第25章 みしるしを求めて

「何と申しまして? お父さま」とヒュパティアは訊ねた。あの不運な手紙をピラモンに届けたテオンが、ヒュパティアの部屋に戻って来たのだ。
「横柄なものだ。手紙をばらばらに引き裂いて、一言も言わずに飛んで行ったよ」
「行かせておけばいいわ。他の人と同じように、難事に遭った私たちを見捨てればいいのよ」
「だがともかく、我々には宝石がある」
「宝石ですって。持ち主に返して下さい。何かの——それもやってもいないことの賃金に宝石を受け取って、身を穢すべきでしょうか」
「しかしね、おまえ。向こうからくれたんだよ。とっておいてくれと彼が言ったんだ。それに——それにだね、正直に言って、私は宝石をとっておかねばならんのだ。こうも運なく失敗したとあっては、債権者全員が返済を求めて騒ぎたてるのは間違いない」
「それなら家や家具を差し押さえさせて、私たちを奴隷として売らせればよいのです。全部持って行かせればいいわ、それで私たちの徳を守れるなら」
「奴隷として売らせろって。気が狂ったのか」
「まったく狂ってはおりません、お父さま、まだね」と彼女は悲しげに微笑んで答えた。「ですが奴隷になったところで、現状よりも何が悪いというのです。ラファエル・アベン・エズラは私の教えに従ったのだと申しましたわ、宿無の乞食となって出て行ったときに。私も、必要になれば、自らそれに従う勇気を持つべきではないかしら。彼が耐えていることを思えば、ここ何か月もの贅沢が恥ずかしいわ。結局、哲学者に必要なのはパンと水と、現世の牢獄の、日々の穢れを洗い流す清流だけではありませんか。運命なら来ればいい。私ヒュパティアはもう、流れに逆らいません」
「おまえ! 一切の希望を捨てるのか。そうもはやばやと望みを失おうとは。こんな些細な難事で、積年の大願を捨ててしまうのかね。オレステスはまだ頼りになる。彼は衛兵を配備して家を警護させているんだよ、我々が要請するかぎりずっと」
「それなら衛兵を帰して下さい。私は悪いことはしていませんから、罰を恐れてもいません」
「おまえは暴徒の狂気が分かっておらん。通りではもうおまえの名が上がっているのだよ、ペラギアと一緒に」

 ヒュパティアは身震いした。自分の名がペラギアとひと括りとは。しかもこれは自分で招いたことなのだ。
「それだけのことはしましたわ。偽りと不名誉に身を売ったのですもの。へつらって身をおとし、陰謀に加担したのよ。貪欲な詐欺師と手を組んだのよ。お父さま、二度と私に彼の名前を仰らないで。私は穢れや嗜虐と結託して、その報いを受けたのです。もはやこのヒュパティアに手はありません、お父さま。演説も講義もしないわ。神的な知恵をこれ以上、豚に投じるものですか。不死なるものの神秘を俗衆に明かしたのが、私の罪よ。彼らはその本性に従わせましょう。私が馬鹿でした。私の言説で、私の計略で、彼らを神々がそうお作りになった以上のものに引き上げられると思っていたなんて」
「講義もやめるというのか。ますます悪い。完全に破滅するぞ」
「もう完全に破滅しているのよ。オレステス? 何の助けにもならないわ。私はあの男をよく知っておりますのよ、お父さま。ありありと分かります。キリスト教徒の怒りを恐れて、明日にも私たちを見捨てるでしょうよ。彼の卑しい人生はもとより——さらに卑しい官職にですら、危険が及ぶとなれば」
「真実だ——あまりにも真実だ。私は心配なのだよ」とあわれな老人は、困惑に手揉みしながら言った。「どうなるのだろう、我々は——というよりおまえは。星ばかり見ている役立たずの老いぼれに何が起ころうや。私は死ねばいい。今日でも何年か後でも、私には同じことだ。だがおまえは——おまえは。運河で逃げよう。おまえが嫌なら宝石は除けても、アテナイへの旅費は充分掻き集められるだろうし、あそこで二人、プルタルコスに匿ってもらおう。彼はおまえを歓迎してくれる——アテナイ中が歓迎するだろう——新しい学派を我々で興そう——そしておまえはアテナイの女王になるのだよ、アレクサンドリアの女王だったように」
「いいえお父さま。分かっているの。今後は自分のためだけに知ることにするわ。ヒュパティアは今日この日から、不死なる神々だけと共にいましょう」
「私を置いて逝くのか」と老人はぎょっとして叫んだ。
「いいえ、決して」と彼女は答え、真に人間らしい涙を零して父の胸に飛び込んだ。「決して——決して。肉体の父にもおとらぬ魂の父なのよ——私を訓練し、教育し、揺りかごのうちから魂の翼を使うすべを教えてくれた親なのよ——私を誤解せず——妨げず——欺かなかった人はお父さまだけ」
「得難い子だ。私は、おまえの破滅の元でもあった」
「違うわ!——お父さまではありません。非難されるべきなのは私だけよ、千倍も。政治などという俗事に手を染めたのです。私がお父さまを唆して、こうも軽率に引き受けたことを私は達成できるだなんて思わせたのよ。私を苦しめたくないなら、ご自分を責めるのはやめて。二人幸せに暮らせますわ。——砂漠の棕櫚葺き小屋、ささやかな果樹園からとれるナツメヤシ、泉の水——修道僧はあえてそんな所で一人惨めに暮らすのよ。そこで私たちが二人幸せでいられませんの」
「では逃げてくれるのだね」
「今日ではありませんよ。危険が迫ってもいないのに逃げるのは良くないわ。半神たちのように自分の持ち場で死なないにしても、ぎりぎりまでは自分の持ち場を守らなければ。明日、講義室に——愛しいムーセイオンにもう一度だけ行って、弟子たちに別れを言いますわ。その値打ちの無い弟子ですけれど、彼らのところを去る理由を話すことが、私自身と哲学に対する義務ですもの」
「それは危険すぎる——じつに危険だ」
「それなら衛兵を連れて行けます。でも——だめ……。哲学者が怖がっているなんて思わせる機会は、決して与えてはいけないわ。無垢という勇気をもって堂々と、神々に守られて安らかに、いつもどおりに務めに向かうのを見せてやりましょう。そうすれば、ことによれば、弟子たちもやっと何か神聖な畏敬の念を抱いて、何らかの神性を感知するかもしれない」
「私も一緒に行かないと」
「いいえ。一人で参ります。私には安全でも、お父さまには危険かもしれませんわ。だって、私は女ですし……あんな猛った者たちでも、べつに私に危害は加えないでしょう」

