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3年B組金八先生 鑑賞ガイド


第8シリーズ 11話 「父に謝れ!金八涙の叱責」

あと数週間で冬休み。桜中では幸作(佐野泰臣)の教育実習期間が終了し、生徒の進路希望が固まりつつあった。教師を夢みる川瀬光也(高橋伯明)は就職口を辞退し全日制の高校を受験すると決意、田口彩華(高畑充希)はA組の彼と同じ高校へ進もうとランクを落として緑山を志望する。親の暴力を受ける北山大将(亀井拓)は、高校生の不良グループから呼び出しを受けその一員として使われるようになっていた。

そんな中、サトケン(廣瀬真平)の父・和彦(小宮孝泰)が桜中を訪れる。疲れた様子の和彦は、息子が依然として部屋から出ず、毎日メールを送っても返事がないと悩んでいた。金八(武田鉄矢)は3Bに相談することを提案。和彦から直に真相を聞いた生徒たちはサトケンを外に出す方法を話し合うが、そのうち大将が「自分の気持ちばっか押しつけてゴメンで済むか。あんたがどっか消えりゃいい」と暴言。和彦は「元に戻ってくれるなら、私は消えてもいい」と静かに受け止め、息子のことを全員で考えてくれる3Bに会ってファイトが湧いてきたと言い残して去っていく。

翌日、驚くべき知らせが入る。和彦がくも膜下出血で亡くなったというのだ。しかしサトケンは部屋にこもったまま葬儀に顔を見せず、弔問に訪れた3Bの仲間たちに会おうともしない。金八は遅くまでサトケンを待つが、和彦が息子へ送り続けたたくさんのメール送信履歴を見てついに決心、扉越しに「いつまで甘えてるんだ!下に降りてきてお父さんにお別れを言え!礼を言え!」と叱責する。するとやがて鍵の開く音が。ずっと削除し続けていたメールの内容を父の棺の前で初めて知ったサトケンは、「育ててくれてありがとうございました」と号泣するのだった。

思い出のグラウンドで、金八から伝え聞いた「一日も早く3Bに帰したい」という父の言葉を噛み締めるサトケン。3Bは葬儀の後も登校してこないサトケンを心配していたが、ある授業中、校門の向こうに制服を着たサトケンの姿が。ついに不登校に終止符を打ったのだ。クラスメイトたちは教室を飛び出し、サトケンを囲んで笑顔が広がる。…しかしその輪の中に、彩華と大将の姿はなかった。

07年12月20日放送

脚本: 清水有生

演出: 加藤新

視聴率: 9.3%

平成19年度 桜中学3年B組生徒座席表

塚田りな
(萩谷うてな)
大西悠司
(布川隼汰)
森月美香
(草刈麻有)
北山大将
(亀井拓)
玉田透
(米光隆翔)
茅ヶ崎紋土
(カミュー・ケイド)
漆田駿
(坂井太陽)
五十嵐雅迪
(田辺修斗)
廣野智春
(菅野隼人)
里中憲太郎
(廣瀬真平)
安藤みゆき
(梶尾舞)
諏訪部裕美
(山田麗)
金井亮子
(忽那汐里)
田口彩華
(高畑充希)
江藤清花
(水沢奈子)
渡部剛史
(岩方時郎)
金輪祐樹
(植草裕太)
岩崎浩一
(真田佑馬)
川瀬光也
(高橋伯明)
長谷川孝志
(坂本優太)
中村美恵子
(藤井真世)
平野みなみ
(菅澤美月)
佐藤千尋
(森部万友佳)
和田順子
(井本杏子)
川上詩織
(牛山みすず)
教卓※名前にカーソルを合わせると…?

