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◆ 第3シリーズ 7話 「プッツン・ママ」
いつも大人しい柴田至則(原田幸一)が突然、上履きやカバンを派手な色に塗りたくって登校してきた。金八(武田鉄矢)はイジメがあったのではと疑うが、至則はなぜだか分からないが自分でやった、と虚ろに言う。金八は悩み事を聞こうと放課後残るように伝えるが、至則は心配をよそに下校し、水野君恵(岸雅)の家で憑かれたようにオルガンを弾き続けるのだった。聞けば、3歳の頃から習っていたピアノとバイオリンを、受験のために親から厳しく禁止されているという。
至則と君恵が親密になったという噂は3Bに広まり、女子たちにからかわれた君恵はショックを受ける。金八は至則の話し相手になってくれと頼むが、君恵は口を閉ざしたまま。しかし母親が「相手になって欲しいという人を無視するのは、あなたがされたイジメと同じことじゃないの」と言うと顔を上げる。
翌朝、君恵は至則と一緒に登校しようと玄関の前で待っていた。ところがそれを見た至則の母・早苗(田島令子)は驚いて学校へ相談、金八の頼みだったことが分かると、我が子のことは母親である自分に一切任せて欲しいと言い捨てる。そんな母親の過干渉に我慢ならなくなった至則は、台所から包丁を持ち出し、自宅の庭に力いっぱい突き立てるという奇行に出る。駆けつけた金八が、盲愛が至則を追い詰めたのだと言うと、泣き崩れる早苗。金八は至則にも、この母親の全身全霊の愛情を良く覚えておけと言うのだった。
翌朝、至則が学校へやってこない。心配した金八が早苗に電話をすると、意外にも「まだ寝ております」との返事。昨日もっと突き放すよう言われたので、息子が自主的に起きてくるのを歯を食いしばって待っているというのだ。やがて至則はパジャマの上に制服を引っ掛けて登校、これからは母親を当てにしないと笑顔で約束する。金八は家でバイオリンを弾くことができない至則のために放送室で生演奏を企画、至則はさわやかな音色を奏でるのだった。
- みどころ談義
- ● 「プッツン」という言葉の響きが懐かしい第7話です。早いもので第3シリーズはもう折り返しですよ。
- ○ 他のシリーズの半分で終わっちゃうんだもんな。1クールだけだとやっぱり短いよねぇ。
- ● 今回、内容としては「親に何から何まで世話を焼かれて、鬱憤のたまった生徒が奇行を起こす」ということで、そこだけ取れば既視感があるような、ありがちな物語だと思うんです。地面に穴を掘るのも第3話で泰久がやりましたし。
- ○ 至則の母親役が田島令子さんでしょ。第5シリーズを先に見ていた人は「あれっ? まんま同じじゃないの?」なんて思ったかもしれないね。
- ● ですよね。包丁を持ち出した息子を見てキャーっとなったり、父親に電話しても仕事を理由に切られてしまったりするところまで健次郎のときと一緒でした(笑)。でも、今回はそこに水野君恵というキーパーソンがうまく絡んできたので、飽きずに楽しめたんじゃないかなと思うんです。
- ○ 同感。すごく面白かったよ。君恵の存在が至則の逃げ場になったというのが良かったなぁ。あとは、至則も母親もイカレ方が可笑しいんだよね。至則はサイケな落書きにしてもオルガンをスラスラ弾くあたりにしても、芸術のセンスがあるというのが新鮮。ただのおバカじゃないんだよ。
- ● お母さんの方は過干渉と突き放しの差がホント極端で。あれは笑っちゃいました。それから、金八先生が至則の家では高級なお酒、君恵の家では高いうな重を意味もなく勧められていたのもなんだか妙でしたね。
- ○ うーん。あの高級酒とうな重には意味が込められている気がするけどな。
- ● えっ? あんなちょっとしたシーンにもきちんと理由があるんですか?
- ○ 確信を持ってるわけじゃないんだけど…家庭が経済的に豊かなことの象徴かなと。至則も君恵もわりと贅沢な、物に不自由しない家で育ちながら、その幼い心には何かポッカリ穴が開いている、ということがサラっと示されていた…考えすぎかなぁ(笑)。
- ● いや、でもたしかにそういう、心が寂しい時代ですよ。だからこそ金八先生は、生徒の家に訪ねて行ってまで、できるだけふれ合おうとしてるんじゃないですか。
- ○ 今回なんて、家まで出かけていって、子どもだけじゃなく親の自立まで助けてやってるもんね。金八つぁん、ハードだなぁ。
- ○ 他のシリーズの半分で終わっちゃうんだもんな。1クールだけだとやっぱり短いよねぇ。
- 小ネタ/周辺状況
- ◆ 至則の足のサイズは27cm。
- ◆ 至則は一年生まではそう無口でもない生徒だった。二年の中頃から成績が落ち始めた。
- ◆ 君恵の家で出されたうな重は、「うな吉」という評判のいい店のもの。
- ◆ 至則は幼稚園の頃、バイオリンのコンクールで優勝した。そのとき褒めてもらえたのが嬉しくて、ずっと続けてきたのだという。
- ◆ 至則は一年生まではそう無口でもない生徒だった。二年の中頃から成績が落ち始めた。
- 参考文献/挿入歌/BGM
- ◇ 【音楽】 チゴイネルワイゼン (サラサーテ)
- ◇ 【詩】 地面にナイフを刺してみた (西前奈緒美)
- ◇ 【音楽】 エリーゼのために (ベートーベン)
- ◇ 【詩】 自然 (藤井加代)
- ◇ 【資料】 「教育110番の会」会報 (東京新聞)
- ≫詳しく見る
- ◇ 【詩】 地面にナイフを刺してみた (西前奈緒美)