 老人は首を振った。
「ご覧になって」と晴れやかに言って彼女は父の肩に手を置き、顔を覗き込んだ。……「綺麗だと言って下さいますわね。美しさは獅子をも飼いならすでしょう。この顔には、修道士ですら気を許すとお思いになりません?」

 そうして彼女は嫣然と微笑んで頬を赤らめたので、思惑どおりに老人は恐怖を忘れた。そして彼女に口づけをすると、さしあたっては自分なりに事を進め、手を尽くして兵士たちを歓待するよう指図した。抜かりなく、ここに留めておけるかぎりは兵士たちに我が家を守らせることにしたのである。この賢明な意図を実行するにあたって、老人は首尾よく見ずに済ませたのだが、雄々しい守護者たちとヒュパティアの婢女たちは、盛大に楽しく喋々喃々していた。婢女たちは決して女主人のようにお堅くはなく、二十人ほどの戦人との午後のおしゃべりを、貴重な天の恵みとして歓迎していた。

 そうして階下が笑いふざけている一方、老テオンは極上の古酒を持ち出すと、事態を取り繕うべく、他ならぬアフリカ皇帝の健康を祈って乾杯し、鍵をかけて図書室に閉じこもると、一日中、あの劇場においてさえ頭を離れることはなかった天文学上の難問で乱れた心を慰めたのだった。しかしヒュパティアは、自室に座ってまだ手で顔を覆っており、心は思考で、目は涙で一杯だった。微笑みによって父の不安は消しても、自分の不安は消せなかったのである。

 感じがしたのだ。何故かはほとんど分からないもののはっきりと、肉体の耳に神が語っている気がしたのだ。人生の危機が来たのだと。現実の政治的成功はもうおしまいで、いまや身一人、自分のなかでだけ、これまでの自分やこれからの自分だけで満足しなければならないのだと。世界は改革できるかもしれないが、それは自分の時代のことではない。神々は復活するかもしれないが、自分によってではない。気づくのが怖かった——だが、気づいたとも言いがたい。彼女の心は何年も自分に語ってきたのだ、希望に逆らって希望している——手に負えない激流に逆らってあがいているのだと。そうして今が、手もなく流れに藻屑と消えるか、死に物狂いに力を尽くして揺るがぬ陸地にたどり着くかの瀬戸際だったが、どちらにせよ今後は、その潮流を流れのままに逆巻かせておくしかない……。流れのままに?……少なくとも、神々の意志のままにではない。なにしろ、神々の名を地上から消し去る流れなのだ。もし神々に、知られようという気が無いとしたらどうだろう。死すべき人間たちからの崇拝と崇敬に倦み、自らの全き至福に自足して、地上の安寧や苦悩を何ら気にかけておられないとしたら。そんなことは有り得ないというのか。見てきた一切のことに、その証拠が何かありはしなかったか。イシスがアレクサンドリアに何を気遣われたろう。アテナがアテナイに何を気遣われたというのか。だがホメロスやヘシオドスや、あのいにしえのオルペウス教の歌い手たちは、別様の心の持ち主だった。……神が協議したり戦ったり、同類の部族か何かのように人類と婚姻したりするなどという、神に関する奇妙な空想を、どこから詩人たちは得たのだろう。