みどころ談義

● 今年最後の金八先生、予想外のショックな展開が待っていました。
○ サトケンの父・和彦さんの死…だよね。ようやくサトケンにスポットが当たったと思ったらこんなことになってしまって。
● あまりにも唐突だったので、こうでもしなければサトケンの気持ちは変わらなかったのかと、やるせなさも残ります。第1シリーズの浅井家のことを少し思い出しました。
○ あのときも兄の死という大きな代償があって、はじめて雪乃の勘当が解かれたんだっけ。今回は親子のすれ違いが修復されないままお父さんが逝ってしまった。できれば金八先生の力で収まってくれれば一番よかったんだけれどね。
● そこは先生も言っていたように、「無力ですみません」というところですね。
○ だけど、サトケンとしては取り返しのつかないことになってかえって内に閉じこもってしまうところだったのを、金八先生はその最後のタイミングで目を覚まさせたと。それは言えるよね。
● そうですね。扉を蹴破ったわけではないですが、あの叱責は同じくらいの熱さがあったと思います。金八先生は一人の生徒に対して、今回初めて待つことをやめて命令口調の叱責をしたんです。それこそ昔の金八を思わせるものすごい形相で…。
○ 先生が和彦さんの携帯を見てからサトケンが部屋を出て降りてくるまで、メールの詳しい内容は一切出てこなかったでしょ。あれがよかった。画面に直接映すんじゃなくて、ホントにその先生の形相で伝えるというか。そしてサトケンもこのまさかの状況の中、最後によく自分を保ったと思うなぁ。ここで決断しなければ、一生逃げながら生きていくしかなかった。
● しかしこの和彦さんの死というのは里中家にとって本当に大きな喪失ですよね。これからサトケンとお母さんには辛い日々が待っているんですよ。そういう意味でもできれば和彦さんには亡くなってほしくなかったんですが…。
○ そうだなぁ。ただ、今の金八先生は「向き合い方」を教えているんじゃないのかな。「こんな悲しいことは世の中にいくらでもある」ってセリフがあったじゃない。つまり、生きているということは、常にそういう辛く悲しい場面と隣り合っているということだよ。大事なのはそういう場面を迎えたときにどう向き合い、どう対処していくかなんだと、先生は教えているように思うんだ。
● んー、そう言われて振り返ってみると、第1話からここまで向き合い方の話ばかりだったかもしれません。
○ でしょ? 問題となった物事が根本から全て解決した例なんて一つもないよね。そこを物語として甘いと見る人もいるだろうけれど、俺はそれは違うと思う。だってね、今の時代、社会全体がほとんど本質的といっていいくらいの構造的歪みを抱えていて、このドラマが採り上げている歪んだ親子関係もそこに端を発しているわけじゃない。
● おっ、語り始めましたね(笑)。…それはそう思いますけど。
○ となると、これは金八先生がいくら頑張ったところで簡単に引っくり返せる相手ではないよね。だから、万事解決できましたなんて薄ら寒い結末にはせずに、そういう厳しい状況をしっかり受け止めた上で気持ちを強く持つことが大事なんだと子供に気づかせるような、そんな描き方をしているんじゃないのかな。
● なるほど…。じゃあ、今回の「和彦さんの死」と『サトケンの気持ちの変化』というのは、前半戦の最後を飾る回としてすごく相応しい内容だったのかもしれないわけですね。
○ 「どうにもならない部分」を『乗り越えようとする決意』。そのメッセージの一つの集大成だったように思うなぁ。まぁ、全体の中でどうこうという話を抜きにしても、いいエピソードだったよね。「野球だけでなくクラスメイトも取り上げてしまった」という和彦さんの思いから、3Bの一体感、友情というところに帰ってきてさ。サトケンも3Bに戻ったけど、和彦さんも元の息子思いの父親に戻ってから逝ったんだよね。グッときた。
● さて、今回は正規のタイトルバックが省略されるほど盛りだくさんの内容で、他にもいろいろと動きがありましたね。まずは幸作の沖縄行きが明らかになったりして。
○ 彼女を追いかけて沖縄ねぇ。第1話でちょこっと彼女がいるらしい描写があって、その時に沖縄というワードも出ていたんだけれど。「結婚を前提にお付き合いしてる」なんて乙女と正反対、こっちはこっちで金八先生も大変だ。
● 恋愛話といえば彩華にも新たに出てきました。A組の松井君でしたっけ。彩華には聡明なイメージがあったんですが、意外と恋愛で状況が見えなくなるタイプなんですね。
○ 彩華は一応、第1話の「ぎらりと光る〜」の朗読の時に恋愛についてのパラグラフを読んではいたけれど、隣のクラスに彼氏がいたなんて初めて分かった事実だよね。この件は「恋愛+受験+親子」というすごく王道の問題のトリプル・コンボ。どんな展開を見せるのか楽しみだ。
● それから大将ですね。なんとオヤジ狩りの一味に、一番下っ端の見張り役とはいえ加担ですよ。この被害者は和彦さんとは別人で少し紛らわしかったんですが、それだけに大将も自分らの暴行で和彦さんを殺したと思っている可能性が…これはさすがにないかな。
○ そうでなくても、教室で放ったあのナイフのような言葉が死に繋がったんじゃないかという後悔があるようだね。以前にも出ていた親からの暴力が再び持ち上がってきた点、和彦さんの死を引きずる様子がある点からして、いよいよ大将が本格的に採り上げられそう。美香とも急接近だし。
● ラストシーンではこの彩華と大将、そして美香の三人がサトケンを囲む輪にいないんですよね。年明けからはこの三人の動向が物語の中心になるんでしょうか。んー、早く続きが見たいです。次回まで3週間の間隔は長いなぁ!
○ 最後にこれは全く個人的な願望だけど、最近すっかりピエロ扱いになっちゃってるチャラとニコラスの二人にも、来年はもうちょっといい待遇を与えてほしいな(笑)。
● あはは。ではよいお年を!

その他の周辺状況・小ネタ

父親からサトケンへ、最後のメール

To : 憲太郎
Sub : 父より

憲太郎、今日、3年B組に行きました。北山君って子に子供の気持ちも考えずに自分の都合ばかり押しつけて、謝ってすむかって言われたよ。彼の言ってることは正しい。お父さんがお前を苦しめた償いはそんな簡単には済まないよ。でもね、いつか憲太郎にお父さんの気持ちが伝わることを信じて、これからもお前にこの日記を送り続けるよ。


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