこれが紋土の心に突き刺さり、「お父さんが好きだなんてありえねぇよ」という言葉を呼ぶ。
- 紋土の父親はアメリカの軍人。横田基地駐屯中に母親と知り合い、紋土が生まれてすぐに単身帰国した。以降紋土は母と二人暮らし。金八は悩みがあるのかと尋ねるが、紋土はまだ心を開こうとしない。
- 金八と幸作、職員室を出るときに頭を掻く仕草がシンクロ。
- おばさま方に「夢様〜」と追いかけられる駿を目撃したとき、金輪祐樹はシーフードヌードルを食べているが、そこは赤いきつねか緑のたぬきじゃないのか。保健室で本田先生が駿に渡した消毒スプレーは「キズアワワ」で、こちらは番組スポンサー・小林製薬の商品。
- 「便所掃除」は、便所のラクガキ=裏サイト問題にも微妙に繋がっているのかもしれない。
- エンディングでスピッツの「チェリー」が流れたが、「あの手紙はすぐにでも捨てて欲しいと言ったのに」という詞に差し掛かる部分で、ちょうど紋土の父からの手紙がアップになる。細かい演出だ。
- 今回の渡辺正行さんの出演で、中野先生役のラサール石井さん、鈴木サオリの父兼サトケンの父役の小宮孝泰さんと合わせて「コント赤信号」全員が金八出演を達成! おめでとうございます。
漆田駿の「私」ノート
私は高校へ行きたい。
私の音楽で世界中の人を勇気づけたいという夢は変わらない。
でも、女形だって立派な仕事だと思う。
正直言うとね……
舞台で踊ってた時、すごくいい気分だった。
なんか、マジ充実した感じだったよ!!
追伸 先生の女形の才能……ゼロ。
参考文献・挿入歌・BGM
- 【書籍】 便所掃除 (濱口國雄著・土曜美術社)
- 【音楽】 チェリー (スピッツ)
- 【音楽】 Hey Mama/Let's Get Retarded (Black Eyed Peas)
- 【音楽】 矢切の渡し (?)
- 【音楽】 天城越え (石川さゆり)
- 【音楽】 浪花節だよ人生は (?)
- 【音楽】 夜桜お七 (坂本冬美)