 「神と人の父なるぜウス」……希望と慰めの言葉だ……だが真実だろうか。人の父? 有り得ない——ペラギアの父でないことは確かだ。悪しきもの、卑しきもの、無知なるものの父ではない。……半神的な魂の父、それだけの父というつもりで、詩人たちは言ったに違いない。だが今、どこに半神的な魂がいるだろう。自分はその一人なのか。それならどうして、絶対に必要としているときに上なる力に見捨てられるのだ。半神的な種族はじつは絶滅したのだろうか。自分は自惚れて、その資格のない名誉を偽称していただけなのか。それともすべてはあのいにしえの詩人たちの夢だったのか。誰だか大胆な哲学者たちが言ったように、詩人たちは自らに似せて神々を作り出し、畏れ、讃える人々を騙して、自らの結構な幻影を掴ませたのか。……そうにちがいない。もし神々が存在するなら、神々を知るのは人間の至上の幸福だ。ならば、神々は自ら人間に教えはしないだろうか。その素晴らしさを、選り抜きの僅かな者には露にするのではないか。たとえ、彼女がかつて夢見たように、神々に似た輝きを帯びた者たちへの愛顧からではなく、自らの名誉のためだとしても、だ。……神々がまるで存在しないとしたら。神々の名を流し去る運命の流れだけが唯一の力だとしたら。あのいにしえのピュロン流の考えが、宇宙万有の問題の真の解明なのだとしたら。中心も、秩序も、静止も、目標もなく——ただ果てしない流れだけが、堕ちゆく転変だけがあるとしたら。そうして彼女の眩暈のする脳と心に、ルクレティウスのあの恐ろしい光景が浮かんできた。よるべない宇宙が、原因も絶え間もない重力によって永遠に、どこからでもなくどこへでもなく、果てしない時のなかで落ちて、落ちて、落ち続けていて、死すべき者たちの努力や変化はみな、永遠の流れのただなかの塵のごとき原子の衝突にすぎないのだと……。

 そんなことは有り得ない。真実や、徳や、美や、高貴は存在するし、それは決して変化し得ない。いや、絶対的で、永遠に同一だ。女心の神与の本能が知性に反逆し、神の名においてその惑わしを否定した。……そう——徳や美はある。……だが——それもまた、死すべき生命と呼ばれるあの魔法の偶然であり、意識の一時的で可変的な偶発事、塵のごとき原子の衝突によって飛び散った火花の輝きではないのか。誰が言える。

 語れる人々がかつてはいた。神性の神秘的な直接的直観、情動無き神来情態、魂の静かな陶酔についてプロティノスは語り、その陶酔のなかで生命も思考も理性も自分自身も超えて上昇し、熟視してきた原初の絶対的一者に至って一者と合一する、というよりむしろ、自分が一者から流出してきた最初の瞬間から存在していた合一に気づくのだと述べていた。六十年の生涯で六回、プロティノスはあの神秘的合一の高みに上昇し、自らが神の一部であることを知ったのだ。ポルピュリオスも一度、同じ栄光に達したことがあった。ヒュパティアは、たびたび試みてはいたが、自分の外にあるものを直接幻視するに至ることにはまだ成功したことがなかった。だが訓練や、堅固な意志や、力強い想像力によって熟達し、ずっと前から、超自然的幻視への最初歩であるあの神秘的忘我は、ほぼ思うままに作り出せるようになっていた。そのときには輝かしく、また彼女の思うには神的でもある想像上の喜びに浸ってはいたが、この喜びを損ない醒めさせるようなことも知っていた。自分よりも知性や教育の劣る何百もの者たちのほうが、こうしたことにかけては——ああ、何より悲しいことに、キリスト教の修道士や修道尼たちが、彼女に匹敵すると誇っており——彼らが自らの幻視について語るところを信じるなら、実のところ——彼女とやり方は同じでも——彼女を凌いでいたのである。なにしろ彼らも、禁欲や厳しい断食をし、まったく身動きせずに一心に考えつめて瞑想することによって、肉体を超え出て天上の領域に上昇し、言葉にできないものを見たなどと自認しており、それを、語りがたいものというのはたいていそうだが、言葉にできないと言いながら極めて事細かに詳しく語り、しゃべりたてて広めていたのだから。……それで、その午後にもう一度、ことによると最後の試みとして、天上に昇ろうと気構えたとき、自分がこうしているまさにこの瞬間に、コンスタンチノープルからテーバイ地方にいたるまで、どれだけの数の文盲の修道士や修道女がおそらく同じことをしているかを思い出して、かなり恥ずかしくなった。それでも試さずにはいられなかった。あんな恐ろしい疑惑の深淵にいて、何か確かで明らかなものを、己の思考や希望や推測を超えた何かを、疲れた信仰、疲れた心のやすらい所となるものを持たずにはいられない。……あるいは今回は、何しろ究極に必要としているのだから、神はご自身の美の一端をいくらか見せて下さるかもしれない。……アテナもついに、情けをかけて下さるかもしれない。……いや、アテナでなくても、何らかの範型、天使や神霊が……そこで、神々を崇拝する者を光の天使の姿で欺き惑わすのを喜ぶ、あの邪悪な惑わしの霊のことを考えて身震いした。だがこうした危険はあっても、もう一度試みなければ。自分はアテナご自身のように染み一つなく清らかではないか。この生来の清らかさが本能的な嫌悪を引き起こして、小綺麗極まりない仮面の下にあるそうした穢れを見抜かせてくれないだろうか。ともかく試すだけは試さなければ……

 そうしてじつに恥じ入った様子で、彼女は自分の上衣や宝石を脇に外し始めた。それから胸と足を露にし、編んだ金髪を揺すって解くと、長椅子に横になって手を胸に重ね、恍惚とした眼差しで見上げながら、起こるべきものを待った。

 一時また一時と横たわるうちに、徐々に目が爛々として、胸は波打ち、呼吸が早まっていった。だが、まっすぐ延びたままの四肢や力の抜けた手足には生きた気配が無く、人の血肉へと咲き変わる前の、ピュグマリオンの象牙でできた花嫁と変わらなかった。太陽は休息しようと沈んでゆき、外では都市のざわめきがますます高まっていった。階下では兵士たちが笑い騒いでいた。だがどのような音も耳を通り抜けるばかりで意識されず、気にも留めずにやり過ごした。信仰や希望、理性自体を賭けて、至高天に昇るという大それた成果を得ようと奮闘した。鍛え上げた意志で一つのことに努め続けることによって、神秘主義者たちが言うように、その効力が最高に達すると自己滅却に至るのだが、彼女はあらゆる光や音から感覚を遮断し、心さえあらゆる思考から遮断して、完全に己を捨て、己を空しくして横たわり、やがて時間や空間の意識も消えて、一人で深淵のなかにいるのに気づいた。

 呪縛が解けないように、考えようとも、望もうとも、喜ぼうともしなかった。……まさにこの時点で、突如として喜びや畏れが立ち騒いたせいで、台無しになったことが何度もあった。だが今は、意志を堅固に保っていた。……自分の四肢の感覚もなく、呼吸も聞こえなかった。……上方や周囲に果ても無く、淡く輝く霧、煌めく靄の網が来ては過ぎ去り、離合集散した。……自分は身の内にあるか、それとも外に?……

* * * * * * * * * * * *

 網は、静かな明るい光の深淵に変わっていった。……身を包む静かな暖かい大気が体中にしみわたってきた。……光を吸い込み、真昼の光に浮かぶ塵のように、光のなかを漂った。……しかしなおも意志はしっかり保っていた。

* * * * * * * * * * * *

 何里もの永劫の彼方、深淵の遥か遠く、果てのない栄光の深み越しに見える、暗い影になった点。それが近づいてきて、大きくなった。……虹に囲まれた暗い球。……あれは何だろう。彼女は何も望むまいとした。……点は次第にますます近づいてきて、彼女に触れた。……中心が震えてちらつき、形を取った——顔だ。……神の? いや——ペラギアの顔だ!

 美しく、悲しげで、懇願し、咎めるようで、おそろしかった。……それ以上ヒュパティアは耐えられなかった。悲鳴をあげて飛び起き、跳ねつけられた人間の理性と意志とが、神与の権利を再び主張する際に神秘主義者が経験する凄まじい激変を、このうえなく苦い思いで味わった。想像力の陶酔のあとに来るのは、疲労と虚脱である。

 ではこれが神々の答えなのか。見下し、晒し者にし、門前払いにしてやったあの女の幻影が。「いいえ、神々のお答えではないわ——私自身の魂の答えよ。私は馬鹿だった。極限まで意志を放棄しているつもりで、最大限に意志を行使していたのだ。欲望を踏みにじろうとしながら、心理的な欲望一切の奴隷になっていたのよ。あの光の網、あの輝き、あの暗い球が、ペラギアの顔と同様、私自身の想像力の——それどころか感覚の——幻影だったとしたら? 自分の自我と神性とを取り違えていたのだとしたら。私が私自身の光、私自身の深淵だったとしたらどうかしら。……今も私が私自身の深淵、私自身の光——私自身の闇ではないの」こう言いながら彼女は苦笑いをして、また長椅子に横になって顔を両手で覆った。心も体もくたくただった。

 ようやく彼女は体を起こして座り、乱れた解れ毛を気に留めもせず、じっと虚空を見つめた。「おお、みしるしを、表徴を。詩人たちが歌ったあの黄金の日々を! 神々が人間の間を歩き、人間に味方して友軍として戦われたというあの時代。でも……こういう古い物語は信頼できる敬虔なものかしら。穏当でさえあるかどうか。私は心ではこういう物語を嫌っているじゃない。ホメロスがギリシャの神々に不正なことをやらせたり、卑しいものに変身させたりしたのを、プラトンは蔑んでいたけれど、私以上に誰があの軽蔑を共にしたかしら。あんなことをいまさら信じなければならないというの。あらゆる感覚を超越する領域に住まう神々が、まったく果てもなく下に存在する我々の感覚でも捉えられるようになって下さる——物質の悪しき偶然に成り下がって下さるなんて考えるほど、私は落ちぶれなければならないというの。そうよ。無いよりはましだわ。……そうでなければならないくらいよ。ずっと、ずっと、ずっとましよ。アレスが死すべき者に傷つけられて、悲鳴をあげて逃げたと信じるほうが。ゼウスの姦通や、ヘルメスの窃盗を信じるほうがいい——神々が人間たちと会って話したことなど決してないと信じるくらいなら。こう考えさせて。さもなければ気が狂う。私の渇望するあの不可視の世界から存在者が現われて、理性でも感覚でも疑いようのないものとして、人間と交わりをもつのだと——そうした存在者が我々自身にもまして移ろいやすく低劣なものでさえあるとしてもよ。結局のところ、不可視の世界はあるのかしら。おお、みしるしを、みしるしを!」

 ぐったりと眩暈を感じながら、彼女は「神々の間」へふらふら入って行った。信仰というよりは趣味の品として、古代の品々を蒐集していたのである。周りじゅうで、何世代もの間葬り去られていた冷たい夢が、魂の無い白い眼球で虚空を見つめていた。不動の、死んだ美しさだった。ああこれが話せて、気を鎮めてくれたなら。部屋の下手の端には、アイギスと槍と兜で完全武装したパラスが立っていた。このアテナイ彫刻の珠玉を、ゴート族のアテナイ劫掠のあとで、彼女はとある商人から買ったのである。像は厳正に堂々と立っていた。が、右手は、ああ! 無くなっていた。そこには先の欠けた腕が広げられたままになっていて、まるで形骸は残っていても力は死んで消え去った信仰を、哀しく笑っているかのようだった。

 彼女は、お気に入りの女神像を、長年こんなふうになりたいと切望してきた理想像を、熱を込めて長いこと見つめた。結局それは——夢だったのか。没しゆく陽光の戯れか、それとも、本当にその唇が動いて微笑みを形作ったのか。

 まさか! いいや、有り得ないことではない。ほんの数年前、ヘカテ像が誰だか哲学者に微笑みかけたというではないか。動く彫像やまばたきする絵など、形ある奇蹟にはあらゆる話があったではないか。そうした奇跡によって、死にかけている信仰は必死に——他を騙そうとしているのではなく——自分は確かだと自分で納得しようと奮闘しているのだ。それはあったことだし——あり得ることで——現にあるのだ。

 いや、その唇ははじめからそうだったとおり、冷笑せんばかりに木石然として揺らぐことなく静かに結ばれていた。驚異は、それがあったのだとしても、消えたのだ。そして今度は——目の錯覚だろうか、盾に彫られたメドゥーサの首を囲む蛇がみなのたうって牙をむいており、石の目で睨みつけて彼女の身を恐怖に竦ませて、自分たちと同じく石にしたがっているかのようだ。

 いや、これも消えた。せめてこれが消えずに居てくれたら、生きているというしるしになったものを。もう一度女神の顔を見上げたが、無駄だった——石は石だ。そして思わず、大理石の膝に必死に縋りついていた。
「アテナさま。崇拝されたるパラスさま、永遠の乙女よ。名付け得ぬ一者から湧き出でし絶対理性よ。私の声をお聞きください、アテナさま。お慈悲です。どうかお声を。私を呪う言葉でもかまいませんわ。お父上のいかずちを操った唯一の方ですもの、お望みならばそのいかずちで私を殺して下さい。何でもいいから何かなさって——何か、御自身の存在を証明することを——卑しく惨めな物質の傍らに、私の惨めな魂の傍らに、何かが存在すると確信できるようなことを何か。私は一人きりで宇宙の真ん中に立っております。無知と疑惑、果てしない虚無と暗黒の深淵に落ちて、弱っております。おお、どうかお慈悲を。これがアテナさまでないことは弁えております。あらゆる事物に遍在しておられるのですから。ですが、これがご自身の高貴さを象徴するものであり、このお姿を嘉しておられることを存じております。ああいう人々がお言葉を賜ったことを存じております、あの人々——ああ、何を私が知っておりますの。何も、何も、何一つ!」

 そして膝にしがみつき、滾る涙で石像の冷たい足を濡らしたが、しるしも声も、何の答もなかった。

 突然、近くで衣擦れがして驚いた。そして周りを見回すと、すぐ後ろにユダヤの老婆がいた。
「叫びなされや」と、妖婆は軽蔑しきった調子で鋭く言った。「大声でお呼びしたらどうです、女神さまなんですから。お話中か、追っかけてなさるか、そうでなきゃご旅行中なんでございましょ。それともことによると、私らみんないずれそうなるように、老いぼれなすってご機嫌斜めで動くのも億劫なんでしょうよ、麗しいお嬢様。何とまあ! 聞かん気のお人形さんでは、おしゃべりしてくれんでしょうし、目だって開けやしますまい。針金が錆びついておりますからね。さて、それで、よろしければ、手前どもが新しいお人形をご用意いたしますが」
「出て行きなさい、妖婆め。こんなところに入り込んでどういうつもり」と、さっと立ち上がってヒュパティアは言った。だが老婆は涼しい顔で続けた。
「試しに、あちらの綺麗なお若い紳士に呼びかけてごらんになっては」と、今ではベルヴェデーレのアポロンと呼ばれている像の模作を差した。——「お名前は何とおっしゃいましたか。ご存知のとおり、婆というのは気難しいし妬み深いのが常ですけどね。しかしこうも愛らしいお顔とあっては、あちら様も無碍にはできますまいて。あの美形のお若いのを呼んでごらんなさいませ。いや、もし恥ずかしいと仰るのでしたら、ユダヤの婆が代わりにお呼びしましょうか」

 この最後の言葉はじつに意味深長に語られたので、嫌悪を覚えたにも拘わらず、気づくとヒュパティアはどういう意味なのかと妖婆に訊ねていた。妖婆はしばらく何も答えず、炎のような眼差しで相手の目をじっと覗き込み続けており、それを前にしては気位の高いヒュパティアですら、前のときもそうだったように、すっかり怯んでしまうほどだった。それほどにも深い洞察が、不屈の決意が、恐れを知らぬ力が、萎み落ち凹んだ眼窩に燃えていたのである。
「魔法使いの婆めがお呼びしましょうか、おとがい花咲く麗しの若きアポロンを。いらっしゃいますとも、いらっしゃいますとも。請け合いです。ミリアム婆がひとたび指を上げるや、じつにお行儀よく来ざるを得ませんのですよ」
「あなたに? 光の御神アポロンが、ユダヤ女に従うというの」
「ユダヤ女? で、そちらはギリシャ人だと?」と、老婆はほとんど喚くように言った。「そんなことを訊くとは何様のつもりかね。そちらさんの神々やら、半神やら、魔物どもが何ほどのもんです。私らと比べたらギリシャ人なんか昨日今日の子供よ。あんたら半裸の蛮人一味が、トロイア攻囲のことでピヨピヨ言い争ってなさるときに、我らがソロモンは、ローマもコンスタンチノープルも見たことがないような豪奢に囲まれて、神霊や霊、天使や大天使、権天使や能天使を、口にはできぬ御名によって支配しておったのに。エジプト人やカルデア人から盗んだのではない学知が、ギリシャにあるかね。それで、モーセに教わらなかったものがエジプト人にあるかね。ダニエルに教わらなかったものがカルデア人にあったかね。この世が知っていることで、私らから聞いた以外のことがあるかね、父祖たちや魔術の師たち——我ら、世界の内的な秘密の主たちから教わったことの他に。さあお出でな、ギリシャの赤ちゃん——エジプトの神官たちがあんたらのご祖先を評したとおりで、ギリシャ人はいつでも子供だ。新しいおもちゃを欲しがっては次の日には捨てちまう——あんたらのくだらん知恵一切の源に来るがいい。見たいものの名をお言い、そうすりゃ見られるさ」

 ヒュパティアは脅えた。というのも一つのこと——つまり、この女が自らの言葉を完全に信じていることは疑いがなく、こんな心理状態はあまり見たことの無いものだったから、一般的に人間の心に作用し、また作用すべきものでもある圧倒的な共感力が作用したとしても不思議ではない。そのうえ彼女の学派は常々、いにしえの東方の民に、遠く過ぎ去ったより力ある諸種族の神秘的伝承に、霊感の源泉を求めていたのである。それを今、見つけたのではないのか。

 ユダヤ女はただちに優位を見てとり、返答する暇を与えずに話し続けた——
「さて、いったいどんなやり方にしたもんかね。玻璃と水によってか、壁のうえの月光か、それとも篩によってか、食べ物を使うか。シンバルがいいか、星々にするか。テオドシウス大帝に帝国を約束した二十四元素の表を使うか、それともアッシリア人の神聖計数によるか、はたまたヘカテー領界の碧玉がいいか。エジプトの神官たちがしていたみたいに、オシリスを八つ裂きにするとか、イシスの神秘を暴くとかと脅してやろうか。その気になったらやれるさね。何しろこんなことはみんな承知で、それ以上のことだって知ってるんだから。あるいは、ソロモンの封印上の口にはできぬ御名を用いたものか、この世の全民族のうちで我らのみが知る御名を。いいや。異教徒なんぞに無駄遣いしては勿体無い。聖餅を使うのがよかろう。これをご覧ね——ここに奇跡の原子があるのですよ。今日は一日、三時間ごとにこれを一枚食べるだけで、他には何も口にしてはいけない。そうして今夜、こちらの荷運人足の家、エウダイモン荘の私のところにお出でなさい。黒瑪瑙を持ってだよ。そうすれば——見る気になったもんは、見られる」

 ヒュパティアは、躊躇いながら聖餅を受け取った。
「ですが、何なのこれは」
「それでホメロス釈義を教授してるのかね。ヘレネが半神たちに与えて歓喜と愛の気で満たしてやった無憂薬のことをああもぺらぺら講じてなさるのを、この間の朝、私はどなたから聞きましたのやら。精神の美しさから流れ出る内的霊感のことだとか、寓意はいかにも——なかなか可愛いもんでしたけどね、綺麗なお嬢様。でも問題は残っていますよ、それは何なのかってことが。で、これが無憂薬だと申しておるのです。試しに食べてごらんな。そうして、あんたはヘレネについて語れるだけだが、私のほうはヘレネの振舞いができるのを認めなさるがいい。そうすりゃ、今よりはもう少しホメロスが分かるってもんさね」
「信用できないわね。何か、自分の力のしるしをお見せなさい。さもなければどうして信用できて」
「しるし——しるしね——北を向いてそこに跪きなさい。あわれな老いぼれた不具には、あんたは背が高すぎる」
「私が? 私は人なんぞに跪いたことはないのよ」
「だったら、あの美形の偶像に跪いていると思えばよろしい、お好きなように——だが跪くんだ」

 ぎらぎらした目に強いられて、ヒュパティアは相手の前に跪いた。
「信じるか? 欲するか? 服従して言うことを聞くか。我意や自尊では何も見えん。己を捨てんことには、神も悪魔も近づく気になるまい。服従するか」 
「します、します!」と、好奇心と自己不信に苦しみながらあわれなヒュパティアは声を上げたものの、耐えがたい魅惑のせいで一刻ごとにますます怯えた目になり、手足の力が抜けるのを感じた。

 老婆はふところから水晶を取り出すと、その先をヒュパティアの胸に当てた。冷たい身震いが体中を走り抜けた。……魔女は頭の周りでなぞめいた手振りで手をうねらせながら、ときおり「しずまれ、しずまれ、高慢な心よ」と呟き、それから痩せこけた指先を餌食の額に据えた。だんだん瞼が重くなってきた。何度も何度も瞼を上げようとしたが、あのぎらぎらと据わった目を前にしてはまた閉じた。……そして次の瞬間、意識を失った……

 気づくと、髪も衣服も乱れたまま部屋の遠くの端で跪いていた。抱きしめているこの冷たい物は何だろう。アポロンの両足だ。妖婆がそばに立っていて、含み笑いをしながら手を打ち鳴らした。
「どうして私はここに居るの。何をやっていたのかしら」
「可愛らしいことを言ってましたよ——この綺麗な若者をえらく賛美して。今晩来たときあの称賛を忘れているほど、この若いのは無礼ではなかろうて。予言者ばりのすばらしい入神状態でしたわ。いやはや、起きてるときより寝てるときのほうが賢明な女というのは、あんただけではありませんがね。まあ、じつに見事なカッサンドラか——クリュティアにはなりましょうや、その気があれば。……あんた次第ですよ、私のすてきなお嬢様。満足したかね。もっとしるしが欲しいかい。この青いお目々を吹いて失明させて、ユダヤの老婆のほうが異教徒より物知りだと見せてやろうか」
「おお、信じるわ——信じます」とあわれな娘は疲れて果てて声を上げた。「行くつもりよ。でもまだ——」
「ああ、そうだ。どうやって出現させるか、はじめに決めといたほうがいい」
「あの方のご意志によってです——ただお出でいただくだけでいい。御身が神であることを知らせて下さるだけで。アバムノンの伝えるところでは、神々は耐え難いほどに輝く不動の光のうちに出現されて、より下位の神格や大天使や、権天使や半神たち、神々から命を得ているものすべての合唱隊にとりまかれておられたとか」
「それならアバムノンは阿呆な老いぼれですわな。若いポイボスがそんな有象無象を引き連れて、ダフネを追いかけたなんてあんた思うのかね。あるいは、かのユピテルレダに泳ぎ寄ったとき、アヒルだのチドリだのシャクシギだの、ナイルの鳥の全群を先導しとったなどと。いいや、アポロンは一人で来る——あんた一人のところに。そうしたら、カッサンドラになるかクリュティアなるか自分で決めたらいい……ごきげんよう。あの聖餅と、瑪瑙も忘れなさんなや。それと、今から日没まで誰とも口を利いてはいけいない。じゃあね——かわいいお嬢ちゃん」

 そして一人笑いをしながら、老妖女は部屋から滑り出た。

 ヒュパティアは恥ずかしさと恐ろしさに震えながら座っていた。イアンブリコスやアバムノンなど、エジプトやカルディアの神官がやる古い儀式を愛好して固執する人々は神的秘術の諸技を称賛して採用していたが、彼女は比較的純粋に精神主義的なポルピュリオスの学派の徒として、つねづねそういう秘術を嫌っており、ほとんど馬鹿にして見ていた。そんなものは彼女にすれば、俗衆を驚かすのに都合がいいだけの卑しい玩具、奇術の手技でしかなかった。……それを今、もっと好意的に考えはじめたのだ。下民に信じさせるにはしるしや奇跡は必要ないと、どうして分かった。……じっさいどうしてだ。何しろ、自分にはそうしたものを望んだではないか。それでヒュパティアは、アバムノンがポルピュリオスに宛た有名な書簡を広げて、彼による魔術の巧妙な正当化を本気になって二十度も読み、そしてそれを反駁の余地なきものだと感じた。魔術ですって? 何が魔術的でないというの。宇宙はすべて、頭上の惑星から足元のじつにつまらない小石にいたるまで、まったく神秘的で、言語を絶した奇蹟的なものだし、予期不可能で計りがたい親和力と斥力によって影響したり影響されたりしているけれど、アバムノンが言うように、これによって神々は、形や色や化学的な性質によって自らの象徴となっているか、あるいは自らと似ているああいう音や物体に向かってゆく。そこにはやはり、何という驚異があることか。愛と憎しみ、共感と反感が宇宙の法則ではないの。哲学者たちは、自然現象を機械論的に説明した場合は、その真の解決に近づきはしなかった。「何故」という神秘は触れられることなく残っていた。彼らの分析はすべて、明白な事実を大層な言葉で晦渋にすることしかできなかったのよ。水は油を憎んでそれとは混ざりたくないと拒み、石灰は酸を愛してそれを自らの中に受け入れようと切望し、そして恋人のように恋情極まって熱を発するという事実を。なぜいけないの。何の権利があって、水や石灰が我々以上に感覚や情動を持つことを否定するのかしら。我々同様、そうしたもののうちにも同じ世界霊魂が混入しているではないの。そして我々が考えたり、感じたり、愛したりするのは、あの霊魂のおかげではないの。——それならどうして、水や石灰も我々同様でないというの。一つの霊魂が万物に行き渡り、その存在がすべてを活性化して、神と神霊を繋ぐのと同様に花と水晶を繋いでいるのなら、それはまた事物の偉大なる連鎖の両端二つをも繋いでいるはずではないかしら。名付け得ぬあの一者ですら、その創造の刻印を受けた最小の被造物に繋がっているはずではないの。人間の声という物質的な音によって一つの魂が他の魂に引き寄せられるのにもまして、物質的な芳香や象徴、魔術によって神や天使が引き寄せられるとは何と偉大な奇跡だろう。このことが示す精神と物質の親和性は、肉体と魂との親和性にもまして奇跡的なのか——物質的な空気を吸ったり、物質的な食物を食べることによって、あの肉体のなかであの魂が保持されるということよりも? あるいは、自然学者たちが正しくて、魂は神経の物質的な産物もしくは活力に過ぎず、物質の法則が宇宙の唯一の法則であるのだとしても、それなら魔術はさらにあり得るもので、理に適ったものでさえありはしない? あるゆる類推からして、我々よりも高次だけれど、そうした法則に従う別な存在があって、よって人間のようでさえあるけれども、物質的な光景や音という餌におびき寄せられるのかもしれない。そう考えるのが公正ではないかしら。……もし霊が万物に行き渡っているのなら、それなら魔術はあり得る。もし物質以外には何も存在しないのなら、魔術は事実上確実だわ。いずれにせよ、経験によって検証するしかない。……そしてそういう検証があらゆる時代に適用され、成功したと断言されてきたのではないの。新参者の無知や適性の無さによるもの以外は、いまだ失敗したことが無いと保証されているそういう方法や儀式を、自分自身でやってみる以上に合理的で哲学的な行いがあるかしら。……アバムノンは正しいはずだ。……彼が間違っていると考える勇気は、彼女には無かった。何しろこの最後の希望が潰えたなら、明日にも死ぬ身の我々に、飲み食いする以外に何が残るというのだろう。

最終更新日: 2009年3月21日   連絡先: suzuri@mbb.nifty.com